軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第255話 王都ヴィステルヤと依頼の理由

オーグリー・アルズ。

都市マルトでソロで活動していた冒険者だ。

以前から俺とは顔見知りで、ソロ同士結構仲良くしていた記憶がある。

流石にこの派手な格好と仮面……というか、今は布か。布で顔が隠されている状態の俺を見て、レント・ファイナだとは気づかないようで助かった。

ロレーヌの化けた姿も判別できないようだ。

まぁ、二人そろってほぼ別人だから仕方がないだろう。

そして俺たちにとっては助かる。

それにしても、銀級か。

マルトにいたときは、銅級上位冒険者だったはずだ。

それがいつの間に銀級に……。

まぁ、実力はもともとあったし、ソロで変人と言うこと以外は誠実な奴だったからなれててもそんなにおかしくはないのだが、先を越されたようでなんとなく嫉妬心が……。

俺も早いところ銀級になりたいが、まだ依頼達成件数が足りない。

ま、それはいいか。

「……それで、そのアルズさんが俺に何か用か?」

俺がオーグリーに、あえて心理的距離を強調しようとファミリーネームの方でそう呼びかければ、ひらひらと金色に光る手袋を身に着けた手を振って、

「やだなぁ、僕と君の仲じゃないか。アルズなんて呼ばないで、オーグリーと呼んでくれよ。もちろん、呼び捨てでオーケーさ。世界はそれで平和だ! ……ところで、君の名前は何だっけ?」

僕と君の仲、と言われたあたりでちょっとびくっとしたが、最後に名前を聞かれたのでただノリで言っているだけだと分かりホッとする。

こいつは初対面でもこういう対応をする奴で、色々と分かりにくいのだ。

名前……どうしたもんか、と思ってロレーヌを見ると、何か適当な名前を言え、という顔をしていた。

確かにその方が良いだろうな……レントだと色々気づかれる気がする。

変な奴の割に妙に勘が鋭く、また意外とものを見ている人間なのでそういう危険はあまり踏まない方が良いタイプなのだ。

「パープルだ」

着ているローブが紫だからという安易なネーミングである。

あからさまな偽名のようにも思うが、むしろ名前がそうだから服もその色にしているんだ、という言い訳も通る……かもしれないしな。

実際世の中にいない名前と言う訳でもないし、セーフだろう。

ロレーヌの顔を見ると呆れているが。

「パープルか、なるほど、紫色の服がかっこいいもんね! そっちの女性は……」

オーグリーはそう言って、ロレーヌの方を見る。

「私はこの人の連れで、オルガと言います。よろしくお願いしますわ」

ロレーヌはオーグリーの視線にそう答えた。

おれと違って極めて無難な偽名である。

言葉遣いもいつもとは大幅に違う。

さらに動きもまるで異なる。

ロレーヌは自己紹介をしながら、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。

それを見たオーグリーは、

「なるほど、恋人同士かご夫婦と言うことかな? 確かに仲が良さそうだ。パープル、君はこんな美しい女性を妻に出来るなんて、なんて幸福な奴なんだ!」

と大げさに驚いて見せた。

いやいや、全然違うんですけど……。

とは言いにくく、ロレーヌも特に否定せずにニコニコしている。

まぁ……どうせ全部嘘なんだから、もうどこまでも付き合った方が楽なのかもしれないな、と頭を切り替えた俺は、素直に頷いて、

「まぁな。彼女を妻にするのには苦労した。これほど美しく、気立てもよく、そして共にいて居心地のいい女性は中々いない。俺は幸せ者だと思っているよ……それで、今回は新婚旅行気分で帝国からここにやってきたんだ。夫婦水入らずでな。ヤーランの王都は帝国の帝都とは違って、自然を取り入れた美しい街並みをしていると聞くし、見て回りたいと思っている。あぁ、そんなことを話しているうちに時間もなくなってきたな……そろそろ俺たちはここで失礼するよ……」

どうにか逃げられる方法を考えてなんとか絞り出したのがその台詞だった。

心なしか、色々俺が言っている間にロレーヌの腕の絡ませ具合が強くなったような気がするが、気のせいだろう。

それから、さっさとその場を去ろうと歩き出した俺の腕、ロレーヌが絡ませている方とは反対側の手をがしっ、とオーグリーが掴んだ。

「ちょっと待った! まだ本題の話は終わっていないよ! まったく、あまりにもすんなり歩き出すから一瞬そのまま見送りそうになったよ……そうじゃなくて、僕の話を聞いてくれないかい?」

……どうやら逃げられないらしい。

無理に引きはがして逃げてもいいが、そうなるとこいつは意地でも追いかけてくるタイプだからな……。

平和的にさよなら出来ない以上、聞くしかないだろう。

服装が若干派手、くらいの注目のされ方ならともかく、突然鬼ごっこを始めたおかしな冒険者たちがいる、みたいな騒ぎを起こして目立ちたくない。

「……分かった。それで? 何の用があったんだ?」

俺が聞く姿勢を見せたことにほっとオーグリーは、大体予想通りのことを口にする。

「いや、そこに張ってある依頼を簡単だと言うからさ。僕と一緒に依頼を受けないかと思って。なに、別に依頼料については君の全取りでいい。魔物の露払いも、僕はこれで銀級だからね。引き受けよう。君には薬草の見分けだけ受け持ってくれればいいんだ。どうかな、悪くないと思うんだけど……?」

確かに、俺がこの 冒険者組合(ギルド) で依頼を受けたくない、という条件を考慮に入れなければこれ以上ないほどの好条件だと言えるだろう。

が、しかしオーグリーがたかがこの程度の依頼にそこまでする理由が見えない。

「……なぜ、そこまでするんだ?」

素直にそう尋ねてみると、オーグリーは答えた。

「そんなの決まっているじゃないか! 服のためさ!」

それは、予想外の台詞だった。

俺は首を傾げる。

「……何の話だ?」

「え、もちろん、この薬草の採取依頼の話だよ」

「それでなんで服の話が……」

「この依頼票の依頼主の名前を見てみなよ」

「……ミシェル服飾店」

「そうそう、僕、そこに新しい衣装を注文したんだけど、染色がちょっと特殊でね……その薬草がどうしても必要なんだ! 正直、頼む前は割と簡単に手に入ると思ってたんだけど、実際に頼んでみたら王都ではかなり手に入れるのが難しいって話でさ。マルト基準で考えていたのがよくなかったよ……。取り寄せも出来るけど、一月はかかると言われてしまって……。僕は一週間以内に新しい衣装に袖を通したいんだ! それなのに手に入らないなんて、我慢できない!」