軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第454話 幻獣の森②

双子をどうにかしなければと思った俺たちは、急いで部屋まで連れていき、女性陣と風呂に入ってもらった。

俺も隣の部屋で汗を流してすぐに戻ると、クラリスがちょうど風呂から上がったところで、クラリスの体にはバスタオルが1枚巻いているだけだった。

「――――マルス!?」

「ご、ごめん!?」

クラリスのきわどい姿に相棒が反応する。その相棒とクラリスの目がバッチリ合うと、クラリスは手で目を覆うがいつものように指の隙間から……。

「クラリスは早く着替えて! いつもマルちゃんを見ているでしょ!? マルスも気持ちは分かるけど今はこっち!」

初めてミーシャに怒られたかもしれない……そのミーシャにベッドまで手を引っ張られる。そして俺たちのベッドには、バスタオルを何枚も被されてうつ伏せになって寝ている双子の姿が。すでにアリスがフランの下半身のマッサージをしていた。

「もしかして……2人とも裸?」

まさかと思い聞くと、カレンが頷く。

「仕方なかったのよ。2人は疲れ切ってて服を着る力がないのだもの。脱がせる時も大変だったんだから」

「そ、それはいくらなんでもまずいよ! カレンたちであればともかくフランさんとフレンさんは……」

「そんなこと言ってられないでしょ? 元はといえば誰のせい? それにフランとフレンの許可も取っているわ。私たちがマルスは何も変なことはしてないって証言してあげるから早くマッサージをして」

確かにカレンの言う通り、調子に乗って訓練をした俺のせいだ。すぐに気持ちを切り替え、フランの右手を取る。クラリスも着替えてくると、フレンの下半身のマッサージを行う。

マッサージが気持ちいいのか、時折艶めかしい声を上げる2人。早く賢者様と手を繋がなければ。

5分ほどフランにマッサージをすると、次はフレン。本当はもっとやってやりたかったが、何しろ時間がない。フレンのマッサージを終え、時計を見ると5時50分。

しかしそれでも効果はあったようだ。

「フラン様? フレン様? どうですか?」

クラリスが2人の体を揺すり、うとうとしている双子に問いかける。

「ありがとう……ございます。信じられないくらい……疲れが取れました」

「皆様の手が……暖かく、こんなに気持ちいい……マッサージは初めてです」

2人とも枕に顔を埋めながらとろけるような声で答える。

「マルス、マルスは先にエントランスホールに向かってて! 私たちは2人の着替を手伝うから!」

クラリスに追い出されるように部屋を後にすると、急いでエントランスホールに向かう。

エントランスホールにはまだカストロ公爵の姿はなく、女性陣とカストロ公爵がエントランスホールに姿を現したのはほぼ同時だった。

そのカストロ公爵が双子の姿に驚いた顔を見せる。

「あなたたち……その服はどうしたの?」

なぜなら双子はリスター帝国学校2年Sクラスの銀色の刺繍が入った制服……つまりアリスの制服を着ていたからだ。

「実は……」

フランとフレンの2人がカストロ公爵に朝練のことを話す。

俺たちにとって軽い訓練のつもりだったのだが、2人にとっては今まで経験したことのない訓練だったこと。

疲れ果てて部屋でマッサージを受けたこと。

身につけていた服が汚れてしまって、アリスの服を借りたこと。

マッサージを受けて多少疲れはあるものの、戦闘に支障はないとのこと。

「そう……でも明日から強度の強い訓練は控えてちょうだい。あともう1つ気になっているのだけれども、カレン? あなたの隣にいるのは犬? 狼?」

双子から報告を受けたカストロ公爵に可愛く睨まれるが、興味はハチマルへと移った。

「狼……です。強いペットだと思っていただければと存じます……名はハチマル。カストロ公爵の匂いを覚えさせてもよろしいでしょうか?」

カレンの言葉に相槌を打ちながら、少女のような笑顔でハチマルを呼ぶカストロ公爵。そして恒例の儀式が行われる。

「ちょ!?」

一瞬驚くが、ハチマルの自由にさせるとカストロ公爵が一言。

「まるで 一角獣(ユニコーン) ね。本当はもっとこの子と遊んでいたいけど、早く行きましょう」

へぇ。カストロ公爵は動物好きかぁ。動物好きに悪い人はいないと思っている俺の評価が少し上がった。まぁ俺の評価が上がったところで特に何もないんだけどね。

騎士の間を抜け、中庭に着くと、そこにはゲイナードと5人の騎士団員が、壁にもたれかかり、苦悶の表情を浮かべていた。

「もしかしたらあなたたちも?」

カストロ公爵の質問に俺の方をちらりと視線を向け、少しばつが悪そうな表情をしながらゲイナードが答える。

「はい。なんとか最後まで訓練についていくことはできたのですが……」

まぁ最後まで素振りだけはやりきったしな。どんな動機であれゲイナードなりに頑張った。それを否定することは俺にはできない。

「すみません。ゲイナードさんたちもかなり頑張り、僕も熱が入ってしまったので……」

助け舟を出すと、ゲイナードがホッとした表情を見せるが、その顔は長くは続かなかった。

「そう……まぁゲイナードたちは幻獣の森には入らないし、仕事もそこまで与えていないから明日からもビシバシやってちょうだい!」

カストロ公爵の言葉に絶望の色を見せる。カストロ公爵に依頼されてしまっては仕方ない。明日もよろしくな、ゲイナード。

幻獣の森に到着すると、またもアーリマンが幻獣の森の上空を我が物顔で羽搏いていた。

「カストロ公爵。提案があるのですがよろしいでしょうか?」

カストロ公爵が頷いたのを確認してから続ける。

「森に入ってしまうと視界が遮られ、また匂い対策も万全ではありません。森の保護も考えると、全力での戦闘ができないので、アーリマンだけでも森からおびき寄せて戦おうと思うのですが、よろしいでしょうか?」

ちなみに今日は俺の分のハンカチも用意してもらっているが、まだクラリスが持っている。

「いいわよ。じゃあお願いするわ」

カストロ公爵と双子が北側の崖の方に移動を始めると、クラリスの弱弱しい声が届く。

「……マルス? その杖……」

昨日のトラウマからかどこかに置いてとは言えないのかもしれない。

「ああ、置くから待っててくれ」

賢者様を置いて戻ると、ずっと離れていた女性陣が集まってくれる。

「よし! 昨日までと作戦は変えない。カレン、ハチマルには 女淫魔(サキュバス) の警戒を命じてくれ。しかしあまり俺たちから離れないように。アーリマンに囲まれたら危ないからな」

1人ずつハグをして持ち場へ送り出す。姫も列に加わったが、肩に手を置くにとどめておいた。そして最後、クラリスの番。

「悪いがクラリスはしっかりと俺の隣で見ていてくれ。 女淫魔(サキュバス) が出現するたびに誘惑されるかもしれないから」

一瞬クラリスがポケットからハンカチを取り出そうとするが、俺の気持ちが伝わったらしく、ハンカチを取り出さずに、

「……うん」

と、照れた表情を見せる。

「よし! 今からサーチで森の中のアーリマンもおびき寄せるからな!」

魔力を帯びた風を幻獣の森へ送り込み、戦いのゴングを鳴らした。

「ちょっと聞いていいかしら?」

アーリマンを倒しきると、カストロ公爵が問うてくる。何を聞こうとしているのかは分かっている。

「ハチマルのことですか?」

「ええ。なんで狼が火を吐くのよ? 何か口に仕込んでいたりするの? もしそうだったらあまり感心しないわね」

本当に動物が好きなんだろうな。とても 百獄刑(ロンド) を好んでやる人のセリフとは思えない。

「いえ……実は……」

ハチマルのことをちゃんと説明すると、カストロ公爵、双子の3人が腰を抜かす。

「あ、あなたたち正気!?」

「はい。この子は僕たちにとってなくてはならない存在です。みんなの癒しですから」

役目を終え、女性陣にモフモフしてもらって嬉しそうなハチマルを見ながら答える。

「た、確かに……魔物はもっとおぞましくて、死臭を漂わせているけど……」

なかなか受け入れることのできないカストロ公爵。

それに対しハチマルへ近寄っていく双子。女性陣と一緒にハチマルを撫で始める。

双子の方が若干だがハチマルと接している時間が長いからな。その分ハチマルの人となりを理解しているのかもしれない。

「大丈夫そうね……でもマルス君。分かっているとは思うけど、ハチマルのことをカミングアウトするときには相手を選びなさい」

それは分かっているつもりだ。今回もカストロ公爵が受け入れてくれないかもしれないと思ったときは、火を吐かせずに警戒にだけ努めてもらうつもりだったからな。

「ありがとうございます。それを考慮してカストロ公爵とフランさん、フレンさんの前でハチマルに火を吐かせました」

「そう……誉め言葉として受け取っておくわ。じゃあ行きましょう」

俺を先頭に再び幻獣の森へ足を踏み入れた。