軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話 轟け!雷鳴剣!

2030年7月26日

「よし! 今からビーチの平和を取り戻すわよ!」

クラリスの掛け声と共に俺たち【黎明】はビーチへと向かおうとしたが、サンマリーナ侯爵に冒険者ギルドに行って指名クエストの受領をしてくれと言われて、冒険者ギルドに行くことになった。

指名クエストというからギルド通さないのかと思ったが違うらしい。

俺たちはまずサンマリーナの冒険者ギルドに寄ると冒険者よりもギルド職員の方が多いという状況だった。

さすがにこれはまずいだろう……

サンマリーナ侯爵の指名クエストを受領したのだがどうやら失敗が前提のような書かれ方をしている。

失敗しても何も補償や補填を求めないとか冒険者ギルドからも俺たちに 罰(ペナルティ) を与えないといった内容がクエスト用紙には書かれていた……俺たちが信用されていないのか、それとも歴代Sクラスが信用されていないのか……

「この用紙を見る限り私たちって何も期待されていないのね……」

クラリスがそう言うと、カレンが

「おそらく私たちは出自が高くて少々強いからSクラスになったとでも思われているのかもね。新入生闘技大会だけではやはり信頼は勝ち取れるはずないわね」

「昨日私が早速海に行くって言ったのもまずかったかな。完全に遊びに来たと思われているよね……」

まぁそれに関してはみんなだろうな。

「じゃあ、挽回しないとな」

俺がそう言うとみんな頷いた。

ちなみに昨日の情報収集は何も得られなかった。

なぜかというとみな怖がってビーチに行かないのだ。

お金のある者たちはすぐにこのサンマリーナから引っ越ししてしまい、現在この街は廃墟寸前となっているのだ……

どうしてほかの貴族に頼まないのであろうとカレンに聞いたら、カレン曰く他貴族に協力を仰ぐと借りを作ってしまい、他貴族に飲み込まれてしまう可能性があるからとの事だった。

そしてほとんどの貴族が他領に騎士団を派遣できる余裕がないという。派遣する余裕があるのはフレスバルド公爵家くらいとの事だ。

どこの領地も魔物が多くて、自分の領地の治安維持に精一杯との事。

どこかで同じようなことを聞いたな……

俺たちはサンマリーナのビーチに着くと、ビーチはやはり悲惨だった。

大量のワームに荒らされて、そのままとなっている。

酷い惨劇が繰り広げられた事が容易に想像できる光景だった。

「さて、クラリスたちは何かワームを倒す案はあるのかい?」

俺が女子メンバーに言うと

「穴に入ってワームを探すか、穴の付近に餌を配置して出てくるのを待つか」

クラリスが首をかしげながら言うと、カレンが

「穴に火魔法を打ち込めば嫌がって出てくるんじゃない?」

俺と同じような考えを言った。もっとも俺の場合は火魔法ではないが……

「エリリンが匂いとかで索敵してそれをみんなでボコるっていうのは?」

ミーシャが言うと、エリーが

「……臭い……やだ……」

即却下した。

「とりあえずカレンの案でやってみようか? 俺とカレンで火魔法を穴に向かって放とう」

そして俺とカレンが適当に穴に火魔法を放つ。

するとエリーの索敵に引っかかったのか

「いる! ……すぐ下!」

ヤバいと思った俺はカレンを抱きしめてその場を離れる。

クラリスとエリー、ミーシャも自分のいた場所から離れる。

するとカレンがいたところからワームが飛び出してきた。

間一髪、少しでも遅れると食われているところだった。

ワームの方を見て鑑定すると

【名前】-

【称号】-

【種族】マリンワーム

【脅威】C+

【状態】良好

【年齢】3歳

【レベル】4

【HP】75/75

【MP】3/3

【筋力】30

【敏捷】30

【魔力】1

【器用】25

【耐久】50

【運】1

マリンワームというのか……太さ5m、長さ20mのミミズみたいな魔物だ。

口には鋭い牙が並んでいる……気持ち悪い。

能力は完全に 地獄の蛇(ヘルスネーク) の下位互換だ。

ただ問題なのがこいつは砂の中に逃げてしまうという事だ。

砂浜に上がってきたら確実に倒さなければならない。

そして俺たちを食い損ねたマリンワームは涎をまき散らす。

これは 地獄の蛇(ヘルスネーク) と同じだとしたら溶解液かもしれない。

「みんなこの涎は絶対によけろ!」

俺がそう言う前にクラリスとエリーは避けていたが、ミーシャが手で払おうとしていた。

俺がウィンドで涎を飛ばそうとしたがもう遅くミーシャの手にかかった涎が「ジュー」といった音を立てる。

「熱い!」

ミーシャがそうやって手を引っ込めると少し顔にもかかってしまったようだ。

ミーシャの顔も火傷してしまったようだ!

「キャャャァァァーーーーっっっ!!!」

顔に涎がかかるとミーシャが顔を抑えながらうずくまる。

「クラリス! カレンを頼む!」

俺は抱き寄せていたカレンをクラリスに渡すとすぐさまミーシャの所に走る。

するとミーシャが悲鳴にも似たような声で

「見ないで! 来ないで!」

俺は構わずミーシャを抱きかかえるとまず火傷してしまった顔に「ハイヒール」と唱えた。

「え……嘘?……痛くない……」

すぐに手にもヒールをかけた。

なぜ重傷でもない顔にハイヒールで顔よりも酷い手にヒールなのかというとやはり女性の顔には念には念を入れてという事だ。

ヒールでも十分だったのかもしれない。

手はヒールでも完治しているしね。

「え? 手も……火傷……治ってる!」

ミーシャがそう言って俺の方を見る。

俺はミーシャを抱きかかえてみんなのいる所に戻った。

カレンがミーシャにすぐに駆け寄り

「大丈夫!? すぐに治療をしましょう! ミーシャはエルフだからきっと顔に傷は残らないわ!」

ミーシャを元気づけるような言葉を言うが、ミーシャの顔を見ると

「あれ……さっき火傷していたのに……何もない?……」

カレンがミーシャの顔を覗き込んで驚いていた。

「今……痛くない……ハイヒールとヒールって聞こえた?」

ミーシャは1人でブツブツ呟いている。

とりあえず2人の無事は確認できた。

「クラリス、エリー、2人を頼む! 試したいことがあるから行ってくる!」

クラリスはすでに陸に出現したマリンワームに対して魔法の弓矢で攻撃をしていた。

エリーは常に索敵をしていて砂浜を警戒している。

この2人はやはりカレンとミーシャとは違う。

「分かったわ。気を付けて! 私の方でもマルスの邪魔にならないように援護する!」

俺は砂浜に出てきていたマリンワームに対してウィンドカッターを放ちながら接近し、雷鳴剣でとどめを刺した。

事前にクラリスがダメージを与えてくれていたので楽に倒せた。

やはり削ってもらうのがいいな。俺はクラリスに対し

「クラリス! 今からマリンワームを一気におびき寄せる! かなりの量が出てくるかもしれない。援護を頼む! エリー! そっちに出てきたマリンワームは任せるぞ!」

俺は再び砂浜に行くと雷鳴剣を砂浜に突き刺した。

そしてゆっくりと雷鳴剣に魔力を注いでいく。

もちろん雷属性の魔力をだ。

狙いは地中にいるマリンワーム。

地中で感電しないように……地中よりは地上の方がましだと思わせるくらいの力で……

するとすぐに地震のように揺れだした。

俺はその場から全く動かずにマリンワームが出てくるのを待った。

絶対に俺の下からマリンワームが出てこないと確信があったからだ。

普通に考えて雷の発生源に突撃する奴なんていないと思ったのだ。

その予想は見事に裏切られる。

俺がバカだった。魔物は何が起きているか分からないから焦って地上を目指すのが当然で……むしろ冷静でいられるわけが無かった。

10匹以上のマリンワームが一斉に地上に出てきた。

そして俺の足元からも。

まず俺がやるべきことはこいつらを地中に戻さない事。

だから俺はすぐに移動して雷鳴剣をまた地面に突き刺し今度は込められるだけの魔力を込めて地面に電気を走らせる。俺の周辺の砂浜が金色に染まった。

金色に光った砂浜にいたマリンワーム全て感電させて体の自由を失っている。

やはりマリンワームというくらいだから雷には弱いな。

俺は雷鳴剣に雷の魔力を 付与(エンチャント) して雷鳴剣の攻撃力を上げると感電したマリンワームたちを倒しに行く。

当然クラリスも魔法の弓でどんどん攻撃してくれている。

結局10分で16匹のマリンワームを討伐した。

これが全てではないだろうが半数以上は倒したはずだ。

この調子であと2、3回やれば倒しきれると思う。

だが立て続けにやると警戒されてしまうから今日はもうやめる事にした。

ミーシャの容態が気になるしね。

エリーとカレンにサンマリーナ侯爵とギルド職員を呼んでもらう事にした。

なぜこの2人かと言うと、この2人のリスター連合国での信用、信頼度は【黎明】の中では一番だと思ったからだ。

2人は快く引き受けくれた。恐らく俺の意図を分かってくれたのであろう。

俺はマリンワームの死骸を風魔法で並べるとミーシャの所にいった。

マリンワームの16体の死骸はとてもグロテスクで見られるものではなかった。

「ミーシャ大丈夫か? 嫌かもしれないが顔を見せてくれないか? あとできれば他の箇所も見せて欲しい。いいか?」

俺がそう言うとミーシャは頷く。

「クラリス来てくれ! デリケートなところはクラリスが見てくれ!」

クラリスは周囲を警戒していたが、俺が言うとすぐに来てくれた。

「さすがに俺がミーシャの肌の全てを見るわけにはいかないから、クラリスもしっかり見てくれ。ミーシャも違和感がある所があれば言ってくれ!」

俺が2人に早口でまくし立てると2人が頷いた。

顔と腕以外にも足にも溶解液を受けているようだった。

俺がそれを見つけてすぐに「ヒール」と唱えるとミーシャが

「マルス……ありがとう……絶対に裏切ったりしない……本当にありがとう……マルスが居てくれて……マルスで本当に良かった」

ミーシャが泣きながら俺に感謝の意を伝える。

俺はミーシャを抱きしめながら

「ミーシャすまなかった。もっとしっかり守ってやるべきだった」

と言うと、クラリスもミーシャを抱きしめて言った。

「ミーシャ。幸いミーシャに跡に残るような傷は無いと思うわ。だけど念のために、これから私と一緒に部屋に戻ってシャワーを浴びましょう。そこでちゃんとミーシャの身体を見させて? いい?」

クラリスがそう言うとミーシャが

「クラリスもありがとう。ちゃんと体を見てくれる? マルスに見られて恥ずかしくないようにしたいから」

ミーシャが俺の方を見てウィンクをしてくる。

こいつもう立ち直ったのか? クラリスも苦笑しながら「分かったわ」と言って宿に戻った。

クラリスとミーシャと入れ替わる様にエリーとカレンがサンマリーナ侯爵と冒険者ギルドのギルドマスターを連れてきた。

2人はマリンワームの大量の死骸を見て

「これ、本当に君たち【黎明】がやったのか?……いやここには【黎明】しかいないから間違いないか……」

ギルドマスターがそう言うと、サンマリーナ侯爵が

「さ、さすが我らがリスター帝国学校のSクラスです! 期待していた通りでした。今日は存分に祝う事にしよう!」

「いえ、まだこれで全部ではないと思います。明日と明後日にまたワームを倒しに来ます。楽観的かもしれませんが、明日、明後日にはこの辺にいるワームは倒しきれるとは思いますが」

俺がそう言うとサンマリーナ侯爵が俺の手を握って

「是非! 本当に恩に着る! 今日は選りすぐりの美女を用意する! マルス君! 期待しておけよ!」

ん? この人昨日の事忘れているのだろうか? サンマリーナ侯爵が俺の肩を叩いてご機嫌な様子で帰ろうとする。

その行く手を阻む鬼2人がサンマリーナ侯爵の前で仁王立ちしていた。

「侯爵? やはりフレスバルド家と事を構えるつもりですわね?」

カレンがそう言うとエリーは本気の殺気をサンマリーナ侯爵に当てていた。

可哀想なおっさん子羊はぶるぶる震えながら、脂汗を流していた。