軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第282話 数々の秘密と最後

あと残っているのは、魔力、気、聖気をすべてつぎ込んだ、聖魔気融合術と言うべきあの技だ。

ただ、大きな問題があって……あれは武器の方が耐えられないからそうそう使えない。

今使ってるクロープが俺のために誂えてくれた剣でも使うなと言われてしまっているくらいだ。

しかし、それでも切り札であるのは間違いなく、いざというときのために、高値が付いていたが魔力と気に耐えられる武器のストックは一応持っている。

片手剣だと高いから、短剣だけどな。

それでも、あれこそ当たれば致命傷間違いない攻撃となる、紛れもない切り札であるのだ。

だからこそ、一応使えるように準備は常にしていたわけだ。

一度使えばその武器は間違いなく砕けるがゆえに、コストを考えるとまず使いたくないが、ここは、使いどころだろう。

問題があるとすればそんな隙をカピタンが与えてくれるかだが、そこはもう頑張るしかない。

ダメな時はダメな時だ。

羽も出したし、すべて出し切って一撃入れることを狙おう。

挙動を羽の力も利用したものへと変える。

地面を走り回っていただけのときより、立体的に、素早くなっていく俺の動き。

しかしそれでもカピタンは対応している。

やはりというべきか、流石と言うべきか。

俺はそんなカピタンに空を飛び、羽の推進力を利用して突っ込み、剣を振るうけれど、そんな俺の動きを確かに捉えているのだ。

……まぁ、考えてみれば当たり前かもしれない。

カピタンの本業は狩人だ。

空を飛ぶ動物や魔物とも戦って来ている。

ちょっと空を飛んだくらいでは……ということなのだろう。

俺も俺で、そこまでうまく空中機動が出来ているわけでもない。

つい最近まで地べた這いずる人間だったのだから、仕方がない話だ。

練習していなかったわけではないのだが、生まれつき空を飛べる生き物たちを相手にしてきたカピタンにとっては単純な動きに見えるのかもしれない。

けれど、俺は別にこれだけでカピタンをどうこうできるとは考えてはいない。

俺がしたいのは、あくまで聖気、魔力、気をつぎ込んだ一撃を叩き込むことなのだ。

剣に聖気、魔力、気のすべてを注ぎ込むのは、普通に魔力や気だけを武器に注ぎ込むよりも時間がかかるし、カピタンはいずれの力の発動も感覚的に理解しているようなので、あまり近くでそれをやっていると色々気づかれる可能性もある。

その点、羽を使って空を飛ぶと、気も魔力も使うために、いい目くらましになると考えたのだ。

実際、カピタンは空を飛んでいること自体に驚いて、俺が更にまだ何かをやるつもりであることには気づいていないようである。

それでも、警戒は抜けていないので、こちらも気が抜けないけど。

魔力も気も垂れ流しに近い位に使うので、余裕もどんどんなくなっていく。

終局は近いな……。

「……ったく、空まで飛びやがって……ガルブの婆さんがお前が変わったっていうわけだ。だが、ただの奇策でどうにかなるほど俺は甘くはないぞ。まだ先があるなら、出して来い!」

むささびのごとく空を飛び回りながら剣に力を込めている俺に、カピタンがそう叫ぶ。

その言葉に俺は思う。

これが、最後の打ち込みだろう。

こんなにも消耗する戦いは魔物になってから初めてだな。

色々自惚れていた部分があったと改めて理解できた。

相手があまりにも経験豊富過ぎたから。

おそらく、単純な自力では俺の方がはるかに上だろう。

ただ、技術や経験が全く違って、俺はそれに翻弄され続けた。

元々力押しよりは工夫で戦うタイプだったのに、そういうところを忘れつつあったな。

十年銅級でい続けて、全然上に上がれなくて、自分でも分かっていないところで腐りつつあったのかもしれない。

地力は確かに増えていなかったけれど、まだ出来る工夫が、あの頃にもあったかもしれない。

初心は、忘れてはならないなと、今回思った。

とは言え、今は力押ししか方法がないけどな。

工夫しまくってすべて防がれたのだから。

これが通用しなかったらもう俺の持つ力はほとんどすべてすっからかんだ。

効けば一、二度追撃するくらいは出来るだろうが、効かなければそこで終わる。

そんな感じだ。

俺は、短剣に十分な力を注いだのを確認し、背に気の力を籠める。

基本的に直線運動しか出来ないので、カピタンに迫るためには彼が反応できないレベルの速度を出すしかない。

この羽の使い方も……もう少し研究するべきだな。

今までの使い方でも十分に強力だったから、それも怠ってしまっていた。

出来ることはすべて把握する、それくらいの努力はしなければならなかった。

力の身についていく速度が今までとは段違いの速度で、工夫している間もなく終わってしまっていた。

それが俺の凡人の凡人たるゆえんかも知れない……意識を変えなければ。

戦いが終わった後で、カピタンやガルブにもよく相談してみよう。

彼らならいいアドバイスをくれるだろう。

そのために、今、すべてを出し切ることだ。

何か叫んでから向かおうか……と思ったが、それをしたら間違いなくカピタンなら避けるだろう。

あえて無言で、突っ込むことにする。

羽に籠もった気が、強力な推力を産み、周囲の景色が一瞬にして変わる。

魔物の俺ですら、どれほどの速度が出たのか認識する間もなく、カピタンの前にいたのだ。

カピタンにも把握できなかったようで、瞬間移動のように目の前に現れた俺に目を見開き、しかし驚いているだけでは終わらずに、そのときにはすでに剣鉈を俺の方に動かしている。

もちろん、俺も剣を……短剣の方を前に向けて突き出していた。

そして、カピタンの剣鉈と、俺の短剣の刃が合わさる。

カピタンにとっては、それは避けるべきことだっただろう。

それを分かっていて、出さざるを得ないところに追い込めた。

つまり、俺の作戦勝ち、ということだ。

避けられたらもう、俺は地面に斜めの穴を作ってめり込んでいただろうけどな。

というか、こんな速度を羽の力で出したことなかったから、ここまでとは予想外だった。

カピタンなら防いでくれると思っていたからこそ出せる力だった。

他の相手……人間にしろ、魔物にしろこの速度でぶつかったら爆散させたり貫通させたりしてしまいそうだ。

それから、俺の短剣が、カピタンの剣鉈に命中すると、カピタンの剣鉈がキシキシとした、普通にはあり得ない音を立て始める。

剣鉈の柄の部分と、切っ先の部分が螺旋を描くように曲がり初め、そしてぎゅるぎゅると刃の中心に向かって圧縮されはじめた。

それにすぐに気づいたカピタンは、剣鉈を持っていることが危険だと気づいたようで、手を離す。

そうなるだろうと予測していた俺は、バキバキとひびが入りつつある短剣を手放し、純粋な拳を前に突き出した。

それを見たカピタンは少し口元を引き上げ、俺とは反対の拳を突き出してくる。