軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第379話 不慮の事故

2032年5月26日 22時

「どうして目隠しした状態で私と姫の違いが分かったの? もしかして……透視眼が開眼したとか?」

皆が寝た後にクラリスが聞いてくる。

「いや、残念ながら透視眼を開眼したわけではないよ。ただクラリスに触れられると体の1つ1つの細胞が喜んで、体温が上がる感じがするんだ」

特に相棒が騒ぎ出すというのもあるのだが、それは敢えて言わない事にした。

「ありがとう。とても嬉しかったわ」

ベッドに入って何度目かのキスをしてもらうと、俺からも気になったことを聞く。

「姫と一緒に風呂に入って、だいぶ長湯していたみたいだけど何を話していたんだ?」

「そ、そんなに長かった? いつも通りだと思うわよ? ちょっと姫の意思確認というかなんというか……まぁ姫は隠そうとしていたのだけれども……とにかくそんな変な事は話してないから気にしないで」

「分かった。クラリスがそう言うのであれば。じゃあおやすみ」

「ええ……おやすみなさい」

ご機嫌な様子で寝るクラリスの寝顔を眺めながら眠りについた。

2032年5月27日3時

いつものように早く起きた俺はすぐに拷問室がある庭へ向かう。

拷問室の扉の前にはハチマルが寝そべっており、不審者がこないか見張ってくれている。これは予め昨日、カレンに命令してもらっていた。

「ハチマル。疲れだろう? 休むか?」

俺の言葉にハチマルは首を振り、いつものように尻尾をヘリコプターのように回し、嬉しそうに俺の顔を舐めてくるので、しばらくハチマルの好きにさせてから拷問室の中に1人で入る。

拷問室は2部屋あり、今ポンゴが縛られている部屋と、そのポンゴがいる部屋を監視する部屋だ。警察の取調室を連想してもらえるとわかりやすいだろう。

当然マジックミラーはないが、隣り合う2つの部屋に繋がる適当な穴を作り、監視する方の穴は小さく、ポンゴ側の穴を大きくすれば、ある程度ポンゴからの視線を遮り、こちら側からの視界は確保できる。まぁポンゴは目隠しされているからあまり気にする必要もないんだけどね。

「どうですか? ポンゴは何か話してくれましたか?」

ポンゴを監視している者に聞くと

「いえ、全く口を割りません。何をやってもだんまりです」

予想どおりの答えが返ってきた。まぁここは時間をかけてでも吐いてもらわないとな。

隣の部屋で拘束されているポンゴを見ると、体は専門家に鎖で厳重に縛られ、手は後ろに回され手錠をかけられており、目隠しをされ、猿轡をされているポンゴがいた。これでは脱走もできないだろう。

脱走の心配がないと分かった俺は拷問室を出ると、ブラッドとコディがハチマルとじゃれていた。

「おはよう。2人共早いんだな」

「まぁな。ポンゴを奪還しようとする輩がいるかもしれないしな」

「姫を襲おうとした奴を逃がしたら、ビラキシル侯爵やヘルメスの街の奴らになんて言われるか分からないからな」

3人でハチマルと遊んでいるとアイクやバロン、そして女性陣も庭に出てくる。

「クラリス、昨日姫と何かあったのか?」

唐突にコディがクラリスに質問をすると

「なんで? 特に何もないと思うけど?」

クラリスが答えると、クラリスと話せたのか嬉しいのかコディの表情が緩む。

「いや、姫が人に変化するなんてとても珍しい事なんだ。姫は自分が認めた者にしか変化しないと普段から豪語していたからな。まさかその日会ってすぐのクラリスに変化するなんて……」

へぇ……姫もクラリスには何か感じるものがあったのかもしれないな。クラリスの次に変化をしたメイドはきっと姫自身の実力を証明するためにやった事だから、認める認めないは関係ないのだろう。

話をしているとビートル伯爵、姫、ドグマたちも起きてきてみんなで朝食をいただくことにした。

「マルス、今日はどうする?」

アイクが食事をしながら話しかけてくる。

「そうですね……ポンゴがすぐに自白をしてくれればいいのですが、時間が掛かるようでしたらビートル騎士団の詰所に僕とクラリスで激励という形で訪問し、鑑定してこようかなと考えておりますが……いずれにしてもあまり時間をかけるとまた攫われたりする被害にあうかもしれませんので、早めに行動をしたいのですがよろしいですか?」

「まぁそうだな。できる事ならポンゴには自白してもらい、もしもスパイがいるのであれば一網打尽にしたいな。鑑定しながらその都度捕えていくと情報が出回って逃げられる可能性もありそうだしな」

俺の考えにアイクが同意してくれるが、

「あら? まだ白状してないの? 強引に口を割らせばいいじゃない?」

「いや、騎士団員に聞いたところによると、取り調べ部隊がかなりの拷問をかけているのだが、全く口を割る様子がないと泣き言を吐いてな。相当な胆力の持ち主らしいぞ、ポンゴは」

カレンの疑問にビートル伯爵が答える。

「ビートル伯爵。それでは私たちに拷問をさせていただく事は可能でしょうか? 試したいことが少々ありまして……」

「さすがにカレンたちが……いや、分かった。手はずを整えよう」

一旦は拒否をしようとしたビートル伯爵がカレンの要求を呑む。試したい事? なんだ?

「では杖と丸太、鉄のインゴットを用意してくださりませんか? マルス、アリスを借りていいかしら?」

あ、これは絶対にアカンやつをやろうとしている。その証拠に相棒が縮こまってしまっている。

「あ、ああ……もしかしてカレンは?」

「当然 百獄刑(ロンド) をやるわよ? だけど同じ事をやるのではなく色々試してみたいのよ。熱々のインゴットの上に落とされたらどうなるかとか。アリスを借りるからなるべく人払いはしたいわね。あと安全のためにブラッドとコディは付き合いなさい」

まさかここで 百獄刑(ロンド) を提案してくるとは思いもよらなかった。もう言葉にするのも恐ろしい。ブラッドとコディは拒否をしたいようだが、カレンに逆らえずにいる。

ブラッド、コディはもちろん、アイクとバロンからもうっすらと脂汗が浮き上がる。もしかしたらこうなったのは拷問室を作った俺のせいなのか?

「分かった。だがカレン、俺も同行させてくれ。そして俺がポンゴに最後通告をするからもしそれを断ったら執行という事でいいか?」

カレンが俺の提案に渋々頷く。カレンはやりたくて仕方がないのかもしれない。

「ねぇ! 私も行く! 行ってもいい?」

ミーシャが楽しそうに言うとミネルバもそれに続く。すると姫も興味を持ったらしい。

「なんじゃ? そんなに面白いものなのか? ならば妾も見てやろうかの」

「それでは私も同行させてもらう。ただ丸太をすぐに準備できないので、庭にある木を使ってくれないか? 鉄のインゴットは少し時間をくれれば用意できる」

ビートル伯爵まで見たいと言うが、俺が 百獄刑(ロンド) がどういったものかをこっそり教えると、震えながら参加を辞退した。

辞退したビートル伯爵にどの木を切っていいか尋ねてから丸太を作り、ブラッドとコディに丸太を拷問室に運ばせる。

中に入り、騎士団員には皆外に出てもらってから鎖で縛られているポンゴの下に行き、ポンゴの猿轡を外してから、これから行われる恐怖の儀式を説明する。

「ポンゴ、これから 百獄刑(ロンド) というこの世で最も恐ろしい拷問をかける」

するとポンゴは俺に向かって唾を吐きかけながら虚勢を張る。当然その唾は躱したけどね。

「俺を舐めるな。どんな拷問も怖くない。やれるものならやってみろ」

「分かった。だが説明だけはさせてもらう。みんな準備を」

俺の言葉にみんなが従い、ミネルバがポンゴを宙づりにしてから股裂きの体勢を作り、ポンゴを宙づりにしている鎖をカレンの手に渡す。ブラッドとコディはその下に丸太をセットしその時を待つ。

ポンゴは何が行われるか予想ができたらしい

「な、お、お前……もしかして……このまま俺を落下させようと?」

ポンゴの額からじんわりと汗が噴き出す。

「まぁそうだが、それだけでは終わらない。アリス、ポンゴにあれを」

俺の言葉にアリスが頷き

「ヒール!」

ポンゴのつま先にヒールを唱えると、ポンゴは明らかに震え始めた。姫はというとアリスがヒールを唱えたことにびっくりしている。

「もう分かると思うが、 百獄刑(ロンド) とは何度も同じ事を繰り返す事だ。そしてポンゴが口を割らない限り続ける。1年間360日ずっとだ。 終わらない百獄刑(エンドレスロンド) ……」

俺がそこまで言うと、鎖を握っていたカレンが急に鎖を離し、丸太に直撃する寸前で止める。

突然の出来事にポンゴは怯え、丸太にはポタポタと液体が垂れる。俺の相棒も縮こまり、ブラッド、コディからは「ひぃっ!?」という悲鳴のような声が上がる。

「情けない奴じゃのう。それくらいでビビるとは。三巨頭とは名ばかりか? 赤髪、妾にその鎖を持たせてみるがよい」

姫がポンゴを罵倒し、カレンの持つ鎖を奪おうとすると

「赤髪ではなく、カレンよ! それにこれは私のなんだから横取りしないで!」

「何を言うておる? こやつは妾を襲おうとしたのじゃぞ!? 妾が責任をもって処する!」

2人がポンゴを……鎖を奪い合う。ある意味モテモテだがこういうモテ方だけはしたくない。するとここにミーシャも参戦する。

「私も2人の後でいいからやってみたい!」

完全にポンゴはおもちゃになっていた。

「ま、参った……」

3人の狂気に充てられたポンゴがぼそりと呟くと

「はぁ!? まだ何もやってないじゃない!? 少なくともエルシスは10回以上は耐えたわよ!? 3巨頭と呼ばれているのでしょう? 3倍の30回は耐えて……」

「ポンゴ! お主は妾たちの中では一目置かれている存在なのじゃぞ!? 新たな記録に挑戦してみせるのじゃ! 100回じゃ! 100回耐えたら不問に……」

あまりに興奮した2人がポンゴの方へ詰め寄ろうとすると、2人ともある異変に気付く。

「姫!? あなた鎖は!?」

「なんじゃ!? お主が離さぬから……」

ポンゴがのたうち回っているのを見て、2人とも自分たちの手に鎖がない事に気づく。

丸太からわずか数cmからのダイブであったが、効果は十分だったようだ。