軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第340話 数々の秘密と図書室

「……俺もリナも、 吸血鬼(ヴァンパイア) じゃないのか? でも、血は吸うし、人に対する……食欲みたいなものも感じるんだが。だよな?」

リナにも確認してみるが、彼女も頷いて、

「人間、美味しそうです!」

とヤバい台詞が返って来た。

……いやまぁ、間違ってはいないんだけど、この台詞を街で叫ぶと危険だ。

人を食らう魔物と認識されるか、とてつもない阿婆擦れ扱いされるかの二択である。

どちらにしてもリナをそんな目に遭わせるわけにはいかない。

一応、あとで注意しておこう……。

ともかく、俺の台詞にイザークは答える。

「もちろん、まったく違う、とまでは言えません。近縁種や亜種、というものがありますから……厳密なことは鑑定神にでも尋ねるほかありません。まぁ、確実に鑑定してくれる、とは言い切れませんが……」

実際、鑑定神本人……本神?が鑑定することなど滅多にないというからな。

それを求めていっても無駄足に終わる可能性はないではないが……仮面のことがある。

これについてはしっかり見てくれるんじゃないだろうか。

なにせ、ハトハラーの村の神霊によれば神具に近いという話だったからな。

ついでに俺が一体どんな種族なのかも見てもらえれば御の字、というところか。

「ま、それでも分かることはあります。それに出来ることの確認も。私はこれでもそれなりに長く生きている 吸血鬼(ヴァンパイア) ですから、色々な技術を身に付けております。そのいくつかが、レントさんでも使えるかもしれません。ですので、庭に参りましょう……ロレーヌさんも見たいでしょうから、先に図書室の方がいいですかね?」

何か技術を授けてくれるつもりらしく、これは俺にとって非常に喜ばしい話だ。

もともと、出来ることが極端に少なかったからひたすら出来ること……剣術や生活魔術、気での一撃などを極限まで磨き上げてきた俺だ。

出来ることが増えるなら、いくらでも歓迎したい。

というか、そういう、多彩な技を身に付ける、というのは憧れだったからな……。

とは言え、新たな技術を手に入れたから、と基礎がおろそかになってはならないことはよくわかっているので、そうするつもりはない。

なんだかんだ言って、俺がまだまだなことは、マルトの地下でのラウラやイザーク、それにロレーヌの力を見て分かったからな……。

あの中では間違いなく、俺が最弱だった。

せいぜい、身体能力と再生能力を駆使すればロレーヌに勝てるかもしれない、と言ったところだっただろう。

それにしたって、ロレーヌは俺が 吸血鬼(ヴァンパイア) もどきであることは分かっているのだから、それこそ一切動けなくなるまで魔術を叩き込み続けるだろうから、やられたふりをして近づく、なんて方法も使えない。

ダメだな。ロレーヌにもまだ全然勝てなさそうだ……。

そんなことを考えつつ、俺はイザークの言葉に頷く。

「そうだな。今まで、《存在進化》したらロレーヌに一通り見てもらって来たから……今回もそうした方が、違いが分かりやすいだろう。それに、種族についても考察してくれる。俺も魔物についてはそれなりに知っているつもりだが、専門家にはやっぱり敵わないからな」

「ロレーヌさんは魔物学の学者でもあるそうですね。私も自らの種族についてならともかく、他の魔物についてはそれなりですので……では、ロレーヌさんを呼びに参りましょうか」

そして、俺たちは部屋を出て、図書室へと向かった。

◇◆◇◆◇

「おお、レント。目が覚めたか。体の方はどうだ? 不調はないか?」

ロレーヌが、大量の書籍を積み上げたテーブルを背景に、図書室に入って来た俺たちの方を振り向いてそう言った。

図書にかじりついて離れない性質の彼女も、一応俺のことは頭の隅に置いておいてくれたらしい。

俺は近づいて、言う。

「ああ。今のところは特に問題はなさそうだ……しかしそれにしても凄い本だな」

「これでもまだ、読みたいものの一部にすぎん。ここは凄いな……これだけの蔵書がある図書室など、そうそうないぞ。帝都の貴族の屋敷ですら、ここまでのものは持っていまい。しかも、いずれも貴重なものばかり……。ここに住みたいくらいだ」

それはやめろ、と言いたいところだが、ラウラやイザークなら許可しかねないのが怖い。

それに、ロレーヌの家は、家としての機能よりも本の置き場所としての機能の方が大きいからな……。

ここに住もうが自宅に住もうが感覚としては似たようなものなのかもしれなかった。

「ま、冗談は置いておこう。それよりも、何か用があってきたんだろう?」

流石のロレーヌでも本気で言っていたわけではないらしく、微笑みながらそう言って来た。

……先ほどの目は、半分くらいは本気だったような気がするが、そこを突っ込むのはダメな気がする。

俺は気づかなかったふりをして、ロレーヌに言う。

「ああ。イザークが、俺やリナが 吸血鬼(ヴァンパイア) だった場合、どの程度の格なのかを見てくれるっていうからさ。それに、 吸血鬼(ヴァンパイア) の技もいくつか教えてくれるって。これから庭で色々と試してみるから、ロレーヌにも見てもらって考察とかしてもらえたらとな」

「ほう……やはり、お前は 吸血鬼(ヴァンパイア) ではないのだな。近縁種か亜種か……。その辺りについて、イザーク殿と色々と話してみるのも面白そうだ」

ロレーヌもなんとなく、そう思ってはいたようだ。

まぁ、そんな話は何度かしているし、特に不思議でもない。

「私はロレーヌさんほど魔物について詳しいわけではないので、ご期待にそえるかどうかは分かりかねますが……」

イザークは遠慮気味にそう言うが、ロレーヌからしてみれば 吸血鬼(ヴァンパイア) 本人から 吸血鬼(ヴァンパイア) の話を聞けるのだ。

その時点ですでに期待に沿っていると言えば沿っている。

そもそも、最近周りに 吸血鬼(ヴァンパイア) が溢れている状況で忘れがちだが、 吸血鬼(ヴァンパイア) なんてもの、普通は冒険者をやっていても中々遭遇できるものではない。

下級吸血鬼(レッサー・ヴァンパイア) ですらそうなのに、 中級吸血鬼(ミドル・ヴァンパイア) 以上のものとなると、どれだけ厳しいかが分かろうというものだろう。

だからロレーヌはイザークに、

「高位の 吸血鬼(ヴァンパイア) である貴方から話を聞ける。それがどれだけ私にとって得難い機会か。ありがたく思っていますよ、イザーク殿」

そう言ったのだった。