軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第347話 数々の秘密と口裏合わせ

体のことについてはこんなところでいいだろう。

結局はっきりとしたことは何も分かっていないわけだが、一番大事なのは出来ることがなにか把握しておくことだし、ということにしておこう。

次に話さなければならないのは、街のことだ。

俺は口を開く。

「今更だが、迷宮の拡大は止まってるんだよな?」

もちろん、相手はイザークである。

彼は頷いて、

「ええ。ラウラ様が制御されておられるのだと思います。特にあれから拡大するようなことはありません。ただ……」

「ただ? 何か問題があるのか?」

「いえ、これは自分の目で確かめていただいた方がいいでしょう。ともかく、さほどの問題はありません」

「ならいいんだが……」

本当か?

俺がそう思っているのに気づいたのか、ロレーヌがこちらを向いて、頷く。

彼女も問題ない、と認識しているようだ。

それなら大丈夫か。

「 冒険者組合(ギルド) への報告はどうなってる?」

「まだですね。その辺りについてはある程度、口裏合わせが必要かと思いまして。特にラウラ様が迷宮主になったことについては秘密としていただきたいものですから」

それは確かにそうだな。

その辺りを話すと……ラウラが 吸血鬼(ヴァンパイア) だ、ということがばれる可能性もある。

《迷宮核》について、ラウラやイザークは知っていたようだが、人の間ではあまり知られていないはずだ。

少なくとも、俺は聞いたことがなかった。

長年冒険者をやってる俺ですらそうなのだがら、 冒険者組合(ギルド) でも把握していないのではないかと思う。

ただ、知っていた場合に、あれの性質まで分かっていたら、それを取り込んだラウラがどの程度の存在かというのが分かってしまう。

そうなる危険は、可能な限り避けた方がいいだろう。

マルトにはまだニヴがいる。

分かれば地の底まで追いかけてくるのははっきりしてるからな。

「それは俺からしてもそうだな。ラウラが 吸血鬼(ヴァンパイア) だって話がばれたら、そこから俺たちも怪しまれるようになる可能性がある。だが、どんな報告をするのがいいか……」

俺がそう言うと、ロレーヌが口を開く。

「それについてはそこまで複雑に考えなくてもいいのではないか? ウルフにはシュミニを倒しにいくと言ったわけだしな。そのまま、シュミニを倒したら色々と収まった、というのが一番いいように思うが」

きわめて単純な話である。

《迷宮核》とか迷宮主とか余計なことは一切言わないで、シュミニは倒した、と言ってしまえばウルフとしても特に突っ込みはしないだろう。

ラウラが迷宮核を取り込んだからこそ街は平穏を取り戻しているわけだが、その部分についてウルフはシュミニが倒されたからだ、と考えることになる。

実際に平穏に戻っているのだから、文句のつけようもない。

地下に迷宮はまだあるのだろうし、 冒険者組合(ギルド) としても調査はするだろうが、《迷宮核》はラウラが持っているし、迷宮主はラウラだ。

地下迷宮を調べたところで何かが出てくることもあるまい。

「そうだな。それでいこうか。イザークもそれでいいのか?」

俺が尋ねると、イザークも頷いた。

「ええ。それで構いません。それと……リナさんについては奥の部屋で転がされていた、というくらいにしておきましょうか。偶然出会った、ということにもできなくはありませんが……リナさんはシュミニに捕まってあそこにいたのですよね?」

イザークがリナにそう尋ねると、リナは、

「そうです。パーティーメンバーの二人と急に連絡が取れなくなってしまったので、探して回ってたら捕まりました。それで、血を吸われて……気づいたらああいうことに」

ライズとローラか。

あいつらの方が先に連れ去られてたわけだ。

詳しく聞けば、定宿にしている宿があるそうで、そこで待っててもいつも帰ってくる時間になってもさっぱり帰ってこなかったのだという。

で、行きそうな場所を探して回っても見つからず、最後には本人の言う通り 吸血鬼(ヴァンパイア) にされてしまった、というわけだ。

「そういうことなら、定宿にしている宿はパーティーが一つ帰ってこないことに不審に思ってるかもな……リナは捕まっていない、で通すのは無理か。素直に捕まってたけど無事だった、にした方が良さそうだな」

たまたま偶然会ったということにしてもよかったが、しばらく行方不明だったということを知っている人間がいると、後々そこから突っ込まれてまずいことになる可能性がある。

出来る限り、真実に沿った嘘を構築していった方がいい。

捕まっていたのは事実だし、その期間見かけなかった言い訳としてどこから突っ込まれても崩れるところはないだろう。

ただ、 吸血鬼(ヴァンパイア) と迷宮主になっていた、ということを喋っていないだけだ。

「分かりました。何か聞かれたらそう答えることにしますね。でも、聞かれることもないんじゃないかと思いますけど」

リナがそう答えた。

確かにそれは正しいな。

ひどい話だが、冒険者が一人いなくなったくらいでそこまで気にする奴はいない。

どっかでのたれ死んだか、と少し思って寂しく思うくらいがせいぜいだ。

冒険者組合(ギルド) としても、よっぽどの重要人物かどうしても必要という特殊な場合じゃない限りはわざわざ探したりはしない。

リナは探されない方だろう。

「だが、今回は状況が状況だからな。人が魔物に変じていたわけだし、 屍鬼(しき) になってた冒険者も多数いたんだ。姿をしばらく見せなかった冒険者が現れたら、尋問くらいされるかもしれない」

要は、お前は魔物や 屍鬼(しき) ではないのか、と細かく聞かれるというわけだ。

何食わぬ顔で活動している冒険者の中に、 吸血鬼(ヴァンパイア) や 屍鬼(しき) が混ざっていたら恐ろしい。

……混ざっているし、リナもこれから混ざるんだけどな。

「言われてみると……そうですね。色々ばれないように気を付けます」

俺の言葉にリナはそう言って頷いた。

「じゃあ、とりあえず 冒険者組合(ギルド) に報告に行くか。概ね、今言ったような感じで。細かいところは……まぁなんとかなるだろう」

たぶんな。

そもそもそこまで怪しまれるような事柄はないはずだし。

ただ、ウルフは勘が鋭いから少し不安だが……大丈夫だと思うしかない。