軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第481話 逸脱

3層は冒険者がだいぶ少なくなり、戦闘する機会も増える。

「俺が4層まですべての魔物を倒そうか?」

女性陣に褒められたのがよほど嬉しいのか、やる気のスキャル。

そうして欲しいのはやまやまだが、俺たちとしても戦っておきたい。

「ありがとうございます。ですが僕たちも体を動かしてはおきたいので、今度は僕たちの戦いを見ていただけませんか? 戦いを見てアドバイスをいただければお願いします」

少し残念そうな表情を見せるスキャルだが、理解してくれた。

次の部屋を覗くと、3層でスキャルが倒したブラッディーモーが20体弱。

前衛だけのパーティだとかなり苦戦しそうだな。

「じゃあどうする? みんなで戦うか?」

どうするか問うと、アリスが手を挙げる。

「皆で戦うと私の出番がなくなってしまうので、ここは私とハチマル、姫の3人でお願いします!」

アリスもだいぶ幻獣の森で強くなれたから色々試してみたいのだろう。まぁ今のアリスからすれば役不足だろうがな。

「おい? ハチマルってペットだよな? どうやってハチマルが戦うんだ?」

そういえばまだスキャルにはハチマルのことを言ってなかったな。

「まぁ見ててください。きっと驚きますから」

アリス、ハチマル、姫の3人を先頭に部屋に入ると、早速姫が芭蕉扇を煽ぐ。

芭蕉扇から放たれる風は巨体のブラッディーモーを吹き飛ばすことは出来ずとも動きを封じることに成功し、そこにハチマルが火を吐くとスキャルが叫ぶ。

「火喰い狼か!?」

誰もスキャルに返事することなく戦闘を見届ける。

ブラッディーモーの群れはハチマルと姫のMPをまったく消費しないコンビに為すすべなく魔石と変わった。

「結局私の出番はありませんでした。ハチマルと姫のコンビは強すぎです。次はエリー先輩と組ませてください」

「まぁ妾だけでも余裕じゃったがの!」

肩を落とし戻ってくるアリスにご機嫌の姫。確かにハチマルと姫のコンビは極悪だな。

ハチマルはというと戦闘が終わると、カレンの下に駆け、いい子いい子をねだっている。

「おい!? 答えてくれ!? 火喰い狼だよな!?」

信じられないという表情を見せ再度問いかけてくるスキャル。

「正確には火喰い賢狼です。カレンの魅了眼に魅せられ、カレンのいうことは絶対順守。僕たちのいうこともしっかりと聞いてくれます」

「……これは……夢か……夢なんだ……」

なかなか現実を受け入れることができないらしい。まぁ初めてハチマルを見る者は皆こうなるからな。

「スキャルさん! 行きますよ! 道案内をお願いします!」

なんとかスキャルを現実に引き戻し、歩を進める。

すると次の部屋でもまた驚くスキャル。

「え、エリーってなんであんなに疾いんだ!? 俺も疾さには自信があるが、俺よりも疾いだと!?」

「外見からでは分からないかもしれないのですが、実はエリー、金獅子族なのです」

「き、金獅子族!? これほどまでの美女が!?」

ちょっと獣人に対しての偏見が入っているのかもしれないが、それは言葉の綾としてスルーしておいた。ビックリすると思ってもない言葉が出てしまうときもあるからね。

エリーは何も言わず、一瞬スキャルに微笑みかけ、俺の隣に収まる。

「スキャルさん! 私の戦いはどうでした!?」

話がエリーにばかり向いてしまったが、アリスの身のこなしも良かった。

「あ、ああ……そこらのC級なんか目じゃないな。B級中位はあると思う」

スキャルに認めてもらい喜ぶアリス。

「アリス。段違いに良くなっているな。でも余裕だからって油断しただろ? ほらここ」

左足の脛に少し傷ができているのを指摘する。

「え? どうして? こんなところ攻撃された覚えがないのに」

「それはアリスがブラッディーモーに止めを刺し、相手が倒れ込んだとき角が少し掠ったんだ。今度からは倒したあとも気をつけるように。痕にならないように回復してくれ」

頭を撫でながら注意すると、素直に頷くアリス。

「ありがとうございます! これからは気をつけます!」

素直なアリスにスキャルも笑顔を見せるが、次のアリスの言葉にスキャルの目ん玉が飛び出そうになる。

「ヒール!」

優しい光がアリスの手から放たれ脛の傷を癒す。

「ひ、ヒールだと!?」

当然の反応にアリスがさらっと一言。

「あ、私は神聖魔法使いなのです」

「い、いや! 神聖魔法使いが迷宮に入るなんてとんでもない! 今すぐここから出ろ!」

この世界の常識では神聖魔法使いは戦いに参加しない。パーティが迷宮に入るときは街で待機するのが一般的らしいからな。

「スキャルさん。【暁】では神聖魔法使いも戦闘に参加するのが基本なのです。それにスキャルさんもアリスのことをB級冒険者相当の腕があると太鼓判を押してくれたじゃないですか。神聖魔法使いが共に迷宮に入ってくれると傷を負ったらすぐに回復ができますからね」

「それでも出るべきだ! 神聖魔法使いは保護されるべきだろう!」

語気が強くなるスキャル。

「スキャルさん。私だけマルス先輩と一緒に居られないのであれば、神聖魔法は金輪際使いません。私が神聖魔法を使わなければ、使えないのと同じですよね?」

真剣な眼差しをスキャルになげかけるアリス。

「す、すまない。勝手に興奮してしまって……ただ貴重な神聖魔法使いがまさか迷宮に入るなんて……俺もパーティを組んでいたとき、喉から手が出るほど神聖魔法使いが欲しかったが、ついには見つからなくて……」

興奮するのは仕方のないことなのかもしれないな。特に神聖魔法使いを迎え入れることができなかった者からすれば。

「スキャルさん。僕たちのことを考えた上での発言ありがとうございます。でもアリスがこう言っている以上、これからも一緒に連れて行こうと思います」

スキャルは俺たちのことを考えての発言だったからな。

「いや、本当に申し訳なかった。希少な神聖魔法使いと魔物すら魅了する者を初めて見たからな。まだ信じられないんだ。もう少し経てば落ち着くと思うから……」

冷静になろうと努めるスキャル。今まで経験してきたこと、すべてを否定するような出来事が続いたからな。無理もない。

「じゃあ次の部屋は私に行かせて。エリーとアリスの戦いを見ていたら私も動きたくなっちゃった」

魔法の弓矢(マジックアロー) ではなく、ディフェンダーを手に持つクラリス。

「クラリスが剣を使うなら私も鞭で戦うわ」

カレンはレッドビュートを使うようだ。

「い、いくらなんでも後衛の2人が別の得物で戦うなんて無茶だろ!? マルス、止めなくていいのか!?」

本気で2人を心配するスキャル。こいつもなんだかんだいい奴だよな。

「ええ。見ていてください。2人もかなりやりますから」

2人の戦闘を見て衝撃を受けるスキャルは想像するに容易かった。