作品タイトル不明
第331話 リムルガルド城 光り輝く礼拝堂
「ねぇ……オーガの数減ってきてない? それにさっきよりも寒くなってきている気がするんだけど……」
俺の手を握るクラリスの手の力が強くなる。確かに礼拝堂に続く通路を進むにつれてオーガの数は少なくなり、今はアイク1人で散発的に出現するオーガを倒している。
エリーはアイクの隣で警戒しており、スザクとビャッコは俺たちの後ろを警戒している。つまり俺とクラリスを中心にしてゆっくりと礼拝堂に向かっているのだ。
アイクも相当オーガを倒しているのでレベルが上がっている。
【名前】アイク・ブライアント
【称号】槍王
【身分】人族・ブライアント子爵家当主
【状態】良好
【年齢】15歳
【レベル】45(+1)
【HP】155/155
【MP】1212/1255
【筋力】104(+2)
【敏捷】81(+1)
【魔力】53(+1)
【器用】56(+1)
【耐久】92(+1)
【運】10
【特殊能力】剣術(Lv6/C)
【特殊能力】槍術(Lv9/B)
【特殊能力】火魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv2/G)
【装備】アズライグ
【装備】 火精霊の剣(サラマンダーソード)
【装備】 火幻獣の鎧(イフリートメイル)
【装備】 火の腕輪(フレイムブレスレット)
【装備】守護の指輪
【装備】偽装の腕輪
リムルガルド城から帰還する頃にはエリーと同じレベルになっていると思う。去年はあれだけ差があったレベルがもう追い付くとは……さすがアイクだ。
「確かにオーガは減っているな……礼拝堂が近いのかもしれない。クラリス、俺たちが一緒にいるから大丈夫だからな」
クラリスが俺の言葉に頷くと、オーガを倒し終えたアイクが周囲を警戒していたエリーと足を止め、俺たちが追いつくの待っている。
「どうしたのですか?」
2人に声をかけると
「もう礼拝堂の扉が見える。エリーが言うにはもうこの先にオーガ は(・) いないとの事だ。俺がクラリスの前に出て、マルスとエリーでクラリスの脇を固めてやってくれ。スザク様とビャッコ様はクラリスの後ろを頼みます」
確かにアイクの言うように少し先に扉が見えた。今度はアイクの指示にみんなが従う。スザクとビャッコが柔軟な思考の持ち主で良かった。
クラリスの方を見るともう覚悟を決めた表情をしていた。アイクもクラリスの方を見ると、クラリスも大丈夫といった表情で頷く。
「よし! いくぞ!」
アイクが1人で礼拝堂の大きな扉を開ける。
部屋の外から中を窺っても中の様子は分からなかったので、アイクを先頭にし、先ほどの隊列でゆっくりと礼拝堂の中に足を踏み入れる。
礼拝堂は奥行きが100mくらいで幅20m、奥の主祭壇へ続く道には黒く薄汚れた絨毯がしかれ、左右には机と椅子が綺麗に並んでいるが、机と椅子には大量の汚物のようなものが付着しており、非常に汚い印象を受けた。
部屋の空気も重苦しく、淀んでおり、どこか暗い印象がする。
そして俺たちの後にスザクとビャッコも続いて全員が礼拝堂の中に入った時だった。
『バタン!』
礼拝堂の扉が勝手に閉まり、大きな音を立てると左右の机の下や絨毯から骨だけの動く物体やゾンビのようなドロドロとした物体が大量に湧いてきた。
「キャー――!」
整った顔を崩し、恐怖に身を震わせながら、悲鳴と共にクラリスは両手を前に出し、光の柱を発現させると次々と骨だけの物体やドロドロとした物体が消滅していく。
俺もクラリスに続いてすぐにホーリーを唱えようとしたのだが、言葉を発する前に異常な匂いが鼻を刺し、声を出す前に 嘔吐(えず) いてしまった。
それは俺だけではなくアイクも同じようで、口と鼻をハンカチで覆い、目からは涙を流している。
これはあの時……不浄王と同じような匂いだ。あの時よりもマシかもしれないが室内で密閉されてしまっているのでそれ以上に感じるのかもしれない。それに今回はまさかの出来事だったので、思いっきり吸ってしまった。
(クラリスすまない!)
声を発しようとすると嘔吐いてしまうため、心の中で謝りながら必死にホーリーを唱えるクラリスの右の鎖骨あたりに顔を埋め、思いっきり深呼吸をする。クラリスの媚香はこの匂いにも全く負けず、相変わらず心の全てを奪われてしまうような清香だった。
エリーもすぐにクラリスの左鎖骨あたりに顔を埋めている。獣人のエリーはこの匂いに耐えられないだろう。
ビャッコはもう完全にダウンしており、スザクも口から涎と鼻水、涙が止まらない。
なんとかクラリスの媚香を十分に体内に取り込むと、俺も一緒にホーリーを撃とうとしたのだが、クラリスは錯乱状態でホーリーを撃ちまくっているからあと2発も撃てばMP枯渇になってしまう状態だったので、俺は 仕(・) 方(・) な(・) く(・) クラリスの右鎖骨に顔を埋めラブエールを唱える。
これは仕方ない事だよな? ここでクラリスに気を失ってもらっては全滅もあり得るからな。な?
「キャー――!」
きっとクラリスはこの強烈な匂いよりも恐怖心の方が勝っているのだろう。俺たちの事は露知らず、クラリスは悲鳴を上げながら礼拝堂に光の柱を立てまくる。ホーリーやホーリーの残滓で礼拝堂は神秘的に光り輝いている。
ここにいる魔物達はホーリーに少しでも触れるとすぐに消滅するらしく、アッという間にアンデッドたちが光の奔流に飲まれ、消滅していった。
主祭壇から出現した豪華そうな法衣のような物を着たかなり強そうなアンデッドが宙に浮きながら近寄って来たのを確認したが、クラリスのホーリーの前に為す術なく消滅していた。
消滅する前に一瞬鑑定できたがそいつがリッチだった。
見える範囲でアンデッドを倒し終わり、クラリスもアンデッドの姿が見えなくなると正気に戻り、気が抜けたのかその場に座り込んでしまった。
最初にクラリスに声をかけてやりたかったが、まずは目の前でまだ悶絶しているアイクをなんとかしなければいけない。ビャッコもそうだが、スザクもあまりもの異臭に気を失っていた。この2人はもう気絶しているから後回しでもOKだ。
アイクにヒールをかけると、少しはマシになったようだが、まだ鼻で呼吸をすると、鼻の中に残った悪臭で 嘔吐(えず) いてしまう。
「クラリス、お疲れ様。悪いがハンカチを貸してくれないか? そしてそれをアイク兄に嗅がせたいのだがいいか?」
クラリスは訳が分からないようだが素直に俺にハンカチを渡してくれ、すぐにそれをアイクに渡した。クラリスの私物の匂いを嗅がせるなんて本当はしたくないのだが、アイクだけは別だ。
アイクはクラリスのハンカチで鼻と口を覆うとすぐに楽になったようで 嘔吐(えず) きも止まった。さすがクラリス、みんなの万能薬だ。アイクが落ち着きを取り戻した事を確認してすぐにクラリスの隣に座りクラリスを労う。
「クラリス、お疲れ様。クラリスがいなければ俺たちは全滅していたかもしれない。今もアイク兄がクラリスによって救われた。ありがとう」
俺の言葉にクラリスが俺の胸に顔を埋めて泣きだした。
「恐かったよ、マルス……でも約束どおりマルスとエリーがずっと近くに居てくれて、2人を感じていられたから気を失わなくて済んだの……ありがとう」
どうやらクラリスは俺とエリーがクラリスから離れられなかった理由に全く気付いていないようだ。
そういえばいつの間にか異臭はなくなっており、汚かった絨毯も綺麗な真っ赤な絨毯に変わっており、ホーリーの残滓のせいなのか机や椅子も全て輝いていた。
エリーが心配そうにクラリスを見ていたので、エリーも一緒に抱き寄せると2人は俺の胸の中で何かを囁きあっていた。そんな俺たちに今まで悶絶していたアイクが
「マルス、クラリス、ありがとう。俺も2人のおかげで助かった。後ろを見てみろ。礼拝堂の扉がいつの間にか開いている。それに主祭壇の上に宝箱がポップしているという事は、ここに居る魔物を全部倒したという事だろう。俺は後方を警戒しているからしばらくそうしているといい。だが時間が経つとアンデッドがリポップするかもしれないから、そこだけは頭に入れておいてくれ」
アイクのアンデッドがリポップするという言葉を聞いたクラリスが急いで立ち上がろうとするが、まだ恐怖心が残っているのか、それとも安心したのか分からないが、足がすくんで立ち上がれなかった。
俺とエリーでクラリスの両手を引っ張り上げ、気絶している2人にヒールをかけると、スザクは先ほどのアイクのようにやはり匂いが鼻腔に残っているようで、すぐに嗚咽を漏らし、ビャッコに至ってはまたすぐに気絶した。
「大丈夫ですか? もしよろしければこれを……どうやら少しは楽になるようなので……」
クラリスが匂いで悶絶しているスザクにポケットから新たなハンカチを取り出し、スザクに渡すとスザクはそれで口と鼻を抑えるとすぐに楽になったようだ。
「すまない……おかげでスッキリした……しかしこれはハンカチだよな? このハンカチは特別な何かなのか?」
「はい、私のハンカチで申し訳ないのですが……特別な物ではございません」
クラリスの言葉を聞きながらまだスザクはハンカチの匂いを嗅いでいる。スザクの気持ちは俺が一番良く分かる。何せ俺が一番虜にされているからな。しかしクラリスの匂いがみんなに好まれるというのは喜ばしい事だが、やはり他人には嗅がれたくない。
俺のその気持ちを悟ったクラリスが、そっとスザクの方に手を差し出し、ハンカチを戻すように促すと少し残念そうな表情をしたスザクがクラリスに返す。
ちなみにアイクはまだクラリスのハンカチを持っているが、何度もいうがアイクは別枠だ。それにアイクは必要以上にクラリスの匂いを嗅いだりしないからな。
次はまた気絶してしまったビャッコだ。ビャッコには予め先ほどスザクに渡していたハンカチ……ではなくまた新しい予備のハンカチで鼻と口を覆ってからヒールをかけると、ビャッコも意識を取り戻した。
今回は意識を取り戻すとすぐにクラリスがハンカチをポケットにしまった。
後で聞いたのだがクラリスはいつも4枚のハンカチを持っているとの事だ。自分の分と自分の替えの分。そしてエリーの分とエリーの替えの分との事だ。
全員が意識を取り戻したので俺が状況を説明する。
「ここにいた魔物は全てクラリスが倒しました。その証拠に礼拝堂の扉が開き、主祭壇の上に宝箱がポップしました。リッチも一瞬確認できたのですが、クラリスのホーリーには全く抵抗出来ずに、消滅しました」
「な……途中まで意識はあったがあの数のアンデッドをクラリス1人で? さすが聖女といった所か……すぐに宝箱を開けて宝物庫に行くぞ! 俺の予想が正しければ主祭壇の下に宝物庫に繋がる隠し階段があるはずだ!」
どおりで礼拝堂から繋がる扉がない訳だ……それにしてもスザクはやけに詳しいな。ここの設計図かなんかでも持っているのかもな。
あと気になった者もいるかもしれないが何故スザクがクラリスを聖女と知っているかというと、元々ホーリーが聖者、聖女にしか使えないと教えてくれたのはスザクだからな。
俺たちからは教えていないが、スザクが勝手に聖女と思っているのだろう。本当に聖者、聖女にしか使えないのかは分からないが、スザクの言う通りなので敢えて否定はしなかった。
周囲を警戒しながら主祭壇の上にポップした宝箱を開ける。
【名前】天使のピアス
【防御】-
【特殊】魔力+1
【価値】A-
【詳細】神聖魔法の効果大幅UP、神聖魔法消費MP軽減、状態異常無効。
派手さはなく白くて小さいハートの形をしたピアスだった。清楚系なクラリスにピッタリだな。クラリスに渡すと喜んでいたが、耳に穴をあける道具が無くて困っているとビャッコが鋭い爪を利用してクラリスの耳に小さな穴をあけてくれた。
なんでも獣人は種族柄、耳や鼻に穴をあける者が多いから慣れているらしい。ビャッコにすぐにお礼をいい天使のピアスを早速装備する。
「マルス? どう? 似合うかな?」
似合わない訳がない。
「うん……目が離せなくなるくらい似合ってる……少なくとも俺は好きだな」
俺の言葉にクラリスは頬を染め大満足なようだ。
そして大量のアンデッドと共にリッチまで倒したクラリスはレベルが跳ね上がっていた。
【名前】クラリス・ランパード
【称号】弓王・聖女
【身分】人族・ランパード子爵家長女
【状態】良好
【年齢】12歳
【レベル】53(+3)
【HP】121/121
【MP】1022/1960
【筋力】82(+4)
【敏捷】85(+5)
【魔力】109(+7)
【器用】101(+4)
【耐久】79(+4)
【運】20
【固有能力】結界魔法(Lv4/A)
【特殊能力】剣術(Lv7/C)
【特殊能力】弓術(Lv8/B)
【特殊能力】水魔法(Lv8/B)
【特殊能力】風魔法(Lv4/F)
【特殊能力】神聖魔法(Lv10/A)(9→10)
【装備】ディフェンダー
【装備】 魔法の弓(マジックアロー)
【装備】 聖女の法衣(セイントローブ)
【装備】 神秘の足輪(ミステリアスアンクレット)
【装備】偽装の腕輪
【装備】氷雪のネックレス
【装備】天使のピアス
一気にレベルが3も上がるのか……恐らくだが骨の様なスケルトンとドロドロの物体、恐らくグールだと思われるのだが、あいつらのレベルが相当高そうだったからな。
それに普通であれば難敵とされているリッチも倒していたからな。アンデッド虐殺者とかついても良さそうなんだが、それは高望みしすぎか。神聖魔法がレベル10になっただけでもよしとしよう。
「よし! じゃあアンデッドがリポップしないうちに宝物庫に行くか!」
スザクが主祭壇の台の裏をごそごそと触るとカチっという音がして主祭壇の下から地下へ繋がる階段が現れた。