軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第312話 ハチマル

「か、カレン……その小狼はどうしたんだ? 急に色が変わったようだが?」

白い体毛に赤いラインの入った小狼を見ながら言うと

「私も分からないわ……でもなんか人間に対する悪意や憎悪が白くなるにつれて抜けていった気がしたのだけれども」

カレンが困惑した表情で話すと小狼がゆっくりとカレンに近づく。まるで敵意はないから怖がらないでくれというようだ。

この小狼、白くなったせいか分からないが、顔つきが少し優しくなった気がする。カレンの言うとおり白い炎で邪心が取り除かれたのだろうか?

カレンが小狼を迎え入れるようにしゃがみ、手を恐る恐る差し出すとその小狼はゆっくりと差し出されたカレンの手を舐めた。他の火喰い狼ではこうはいかない。なんせ火が邪魔だからな。

カレンも少し慣れたのか、小狼の頭部を撫でると、小狼も気持ちよさそうにカレンに身を寄せて目を閉じる。小狼の尻尾は犬のように左右に振られていた。

「ハチマル、あの人から名前を貰ったのよ。絶対に襲ってはダメよ?」

白い毛並みを溶かしながらカレンが小狼に話しかける。

ハチマル? 8号と俺の名前を足したのか?

カレンがハチマルに話しかけると、ハチマルは目を開け、俺の方をじっと見つめてから、カレンに近づいて行ったようにゆっくりと俺の方に歩き始める。

もしもハチマルに俺を襲う意思があるのであれば、とっくに襲い掛かってきている距離だと思うから大丈夫だとは思うが、念のため警戒だけはしておいた。本当は 未来視(ビジョン) を使えばいいのだろうが、そこまでのMPは残っていない。

だがそんな心配も杞憂に終わり、ハチマルは俺の足に体を擦り付けてからちょこんと俺の前でお座りをする。いや、めっちゃかわいいんですけど。

「カレン? 撫でても平気か?」

俺がカレンに問いかけると、カレンもハチマルの行動に少し驚いていたようで

「え、ええ……大丈夫だと思うわ」

カレンの許可も下りたので、俺はこの白くてモフモフした手触りを楽しむとハチマルも俺の匂いを嗅いでくる。ちょっと困るのが、ハチマルは尻尾を振りながら俺の相棒周辺をひたすら匂ってくるのだ。俺が困った顔をしているとクラリスが離れたところから

「マルス! そのままにしてあげた方がいいと思うわよ! もしかしたら犬と同じでマルスの情報を収集したいのかもしれないわ!」

確かに犬がそのような行動を取るのは知っていたが、ハチマルは狼……いやその前に魔物か。少しの間ハチマルに好きなようにさせていると、カレンが

「マルス? 今ハチマルを鑑定したのだけれども、ちょっとおかしなところがあって……見てもらってもいいかしら?」

カレンに言われたとおりハチマルを鑑定すると、驚きの結果が表示された。

【名前】ハチマル

【称号】-

【種族】火喰い賢狼

【脅威】-

【状態】従魔(主人:カレン)

【年齢】1歳

【レベル】1

【HP】40/40

【MP】50/50

【筋力】12

【敏捷】58(+3)

【魔力】15(+12)

【器用】50(+9)

【耐久】10

【運】10

【特殊能力】火魔法(Lv0/B)(New)

【詳細】火耐性。人間の言葉を少し理解できる。

まず種族が火喰い小狼から火喰い賢狼に進化? している。そしてステータスも相当上がっており、火魔法の才能まで開花している。オーガとまではいかないようだが、俺たちの言葉を少し理解できるようだ。

だが一番驚いたのはそこではない。

「脅威度が……無くなっている……もしかしたらハチマルは俺たちにとっての脅威ではないという事なのか?」

思わず声にしてしまったが、ハチマルの脅威度が表示されなくなったのだ。3号の場合は脅威度が表示されていたからテイムすれば消えるという訳ではないのは確かだ。

脅威度が無くなっている事をみんなに伝えると

「カレン! 私もハチマルと触れ合いたいんだけどいい?」

「ええ、ハチマル。その銀髪の女性も私にとって大切な人よ。挨拶に行きなさい」

クラリスの言葉にカレンが答えると、ハチマルが俺の所からクラリスの所へ向かう。心なしかハチマルが歩くスピードが今までよりも速く感じる。

クラリスが中腰の体勢でハチマルを迎え入れると、事もあろうにいきなりハチマルがクラリスのスカートの中に顔を突っ込んだ。時間にして1秒程度だったがその間ハチマルの尻尾はまるでヘリコプターの羽のようにものすごい勢いで回っていた。

「ハチマル。これからよろしくね」

いつもであれば絶対に恥ずかしがりそうなクラリスが何事もなかったようにハチマルを受け入れると、ハチマルもすぐにスカートの中から顔を出し、クラリスの顔をぺろりと舐める。

その後エリーとミーシャの所にハチマルが行き、ここにいる全員に危害を与えないという事を確認すると

「みんな、南門に行ってもいいか? ここを塞ぐともしかしたら南門から溢れてくるかもしれないから」

南門が気になっていたのでみんなに提案すると頷いてくれたので、早速南門に向かう。

南門に向かう途中で周辺を警戒していたバロンとミネルバと出くわすと、2人は信じられないといった表情でハチマルを見る。2人に対してカレンが

「私の魅了眼が少し進化? したのかこの子だけテイム出来たのよ。危害を加えることはないし、マルスからもしっかりと承認してもらっているから2人共ハチマルをよろしくね」

と2人を説き伏せる。そうか、魅了眼と言えば少しはみんな納得してくれるかもしれないな。カレンの言葉に

「た、確かにカレンにだったら魅了されても仕方ないと思うが、初めて聞いたぞ……危害を受けないと分かっていても少し身構えてしまうな。尤も時間が経てば慣れると思うからそれまでは辛抱してくれハチマル」

バロンがハチマルに手を差し出すと、ハチマルは手の匂いを嗅ぎ俺の時と同じように股の匂いを嗅ぎ始める。俺の時よりは短かったが5秒くらい匂いを嗅いだ後、今度はミネルバの所に行くと

「カレン様、もしかしてハチマルのマルってマルス君のマルから取ったのですか? だからこんな……」

ミネルバのスカートの中にいるハチマル見ながらミネルバが言う。ミーシャに言われると思っていたがまさかミネルバに言われるとは……

「違うわよ、ミネルバ。ハチマルは匂いで情報を収集しているらしいの。多分そこが一番早く情報を収集できるからだと思うから少し我慢して」

カレンが言い終わる前にハチマルは顔を出し、カレンの所に戻ってくる。

2人にはこのことをサーシャに伝えてもらうために、砦に戻ってもらった。

火喰い狼と出くわすことなく、南門に辿り着くとやはりみんなハチマルに驚いていた。

「アイク兄、そういう事ですのでこのハチマルは味方です。ペットとでも思って頂ければと思うのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ……マルスがそう言うのであればそうなのだろう。それにしてもまさか魔物を魅了するとは……カレンの魅了眼も凄いな」

ハチマルを撫でながらアイクが言う。当然ハチマルはアイクの匂いを嗅いでいる。ハチマルはアイクを認識したのか次々に匂いを嗅ぎまわる。

予想はしていたのだが、眼鏡っ子先輩がハチマルの名前の由来を聞いてミネルバと同じことを言ってくる。きっとハチアイクという名前だったらこんなことはしてこないと言うと何故かみんなが納得した。悔しいが俺も思わず確かにと思ってしまった。

西門を塞いだことによる影響は今の所南門にはないらしく、今までどおりアイク、アリス、眼鏡っ子先輩、クロムの4人で充分事足りていたが、ハチマルのレベルアップと連携強化のためにも、時間が来るまでカレンとハチマルにも火喰い狼を倒してもらった。