軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第417話 道標

「嘘よ……だってガルさんはあの時……リーガンの冒険者ギルドで私たちと……あっ!?」

クラリスも思い出したようだ。ガルが去り際に残した言葉を。

「ガル先輩もちょっと遠くへと言って去っていったよな。だから恐らく……」

「そんな……あんなにお義兄さんとお義姉さんの妊娠を喜んでいて、次に会った時には宴をって……」

クラリスの言葉にアリスも続く。

「こんなの……あんまりです……こんな再会って……」

2人が俺の胸の中で泣きわめく。

カレンとミーシャ、バロン、ミネルバの4人も呆然とその場に立ち尽くす。

俺もアイクが走り出さなければ、4人と同じように動けなかったかもしれない。

だが一番辛いはずのアイクが先頭に立ち、背中で俺たちに進むべき道を示してくれている。ここで何もしない訳にはいかない。

「みんなが辛いのは分かるが、言うまでもなく一番辛いのはアイク兄だ! さすがのアイク兄も1人で死人たちの相手はできない! 力を貸してくれ!」

俺の言葉に最初に応えてくれたのバロンだった。

「そうだな。このままだとアイク様を見殺しにすることになる」

バロンがアイクの背中を見ながら、ミネルバの肩をポンと叩く。

「そう……だね。アイク様だけを戦わせるわけにいかないよね」

ミネルバもバロンに続くと、カレンも頼れる男の背中を見ながら、

「ここでぼーっとしていたら後で絶対に後悔するわね。それだけは絶対に嫌!」

レッドビュートを地面に叩きつけると、カレンの瞳に火が灯る。

「うん! これ以上犠牲は増やしちゃダメだからね!」

ミーシャもアイクの背中から勇気を貰う。

皆の決意を俺の胸の中で聞いていたクラリスも俺の胸から離れ、遠ざかるアイクの背中を見る。

「そうね。お義兄さんを1人で行かせたら、後でお義姉さんになんて言われるか分からないものね」

この言葉に泣きながらもアリスがくすっと笑うと、

「お義兄さんに傷が1つでも付こうものなら、いつものように先輩に責任を取れと言って迫ってきますね」

ほぼ俺と同じことを思ったようだ。

これには、他のみんなも自然と顔が綻ぶ。まさかこんなところで眼鏡っ子先輩が活躍するとは思いもしなかった。

「で? 俺たちは何をすればいい?」

バロンが……皆が俺の指示を待つ。

「よし! まずはアイク兄に追い付くこと! 接敵したらクラリスとアリスを中心に戦う! エリーはクラリスに迫る死人を払いのけてくれ! バロンとミネルバは死人を鎖で縛り、動けなくなったところをアリスが止めだ! カレンはファイアボールで空を照らしてくれ! ハチマルは新たに敵が来ないか警戒だ! 俺はアイク兄とガル先輩の戦いに邪魔が入らぬようにアイク兄のサポートをする! 行くぞ!」

皆が頷き、一斉にアイクの背中を追って走り出す。

俺も 風纏衣(シルフィード) を纏い、全力でアイクの後を追い、俺1人だけだがなんとか接敵する前にアイクに追いついた。

「全力で駆けていたのだが、こうも簡単に追いつかれるとは……迷惑をかけてすまない。皆は大丈夫か?」

アイクは後ろを振り返りながら皆の心配をする。

「ええ。義姉さんのおかげで皆のやる気満々ですよ」

何のことを言っているのか分からないアイクは首を捻りながらも、安堵の表情を見せる。

「では頼む。分かっているとは思うが、ガルとの戦いには……」

「はい。分かっています。僕たちは 極(・) 力(・) 手を出さないようにしますし、死人にも邪魔をさせないようにします。でもそれはアイク兄が怪我を負わないというのが条件です」

本当は正々堂々一騎討ちをさせてやりたいが、そうは言ってられない。

アイクは俺たちの総大将でもある。もしものことがあればリーガン公爵の顔は潰れ、メサリウス伯爵家にも多大な影響が出る。眼鏡っ子先輩のお腹の子供にもだ。

それに何よりもアイクは大切な俺の兄だからな。黙ってアイクがやられるのを見ていられるわけがない。

「ふっ。そうか。じゃあ俺も頑張らないとな!」

死人の群れを目前にアイクがアズライグを右手に、先頭のガルを目指すと、ガルも手に持つ斧を構え、単身アイクに向かって走ってくる。

その表情は他の死人とは違い、少しイキイキしているように見えた。

「ガルゥゥゥウウウ!!!!」

2人の距離が肉薄すると、アイクが叫びながらガルの心臓目掛けてアズライグを突き出す。

しかしガルはというと、心臓に迫るアズライグを受けようとも躱そうともせずに、手に持つ斧をアイクを目掛けて振り下ろす。

死人にとって心臓を突かれようが、関係ないからな。

咄嗟にアイクがアズライグを引き、ガルの斧をアズライグの穂先で受け止める。

「————ぐっ!?」

想像以上のガルの膂力にアズライグが弾かれ、アイクが顔をしかめると、ガルの口が開く。

「アイクよ。死人相手にその戦い方はなかろう」

他の死人たちとは違い、ガルの言葉ははっきりとしていた。

「————ガル!? お前! 俺が分かるのか!?」

アイクの言葉にガルの表情が少しにやけたように見えた。

「儂がアイクを忘れると思ったのか」

ちょうど後ろから追いついたクラリスたちも、ガルの声に驚き足を止める。

「ガル先輩!」

「アリスか。久しぶりじゃな。感動の再会には抱擁と決まっているのじゃが、儂は今ちと臭い。どうしてもというのであればしてやっても良いが、またの機会にしてくれ」

アリスがガルの名前を叫ぶと、ガルはアイクと交戦しながらも生前の時のような軽口を叩く。

本当に死んでいるのかと何度も鑑定をするが、何度やっても結果は同じで【状態】死人だった。

「どうして!? 誰がこんなことを!?」

ガルの猛攻を凌ぎながらアイクが叫ぶと、

「こうやって儂が話せるうちにまずは伝えねばならぬことがある。本命は東門と南門じゃ。早くこいつらを倒して東と南へ向かえ」

なんだと!? まだいるのか? しかしこの言葉を鵜呑みにしてもいいのか? いや、ここは信じる信じないは置いておき、ここの死人たちを倒すことが優先だ。

「みんな! とにかくここの死人たちをまずは倒してくれ! エリー! 戦況が落ち着いたと判断したら、ハチマルを連れて東門の偵察に!」

皆に指示を出すと、俺たちを追い抜き死人の群れへ突っ込む。

ガルは攻撃の手を緩めないまま、先ほどのアイクの言葉に声を殺しながら答える。

その答えは予想通りだった。

「儂らを殺したのも、操っているのもディクソン辺境伯じゃ」