軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第304話 惨状

2032年1月18日11時

「……それは出来んな。だがここに残るのであれば止めはしない。ジオルグたちの好きにしてもかまわない。だが俺たちがお前たちを助けるのはこれで最後だ。これ以上は俺たちのクエストにも支障が出る」

俺とスザク、ジオルグ、そしてミックの4人でテントの中に入って会議をしている。

ジオルグがテントに入るなり、ここにジオルグたちもまだ残るから守って欲しいと依頼をしてきて、今スザクが断ったところだ。

だがジオルグもこの答えを予想していたらしく

「そうだな。分かった。俺たちは西リムルガルドに引き返そう。西リムルガルドに戻る際に護衛を頼むことは可能か?」

ジオルグの質問にミックが

「スザク、レッカを借りることは出来ないか? ジオルグ殿下を送り届けたら俺も一緒に戻ってくる」

「それは構わないが、ミックは西リムルガルドに残らないのか?」

「ああ、俺がお前たちに協力すれば、ジオルグ殿下もスザクたちに協力したと周囲に言う事が出来るだろう? まぁ俺の直接の依頼人はバルクス国王なんだがな」

ミックの言葉にジオルグが

「すまないな。よろしく頼むぞミック。スザクもそれでいいか?」

ジオルグの言葉にスザクは考えることもなく即座に頷く。

最初からこういう青写真だったのか。別に何もしなくても近くにいるのであれば、協力したと吹聴しても構わないと思うが。

「最後にもう1つどうしても頼みたいことがある」

なんとジオルグがスザクに頭を下げて言うと、スザクも少し驚いたようで

「なんだ? 出来る事と出来ない事があるぞ? 聞くだけは聞くから言ってみろ」

「死んだ者たちを弔いたい。手伝ってはくれないか?」

予想外の言葉にスザクが驚いたが頷き、会議を終え死んだ者たちを弔う事にした。

ジオルグと貴族、そして助けた冒険者や騎士たちと東側の野営地に行くと、ジオルグは目の前の悲惨な光景に目を覆い、冒険者や騎士たちからはその場で立ち尽くしたり、崩れ落ちる者もいた。

だが何名かの貴族は興味がないようで、亡骸に対して何の言葉をかけるわけではなく、ただの汚物として見ているような感じがした。まぁあくまでも俺から見た印象だから実際は違うかもしれないが。

本来であれば、亡骸を綺麗に並べて埋葬してやりたかったのだが、風魔法で優しく運ぼうにも亡骸が崩れてしまって、運ぶことが出来ず、結局その場で火葬して土に還す事にした。

火葬する必要のない遺体も沢山あったが、火喰い狼で焼かれるのと火葬するのでは意味が違うからな。

この火葬して土魔法で埋める作業は助けた冒険者たちの中に火魔法使いと土魔法使いが何人かいたので、俺たちは死んでいったものたちの冥福を祈り、ジオルグたちを見守りながら警戒に当たる。

何匹か火喰い狼が東側から襲ってきたが、大した数ではなく、つつがなく葬儀を終えることが出来た。

「マルス、ジオルグたちを西リムルガルドに送る際にミックとレッカだけではなく、何人か同行させてくれないか? 思ったよりも長期戦になりそうだからテントなどもしっかりとしたもので揃えたい。本来であればフレスバルド騎士団の土魔法使いを集めてしっかりとした建物を作りたいのだが騎士団を他国に入れるわけにはいかないからな」

葬儀を無事に終えると、スザクが俺に聞いてくる。

「分かりました。それではブラッドとコディ……そしてブラム先生を同行させましょう。あと建物に関しては僕に考えがありますのでどこに建てるかだけを教えて頂ければ、到着して7時間後くらいまでには泊れる拠点は作れると思います」

「場所はここからさらに東に行き、最低でもリムルガルド城下町の南門と西門が見える場所に設営しようと思っているのだが……何をするつもりだ?」

「しっかりとした建物を建てるつもりです。火喰い狼相手にテントでは少し怖いので。まずはジオルグ殿下たちを早く西リムルガルドに送り届けましょう。日が落ちてきてしまいます」

スザクは俺の言葉を少し疑いながらそれでも首を縦に振ってくれた。こんな提案普通なら承認してくれないと思うが、疑われながらも首を縦に振ってくれたという事は信用されている証だと思う。

「では頼むぞ、スザク、マルス、それにクロム!」

ジオルグたちが野営地跡から西リムルガルドへ戻り、俺たちはジオルグたちを見送りさらに東へ進む。ジオルグたちに同行するのはさっきの5人とビャッコだ。

東に進むにつれて火喰い狼の数が増えるが、クラリスとエリー、そしてカレンとミーシャの連携によりスムーズに進むことが出来た。

やはりカレンとミーシャの動と静のコンビネーション攻撃は魔物相手にも有効という事が改めて実証された。ここにテイムした火喰い狼が加わると更に強力になり、ミーシャがダメージを受ける可能性も低くなるんだが……なんとかリムルガルド城下町に入る前までには形にしておきたいな。

前線にはアイクとライナー、そして2人をサポートするようにアリスとクロム、ミネルバが後ろに付く。

アイクとライナーが頻繁にダメージを受けるが、そこはアリスがいるから安心できる。

ライナーも1対1ではほぼ完璧に火喰い狼程度の火であれば斬ったり、捌いたりできるようになっているが、少しでも他の火喰い狼に気を取られたりするとまだダメージを負ってしまう。

アイクも必死に槍で火を何とかできないか試行錯誤している。

俺とスザク、サーシャ、そしてバロンと眼鏡っ子先輩はこれからの事を考えてMPを温存するために、戦闘にはなるべく参加しないようにした。

2032年1月18日16時

野営地から東へ30分くらいの所に来るとリムルガルド城下町の南門と西門が見える位置に着いた。

「南門よりも西門からの方が多く火喰い狼が出現しているな……南門にはコロネがあるのか。さすがミックだ。あれを作る事が出来れば 迷宮飽和(ラビリンス) が起きて南門から火喰い狼が溢れてきてもある程度は防げるな」

スザクの言う通り封鎖されていると言われている西門から火喰い狼が出現しているのが分かる。

西門には土魔法か何かで作った大きな壁みたいなもので封鎖されているようなのだが、どうやら一部が自然にか、はたまた意図的にか分からないが崩れ落ちていた。近くに行けばもしかしたら分かるかもしれないが優先順位があるからな。

そして南門には南門を覆うようにして円錐のような形の何かがあるが、どういった役割を果たしているのかはすぐに分かった。街から溢れてきた火喰い狼の行き場を一点に集中させるのが目的なのであろう。

南門に円錐型の底の部分、つまりパンでいうチョココロネのチョコレートの挿入口を設置して先端を細くすることによって火喰い狼を同時に相手にしなくて済むようにしているのであろう。これであればミックたちがここに5人でいた訳も頷ける。

ミックたちと一緒に居て、死んでしまった兄弟というのは恐らく土魔法使いかなんかだったのだろう。コロネを作るには土魔法使いが必要だからな。

「よし! それではこれから砦の建設に移る! マルスがバロンとエーディンに指示を出してくれ! 他の者たちはここを死守するように!」

西門から出てくる火喰い狼をクラリス、エリーとカレン、ミーシャのコンビに対応してもらい、アイク、ライナー、アリス、ミネルバ、クロムの5人は南門の方を警戒してもらう。スザクとサーシャは俺たちの近くにいてもらい、不測の事態に備えてもらうようにした。

土魔法のレベルが8に上がっていたので、魔の森で作った物より少し大きく頑丈な砦を作る事にした。今回は眼鏡っ子先輩とバロンにも協力してもらえるから同じ時間をかければよりいいものが作れるだろう。

「……凄いな……まさか3人でここまでの物が作れるのか……とにかく砦建設を最優先にしてくれ。絶対にここを守るからお前たちはどんどんMPを枯渇させてくれ。そのうちミックやレッカ、ビャッコたちも戻ってくる」

1階部分だけを作り終え、簡易な浴室を2つ作り、俺とバロン、そして眼鏡っ子先輩がそれぞれ風呂に入る。こんな非常時でも眼鏡っ子先輩の後のお風呂を使うとアイクに悪いし、俺たちの後のお風呂を眼鏡っ子先輩に使わせるのも気が引けるからな。

さっぱりした後、簡易ベッドで横になり次に備えてすぐにMPを枯渇させて目を閉じた。