作品タイトル不明
第503話 陰謀?
「と、いうわけだ。みんなの意見を聞かせてほしい」
リーガン公爵の提案に俺だけではなくバルクス国王、ジオルグ、そしてザルカム国王とビートル辺境伯全員が動揺をみせた。
そしてジオルグとビートル辺境伯から後日改めて時間がほしいとの申し出をリーガン公爵が白金貨を対価に了承。
あまりにもあっさりと了承したので、予め予想していたのだろう。
第1ラウンドはリスター連合国側の圧勝に終わった。
そして授業を終えた今、【黎明】部屋に集まり先ほどのことを伝えて皆の意見を聞く。
ちなみにこの場にはサーシャもおり、なぜかメイド姿。どうやら気に入ったのかもしれない。
「これはやられたわね」
そうつぶやくのはカレン。
「何が目的か分かるのか? だったら教えてくれ」
「ええ、でもこれだけではないということは頭に入れておいて。リーガン公爵とカストロ公爵の利害はある意味一致しているのよ」
「それは分かるよ。リムルガルドを手に入れ、俺を他国に渡さないことだろ?」
自意識過剰発言だが許してくれ。
しかし、カレンは首を振る。
「いいえ、それはリスター連合国の立場ね。それだけであれば前にリーガン公爵が言った通り、マルスをリムルガルド公爵に任命すればいい話。もっともそれをバルクス王国、ザルカム王国が反対するだろうから、表向きは国を興せと言ったのだろうけど、真意は別のところにあると私は考えているわ」
確かリーガン公爵はリスター連合国には公爵家が多いから減らすつもりと言っていたな。減らしたうえでリムルガルド公爵を作るというのは聞いた。
「真意?」
皆が首を傾げカレンの言葉を待つ。
「そう……マルスが公爵だと困るのよ。あの2人は。どういう意味か分かる?」
まったく分からないが、ミネルバが手をぱちんと叩き納得の表情をする。
「あっ! 公爵家同士だと結婚できない!」
ん? どういうことだ?
「その通り、リーガン公爵とカストロ公爵が本気でマルスを狙っていると私は思うわ」
「えっ? まさかぁ……」
言葉に出しては見たものの、そう言われるとそう思えてくる。
「ねぇ? お母さん? 今の話本当?」
唯一事情を知るであろうサーシャにミーシャが問うと、
「……私もリーガン公爵にすべてを聞いたわけではないけど……」
否定をしないサーシャが更に一言。
「でも光栄なことなのよ? リーガン公爵がこんなにもアタックするなんて私が知る限りマルスしかいないわ」
弁明するように述べる。ということは今のカレンの推理はあながち間違ってはないということか。
「お母さんはリーガン公爵とカストロ公爵がマルスと結婚してほしい?」
なおもミーシャの追及が続く。
「そうね……」
悩むことも意外だったが、出てくる言葉はもっと予想外だった。
「私は賛成ね」
驚いたのは俺とクラリス、ミーシャにアリスの4人。カレン、姫、ミネルバの3人はそこまで驚くことはなかった。エリーはというと、膝の上ですでに寝ていた。
「ミーシャの母としてかなり迷う部分もあるわ。あなたたちはあのお二方の本当の恐ろしさを知らないと思うの……」
かなり言葉を選んでの発言だろう。
「妾もそう思うのじゃ。オレンジはともかくリーガン公爵だけは敵に回してはダメじゃ。父上が頼るほどの人物じゃからの」
「本音としてはこれ以上増えてほしくはないけど、普通に考えればこれは本当にありがたいことなのよ。お父様も大喜びだと思うわ」
姫とカレンの言葉に頷くミネルバがこう付け加える。
「あくまでも私の場合だけど、バロンがリーガン公爵とカストロ公爵を娶ることになったら嬉しいかな。多分だけど家は毎日パーティ三昧よ」
それに対しミーシャがいつになく真剣なまなざしで自分の意見を述べる。
「アリスや姫は歳が近いし楽しくなりそうだったから良かったけど、あの2人相手だと気を使うじゃん? これがお母さんだったら大賛成なんだけど」
それはそれで大問題。話がややこしくなるからスルー。
そして皆の視線がクラリスに集まる。
「え? 私? 純粋にマルスのことを好きなだけであればまだ許せるけど、そうじゃない部分が見え隠れしてて……結果的にはマルスのためになるのかもしれないけど、なかなか割り切れない……かな?」
難色を示すクラリスにホッとする俺。
「まだまだ時間に猶予はあるけど、どうしたらうまく切り抜けられるか案が思い浮かんだら教えてくれ」
まぁみんなの意見が聞けて良かった。
男のロマンを使い【黎明】部屋から出ると、俺を呼び止める声が。
「マルス、ちょっと待って。2人で少し話せないかしら?」
俺を呼び止めたのはいつもの服装に戻ったサーシャだった。
「ええ、いいですけど?」
「ありがとう。あまり聞かれたくない話だからちょっとこっちに来てもらってもいいかしら?」
この時間はもう先生とSクラスの生徒以外は外に出ることはできない。
しかし、それでもサーシャは警戒して人気のないところへ向かう。
立ち止まったのは校舎から大分離れたベンチのあるところだった。
そこにサーシャが腰を下ろすと俺を手招きして隣に座らせる。
「あの子たちの前では言いづらかったのだけれどもさっきの話、断るときは本当に慎重にお願い」
きっとミーシャのことが心配なのだろう。
「もちろんです。僕もあの場では聞くことができなかったのですが断った場合、どういったことが起こると考えられますか?」
あの場でサーシャに答えさせるのはちょっと酷だからな。
「マルスだから言うわよ。他言無用でお願いね」
「もちろんです。僕の大切なミーシャの母を、そして【暁】のメンバーの立場が悪くなるようなことはしません」
静かにだが力込めて述べると、サーシャが頷く。
「マルスがリムルガルド国王になって、2人の要求をのまない場合……下手すればリムルガルド国は滅亡すると思うわ」
「どういった手段で?」
「あくまでも、2人ならこういったことができるという話だから、実際にやるかどうかは分からないというのは念頭においといてね。一番簡単なのは兵糧攻めじゃないかしら?」
また意外なところをついてくるな。
「長きにわたる戦争と 迷宮飽和(ラビリンス) で荒れたリムルガルドで食糧生産は難しいわ。それはザルカム王国も同じなの。だからリスター連合国に食料をストップされたらマルスはバルクス王国を頼ることになると思うわ」
まぁザルカム王国は国そのものが荒れている印象だからなんとなく納得できる。
「でもそんなマルスに食糧援助をするからには、バルクス王国側も対価を要求してくると思うの。何度も食料を融通してもらううちに結局はセレスティアとの結婚を迫られると思うわ」
「父上に直接援助を申し込んでもダメですかね?」
「いいと思うけど、長続きはしないと思うわ。それにバルクス王国側に知られたらそれこそブライアント辺境伯家の地位も危ない。食糧危機を迎えるリムルガルド国にそんなブライアント辺境伯家を匿う余裕なんてないでしょ?」
結局は国力が足りない……足りなすぎるという話か。
「それに武力でも無理よ。いくらあなたたちが強かろうと数には勝てない」
それは分かり切っていることだから、まったく考えていない。
「でもね。私自身、リーガン公爵に限ってはマルスにそんなことをしないのではないかと思っているの。クラリスの言う通り色々見え隠れする部分もあるけど、純粋にマルスのことを気にかけているというか好きというか……あんなリーガン公爵は初めてだから」
サーシャから見るリーガン公爵はそう映っているのか。
「教えていただきありがとうございます。その辺も踏まえて僕も考えてみます」
サーシャを送り、1人で国力をどうにかしなければと考えながら寮に戻った。