軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第193話 下級吸血鬼と偶然の出会い

「……一体今までどこにいたんですか!? 探したのに見つからなくて、心配していたんですよ……」

と、リナが言葉通り心配げに言ったので、俺は正直に言う。

「あれから、友人の家に身を寄せていたんだ。ここのところ、冒険者として普通に働いてもいるんだが……あんまり人のいない時間帯に行ってたからな。それで会わなかったんだろう」

「なるほど……私は結構朝早くに出ることが多かったですからね。でも、無事でよかった……」

リナはまだ駆け出しだからな。

そういう者向けの依頼は朝早くから掲示され、奪い合いのように受けられて行くから駆け出しの基本は早起きである。

もちろん、スライムとかゴブリンとか基本的な魔物の単純な討伐依頼もあり、そう言ったものは常時掲示されているので、そういうのを受ける気なら早起きは必要ないが、なんだかんだ言って魔物討伐はそれなりに大変だからな。

朝早く 冒険者組合(ギルド) に行けば、そういう依頼よりも安全で、かつ報酬の高い効率のいい依頼と言うのが結構あるものだ。

たとえば、薬草採取とか、上位冒険者の荷物持ちとかな。

ただこの辺は意外とリスクが高かったりする場合も少なくないから、しっかりと依頼内容を吟味する目が必要なのだが、駆け出しにはそんなことわからないからな。

リナは……しっかりと生き残っているあたり、俺と別れてから頑張ってやってきたと言うことだろうか。

一応、短い間しか一緒にいられなかったとはいえ、リナには色々と俺の知っていることは教えたからな。

有用な狩場とかいい店とか冒険者として必要な注意とか知識とかさ。

少しは役に立ったのかな……。

気になって尋ねる。

「ま、俺のことはいいさ。見てのとおり、もう前みたいな問題はなさそうだしな。それより、リナは最近どうなんだ? 冒険者として、しっかりやれているか?」

俺の質問にリナは、

「ええ、それはもちろん。レントさんに教えられたことをしっかりと実践してたら、今までの状況が嘘みたいにうまくいってますよ。聞いてください、パーティもこないだ組めたんです! 同じくらいの年頃の、男の子と女の子なんですけど……」

パーティか。

十年ぼっちならぬソロを貫いてきた俺にはとても眩しい単語だが、俺よりも遥かにリナの方がコミュ力があったということだろう。

うらやましい。

……いや、冗談だけどな。

別に俺だって、パーティに誘われたことがないわけじゃない。

ないわけじゃないのだ。

ただ、ソロがいいから拘ってただけで……。

しかしリナのパーティメンバーは、リナを除いて男女一人ずつか。

まぁ、そういうことなら危ないと言うこともないのかな。

年ごろからしてもリナと同じくらいとなると、何かしら危険な思惑をもってリナに近づいてきたという感じではなさそうな気がする。

大体二十代半ばくらいの冒険者が色々と擦れてそういうことをすることが多いからだ。

つまり俺くらいの……いや、俺はやらないぞ。

もちろん、絶対ではないけどな。

一応、その辺りを判断するために色々根掘り葉掘り聞いてみる。

「そいつは良かったな……いい奴らなのか? どんなきっかけでパーティを組むことになった?」

「いい人たちですよ。男の子の方は剣士で、ライズくんと言って、ちょっとだけ無鉄砲なところがあるけど、一生懸命戦ってくれますし、女の子の方はローラちゃんって言って、治癒術も使える魔術師なんです。パーティを組むきっかけは、 冒険者組合(ギルド) を通して連絡があって、話してみて決めたんです」

俺の質問に簡潔に答えてくれたリナである。

冒険者組合(ギルド) は色々な意味で信用ならない適当団体ではあるが、マルトの 冒険者組合(ギルド) はあのウルフが取り仕切っているだけあって、他の都市のものよりは仕事をする。

特に、冒険者の安全にはかなり気を配っており、それがため、死亡率もかなり低い。

また、新人冒険者の育成についても力を入れており、パーティを組むにあたって連絡するときは、 冒険者組合(ギルド) の審査が入る。

新人が怪しい奴と連絡をとってパーティを組み、後々ひどい目に遭わないようにするためだ。

新人とは言っても冒険者は魔力や気などの特殊な力を持っている有用な人材であることが多く、捕獲して奴隷に、と考える者も少なくないからこその措置である。

そのため、 冒険者組合(ギルド) に紹介された相手だと言うのなら、それだけで一定程度信用してもよさそうだ。

それに加え、俺にはリナが今、口にした二人の冒険者の名前に聞き覚えがあった。

「……それって、ライズ・ダナーとローラ・サティか?」

その二人は、俺が銅級冒険者昇格試験を一緒に受けたメンバーである。

無鉄砲なライズと、治癒術を使えるローラ、という形容にもぴったり当てはまるから、すぐに思い浮かんだ。

リナは俺の言葉に頷いて、

「ええ、そうですけど……お知り合いなんですか?」

と尋ねてきたので、

「あぁ、この間、銅級冒険者昇格試験を受けたんだが、そのとき一緒に迷宮に潜ったんだよ」

と言った。

するとリナは、

「……もしかして、二人が言ってた親切なレント・ヴィヴィエさんって、レントさんのことですか!?」

と目を見開いて尋ねてきた。

どうやら、あのときのことはすでに二人から聞いていたようだ。

しかし、親切なレント・ヴィヴィエって。

何か二つ名みたいだな……どことなく情けない響きだが。

どうせ二つ名がつくならもっとかっこいい感じの奴がいいぞ。

あまり尖ったのは逆に勘弁願いたいが。

「親切だったかどうかはともかく、それは俺だな……」

俺が頷いてそう言うと、リナは少し声を潜めて、

「……でも、レントさんって、レント・ファイナって名前なんじゃ……」

と言ってくる。

別に俺たちの会話なんて誰も聞いていないだろうが、一応露店の店主がいるしな。

その辺り、気を遣ってくれたのだろう。

俺も同じく小さな声で、

「……ま、その辺は色々あったんだ。とりあえず今のところはレント・ヴィヴィエで通してくれ」

と言うと、リナは頷いてくれた。

「……分かりました。けど、あの二人も、私も、レントさんに縁があるなんて不思議ですね。今日もこうして偶然会えて……何かあるのかも」

リナは嬉しそうにそう言う。

確かに偶然というのは時として面白い出会いを作り出すものだからな。

俺と《龍》とか。

俺とニヴとか。

……偶然を恨みたい。

リナとの出会いはここ最近だと唯一、俺にとっていい出会いだな……。

ある意味、幸運の女神かもしれない。

ここで会ったということは、俺がこれからハトハラーの村に行くのもいいことなのかもな、と思えてくる。