軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第488話 迷宮飽和?

「マルス!? 何を言っている! ここは慎重に撤退した方がいいだろう!」

「そうだべ! ここはスキャルの糸を張りながら撤退するのがいいべ!」

スキャルとビッグの言うことは分かる。しかし、グレイトホーンのステータスを見る限り恐るるに足りず。それにここは広いとは言えども迷宮。条件次第では俺の力をもっとも発揮しやすい場所でもある。

「大丈夫です! 少なくともグレイトホーンレベルの魔物相手に後れを取ることはありません。それにどちらかというと僕は雑魚相手の方が力を発揮できるので」

「い、いや……脅威度Bの魔物を雑魚って……」

俺の言葉にスキャルが戸惑う。さすがに雑魚は言い過ぎたかもしれないが、魔力が低くて、耐久値も低い魔物は相性がいいからな。

そんなスキャルにクラリスも声をかける。

「大丈夫です。私たちもいますから。それでも信じられないというのであれば、バルクス王の下へ戻り 迷宮飽和(ラビリンス) が起きたことをお伝えしていただけませんか?」

優しく微笑むと、スキャルは顔を真っ赤にし、

「す、すまない。もう迷わない。ビッグもそうだろ!?」

ビッグに同意を求める。

「もちろんだべ! 何かあればオデがみんなを守ってやるべ!」

自身の胸を強く叩くビッグ。

それを見た【大胃王】のメンバーも諦めた表情をしている。

「ありがとうございます。では通路までいきましょう」

部屋を後に̪し、通路まで進むと、グレイトホーンとアイアンブルが広い通路を体と体をぶつけあいながら我先にとこちらに逃げてくる姿が。

その数に【大胃王】のメンバーたちの顔が引き攣る。

「ではやります! 討ち漏らすことはないと思いますが一応警戒はしておいてください! ハチマルだけはあの群れに向かって火を吐き続けてくれ!」

ハチマルと2人で一歩前に出ると左手を前に掲げ、早速魔法を唱える。

「ファイアストーム!」

俺の言葉とともに、巨大な炎の竜巻が広い通路を埋め尽くす。竜巻からはものすごい熱量とともに炎の花びらが舞い、中心から火柱が迷宮の天井に向かって突き上がる。

その炎がスキャル、ビッグ、【大胃王】のメンバーの顔を照らすと、不安そうな表情が一転、熱と興奮からか顔が上気していた。

「す、すげぇ! ファイアストームなんて初めて見た!」

「1人で唱えているのか!?」

「ファイアストームの向こう側で怯える魔物たちの顔が見たいぜ!」

先ほど力を示したときのリアクションは微妙なものだったが、今回は正反対。分かりやすい方が受けはいいな。

それに撤退しなくて正解だった。これがもしオーガやアーリマンであれば俺も迷うことなく撤退をしていたが、相手は魔法が使えない魔物。耐久値もそこまで高くはない。魔法をレジストされないのであれば、怖くない。

何体かは炎の嵐の中を駆け抜け、炎を纏いながらこちらに向かって来ようとしたが、その途中で焼死するか、更にハチマルの火で燃やされるかで、俺の目の前まで辿り着く魔物は1体もいなかった。

途中で引き返そうとした奴もいたかもしれないが、後ろから押されてそれも出来なかったのだろう。

結局ファイアストームを発現させていたのは5分程度。こちらに向かってくるすべての魔物を焼き尽くし、目の前に広がるのは魔物たちの魔石の山。

その光景に改めて驚くスキャルとビッグ。

「これを……1人で……化物だ」

「こんな奴初めて見たべ……」

それに冒険者たちが改めて頭を下げる。

「不快な思いをさせて申し訳ございませんでした!」

「嫉妬していただけだと思います。すみませんでした!」

「いいものを見せていただきありがとうございます!」

「いえ、分かっていただけたようで僕も安心しました。これからもよろしくお願いします」

俺が答えると、今度はクラリスたちが嬉しそうに俺の胸に飛び込んでくる。

「良かった。認めてもらえたようで」

「……マルス……1番……」

「歴代フレスバルド公爵家の中でもこんな熱量を操れるのはなかなかいないと思うわ」

「やっぱりマルスが褒められると嬉しいね!」

「剣術だけでなく魔法も教えてください!」

「もう妾は何を見せられても驚かないのじゃ!」

女性陣の柔らかさと匂いを堪能していると、先程まで俺に頭を下げていた冒険者たちからはいつもの視線が刺さる。まぁこんなことをやっているから嫌われるのかもしれないが、今は許してくれ。

女性陣に心を満たしてもらったところで次の部屋を目指すと、スキャルが訝しげな顔をしながら呟く。

「7層で 迷宮飽和(ラビリンス) が起きれば必然的に5層の魔物も増えると思ったのだがいつもと変わっていない? グレイトホーンたちの様子もいつもと違っていたような……」

どうやらスキャルも違和感を覚えたらしい。

「スキャルさん。実は僕も同じようなことを考えておりました。もしかしたら起きているのは 迷宮飽和(ラビリンス) ではないのかもしれません」

俺の言葉に頷くスキャル。すると隣を歩いていたクラリスが俺にだけしか聞こえないように耳元で囁く。

「ねぇ? さっきの魔物たち怯えてなかった? もしかしてあれって……」

クラリスもグレイトホーンの異変に気づいていたようだ。

「ああ。グレイトホーンは恐慌状態だった」

「やっぱり……ってことはこの先に待ち受ける魔物って……」

同じ結論に辿り着いたのか表情が引き締まるクラリス。

そのクラリスの手を握り、6層への階段を見つけたのはグレイトホーンたちを倒してから1時間後のことだった。