軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話 下級吸血鬼と使い走り

「そう言えば、不思議な縁で思い出したんだが……」

「なんですか?」

そうだ、リナとの縁は、実のところ彼女と彼女のパーティメンバーだけではない。

そのことを思い出した俺は言う。

「以前、鍛冶屋に行ったときに、店から出るとイドレス・ローグという人物に会ったんだ。リナ・ローグを探している……と言っていたが、もしかして……」

あの男は冒険者をやっている妹リナ・ローグを探している、というようなことを言っていたが、リナとは名前が違う。

したがって、別人を探しているのだろう、と考えることも出来たが、リナという名前で最近この街に来た冒険者と言われて浮かぶのは今俺の目の前にいるリナだけだからな。

おそらくは、このリナのことを言っていると言うことで正しいはずだ、と思っての言葉だった。

案の定、リナは俺が挙げた名前に驚いたように目を見開いて、

「……それは、兄です。まさか探しに来るなんて……」

「……やっぱりか。まぁ、一応安心しといてくれ。リナのことは言ってないからな。なんだか騎士様っぽい人だったが、こういう田舎町での人探しは向いてなさそうだったぞ」

思い出してみるに、かなり都会的な人物で、エリート街道を突っ走っている雰囲気のある男だった。

性質もよさそうで、誠実そうに見えた。

実直に仕事に取り組みそうな男だったが、それだけにこのマルトのような雑多な辺境都市においては若干浮くのは否めない。

今もたまにあの男が歩いているのは見かけるのは、それだけマルトに馴染めていない雰囲気が凄いからだ。

女たちの視線も結構集めているしな。

騎士ってやつはもてるのさ。うらやましいなんて思わないぞ。くそう。

しかしそれだけ出歩いているのに、リナのことをいまだに見つけられないのは、情報集めがそれほどうまくないからだろう。

マルトは田舎とはいえ、これでしっかりとした都市だからな。

人も多く、なんとなく探しているだけでは人探しなど無理だ。

かといって、都会の騎士様がこんな辺境で使える情報源など酒場くらいしかないからな。

リナはそういう場所を利用しなさそうだし、利用するような強面おっさん冒険者たちがリナと仲いいわけもない。

名前を言われてもピンとこないに決まっている。

かといって、俺と会った時のように鍛冶屋とか店を回っても、顧客の情報をぺらぺら喋る奴も少ないからな。

特に、都会からやってきた騎士に対しては用心深くなってしまうもので、出来る限り情報を渡さないで早く帰ってもらおう、と考えるのが大半だろう。

そういった諸々のせいで、イドレスの人探しは極めて難航しているようだった。

なんで見てきたかのように正確に言えるかと言えば、そいつはエーデル情報網の力である。

最近、エーデルはこの都市マルトの 小鼠(プチ・スリ) の半分近くを支配下に置きつつあるようで、もはやマルト全域に耳があるようなもんだ。

調べたいことをエーデルに伝えれば、一時間もせずにその答えが伝わるほどである。

ただ、ラトゥール家周辺は近付くのも無理らしいんだけどな。

あの家は不思議過ぎる。

まぁ、大量の魔道具もあるし、そういう妨害もあるのだろう。

さすがに 小鼠(プチ・スリ) 程度の小魔物では限界があるということだ。

それでも十分すぎるほど役に立っているのだが。

リナは、俺の言葉に少し笑って、

「兄は根っからの騎士ですからね。ただ、融通が利かないってわけでもないんです。実家にいたときは、私をいろんなところに連れてってくれましたから」

それは少し意外だった。

話から察するに、リナの実家はおそらく貴族の家だ。

騎士、と言っているしな。

となると、リナはもともと貴族のご令嬢だったわけで……。

まぁ、それを考えるとそもそもこんな辺境都市で冒険者をやっていること自体おかしいんだが、それは置いておこう。

ともかく、貴族の令嬢をそんなにいろんなところに連れ歩くのは変わっているのは間違いない。

「いい兄だったのか?」

「そうですね。私にとっては、そのおかげで今の私がありますから……」

「冒険者になったのも、その兄がきっかけか」

「ええ。兄が薦めてくれて、家を飛び出すような形で冒険者になりました。剣術は兄に学んだりしてそれなりだったんですが、やっぱり人付き合いがうまくいかなくて……もともと王都にいたんですけど、どうしようもなくなってしまって、ここに来たんです」

王都の冒険者はマルトよりもずっと殺伐としていると言うか、実力至上主義的な部分が強いらしいからな。

新人には厳しい土地柄らしい。

だから王都の 冒険者組合(ギルド) は他の都市でやってみてはどうか、とすすめることもある。

たまにそういう理由でマルトにくる新人と言うのはいるからな。

マルトは新人にとっても優しい土地なのであった。

ま、あの 冒険者組合長(ギルドマスター) がいるからというのが大きいかもしれないが。

王都にいる 総組合長(グランドマスター) とも仲いいみたいだし、そういう繋がりもあるかもしれない。

「そういうことなら、別にリナのことを教えても良かったかな? 知らないふりをしたけど、少しだけ申し訳ない気もしてたんだ」

そう言うとリナは、

「そうですね……両親ならともかく、兄なら別に無理に連れ戻しに来た、というわけでもないように思います。一度、探して会ってみようかな……」

「なら今度、都合のいい日時を教えておいてくれ。俺が伝えておいてやるよ。わざわざ探すのも手間だろう?」

俺にとっては大した手間ではない。

エーデルたちに探させて、偶然を装って会いに行けばいいだけだしな。

探していたリナと言う冒険者ってもしかして……みたいな感じで話しかければきっと向こうも喜ぶだろう。

俺の格好的に怪しまれるかもしれないが、変な場所を指定しない限りは問題ないはずだ。

郊外の廃屋とかを指定したら身構えるかもしれないけどな……やってみようかな。いや、ダメだ。

俺の提案にリナは、

「本当ですか? じゃあ、ご迷惑じゃなければ、ぜひお願いします。ええと……」

それから、リナは空いている日時を俺に言ったので、俺はそれを記憶する。

確実に伝えることを請け合い、それからしばらく雑談して、お互いの連絡先を交換し、別れると、ちょうど時間はロレーヌとの待ち合わせ時間だった。