軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第336話 数々の秘密と気絶

……これでいいのだろうか?

大体、リナの血液のうち、全体の一割くらいを吸い、俺の血液を同じくらい流し込んだかな、という感覚である。

エーデルのときと同じように、何かがつながった、という感じもあるが、リナの意識がないからなのか、あのときほどしっかりとした繋がりは感じない。

正しいのかどうか不安になって、ラウラを見ると、ラウラは頷きながら言う。

「……大丈夫です。問題ありません。これで、リナさんはシュミニの眷属からレントさんのそれへと変わりました。あとは……それ、ですね……」

リナの手に嵌っている《迷宮核》を見つめながらラウラは言う。

眷属にすることは俺にも可能だったようだが、《迷宮核》については一体どうすればいいのかまるで分からない。

触れれば支配できる、ということだったが、この《迷宮核》はリナに完全に一体化しているように見える。

普通の方法では無理なのではないか、そんな感じがするのだ。

「どうするんだ?」

俺がラウラにそう尋ねると、ラウラは、

「それほど難しい話ではないですよ。《迷宮核》を取り込めばいいだけですので。でも、レントさんには難しいでしょう。もちろん、ロレーヌさんにもイザークにも。普通のものならともかく、リナさんと一体化してしまっているこれを取り込むのは……適当に教えれば出来るというものでもないので……。私がやるしかありませんね。もう少し時間があればよかったのですが……」

そう言った。

さらに、

「レントさん、ちょっとこちらを向いてください」

と言ったので、俺が首を傾げつつもラウラの方を向くと、ラウラはその手首をいきなり掻っ切って、俺の口をこじ開けて血を流し込んできた。

俺が驚きつつも、なんだか血が口に入ると飲み込んでしまう人血大好き 吸血鬼(ヴァンパイア) の業を感じていると、ラウラはそれを確認したのち、非常に申し訳なさそうな表情で、

「……すみません。ちょっと時間がないもので乱暴な感じで」

と言い、腕をひっこめた。

当然、その腕の傷は即座に再生している。

俺やイザークよりも遥かに早い。

手品みたいに見えるくらいだ……凄いな。

時間がないというのは迷宮化が進んでいることだろうが、なぜ、こんなことを今するのか……。

分からない。

分からないが、ともかく、ラウラはリナの前に進み出て、彼女の左手、つまりは《迷宮核》の嵌っている方の腕をとって、《迷宮核》に触れる。

それから、俺の方を見て、

「レントさん。色々と説明したいことがあったのですが……少し難しそうです。ただ、とりあえず各地の神殿や遺跡を回って、古い時代の伝承を集めてみてください。そうすれば、貴方の目的に近づくでしょう。 神銀(ミスリル) 級になる、という夢にも通じますし、一石二鳥ですね」

などという。

次にロレーヌの方を見て、

「ロレーヌさん。出来ることなら、レントさんのサポートをしてあげてください。貴方の学識は、必ずレントさんの力になるでしょうから。それと……悩んでいることがあるかもしれませんが、どうしようもなくなったら私が解決して差し上げますので、あまり深く考えすぎないことです」

と意味ありげなことを言った。

そして最後にイザークの方を向いて、

「……これで四つ目です。流石に限界が近いので、おそらく私は眠ります。あとのことは頼みましたよ」

と言い、そしてもう一度リナの《迷宮核》を見つめると、そこから黒い光が漏れ出した。

それはリナを包み込んで、決して離そうとしないように見えたが、ラウラがそれを自らの身へと徐々に取り込んでいく。

それから、ラウラの胸の辺りにすべての黒い光が取り込まれると、徐々にその輝きは失われ、そしてリナの左手についていた《迷宮核》はその姿を消し、空中にずっと浮き続けていたリナは地面にふわりと横になった。

《迷宮核》はもう、ラウラに移った、ということなのだろう。

そしてその瞬間ぐらり、とラウラの体が傾いていき、倒れる、と思ったので支えようと踏み出そうとしたら、俺よりも遥かに速い速度でイザークがラウラの肩と腰を支えていた。

流石だ、と思いながら、俺とロレーヌはラウラとリナの下に近づく。

リナはしっかりと息をしており、また先ほどよりも強く繋がりを感じる。

リナの意識の問題というより、《迷宮核》が何らかの理由で阻害していた、という感じだったのかもしれない。

ラウラの方は……。

「……眠っている、のか?」

目を閉じて、吐息を立てていた。

人形のような容姿をしているが、全く動かなくなるとそれが余計に強調される。

まるで美しい死体のようだが、《 不死者(アンデッド) 》なのだから似たようなものなのは間違いないだろう。

だったら呼吸は必要なのか、という感じだが、血も流れているし、色々突っ込みだすとキリがない。

ラウラは擬態だ、と言っていたので、まぁ、そういうことなのだろう。

イザークは、俺の言葉に頷き、答える。

「……そのようですね。いつ目覚めるのかは全く予想がつきませんが……」

「どういうことだ?」

「主は……《迷宮核》を限度を超えて取り込んでしまっているのです。ちょうど、先ほどのリナさんのような状態になってしまった、ということです」

「限度って……」

ラウラは《迷宮核》を支配するには格が必要だ、というような話をしていたが、 下級吸血鬼(レッサー・ヴァンパイア) のリナでギリギリくらいだ、というようなことも言っていた。

だとすれば、それよりもずっと上位であろう 吸血鬼(ヴァンパイア) のラウラなら、問題ないのではないだろうか。

俺はそんなことを言ったが、しかしイザークは首を振って、

「主が支配している《迷宮核》の数は、今回のものも含めると、全部で四つです。いくらなんでも……ということでしょう」

「それはどういう……ッ!?」

質問を続けようとしたところで、俺は急激なめまいを感じた。

なんだ、これは……。

「レント!?」

ロレーヌが近づいてきて、倒れそうな俺を支える。

しかし、めまいは収まらない。

「……先ほどの、主の血ですね。レントさん。大丈夫です。ゆっくり眠ってください。《存在進化》ですよ……」

そんな風に言うイザークの声が徐々に遠ざかっていき、俺の意識は暗闇に落ちた。