軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第458話 トラウマ

2032年9月11日14時

「みんなお疲れ様! たぶん明日には 一角獣(ユニコーン) が現れる泉に到達できると思うわ! これで美味しいものでも食べて、明日に向けて英気を養ってちょうだい! あとマルス君。ちょっと聞きたいことがあるのだけれどもいいかしら?」

幻獣の森から戻るとカストロ公爵から金貨袋を受け取る。かなり重い。正規の依頼料の他にもこのクエスト期間中に、かなりのお金を貰っている気がする。

前回のグランザムのクエストといい、やっぱりA級冒険者に払われる金額は桁が違うんだな。みんなA級冒険者になりたがるわけだ。

「オレンジよ。マルスと2人でというは許さんぞ? 最低でも妾の同行は許可せい」

もしかしたらリーガン公爵に何か言われているのかもしれない。俺とカストロ公爵が2人きりで話すと丸め込まれるだろうからな。

「はぁ……仕方ないわね。あの女狐からそう言われているんでしょ。あといい加減私のことをオレンジ呼ばわりするのをやめなさい。私が命令せずともあなたの首が飛ぶわよ? これは脅しではないからね」

カストロ公爵の言葉に聞く耳を持たない様子の姫。そこにカレンが釘をさす。

「ヒメリ、今の話は本当よ。これから【暁】のメンバーになるのよ。あなたが変な言動をするたびにマルスの株が下がるし、よけいなトラブルも増えるわ。マルスは自分が何と言われても気にしないだろうけど、私たちが嫌なの。一緒にいたいのであれば、直したほうがいいわ」

確かに余計なトラブルに巻き込まれて女性陣が危険な目に合うのは嫌だな。

「ふむ……そうじゃの。ではカストロ公爵、今までのことはすべて水に流すのじゃ」

姫も納得したらしい。まぁ姫もリーガン公爵に煽られている部分もあったからな。カストロ公爵の表情も少し和らぐ。

「じゃあみんな。先に部屋に戻って用意を済ませておいてくれ。俺も終わり次第部屋に戻るから」

「うん! 今日は美味しい物いっぱい食べるんだから! フラフレの2人もどう?」

ミーシャが双子を誘う。まぁ今日も断られるだろうが……と、思ったら予想だにしない答えが返ってきた。

「はい。それではお言葉に甘えて」

「あまり参加したことがないのですが、よろしくお願いします」

まさかの言葉に誘ったミーシャもびっくりしている。

「じゃあ、早く部屋に戻ってみんなで汗を流してマルスたちを待っていましょう。姫、マルスをよろしくね」

クラリスが皆を連れて部屋に戻っていく。

俺と姫の2人は、カストロ公爵に連れられ、レプリカの一室に入った。そこは数ある応接間の1つでカストロ公爵に促されソファに座る。

「聞きたいのが第2騎士団のことなの。レプリカの女性たちから最近になって第2騎士団員からいつもとは違った視線を感じると報告を受けてね。確かに変わった気がするのよ。あなたたちが来てから」

あ、ついにカストロ公爵にまでその情報が伝わってしまったか。でもなんて答えればいいんだ? 迷っていると、カストロ公爵が続ける。

「答えづらそうね。もっと言うと、第2騎士団入隊の絶対条件が女性に興味がないことというのはもう知っているわよね? その者たちが女性に目を奪われていると報告が上がっているのよ。あなたたちがレプリカに泊まってからだから、マルス君が変なことを教えているのではないかって疑っているのだけど?」

え? 俺が疑われているの?

「僕はフランさんとフレンさんと同じことしか教えていませんが……」

嘘はついてない。それに真相を話すと、クラリスにお咎めが及ぶかもしれないから語れない。

「そう。マルス君は嘘を平気でつくような子には見えないし……まぁいいわ。アーリマンを倒してもらってからいつもの試験をやればいいだけだし」

いつもの試験? 気になるけど聞けない。

「いつもの試験ってなんじゃ? もったいぶらずに言ってみぃ」

さすが姫。疑問に思ったことは臆せずに聞く。俺も見習いたい。

「ん? 女淫魔(サキュバス) よ。 女淫魔(サキュバス) に誘惑させて引っ掛かるようであれば第2騎士団除名。簡単でしょ? 入隊条件も一緒。だから第2騎士団員は過去一度も誘惑されたことないのよ」

第2騎士団を誘惑などせずに、全員落としてしまうクラリス。もうクラリスと 女淫魔(サキュバス) の格付けは済んだな。ミーシャに 女淫夢(クラリス) と呼ばれるわけだ。

用件はそれだけだったようで、すぐに解放された俺と姫。すぐに部屋に戻り、皆でウオールの街に繰り出した。

――――夕方

「「「かんぱ~い!!!」」」

いつものメンバーに双子を加えて食事処でグラスを合わせる。ちなみにいつものメンバーにはゲイナードも含まれる。

「今日はフランとフレンも一緒か。どういう風の吹き回しだ?」

そういうゲイナードの表情は明るい。双子のことを心配していたからな。

「いつも楽しそうにミーシャ様がお話しになられるので」

「クラリス様たちと一緒であれば、視線を感じないので」

双子の言葉に口をあんぐりさせるゲイナード。

「任務以外で……久しぶりに……」

まさか返事をしてもらえるとは思ってなかったということか。どうやらゲイナードに頼まれていたことも達成できたようだな。

そんな双子もミーシャと姫の掛け合いに腹を抱えて笑う。お酒の力もあってか終始笑顔だ。

でも明日は 一角獣(ユニコーン) と接触するかもしれない大事な日。体調も考慮し、ミーシャの反対を押し切って早めにお暇することにした。

「あの、お金はお支払いします」

「そこまでしていただくわけには」

会計を済ませて外に出ると、双子が恐縮する。

「いいの。いいの。そんなこと気にしちゃだめだよ? ゲイナードを少しは見習わなきゃ」

いつも美女たちを眺めながらタダ酒を呑むゲイナードを揶揄するミーシャ。確かにこれだけのメンバーを揃えているのだから、お金をとってもいいな。

「おいおい、俺とミーシャの仲じゃないか。何を今さら」

どんな仲だよと思っていると、それを楽しそうにクスクス笑う双子。まぁ双子も来てくれたことだし、ゲイナードからの集金は勘弁してやるか。

帰りも皆でくだらないことを話しながらレプリカへ歩いていくと、前方から歩いてくる男のグループの1人と肩がぶつかった。おかしいなぁ。避けたつもりなんだけど……。

「ごめんなさい」

でも当たってしまったからには当然謝る。しかし男は許してくれる気はないらしい。

「おい! 女を連れているからって調子に……」

最初こそ威勢が良かったものの、どんどん尻つぼみになる声。男たちを見ると、俺の顔を見てフリーズしている。あれ? 知り合い? 確かにどこかで見たことが……すると、珍しく潰れなかったミーシャが指をさしながら大声で叫ぶ。

「あぁ! 【月華】だ!」

【月華】? どおりで見たことがあると思った。エルシスのパーティ【月華】のメンバーか。

なんだ、こいつらかと思っているのは俺たちだけで、双子は【月華】のメンバーを見て震えていた。そして【月華】のメンバーが双子を捉えると、

「おい、お前らフランとフレンだよな。ちょっと俺たちと遊ぼうぜ」

俺たちがいるにも拘わらず、下卑た笑みを浮かべながら双子に声をかける。どんな神経しているんだ?

「フランさんとフレンさんは僕の仲間で、明日も早いのでそういうのやめてもらえませんか? それは今日だけの話ではなく、金輪際彼女たちに関わらないで欲しいのですが」

聞くまでもなく双子は嫌がっているからな。

「なっ!? 仲間だと!? ってことはお前らもこいつのハーレムに?」

俺は仲間といっただけでハーレムなんて言葉を一言も言ってない。黙っていると勝手に解釈したようで、不貞腐れながら言葉を吐き捨てる。

「ちっ! 分かったよ! エルシスがあれだけ圧倒されちまうんだ。関わらねぇよ」

取り敢えず言質はとった。しかし口だけということもある。そう思ったのか、カレンが釘をさす。

「言っておくけど、2人に少しでも近づいたらフレスバルド公爵家とセレアンス公爵家があなたたちを地の果てまで追いかけるわよ? そして捕まったら最後、エルシス以上の 百獄刑(ロンド) に処すわ。股間だけでなく目や鼻、耳、爪……ありとあらゆるところで死ぬまで続けるから覚悟しなさい」

【月華】のメンバーたちは双子以上に震えていた。

「わ、分かりました。絶対に近づきませんから……」

カレンにすがろうとする【月華】のメンバー。

「あら、まだ近くにいるということはよほど 百獄刑(ロンド) をご所望らしいわね」

カレンの脅しを最後まで聞くことなく逃げる男たち。

「ありがとうございます……」

「マルス様? 1つお伺いしたいことが……」

聞いてきたのはやはりエルシスのこと。自分からエルシスに勝ったっていうのは、なんかみっともないというか、ダサいというか……それを察してくれたのかクラリスたちが俺とエルシスの戦いや顛末を話す。

「まさかマルス様があの男を……」

「奴隷落ちしたということはもうあの男はここには……」

双子の顔は安堵の表情が。その様子を見ていたミーシャが、

「ねぇ、私そっちの部屋に泊まりに行ってもいい?」

泊まりに行きたいと申し出る。

「え、ええ。構いませんが?」

「散らかっていてもよろしければ」

戸惑いながらもOKが出ると、

「じゃあアリスと姫も来て。できればカレンも」

他にも誘うミーシャ。そして何かを察したかのように頷くカレン。

「そうね。今日はそっちに行った方が良さそうね」

カレンに続いてアリスも頷くと、姫もそれに流される。

部屋に戻ってから風呂に入り、久しぶりにエリーを真ん中にし、俺とクラリスとエリーの3人でベッドに潜る。

エリーは満面の笑みを浮かべながら、俺の左腕を枕にしながら夢の世界へ。その幸せそうな顔を優しく撫でながら、クラリスが口を開く。

「なんでミーシャが突然あの2人の部屋に泊まりに行くって言ったか分かった?」

「いや、全く分からなかった」

正直に答えると、クスリと笑顔を見せるクラリス。

「ミーシャはね。同じ経験をしていた双子を放っておけなかったのよ」

「同じ経験?」

「そう。双子にとってのエルシスや【月華】は、ミーシャにとってのゲドーなのよ。きっと双子の方が【月華】のメンバーより強いと思う。でも怖いのよ。それはミーシャも一緒。間違いなく商人のゲドーなんかよりは、ミーシャの方が強いのにあれだけ怯えていたでしょ?」

言われてみれば確かにそうだな。ミーシャの場合は幼い頃という思い出補正もあったかもしれないけど、双子に関してもまだ入団当初という話だ。さすがに当時からエルシス以外よりかは強いと思うが、それでも怖かったのだろう。

「じゃあ、今頃向こうの部屋では?」

「きっとミーシャが双子のトラウマを忘れさせるような大暴れをしているのではないかしら? やり過ぎていなければいいけど」

まぁカレンがいるからそこは大丈夫だろう。

「ミーシャいい奴だな」

「マルスが選んだ子だもの。当然よ……で、そんなマルスはあの2人のことをどう思っているの?」

少し真面目なトーンに変わり、緊張した面持ちとなる。

その質問に嘘偽りなく正直に答えると、笑みを浮かべてエリーの左頬にキスをして一言。

「おやすみ」

俺もエリーの右頬にキスをしてから、おやすみを言って眠りについた。