軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第272話 数々の秘密と地図

「戻って来たか」

しゅん、と周囲の景色が完全に変わって、周りは先ほどまでいた下水道の中ではなく、洞窟の中へと変わった。

あの滅びた都市のある巨大な空洞、その壁にあるいくつもの洞窟の中の一つだ。

王都からは、やってきたときとは異なり、四人で連れ立って出たが、特に兵士に見とがめられることも止められることもなかった。

そもそも、王都を出るにあたっては入るときよりもよほど簡単で、身分証すら出すことなく終わった。

我が国のことながらこれで大丈夫なのか、と思うが、別に貴族街に来たわけでもない人間の出入り、特に出立については気にしないということなのだろう。

入るときしっかり検査しているから、出る分にはご勝手に、というわけだ。

やっぱり緩すぎる。

まぁ、ヤーランはそんな国だからこそ田舎国家なのだけれど。

「王都から帝国の迷宮へ、そしてここから更に転移して、ハトハラーに戻るわけか……。改めて考えると物凄い距離を一瞬で旅しているのだな。私たちは」

しみじみとした声でそう言うロレーヌ。

しかし、その言葉に、ん?と思う。

別に内容がおかしいとかそういうわけではない。

そうではなく……。

「迷宮、か。そう言えば、ここでも《アカシアの地図》は使えるのかな?」

そう思ったのだ。

あれは訪れた迷宮を自動的にマッピングしてくれる、という話で、それがありとあらゆる迷宮に適用されるのであれば、ここ帝国の《古き虫の迷宮》第六十層《善王フェルトの地下都市》もマッピングされているはずだ。

とは言え、六十層だけマッピングされていても意味はないかもしれないが。

そもそも上から降りてくる手段がないからなぁ……。

しかし、地下都市自体を歩き回る分には意味はあるか。

「言われてみると……確認した方がいいかもな。私も興味がある」

ロレーヌがそう答える。

ガルブとカピタンは不思議そうな顔で、

「《アカシアの地図》? それは何だい?」

とガルブが尋ねて来た。

これについては別に隠す必要はないだろうと俺は言う。

「あぁ、迷宮潜ってたら変な人物からもらった魔道具だよ。かなり便利なんで重宝してるんだ……ほら、これだよ」

そう言って、魔法の袋からくるくると巻かれた古びた羊皮紙を俺は取り出して見せる。

「……ふむ。何の変哲もない羊皮紙に見えるが」

カピタンが腕組をしながらそう言ったので、俺はその用途を説明する。

「確かに見た目はな。でも、効果はすごいぞ。なにせ、歩いただけで迷宮の地図が正確にマッピングされるんだ。冒険者にとってこれほど便利な道具はない」

「なにっ……それは、俺も欲しいな。マルトではそんなものが普通に売っているのか?」

俺の説明不足のゆえに、カピタンは勘違いしたようだ。

カピタンも転移魔法陣を使って色々なところに行っているからか、迷宮にはそれなりに潜っているのだろう。

これの便利さがよくわかるようだ。

しかし、その期待には応えられないのである。ごめんなさい。

俺は首を振って、

「まさか。マルトは王都より田舎なんだぞ。そんなもの誰かが発明したなら、王都でもすでに売ってるだろうさ。そうじゃなくて、本当にただもらったんだ。そのくれた人物が相当変わってて……このローブも一緒にもらったんだけど、ロレーヌに見てもらったらそうそう作れるようなものじゃないって話だった。この地図も当然、そういう品だろう」

そう答えると、カピタンはかなりがっくりとした表情で、

「……よし、今度それをかけて決闘をしよう」

などと言い出す。

俺は慌てて、

「いやいやいや、勝てないから。毟られるだけだからやめてくれ!」

と叫ぶも、

「ロレーヌの幻影魔術の中のお前を見る限り、そうでもないと思うが。流石に俺とて自分より遥かに弱い相手に勝負だ、などとは言わないぞ」

と不意打ちでさらっと褒められる。

本当に?

俺ってちょっとは強くなったのかな……カピタンの目から見ても。

なんという気分になりかけるが、ちらりとカピタンの顔を見ると、少し悪い顔をしているのが見えたので、

「……罠か。勘弁してくれ。無理無理。無理だって」

と冷静に拒否した。

カピタンも基本的には冗談のつもりだったようで、けれど、

「わかったよ……その地図は諦めよう。ただ、手合せはしてもらうからな? どれだけ強くなったかは見なければならない。教えたいこともあるからな……」

と言って来た。

何も賭けないと言うのなら、流石に断れず、

「はぁ……わかった。手加減はしてくれ……」

と答えるしか俺にはなかった。

それから、改めて《アカシアの地図》である。

ぺラリと開いてみてみると……。

「お、やはりここでも使えるようだな。しっかりとマッピングされている……しかも 黒王虎(シャホール・メレフナメル) に乗っかって来た道のりも記載されているようだな。乗り物に乗ってもいいのか……」

ロレーヌが地図を見て、即座にそう分析した。

確かに、彼女の言う通りの地図になっている。

大体こういう品と言うのは自力で歩かないといけないとか、融通の利かない制限があったりするものだからな。

そういうものが一切ないように思える《アカシアの地図》は、やはり魔道具として恐ろしく有用であるのは間違いないだろう。

量産出来たらボロ儲けなんだが……ロレーヌをして、製法が分からない、ただ完成品を見ただけで作るのは不可能に近いと言った品だ。

魔術も錬金術も初心者の俺に、量産化など到底夢のまた夢に過ぎない。

ま、それはいいとして……。

黒王虎(シャホール・メレフナメル) に乗って進んだ道のりが記載されている以上に注目すべき事実がよく見ると明らかになった。

というのは、

「……この《至ハトハラー周辺古代王国砦跡》とか《至王都ヴィステルヤ建国期下水道》とか書いてあるのは……」

俺がそう言うと、ガルブが、

「まぁ、間違いなく転移魔法陣の出口だろうね。驚いた。そんなものまで勝手にマッピングする魔道具とは……」