軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第151話 下級吸血鬼とお取り寄せ

「……まだ、足りませんか?」

と、ニヴが聞いてくるが、まさか白金貨20枚で足りないなどと言ったらいくらなんでもぼったくり過ぎである。

もちろん、命の危機だったのだから、そのことを考えるとたとえいくらであっても足りない、という話になってしまうかもしれないが、現実を考えるとな。

俺たち冒険者はお安い値段で常に命をかけているようなものなのだ。

今更、命には金に代えられない価値がある、なんてことを言っても説得力はないだろう。

まぁ、あんまり命を粗末にしている奴には言うかもしれないが、こと自分の命の値段については……大したものではない、と思ってしまっているところがどこかにあるのかもしれない。

俺は、

「……いいえ、これで十分です。ちょうど魔法の袋が欲しいなと思っていたものですから、これくらいあれば買えるなと」

少し考え込んでいた理由をそう説明した。

すると、ミュリアスが驚いた顔をして、

「……魔法の袋をお持ちでないのに、タラスクを丸々一匹持ってこられたのですか?」

と少々、世間知らずな発言をする。

まぁ、聖女は 冒険者組合(ギルド) の詳しいシステムなんて知りようがないよな。

ニヴとシャールは魔法の袋の貸し出しがあることを知っているため、別に驚きはないようだ。

ニヴがミュリアス様に言う。

「 冒険者組合(ギルド) には短期間ですが大きな容量を持つ魔法の袋を貸してくれる仕組みがあるのですよ、ミュリアス様。レントさんはそれを活用してタラスクを運んでこられたのでしょう」

ですよね、という視線を向けられたので、俺は頷いた。

ミュリアスは、

「そんな仕組みが。しかしそんなことをしたら盗まれたりなど……」

と言い始めたが、これ以上詳しく話し始めると時間の無駄だと思ったのか、ニヴは、

「あとで説明してあげますので、そのあたりの疑問は引っ込めておいてください。ミュリアス様」

と若干厳しいことを言う。

ミュリアスは一瞬、ニヴに不服そうな顔をするが、確かにその通りだと思ったようですぐに頷いた。

それから、ニヴが俺に、

「しかし、魔法の袋はそうそう出回りませんからね。手に入れようと思ってもすぐには無理でしょう?」

と言ったので、俺は頷いて答えた。

「ええ。でも、手元に資金があれば、オークションなどに出されたとき、すぐに参加できますからね。ちょっと前に、もっと小さなものですが、逃したことがあって……あのときは悔しかったです」

本当に、思い出す。

今持っている魔法の袋より五割増しの容量でありながら、結局同じ値段で落札されたのだからな。

俺にも買えたのに……。

まぁ、今更だが。

そんなことを考えているとニヴが少し考えてから、提案する。

「魔法の袋は冒険者にとって、重要な道具の一つですからね……。でしたら、私が都合をつけましょうか? これで色々と伝手はあるのですよ。ご希望のサイズをお聞きして、それから声をかければ近いうちに見つかるかと思いますが」

これは、悪くない提案だ。

なにせ、魔法の袋は本当に手に入りにくい。

まぁ、今俺が持っているようなサイズならそれなりに手に入るが、タラスクが入るようなサイズから上となると……。

この間の1800枚の奴なんて、久しぶりの出物だったからな。

半年、いや、一年に一度、出るか出ないかの……。

その理由は、魔法の袋は迷宮から極稀に出る以外には職人が作った者しかないのだが、その製法は一部の職人集団の内で秘匿されているからだ。

生産数は限られており、正規の値段だと即座に売り切れる。

結果として、普通の方法ではまず、手に入らない。

すでに持っている人間が手放したものをオークションで買うか、迷宮で手に入れるしかない。

しかし迷宮で手に入れられる確率などほとんどないので、必然的に普通に手に入れようと思ったらオークションしかない。

とは言え、一応、製法が不明とは言え、職人がいる以上確実に人の手で作れるものなのだから誰かしら真似して作れないか、という話になるが、今のところをそれを実現したものはいない。

かなり難しいのか、素材が特殊なのか……。

理由は製法が公開されていないため、当然はっきりとはしていない。

ただ、一つ言われていることは、魔法の袋の製法は古代技術なのではないか、ということだ。

遥か昔に栄えた古王国、そこには今とは比べ物にならないほどの文明が栄えていたという伝説があるが、その技術が連綿と受け継がれて一部残っている、と言われるものがいくつか現存している。

そのうちの一つが、魔法の袋ではないか、というのだ。

浪漫である。

……まぁ、誰が言い出したのかまるで分からない以上、ただの眉唾か妄想の類である可能性が大なのだけどな。

そんな魔法の袋を、声をかければ手に入れられるという。

ニヴの伝手の広さが分かる言葉だ。

正直なところ飛びつきたいが……やっぱりニヴと深くかかわるのはなぁ……。

俺がそう思っていることを察したのか、それとも今の話の中に商機を見出したのか、シャールが俺の耳元に口を寄せて、

「……ニヴ様に任せるのが不安なら、私が探すことも出来るぞ。ニヴ様よりは時間がかかるかもしれないが、これで一応、手広くやっている商人なのだからな……まぁ、私も信用できない、というのなら、他の店も紹介できる。それこそ、ウィータ商会でも構わん」

と言って来た。

ウィータ商会の話なんてシャールにはしていないのだが……まぁ、あの店員に聞いたのか。

しかし、ウィータ商会はステノ商会にとっては目の上のたんこぶに近い商売敵だろうに、よく紹介する、なんて言ったな。

まぁ、ステノ商会から金貨数千枚の取引を持っていけば恩は売れるか?

けれど、この場合、自分のところでやった方がはるかに利益は多いはずだ。

それなのにあえて、どこでも他の店を紹介する、と言っているのは俺に対する彼なりの誠意なのだろう。

……まぁ、色々と欺かれたわけだが、事情が事情であったわけだし、この 吸血鬼(ヴァンパイア) 関係になると人の意見はまるで聞き入れなさそうなニヴが相手だからな……。

シャールの行動は致し方なかったと言えるし、ここまでで、それ以外の点については十分に心を砕いてくれている、と思う。

魔法の袋の取引くらい、任せてもいいだろうと思う。

もしダメでも、今回貰った白金貨が吹っ飛んでいくだけだからな。

あぶく銭が消えるだけだ。痛手は少ない。

もちろん、出来る限りなくなってほしくはないけどな。貧乏性だからさ……。

命がなくなるよりはいいかな、という意味である。

色々こそこそシャールと話していると、ニヴが、

「……まぁ、それでもいいですよ。私も一応探しておいて、シャールさんがどうしようも出来なかったら私に連絡をくれればオッケーです。ということにしては?」

と、言う。

聞こえないようにひそひそ話していたのに、筒抜けである。

地獄耳か。

「……では、そういうことで」

「本当に私と関わるのが嫌そうですね……仕方ないでしょうけれど。ただ、最後に一つ、お願いです」

あぁ、そういえばお願いがどうこう言ってたな、とそれで思い出す。

俺はニヴがこれから一体何を言うつもりなのか、緊張しつつ耳を傾けた。