軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第48話 帰還

ビスマルクを出立してもう10日が経つ。

イルグシアまでの道のりは順調だった。

ビートル伯爵からの手紙をジークが読み、クラリスが神聖魔法を使えると書いてあった事が順調な要因の1つだった。

まずクラリスがひたすら馬にヒールをかけてMP枯渇すると俺に交代。

クラリスのMPが回復したら今度は俺がMP枯渇させてクラリスと交代。

これを繰り返すことによって昼夜問わず走り続けることが出来た。

今回はジークとアイクと言う用心棒がいるからMPも使い放題。

そして現在アルメリアを発ってもうすぐイルグシアだ。

俺たち4人はイルグシアを前に最終確認をしていた。

「クラリス、君はイルグシアに行ったら我々ブライアント家の者以外には神聖魔法のことは隠したほうが良い。いいかね?」

ジークがクラリスにそう言うと

「はい。そのつもりでした」

「あとクラリスはブライアント家で共に暮らしてもらおうと思う。気持ちとしては新しい家族として迎えたいと思う。マルス以外にはすでに伝えているが、いいかな?」

「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

「お父様、ありがとうございます」

「よし、詳しいことはまた家に着いてからだ。もうイルグシアが見えてきたぞ」

イルグシアに着くとマリアとリーナをはじめ、蒼の牙のメンバーや他の冒険者、住民たちも俺を迎えてくれた。

そして俺の帰還を喜んでくれたのだが、それ以上にクラリスの存在に驚いていた。

聖女様と言われていたこともあって人目を惹きつける能力もさることながら、その全身を包む装備が豪華だからだ。

冒険者や住民は何も言わなくても頭を下げたり、拝んだりしている。6歳の少女に対してだ。

家に帰ると盛大なパーティーが催された。

パーティーの最初に俺にはまずやらなければならない事があった。

1人この地に来て不安になっているクラリスの立ち位置だ。

これはリムルガルドから帰ってくる最中にクラリスが寝ている時、ジークとアイクには話していた。

「皆さん、今回僕の件で大変ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。そして一緒に来た人物に驚いている方もいらっしゃるようですので、ご紹介いたします。クラリス。こっちに来てくれ」

俺はマリアと話していたクラリスを近くに呼んだ。

「こちらは、クラリス・ランパードです。僕の大切な人なので、皆さんよろしくお願いします」

「皆さま、初めまして。ただいま紹介にあずかりました、クラリス・ランパードと申します。ブライアント家にお世話になることになりました。至らない点も多々あると思いますが、ご指導・ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い致します」

クラリスは緊張しているのか、社会人の挨拶みたいで少し笑ってしまう。

パーティーの出席者たちは6歳児がこうも立派な言葉遣いをするなんてと感心している。

「クラリスの件についてはまた後日話すこともあるかと思う。今日はマルスの帰還祝いとクラリスの歓迎会だ。みな無礼講で楽しんでくれ」

ジークがそう言うと、パーティーが始まった。

その日のパーティーは夜まで行われた。

翌日ブライアント一家とクラリスを集めてジークが家族会議を始めた。

「マルス、クラリス、長旅で疲れていると思うがすまない。今後の俺たちの方針を決める」

ジークがそう言うと参加者全員が気を引き締めた。

ちなみにリーナはクラリスの膝の上にいる。昨日1日でだいぶ懐かれたようだ。

「まずアイク、来年の1月からリスター連合国のリスター帝国学校への入学を目指してほしい。試験は今年の12月からだ。いいか?」

「はい。お父様。この大陸最難関と呼ばれているリスター帝国学校へ必ずや合格して見せます」

このことは事前に知らされていたのだろう。アイクはしっかりと返答をした。

「次にマルス、マルスは土魔法が使えるようになったと言ったな。マルスにはこの1か月でイルグシア迷宮付近の区画整理をしてもらいたい。具体的には冒険者が定住できる、大規模集合住宅を土魔法で作ってもらいたい。出来るか?」

「はい。やってみます。ただしどのような設計にすればよいのか分からないので、あとでご教示お願いします」

ジークは頷くと

「クラリス、君にもやってもらいたい……というか覚えてもらいたいことがある。なんでもいい四大魔法のどれかを必ず覚えてほしい」

ジークがそう言うと、クラリスが

「は、はい。出来る限り頑張ります……がどうしてでしょうか?」

クラリスがそう質問する。ジークの言葉はクラリスだけではなく俺やアイクも疑問に思った。

「うむ。マルスとクラリスにもリスター帝国学校に入学してもらう予定だ。これは私だけの意志ではなく、ビートル伯爵からの願いでもあるのだ。2人に外の世界を見てほしいと。恐らくランパード卿もそう思っているだろう。

そして入学の際必ず鑑定される。その時出来る限り神聖魔法は隠蔽したほうが良い。しかしクラリスが神聖魔法を隠蔽するとその膨大なMPのわりに何も魔法が使えないという事になってしまう。これではあまりにも不自然だ。そのためには他の魔法が使えた方が隠蔽しやすいという事だ。もちろん看破される可能性もあるが……」

「はい。分かりました。言われてみれば当然ですね。私のことを考えて頂きありがとうございます」

さすがジークだ。ここまで考えているとは。アイクも同様に頷いていた。

「そしてクラリスにはこの1か月でなるべくイルグシアに慣れてほしい。ここがクラリスの第2の故郷と思えるように。マリアもよろしく頼む」

ジークがマリアとクラリスを交互に見て話すとマリアが

「当然よ。将来の娘の為には何でもするわ」

ブライアント家は外堀から埋めていく作戦のようだ。

クラリスは顔を赤くし、ほっとしたような顔(俺にはそう見えるだけかもしれないが)をし

「ありがとうございます。マリアさん。よろしくお願いします」

とクラリスが言うと、マリアとリーナが

「急には慣れないかもしれないけど、お母さんと呼んでね」

「リーナもクラリスさんのことをお姉ちゃんって呼んでいい?」

6歳の少女に対してブライアント家の猛攻が始まっている。クラリスは

「はい。ではそのようにさせて頂きます」

と言って笑っている。

「なぜマルスとクラリスに1か月以内と期限を決めたかと言うと1か月後にアイクと2人にはアルメリアの迷宮に潜ってほしいのだ。そこでレベル上げや装備、また可能であればお金を稼いでもらいたい」

それは願ってもないことだ。ただお金に不自由はしていないと思うがどうしてだろうか?

「今から話すのは、これからのブライアント家の展望だ。まず、俺は伯爵への陞爵を目指す」

これにはさすがにびっくりした。しかしマリアとアイクは驚いてはいない。俺が戻ってくるまでの間に2人には話していたのだろう。

「そのためにはどうしてもお金が必要となる。それと人材だ。マルスに大規模な集合住宅を作ってもらうのは人材の確保の為でもある。冒険者は蒼の牙のようにこれから強くなる冒険者もいるが、もう成長期を過ぎて最前線でやっていくのを諦めている冒険者達もいる。

そういう冒険者たちは生活の為に盗賊になったり奴隷落ちしたりすることもある。だから俺はその冒険者たちをこの街の自警団として雇いたい。もし伯爵に陞爵された場合は、騎士団のメンバー、または指南役として迎えたい」

ジークはさらに熱を込めて言う

「蒼の牙のメンバーは皆俺の意見に賛同してくれて、この街に留まってくれることになった。そして蒼の牙と同じくらい有望な赤き翼も賛同してくれている。赤き翼に関してアイクは馴染みがあるだろう。全員D級冒険者のCランクパーティだ。

この蒼の牙と赤き翼の2パーティともう1パーティを雇ってイルグシア迷宮を常時監視したい。もちろん俺とマリアもイルグシア迷宮に潜る。将来的に騎士団3つくらい編成できればと思っている。とまぁこんなところだ。何か質問はあるか?」

ジークがそう言ったので俺は

「ステータスを隠蔽するアイテムってそんなにあるのですか?」

と聞くと

「アルメリアに何点か売っていたな。それも格安で。そもそも普通の人間は自分のステータスを隠蔽する必要なんてないからな」

言われてみればその通りだった。

「よし、ほかに質問は無いようなので、明日から頼むぞ。明日は俺、マリア、アイク、マルス、クラリスでボス部屋に向かう。マルスは攻撃参加しないで、様子を見ておいてほしい。4人でボス部屋をクリアできるようだったら、明後日から4人でボス部屋に潜るという事も視野に入れるから」

翌日5人でイルグシア迷宮のボス部屋に行った。

俺がいなくてもなんとかクリアが出来たが、少し怖い。

まともにゴブリンキングと戦えるのはアイクだけでクラリスはゴブリンロードで手一杯。マジックアローを使えば有利に戦えるのだが、MP温存の為にマジックアローは使いづらい。そしてジークとマリアは魔術師でMPが俺やアイク、クラリスのように高くないため、すぐに攻撃手段が無くなってしまう。

アイクが速攻でゴブリンキングを倒してそのあとにゴブリンロードやゴブリンジェネラルを倒すという順番になる。

アイクがゴブリンキングを倒すのに手こずるとピンチになってしまう。

ちなみに5人でボス部屋攻略しても宝箱は出なかった。

安全第一という事で、4人で潜るという案は無くなり、時間があるときは湧き部屋で戦う事にした。

そして1か月が経った。