軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第477話 迷宮へgo

「よし。マルスたちの準備はできているようだな…… ポーター(荷物持ち) の男の姿が見えないようだが?」

「ポーター? ああゲイナードさんのことですか? あの人はポーターでも冒険者でもないので気にしないで下さい」

部屋まで迎えに来てくれたジオルグの問いに答えると、

「あの体つきでポーターでも冒険者でもない? もったいない気もするが……」

ジオルグが何かを考え込む。あれ? もしかしてスカウトしようとしてる? このままじゃ俺がスパイを送りつけたような気もするから素性を明かしてやろうと思った時に、隣の部屋の扉が開く。

「おう、おはよう。今から行くのか?」

俺たちの会話を盗み聞きしていたのか? というタイミングで部屋から出てきたゲイナード。

「おはようゲイナード。今から潜るんだけどゲイナードもポーターとしてくる? クラリスの鞄の中からはいい匂いがするんだよ。その匂いの正体はクラリスの……」

ミーシャがゲイナードに話しかけると、ゲイナードが食いついてくる。

「マジか!? その鞄にはマルスのも入っているのか!?」

「「「え!?」」」

ゲイナードの言葉に俺たちだけでなくジオルグも声を揃える。頭のキレるジオルグはすぐにゲイナードを危険人物と判断したようだ。

「ははは。冗談冗談。俺はちょっとやることがあるからパスだ。まずは冒険者ギルドに行って……」

冗談とは思えないほど目がマジだったんだよなぁ。それにゲイナードはいつもよりもご機嫌な様子。もしかしてこいつ冒険者ギルドで男漁りをするつもりでは?

そう思ったのは俺だけはないらしく、皆が顔を引き攣らせてゲイナードを見送る。

「じ、じゃあ気を取り直して行くか。スキャルはエントランスでもう待っているはずだ」

ゲイナードと十分距離を取ってから俺たちも部屋を後にした。

エントランスホールでスキャルと合流すると、怪訝な表情を浮かべるスキャル。

「マルス。お前がいくら強いとはいえ、迷宮に女を連れ込むな。せめて1人にしろ。それに散歩に行くんじゃないんだ。ペットは連れてくるな」

「いえ、彼女たちは僕のクランの一員。非常に強いので安心を。それにこのハチマルは索敵にはもってこいです。ハチマルも【暁】のメンバーなので」

褒められて嬉しいのか、ハチマルが俺と足に体を擦り付けてくる。

しかし、俺の言葉に納得できないスキャル。反論しようと口を開こうとするが、それをジオルグが制す。

「スキャル。スザクを知っているな? フレスバルド公爵家嫡男の」

「はい。俺がもっとも戦いたくない相手の1人です。マルスもその1人に入りましたが」

ちらりと視線を向けてくるスキャル。そのスキャルにジオルグが諭すように語り掛ける。

「そのスザクがリムルガルド城の 迷宮飽和(ラビリンス) を止めたのは知っているな? ミックと一緒にリムルガルド城下町の火喰い狼たちを倒したのも」

「当然です。ミックさんは俺たちの誇りですから」

ミックってみんなに慕われて凄いよな。

「そこに同行したのが彼ら【暁】だ。しかもクラリスとエリーはリムルガルド城まで潜り、見事生還している。バルクス王国にいたAランクパーティがリムルガルド城でいくつも全滅しているのは知っているよな?」

「――――なっ!? あのリムルガルド城に!?」

驚き、女性陣を見やるスキャル。すると俺の隣に立っていたクラリスが前に出て自己紹介をする。

「クラリス・ランパードと申します。弓術が得意で、水魔法も扱えます。未熟かもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします」

可愛らしく顔を傾け微笑むと、直視してしまったスキャルが胸を押さえる。どうやらスキャルも天然魅了眼にやられてしまったようだ。

自己紹介を終えたクラリスがエリーにアイコンタクトを送ると、エリーも簡単に済ませる。

「……エリー・レオ……得意……短剣……好き……マルス……」

一瞬スキャルに対し微笑みかけるが、すぐに俺と腕を組むエリー。スキャルからは涎を啜る音が。

「フレスバルド公爵家次女のカレンよ。当然スザクお兄様と同じく火魔法が得意。よしなに」

手入れの行き届いた赤い髪をかき上げるカレン。

「ふ、フレスバルド公爵家!? スザクお兄様って……」

目を見開くスキャルに畳みかける女性陣。

「 妖精族(エルフ) のミーシャでーす! 槍術、水魔法、風魔法が得意でーす!」

「アリス・キャロルです! 細剣術が得意です!」

「妖狐のヒメリ・クラマじゃ。特別に姫様と呼んでも良いぞ?」

ミーシャ、アリス、姫と続き、全員の自己紹介が終わったところでジオルグが一言。

「スキャル。信じられないかもしれないが、全員がマルスの婚約者で、全員ミックのお墨付きだ」

姫は違うけど? って言う雰囲気じゃなかったのでスルーしておいた。

ジオルグの言葉を受けたスキャルは例に漏れず俺を睨んでくる。もう慣れたよ。

「迷宮で彼女たちにちょっかいを出す者がいたら、マルスには処してよいと伝えてある。もちろんハチマルのことを言う者にもな。スキャルはマルスたちに絡んでくる冒険者たちをできるだけ追い払ってくれ」

「わ、分かりました……が、冒険者全員を殺すことになりかねない気もしますが……それに俺まで……」

「そうはならないように頼む。ということで、行くぞ」

不安そうな表情のスキャルをよそに、ジオルグを先頭に宿を出る。

街に出ると、煌びやかな鎧を纏った者たちに警備されながら迷宮へと向かう。

道中、冒険者や住民の好奇な目はもう慣れっこ。気にせず迷宮へ歩を進め、迷宮の前まで着くと、

「俺たちはここまでだ。あとは頼んだぞ。スキャル、マルスたちに迷宮を任せてよいと判断したら途中で戻ってきてくれ。だが最低でも4層までは同行を頼む」

なぜ4層? と思ったが質問する間もなくジオルグが足早に宿へ戻る。

「じゃあ行くか……フォグロス迷宮は偶数階に安全地帯がある。今日は2層の安全地帯を目指すとしよう」

「はい!」

スキャルに連れられ、迷宮に入る俺たち。

ゲイナードを連れて行けば良かったと後悔したのは、迷宮を出てからのことだった。