軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第456話 案内

「マルス君! 何なの!? あのおぞましい杖は!?」

レプリカに戻りカストロ公爵に問い詰められる俺。あの後3人の意識が回復すると、すぐにレプリカに戻ってきたのだ。

理由は双子がどうしても賢者様を触った手を洗いたいとのこと。双子はレプリカに戻るなりすぐに騎士団の入浴施設へ、我先にと走っていった。

「は、はぁ……あれは賢者の杖(偽)といいまして……」

「賢者!? どこが賢者よ!? あれ無しでなんとかならない!? ずっとあれと一緒に居たってことを考えると……最悪マルス君には……」

カストロ公爵が震えだす。やっぱ賢者様の実力を目の当たりにするとこうなるのか。賢者様なしでとなると、クラリスのハンカチ頼みになるのだが……逡巡しているとエリーが自信たっぷりに口を開く。

「……無理……少し……匂う……マルス……誘惑……」

あれ? 俺はさっきクラリスのハンカチの匂いしかしなかったんだけど……まぁ両手で鼻と口を塞いでいたからな。

「エリリンが言うなら間違いないね! とりあえず対策は後で考えることにしてお風呂に入りたい!」

ミーシャの言葉で一旦解放され、部屋に戻れた俺たち。

部屋に戻り身を清めるが、夕飯にはまだ早い。ベッドに腰かけ、幻獣の森にどうやって挑もうか話し合おうとしたのだが、女性陣の結論はすでに出ていたようだ。

「みんな? これまでとやり方は変えない。それでいいでしょ?」

クラリスが皆に問う。すると、カレン、ミーシャ、アリスが頷きながら答える。

「当然よ。私が学校で言ったじゃない。何をいまさらって話よね」

「うんうん。あの杖は嫌だけど、マルスがいない方が嫌だもん」

「そうですよ。いてもらわないと困ります!」

なんだかんだ必要とされているようでホッとした。

「じゃあ姫、あとは姫に任せたわよ。明日からは姫がマルスとペアを組んでね」

「どーんと任せておくのじゃ!」

クラリスに言われ、胸を叩いて見栄を切る姫。

なぜ姫に任せたかというと、双子が悲鳴を上げて倒れた時、姫だけこなかった。それはクラリスがこの展開を読んで、留まるように指示をしていたのだ。

決めることも決まったし、夕食まで何をしてようかと鎖を弄っているところに、部屋の扉をノックする音が。扉を開けるとそこには双子がアリスの制服と布製の袋を持って立っていた。

「さきほどは取り乱してすみません」

「これ、アリスさんに借りていたものなのですが……」

双子の声を聞いた、エリーを除く女性陣が集まってくる。

「大丈夫でしたか? あんなのを急に見せられてびっくりしましたよね? 立ち話も何ですからどうぞ。お入りください」

意外なことにクラリスが部屋に入るように促す。

2人を部屋に招くと、双子がアリスに制服を返す。

「第1騎士団の洗濯当番にしっかり洗わせました」

「一応これも持ってきたのですが……こんな素材初めて知りました」

アリスに二組の制服を渡し、布製の袋の中身をアリスに見せ、双子が続ける。

「これは私たちが買い取ってもよろしいでしょうか?」

「どこで売っているのかも教えてくれませんか?」

「いえ、そのまま差し上げますよ。まだ使用してなかった物があったので。売っている場所はどこの街にでもあると思うのですが……クラリス先輩が皆に口を酸っぱくして、下着だけはいいのを穿きなさいって。いつマルス先輩が……」

「あ、アリス!? 何を言って居るの!?」

慌ててクラリスがアリスの口を塞ぐ。

袋の中身は下着だったのか。と、ここでまたもクラリスが意外な提案をする。

「も、もしよろしければ、一緒に街へ出ませんか? 私たちも夕飯まで時間があるので。ついでにレプリカの中を案内していただければ……」

双子が顔を見合わせて、息ピッタリに答える。

「「はい。喜んで」」

早速部屋を出て、まずはレプリカの中を案内してもらう。

まずレプリカの2階以降は、セキュリティのために限られた者しか上がって来られないらしい。主にカストロ公爵に招かれた貴族、カストロ公爵家に連なる貴族。それに各騎士団の役職持ちだけとのこと。

2階に上がって右側の扉を開いた先にある俺たちが泊まっていた部屋の数々は、そんな貴族のためのゲストルームらしい。どおりで1泊金貨5枚の部屋よりも広いわけだ。

そして階段を上がった左側の部屋の扉を開くと、応接間や会議室のような部屋がいくつかと、騎士団長、副騎士団長用の部屋があるという。

フランとフレンの部屋にも案内されたのだが、俺はエリーと一緒に外で待機。中がちらっと見えたのだが、かなり散らかっていた。ちなみに騎士団長ともなれば1人1部屋与えられるそうだが、2人は一緒の部屋に住みこんでいるらしい。クラリスとエリーみたいだな。

エリーと2人で待っているのだが、なかなか女性陣が双子の部屋から出てこない。リムルガルド城攻略のために色々見て回っているのだとは思うが、遅すぎる。きっとミーシャあたりが余計なことを言って盛り上がっているのだろう。

痺れを切らした俺はエリーの手を引き、ある部屋の前に立つ。ここはさっき双子が紹介してくれた部屋。誰が中にいるかは分かっている。

扉をノックし、名前を呼ぶとゆっくりと扉が開かれた。

「おお、どうした?」

杖を突いて出てきたのはゲイナード。立つのも辛そうだが、キョロキョロ周囲を見渡している。きっとクラリスがいないか確認しているのだろう。

「以前お話ししたと思うのですが、レプリカの探索をしておりまして。できれば部屋を見せていただいてもよろしいでしょうか?」

クラリスがいると色々ややこしいことになるからな。いない今がチャンス。

「そういえばそんなことを言っていたな。いいぞ。上がってくれ」

「おじゃましまーす」

エリーと一緒に部屋の中に入ると、双子の部屋とは大違いで綺麗に片付けられていた。まぁなんとなくそんな気はしていたんだけどね。

「綺麗にしてますね」

素直な感想を述べると、エリーが続く。

「……うん……引く……」

おいおい。引くって……女性からすれば綺麗好き『すぎる』男はプレッシャーになるというのを聞いたことがあるようなないような……俺も気をつけよう。

「第2騎士団はあまりやることもないからな」

確かにカストロ公爵も同じことを言っていたな。

ゲイナードの部屋は俺たちが泊まっている部屋よりもかなり狭かったが、1人で住むには十分な広さだ。部屋の隅々まで見て回ると、外から女性陣が俺を探す声が聞こえてきた。

「ゲイナードさん。ありがとうございました。僕たちは次の場所へ行くので」

頭を下げて部屋を出ようとすると、

「ちょっと待て! 俺も連れて行ってくれ! フランとフレンの声がしたから2人と同行しているのだろう? 2人は第2騎士団が駐屯する塔には近づかないはずだから俺が案内してやる」

ゲイナードが連れて行ってくれと頼み込んでくる。

「なぜフランさんとフレンさんが第2騎士団の塔に近づかないのですか?」

疑問に思ったことを聞くと、ゲイナードが得意げな表情を作る。

「あの2人は男が得意じゃないんだ。だから滅多なことがない限り男とは話さないし近づかない。だから任務以外では俺も話したことは一度もない」

へぇ……そういえば一度ゲイナードと双子が街で俺を呼び止めたことがあったが、あのときも話してなかったな。朝も第2騎士団に挨拶されても目も合わせていなかったし。

ん? でも俺は話してもらっているが……まぁプライベートなことは一切話していないし、クエスト上仕方のないこと。もしくは俺は男として見られていないということか。

「分かりました。そういうことであればよろしくお願いします」

ゲイナードを連れ部屋の外に出ると、女性陣が安堵の表情を浮かべる。

「良かったぉ……マルスが誰かに誘惑されてどこか行っちゃったかと思ったよ」

ミーシャに対しクラリスからも一言。

「私はエリーがいたからそんな心配はしていなかったけど、どこかに行くのであれば声くらいはかけてよね」

「悪かった。俺がフランさんとフレンさんの部屋に入るのは違うなと思い、先にゲイナードさんの部屋を見せてもらっていたんだ。そしたら第2騎士団が駐屯する塔も見せてくれるって。今から案内してもらうからクラリスたちは別のところを……」

なるべくクラリスたちに男がいる場所には来て欲しくないからそう言ったのだが、

「嫌よ! あの杖のせいで、森では一緒に行動ができないのだから、せめてここでは一緒に……」

クラリスの言葉に女性陣皆が頷く。確かにそうだな。俺も一緒にいたいな。

「分かった。じゃあ一緒に行くか」

こうして第2騎士団崩壊の危機が訪れたのだ。