軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第69話 試験当日

2029年12月26日

今日は筆記試験の日だ。

俺たちは初めてリスター帝国学校の門をくぐって構内に入った。

「いやーこれ何人受験するんだろうね。まるで人がゴミのようだ」

「クラリス、なんか微妙に使い方が間違っている気がするけど……それにしても何万人っているよな。今日の筆記試験は本気で解こうな。頑張ろう」

「……大丈夫……明日勝負……」

エリーは今日の筆記試験がすでにダメだと思っているらしい。

「エリリンと私は多少点数が悪くても大丈夫でしょ」

エリリンと言ったのは、ミーシャだ。ミーシャは昨日、一昨日でだいぶエリーに慣れたようだ。

1日目の筆記試験はというと1問も分からない問題はなかった。

テストは日本でいう中学1年生レベルの数学と理科、そして簡単な国語だった。

エリーとミーシャはそろって撃沈したようで、2人で「私は大丈夫、私は大丈夫」と繰り返し呟いている。

2029年12月27日

今日は実技のテストだ。

最初からある程度の実力で分けられているようで、俺とクラリスとエリーとミーシャの試験する場所は一緒だった。

他の受験生たちは外で実技の試験を受けているのに、俺たち4人を含む50人位はリスター帝国学校の校内でテストを受けた。

まず試験官の人が、受験生たちに2人一組を作って、適当に戦えとの事だった。

試験官は10人もいたのにはビックリした。試験とは関係のない学校関係者もいるようだが……

俺はクラリスと一緒に組んで木剣で適当に剣戟を始めた。

エリーもミーシャと一緒にじゃれあうように戦い始めた。

他の受験生たちも学校側で用意された殺傷能力の低い武器で戦い始めている。

しかし俺たちと違って本気で戦っているため、怪我をしている受験生もいる。

すると受験生同士で戦っていて勝った方のやつが

「我が名はドミニク! デアドア神聖王国の剣聖ドミニク・アウグスだ! 我に挑まんとするものは名乗りを上げよ!」

なんか香ばしい奴がいるなぁ。仮にも試験を受けている身でよくそんな事言えるよな。

俺がそう思っているとクラリスも同じように思ったらしく、完全に引いていた。

まぁ日本人ってこういうのを嫌う傾向にあるよな。

だが俺たち以外はそうは思わないらしく次々と決着をつけた受験生たちが名乗りを上げ始めた。

どうやらこの世界で考え方が異常なのは俺やクラリスの方らしい。力は誇示するものという事か……

受験生同士で勝った者たちがどんどん競い合って、俺とクラリス、エリーとミーシャを除いて立っているものは6人しかいない。

ただなぜか敗れた者たちは座って 俺(・) た(・) ち(・) を見る……なぜ戦っている方じゃなくて俺とクラリスを見ているのか? あぁまたクラリスの容姿にみんなが釘付けという事か……

すると先ほど名乗りを上げたドミニクとかいう奴が俺たちに声をかけてきた。

「お前たちはなかなか強いな。私と戦え。力量を計ってやろう」

凄い上から目線。俺が「いえ、結構です」と言うと、ドミニクが俺に

「臆病風に吹かれたか。まぁ私の思い違いであったようだ。失礼する」

そう言って、踵を返そうとした。俺としては別に何を言われてもいいと思っていたが、クラリスが

「では、私が相手をしてあげましょうか? 剣聖殿」

やばい、なんかクラリスが怒っている……エリーとミーシャもなぜかドミニクに対して敵対心剝き出しだ。

俺はドミニクを鑑定した。

【名前】ドミニク・アウグス

【称号】-

【身分】人族・アウグス準男爵家当主

【状態】良好

【年齢】9歳

【レベル】18

【HP】40/40

【MP】14/18

【筋力】22

【敏捷】25

【魔力】12

【器用】12

【耐久】18

【運】5

【特殊能力】剣術(Lv4/C)

【特殊能力】風魔法(Lv2/E)

【装備】疾風の剣

【装備】身躱しのマント

うん。それなりに強い。このまま年を重ねれば蒼の牙のリーダーのバンよりは強くなるだろう……

だけどクラリスと戦えるほどの能力ではない……

「ほう……こんなに綺麗な顔は初めて見たな。あとで私がベッドで介抱してやろう。来なさい」

ドミニクの言葉にさすがの俺もイラっとした。

するとクラリスの本気の1撃がドミニクの木刀を襲った。

ドミニクは全く反応出来ず、剣を飛ばされる。

「剣聖殿、早く構えてはどうです?」

ドミニクは完全に油断していたとは言え、剣を飛ばされたことに驚いている。

剣士にとって剣を飛ばされるというのは、負けたと同義だからだ。

ドミニクは飛ばされた剣を風魔法で自分の手元に戻すと

「少し油断が過ぎたようだ……顔に似合わず剣の腕も凄い。私も貴女を認めるとしましょう」

そう言ってドミニクはクラリスに斬りかかる。

クラリスは全く手加減するつもりは無いらしく、完全にクラリスが優勢となっている。

何度もドミニクに容赦ない1撃が襲う。まぁ当てる瞬間に少しは威力を弱めてはいるようだが……

ドミニクがフルボッコになり、剣も握れなくなった時にクラリスが止めの一言を言う。

「剣聖殿。私は本物の剣聖に剣を教えてもらっております。剣聖と名乗るのであれば、少なくとも弓使いの私くらいには勝って頂かないと、剣聖の名前がかわいそうですよ」

おいおい誰だよ本物の剣聖って……俺じゃないよな?

ドミニクは驚愕の表情で「これで弓使い……だと?」と漏らして、崩れた。

完全に周囲の受験生はクラリスに畏怖の念を抱いているように見える。

すると試験官の1人が

「よし! 茶番はここまでだ。今立っている者の実技試験を行う。今回はわざわざ特別試験官もいるから気を引き締めろ!」

そう言って立っている 俺(・) 以(・) 外(・) の生徒1人1人に試験官が付き、試験と言う名の戦いが始まった。

俺は試験官の人数が足りないだけだと思っていた。だから俺は受験生の戦いの様子を見ていた。

どうやら試験官はC級かD級クラスの冒険者でクラリスとエリーは試験官を圧倒しているように見える。ミーシャは善戦こそしたがやられてしまった。

受験生の皆がクラリスとエリーの戦いを見て「凄い」とか「かわいい」とか「あとで絶対に告白する」などと言っている。

結局クラリスとエリーは試験官に勝ってしまった。エリーに至っては、おちょくっているような戦い方をしていた。

「まさか、2人も負けるとはな」

試験官の1人が俺の方に向かってそう呟いていた。

その試験官の手には木剣ではなく真剣が握られていた。見たことのある剣……氷の刃だ。

「小僧! お前の剣を取れ! いつかの続きをするぞ!」

男はそう言って剣を構える。こいつは確かキュルス……だったかな? 俺がここに来るきっかけの1人だ。

「奴隷オークションの時の人ですね? どうしてここに居るのですか?」

俺はあえて剣を抜かずに無抵抗のまま聞く。

するとキュルスは本気で俺に斬りかかってきた。

俺は 風纏衣(シルフィード) を展開して全力でバックステップを踏む。

「今の攻撃を剣も抜かずに躱すとか……お前本当に9歳のガキかよ。まぁお前の質問に答えてやるよ。知っての通りここの試験官は冒険者たちだ。先公どもは上でこの戦いを見ている。3年前の時点でC級冒険者クラスの実力があった小僧を計るにはB級冒険者クラスじゃないと無理だからな。俺がわざわざ来てやった。というか俺から志願したんだがな」

厄介なことをしてくれる……

「まぁどうせお前はSクラスだろうがな……お前の取り巻き2人が試験官を倒してしまったんだ。その2人より間違いなくお前の方が強いだろうからな」

周囲の受験生が一斉に俺を見る。くそ! 台無しじゃないか!

俺の表情を読み取ったキュルスが

「なんだ、お前サーシャに何も聞いていないのか? 諦めろって言われなかったか?」

「あっ……言われました……」

そういう意味の諦めろだったのか!

「分かりました。諦めます。ただ真剣での戦いではなく、木剣でお願いします」

「ちっ、まぁしゃーない。木剣で許してやろう。そんなに怪我をするのが怖いのか?」

「えぇ、今僕は少し気が立っているので、キュルスさんを再起不能にしたくはありませんので」

俺がキュルスを煽るとキュルスが狂ったような声を上げて俺に斬りかかってきた。

キュルスのステータスは俺より筋力も敏捷も少し高い。しかし剣術レベルは俺の方が高い。

よって両者の実力は互角だった。もっとも俺は 風纏衣(シルフィード) を展開していないが。

久しぶりの全力での剣戟で俺は楽しかった。

きっとキュルスもそうなのだろう。ずっと膠着状態のまま10分以上の時間が経過した。

他の受験生は何が起きているか良く分かっていないらしい。

ドミニクに至っては、ビックリしすぎて顎が外れている。

「はい! そこまで!」

俺とキュルスの剣戟を制止させたのは、サーシャだった。