軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第239話 山奥の村ハトハラーと鑑定神

「……あ、やばっ」

人形が唐突にそんなことを言い出したので、何があったのかと俺とロレーヌは首を傾げる。

すると、人形は、

「そろそろ時間切れみたい。今度はもっといい素材で依代作ってね。人型をしてると降りやすいよ。場所はどこでもいいから呼んでくれれば降りるよ」

「ちょっと待て! せめて名前くらい……」

そう叫んだが、

「名前? 誰もつけてくれなかったからないなぁ。ヴィロでもゲトでも適当に呼んでよ。そいじゃあね~」

と軽く言い、直後、人形から蒸気のようなものが上がり、そして一瞬ふっと空中に何者かの姿が浮かび、空気に溶けるように消えていった。

さらに人形の方は、数秒で黒ずみ、さらにはぼろぼろと砂になって崩れていく。

「……こ、これは……どうにかならないのか、レント!」

ロレーヌがなぜか慌てたようにそんなことを言うが、俺にどうにかできるはずもない。

「……別にただの人形なんだし、いいんじゃないか?」

そう言うと、ロレーヌは、

「いいわけないだろう! あぁっ……だめだ。もう完全に崩れた……」

さらさらとした砂が地面に落ちた時点で諦めたらしく、がっくりと崩れ落ちた。

俺はロレーヌに言う。

「……気に入ってたのか? 別にあれくらい、いくらでも作ってやるぞ。それに、さっきの神霊はまた依代を作れとかなんとか言ってたし」

それを聞いてロレーヌの表情は少し明るくなり、

「……そうか。それなら、いいか……しかし依代というが、人形がそうだということかな?」

真面目にそう訪ねてきた。

俺は少し考えてから言う。

「あの感じだとそう言うことだろう。ただ、魔力があるものじゃないと降りられない、という話もしてたから、素材から考えて作らないといけなそうだが……それで、作ったら適当に呼べば降りるって話だったな」

本当に降りてくるのかどうかは分からないが、やってみるしかないだろう。

まだ聞き足りないことが色々あるのだ。

場所はどこでもいい、という話だったから、このハトハラーでなくてもいいということだろう。

神々は本来どこにでもいて、どこにでもいないものだと言われている。

つまり場所は本当は関係ない。

ただ、祠や神殿というのは、彼らが住むところと俺たちが住むところをつなぐ扉のようなもので、神々が降りやすい、とは聞いたことがある。

その辺りの話は俺よりも宗教団体に所属する皆様の領分だろうが。

誰かに聞けば詳しいことも分かるだろう。

幸運なのか、それとも不運なのか、宗教団体の聖職者たちには妙に知り合いが何人かいる。

リリアンとかミュリアスとか……ニヴもいれていいのかな。いや、あいつは所属しているわけじゃなくて、むしろ利用している感じだったから違うか……でも神とか霊とかに詳しそうという意味では同じかも知れない。

あんまり頼りたくないけど。

ロレーヌは続ける。

「しかし、ヴィロとかゲトとかは……あれか、ヴィロゲトの分霊だったから、ということか。いい加減すぎないか?」

名前がないからそんな風にでもなんでも呼べばいい、とあの精霊は言っていた。

ヴィロゲトは植物の神だが、その分霊だから名前も分けてもらえばいい、というのは確かに安直に過ぎる。

神々と言うのはみんな、ああいうものなのだろうか?

俺は初めてそんな存在と接触したから今一感覚がつかめないが……恐ろしいほどに神々しさを感じない。

神より精霊だ、と言っていたから、そこまで高位の存在ではないためにそう思ってしまうだけだろうか。

それともすべての神はああいう軽い性格なのだろうか……それはやだなぁ、と思わないでもない。

そう思った俺は、ストレートにロレーヌに疑問をぶつける。

「かなりいい加減だと思うが……神々っていうのはみんなああいうものなのかな?」

これにロレーヌは少し悩み、

「書物や言い伝えでは、神々は威厳があり、神々しく重厚な存在感を持った、遥か高いところにおわす不可侵の存在、という感じだったが……流石にさっきの方にはそういったものは失礼ながら感じないな」

別に特定の信仰を持ってはいないとはいえ、神に対する多少の畏敬はあるらしい。

言葉を選びながらも、全然神々しくなかった、と意訳で言ったロレーヌであった。

そして俺もそれは同感である。

「本人……本神?に言っても、たしかにね、とか言いそうだ……。ともかく、今度、人形を作ろう。もっと高い魔力を含んだ素材から作った方がいいだろうな。依代に降りるのも、なんだか努力してとどまっているような口調だったし」

また同じくらいの素材で作って、ほんの数分でどこかに行かれてはたまったものではない。

迷宮で手に入れるなり、どこかで買うなりして 灌木霊(シュラブス・エント) の素材より質の高い素材を手に入れる必要があるだろう。

「そうだな……そうなると、マルトに戻ってから、ということになるか。ただ、無駄足ではなかったな。お前の仮面のことも聞けたし、鑑定神のところに行けば神自ら見てくれる可能性もあるということだった」

「本当なのか、という気がするけどな。神殿にいる鑑定士たちに見られて終わりじゃ、困る」

鑑定神は、ものの価値や評価などを司る神だと言われており、商人や貴族が主に信仰している。

鑑定神を信仰する神官たちは、皆、目利きの出来る鑑定士たちであり、日々、自分の持つものの価値を判定してもらおうとする者たちで混んでいるらしい。

行ったことは無いが、俺のつけている仮面がどういうものか判定してもらうにはうってつけの場所に思える。

ただ、問題がある。

それは、鑑定神を信仰する神官たちは、呪物についてはかなり厳しい態度をとっている、ということだ。

鑑定に持ち込むことは出来るが、それが呪物だと明らかになった場合には、何が何でも浄化したがる人々で……。

それがため、呪物をただ所有していたい、という難儀な好みを持つ人々は絶対にもっていかないと言われる。

俺もだから無理だと思っていた。

が、さっきの話を聞く限り、俺の仮面は呪物と言うわけではなく、むしろ神具だという。

それならば別に鑑定してもらいに行っても、問題ないのではないだろうか。

一つ問題があるとすれば、俺の正体がばれないかだが、鑑定神の神殿の鑑定士たちは、膨大な知識と経験に基づく純粋な目利きでもって鑑定をするのであって、何かしら一目でものを見て何か判別することが出来る特殊能力を持っているわけではない。

したがって、俺を見ただけで、 吸血鬼(ヴァンパイア) か人かを区別できるわけでもなく、そうである以上は基本的に街中にいるのと一緒で、問題ないだろう。