軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第475話 93位VS77位

「ではA級77位スキャル対A級93位マルスの試合を始める。ジオルグ! 試合結果はお前からギルドマスターに伝えろ! いいな!?」

バルクス王の言葉に頷くジオルグ。

「始め!」

バルクス王の開始の合図と共に、短剣の腹を叩きながら構えるスキャル。

どうやら俺に飛び込んできてほしいようで、薄ら笑いをしている。

試合前から張り巡らされた糸に卑怯と思う者もいるだろう。確かに卑怯かもしれないが、今回に限っては俺に有利に働く。

恐らく普通の人では目を凝らしても視認できないであろう細い糸。しかし俺の天眼はそれを容易に捉えることができた。

最初からネタが分かってしまえば警戒するのも簡単。飛び込んだところに糸を絡ませる……あるいは、強度によっては切断できるのかもしれないが、分かってしまえばなんてことはない。

これであれば、スキャルは最初から糸を張り巡らさせないほうが良かったかもしれないな。

「なんだ!? 怖気ついたのか?」

いつまでも攻めない俺を挑発するスキャル。

「僕にも負けられない理由がありますからね」

そう言いながらもスキャルの鑑定を済ませる俺。

【名前】スキャル・シルキー

【称号】-

【身分】人族・シルキー男爵家当主

【状態】良好

【年齢】30

【レベル】60

【HP】181/181

【MP】52/52

【筋力】88

【敏捷】92

【魔力】12

【器用】101

【耐久】52

【運】1

【特殊能力】短剣術(Lv6/C)

【特殊能力】糸術(Lv8/B)

【装備】幻糸の刃

【装備】錯影の法衣

ガスター、スザク、ヒュージ、ゲンブ、ミック、リュートとA級冒険者を鑑定してきたが、ステータスは一番スキャルが低いな。

ってあれ? 今考えるとズルタンって相当強い部類に入るのでは? あいつがすべてのこだわりを捨てればA級冒険者に返り咲ける……が、あの弱点だけはどうにもならないような気がする。

と、もう1つ。やはりクラリスとエリーは間違いなくA級冒険者の実力はあるな。アイクもだろう。

スキャルは俺が鑑定したのに気づいたのか、少し焦りの色が見える。

「お前!? まさか鑑定持ちか!?」

戦闘中にバラす必要はないのだが、相手の動揺を誘うためにも正直に話す。

「そうですよ。申し訳ないですがもう鑑定させていただきました。僕が負ける可能性は万が一にもありませんね」

スキャルからしてみれば、相当憎たらしく映っているだろう。

「ちっ!? 見下しやがって! 俺は背が高い奴が大嫌いなんだ!」

どうやら身長にコンプレックスを持っている様子のスキャル。

そう吐き捨てると、部屋中を所狭しと跳躍する。飛び回りながら、スキャルの剣先からは細い糸が張られる。

どうやら糸の上も乗れるようで、糸が見えない者からすれば、空中を跳んでいるように見えるだろう。

俺も当然、 未来視(ビジョン) で警戒をするが、スキャルからは攻めてくる気配がない。ただただ飛び回るだけ。よほど慎重なのか、自分の攻撃力に自信がないのか。

まぁここであまり時間を使っても仕方ない。もう夜だし早く休みたいしな。

「では、行きますよ!」

雷鳴剣を抜き、その場で剣を振う。それも 風纏衣(シルフィード) を纏い、剣先が見えぬよう全力で。

剣が空を斬る瞬間、魔法を唱える。

(ウィンドカッター!)

空気を斬る摩擦音とともに風の刃が張り巡らされた糸を瞬断。勢いあまって壁を深く切り刻む。

「――――っ!?」

その威力に怯えるスキャル。

何度も俺の剣は宙を斬り、その度に糸を切断する。

すべての糸を斬るのに5秒もかからなかった。

「さて、すべての糸を斬りましたが、戦いを続けますか? 僕の刃は糸を切断するのもスキャルさんの首を切断するのも変わらないと思いますが? 試してみます?」

何が起きているのか分からない様子のスキャルに脅しをかける。

「い、いや……俺の負けだ」

剣を地面に落とし、両手を上げ、呆然としながらも負けを認めるスキャル。一応奇襲の可能性もあるかもと思い 未来視(ビジョン) で警戒するが、大丈夫のようだ。

しかし、スキャルが負けを認めたというにも拘わらず、勝利のアナウンスが流れてこない。

後ろに立つバルクス王を振り返ると、驚愕の表情を浮かべていた。あ、今のパフォーマンスに驚いてくれていたってことね。

「バルクス王。僕の勝ちでよろしいですね?」

俺が声をかけると、ようやく我に返ったバルクス王。

「あ、ああ……勝者マルス! ジオルグ、明日にでもギルドマスターに今回のランバトの結果を伝えてこい。スキャルよ。相手が悪かっただけだ。それに得意としているのは対人戦ではないというのは余も知っている。此度の件は気にするな」

未だ呆然とするスキャルに声をかけるバルクス王。たしかにこの糸、性能によっては魔物狩りには有効だろうな。

特に湧き部屋で糸を張り巡らせることができれば、無限に屠り続けることができるかもしれない。

「マルス! 見事であった! 今日のところは部屋に戻り休め! ジオルグ! マルスを適当な部屋に案内しろ! 案内し終わったら余のところに戻ってこい! 話がある!」

バルクス王の言葉通り、ジオルグに部屋まで案内してもらう。

「マルス? 聞かせてくれ? お前は本気を出すとどのくらいの強さなのだ?」

地下から階段を上がる最中にジオルグから質問を受ける。ゲイナードも興味があるようで、耳を傾けている。

との位の強さと聞かれても正直俺も分からない。カタログスペックでいえば間違いなくディクソン辺境伯よりは弱いだろう。

それにA級冒険者上位の実力も知らない。なんと答えていいか言い淀んでいると、カレンが代わりに答えてくれた。

「 A級一桁(ナンバーズ) 以外には負けることはないと思っております」

「そうか……鑑定できるカレンがそう言うのであれば信憑性は高いな。マルス、今回のクエストの褒美は期待しておいてくれ。きっとマルスであれば気に入ってくれるだろう」

どうやら褒美に自信がある様子のジオルグ。やっぱりミックの言っていたように爵位か……どうやって断るか今のうちにみんなに相談しよう。

部屋まで送ってくれたジオルグの背中をぼんやりと見ながらそんなことを考えていた。