作品タイトル不明
第402話 開眼?
「気をつけろ! 時間が経てば経つほど魔物化が進み、敏捷値以外のステータスが上がっていくようだ! それに中途半端な攻撃をすると、傷口が体毛に覆われ魔物化が進むだけだ! また全魔法に耐性がある! MPの無駄だから魔法は控えるように!」
「じゃあ神聖魔法も!?」
クラリスが俺の鑑定結果に思わず聞き返してくる。
「ああ……耐性を持っているだろう。それにMPが0の今でも魔法が発現している。その分最大HPが下がっているが、魔物化が進むにつれ、最大HPが増えていくようだから持久戦は無理だ」
「そんな!? じゃあどうすれば!?」
俺の言葉にクラリスが考え込んでしまう。
俺だって半人半魔といえどもホーリーは絶対に効くだろうと思っていた。ヨーゼフも神聖魔法が弱点だったしな。
だがポロンは俺たちに考える時間を与えてはくれなかった。
「……マルス……ポロン……こっち気づいた……」
鑑定をしたことにより 石砦(ストーンフォートレス) の中に俺たちがいないということに気付いたポロンが、こちらに向けて 石弾(ストーンバレット) を放とうとしている。
「……魔法が効きづらい以上、接近戦にしか勝機はない! 俺が突っ込むからクラリスは 魔法の弓矢(マジックアロー) で援護してくれ! ただポロンには当てないように! ポロンの魔法を 魔法の弓矢(マジックアロー) で相殺することを第一に考えてくれ! エリーは俺と一緒に接近戦を!」
2人の返事を待たずして 石弾(ストーンバレット) を撃とうとしているポロンに突っ込む。
ポロンが連射してくる魔法が、 土弾(アースバレット) から上位の 石弾(ストーンバレット) に変わり、魔力も上がっている。
それでも雷鳴剣やウィンドカッターでなんとか斬れるのは、【土王】の称号が消えたからかもしれない。半人半魔になると称号が消えるのか?
それにクラリスの 魔法の弓矢(マジックアロー) も1射では 石弾(ストーンバレット) を砕くことはできないが、 石弾(ストーンバレット) の威力は相当弱まる。
弱まった 石弾(ストーンバレット) であれば、氷紋剣の剣先で作る氷の盾でもなんとか防ぐことができ、ポロンに近づくことができた。
問題はここからだ。
普通の相手であれば徐々に追い詰めていけばいい。
しかしこいつはそれではダメだ。徐々にダメージを与えるとそれだけ魔物化が進む。
一撃で屠らなければならない。
だから選択肢は1つ。
心臓に剣を突き刺す事だ!
俺がポロンの正面に立つと、すぐにクラリスからのフォローが入る。
魔法の弓矢(マジックアロー) がポロンを掠るように放たれる。躱さなくても当たらないのだが、ポロンは必死なって避け、 石弾(ストーンバレット) で相殺する。
食らえば強くなると分かっていても、自らあんな勢いで飛んでくる矢に当たりに行こうとする奴なんているわけ……ない……いないよな?
わざと外されているとは知らないポロンは真正面にいる俺と同じくらいクラリスにも気を使う。
ポロンから発射される 石弾(ストーンバレット) の威力は高いのだが、牽制の為にクラリスにも 石弾(ストーンバレット) を放っているため、先ほどの戦いよりも俺の負担が少ない。
これはいけると踏んだ俺は一気に攻勢に転じる。
「うぉぉぉおおお!!!」
大袈裟なくらい大きな声を上げてポロンに斬りかかると、ポロンは注意を俺に向ける。
「せいっ!」
ポロンが俺に注意を向けた途端、いつもは弓を射る時に声を発しないクラリスも俺と同じように声を上げて 魔法の弓矢(マジックアロー) を射る。
クラリスの弓を射る速度がどんどん速くなっていき、ポロンが意識をクラリスに向けた時だった。
「もらった!」
ポロンがクラリスの 魔法の弓矢(マジックアロー) に気を取られたところで、心臓に向けて雷鳴剣を突き出す。
未来視(ビジョン) では、ポロンが俺の突きを土魔法で作った大きな石の塊で防ぐのが視える。
だがすべてはこの一撃の為にやってきたこと。
構わず石の塊に突き刺す。
雷鳴剣での突きは石の塊を貫通するだけで、ポロンには届かなった。
その結果にポロンがほくそ笑む。
だが次の瞬間、
『ドスッ!』
という鈍い音と共にポロンが膝をつくと、魔物のような餓えた目の光が消えた。
俺たち 3(・) 人(・) の連携攻撃が実ったのだ。
ポロンと接敵した瞬間、ポロンのヘイトは俺に向かい、俺の後についてきたエリーをあまり気にする様子はなかった。
そしてクラリスからのフォローを受けると更にエリーへのヘイトは弱まり、俺が声を上げて攻撃をし、クラリスも俺と同じように声を上げてポロンの注意を引く頃には、ポロンの頭の中にはエリーのことなんか消えていただろう。
そして止めは心臓への攻撃だ。
あれは本当にポロンが何も防御策を講じなければ、心臓を貫いていた。
本当は俺がポロンに止めを刺したかった。できればクラリスやエリーには人を殺してほしくはない……でも今回だけはどうしようもなかった。
だからこそ……本気の攻撃だったからこそ、ポロンも俺にだけ集中をし、背後から隙を窺うエリーに気付かなかったのだろう。
さらにエリーは近づく際に音魔法で自身の音を消していた。
魔法に耐性があるポロンも、対象者がポロンではない魔法に関しては何もできるはずがない。
ポロンの背後に忍び寄り、カルンウェナンがポロンの心臓に突き刺さる。
「ナイスエリー! よくやった!」
あまりにも正確に心臓を捉えたエリーの一撃は、俺が 未来視(ビジョン) を解くのに十分すぎた。
俺に褒められたエリーも思わず嬉しそうに歯を見せる。
が次の瞬間、膝をついたポロンの目がまた赤く光り、ものすごい勢いで手を地面に叩きつけると、大地が波のように揺れ、立っているのがやっとの状態になる。
「っ!? 地震(アースクエイク) か!?」
思わず叫ぶとポロンの矛先が自身の心臓を貫いたエリーに向けられる。
「エリー! 来い!」
何が起きたか分かっていないエリーに向かって叫ぶと、エリーは何の躊躇もなく影に潜り俺の影から出てくる。
ポロンは今までエリーがいた場所に、 土弾(アースバレット) を速射砲のように放っていた。
石弾(ストーンバレット) から 土弾(アースバレット) に威力を弱め、回転率を上げたのかもしれない。
「……心臓……刺した……!」
影から出てきたエリーが必死になって訴えてくる。
「分かっている! でもポロンは心臓ではなく……」
そこまで言って 未来視(ビジョン) を発現させようとした時だった。
な(・) ぜ(・) か(・) ポロンの体内で胎動する小さく黒い物体が視えたのは。