軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第292話 ジオルグ・バルクス

ジオルグが俺たちを呼んでいる? 絶対に嫌とは言えない。どうやらアイクも俺と同じようでお互い顔を見合わせてしまった。

「畏まりました。今すぐジオルグ殿下の下へ伺いましょう」

もうこうやって言うしかないからな。俺もアイクの言葉に従う意思を見せるとスザクが

「クロム、俺も同席させてもらう。今マルスとアイクは俺と一緒にパーティを組んでいる。もしもそのクエストを妨害するような事を依頼された場合、俺が断らせてもらう。この2人にジオルグの依頼を断る事なんて出来ないからな」

さすが頼れる兄貴分のスザクだ! 一生ついて行きます! って思ってみたけど考えてみればカレンと結婚すると本当にスザクは俺の義兄になるんだよな。

「分かりました。兄もそれは承知している事だと思いますので、よろしくお願いします」

クロムがホッと肩を降ろし、領主の館の方へ歩き始めると

「私も一緒に行っていいのかしら?」

カレンが誰に聞くでもなく言う。

俺は来ないでくれと言おうとしたのだが、スザクが

「ああ、一緒に来てもいいぞ。むしろ今後の為になるかもしれないからな。機会があればフレスバルド家の次女でマルスと婚約しているとここにいる者たちに知らしめれば、マルスとしても成人した後に色々と有利に働くだろう。フレスバルド家の次女を妻に迎え入れるなんて栄誉な事だからな」

そういう考えもあるのか。確かにカレンの場合は大陸1の権力者と言っても過言ではないフレスバルド公爵家の次女だからな。スザクも近くにいれば問題ないか。

ただ俺はフレスバルド家の次女だからカレンと結婚するのかと言われるとそれは違うんだけどな。まぁ周りにどう思われていようがカレンが分かってくれればそれでいいとは思うが。

小走りで領主の館へ近づくと貴族や冒険者たちの興奮や熱気がビリビリと肌に伝わってくる。

そしてクロムの案内によってジオルグが視認できる場所までやってくるとジオルグはお立ち台のような所に登ってここに居る者みんなを鼓舞していた。

ジオルグのいでたちは全身金色の防具に包まれており、その防具にはところどころ宝石などで装飾がされている。太陽の光で鎧の光彩が反射される姿はどこか神秘的で思わず目を奪われてしまった。

「ここに居る者たちは由緒正しきバルクス王国の選ばれた貴族! そしてそれに仕える選ばれた勇者たちだ! 俺たちは必ずリムルガルドを攻略できる! むしろ俺たち以外が攻略することなど出来るわけがない!」

ジオルグの一言一言にここに居る者たちが昂っているのが分かる。そしてジオルグは満足そうな表情で腰に差していた剣を抜くと天高く掲げた。

選ばれた 勇(・) 者(・) という言葉に少し違和感……いや抵抗を覚えたが、それよりも気になる物があった。ジオルグが掲げた剣だ。

その剣は金色に光っており、柄の部分にはダイヤモンドやサファイアのような宝石が散りばめられており、装飾もジオルグが身に着けているものより一際豪華だった。こんな豪華な剣見た事……あるな。

「見よ! この剣を! この剣は数々の魔物を倒し、その魔物達の魔石が剣に宿った宝剣だ! この度の戦いも必ずやこの剣がもっと輝くよう私も前線に出る! 皆の者も付いて参れ!」

このあたりにいる者たちは皆、洗脳されているかのようにジオルグの言葉に心酔しており疑うことなくジオルグの言葉を信じているようだ。少なくとも俺にはそう 見(・) え(・) た(・) 。

しかし俺だけは、いやアイクもかもしれないが、今の話は全くの嘘だという事が分かった。

何故かって? だってあの剣は俺が宝箱から見つけた剣だからな。みんなは覚えているか? この剣を。

【名前】金の宝剣

【攻撃】6

【価値】-

【詳細】攻撃力は低いが、人によって価値が変わる。

イルグシア迷宮で俺が宝箱から取り出した剣だ。確かジークはこれをバルクス国王へ献上したのだが、それがジオルグの手に渡ったのだろう。

「マルス……あの剣って……」

アイクが俺の方を見て確認してきたので黙って頷くと、もうアイクは何も言わなかった。

「気高き勇者たちよ! その剣を以ってバルクス王国に永遠の輝きを取り戻すのだ!」

「「「おおおぉぉぉおおお!!!」」」

ジオルグが天高く掲げた剣を前方に傾けると冒険者や騎士団、そして貴族たちが次々と街の外へ向かっていった。

その様子を少しの間だけ見届けていたジオルグはお立ち台から降りると、煌びやかな者たちに囲まれたが、俺たちを見つけるとすぐに全身金色に包まれたジオルグが駆け寄ってきた。

「ジオルグ殿下! ご無沙汰しております!」

ジオルグが俺たちのところに来るとすぐにアイクが片膝をついて挨拶をする。

ご無沙汰? アイクってジオルグと面識あるのか?

「ああ、久しいなアイク。縁談の件は残念だったが、お前にはお前の考えがあっての事だろうからな」

そうか、アイクの縁談先ってそっち関係だったから面識があるのも頷ける。

「ジオルグ、相変わらずだな。その口八丁で皆をその気にさせるとはな」

一国の王子、次期国王に一番近い者にまさかの不敬な発言をするスザクに驚いていると

「口八丁とは相変わらず手厳しいな。だが俺の取り柄は弁舌だけだからな」

友達と話すようにジオルグもスザクと言葉を交わす。あれ? 思ったよりもこの2人は友好的なのか?

それにジオルグの第一印象がそんなに悪くない事にも驚いた。もっと傲慢で威張っているテンプレ悪役貴族……王族? だと思ったのになんか拍子抜けしてしまう……いやテンプレ悪役貴族を期待していた訳じゃないよ?

「お目にかかれて光栄です! ブライアント伯爵家次男マルス・ブライアントと申します! ジオルグ殿下のご用命に賜り参りました!」

まぁ考える事よりもまずはやらなければならない事がある。ここはしっかりと挨拶をしておかねばジークたちの陞爵にも関わる。

「ああ、よく来てくれた。お前がマルスか。噂以上の色男だな。とするとそっちの女がクラリスか。やはりクラリスも噂以上だな」

ジオルグはカレンを見てクラリスと思い込んでいるようだ。俺とクラリスはジオルグの耳にまで届くほどになったのか。

「ジオルグ、クラリスではない、俺の妹のカレンだ。カレン、自己紹介を」

スザクがジオルグの言葉を否定するとカレンがスザクに言われたとおり自己紹介をする。

「初めまして、フレスバルド公爵家次女カレン・リオネルです。ジオルグ殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます」

片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、 両手でスカートの裾を軽く持ち上げる挨拶をする。たくさんの女性たちの作法を見てきたが、カレンの所作が一番綺麗だ。

「なんと!? なぜスザクの妹がここに?」

俺が質問に答えていいのか分からずに逡巡していると

「カレンはマルスの婚約者だからな。まぁこれはあまり広くは知られていないかもしれないが、少なくとも我が父はそう思っている」

「先日、父からも僕とカレンの結婚を承認して頂いております」

スザクの言葉に俺が付け加えると、スザクが嬉しそうに言葉を続ける。

「そしてカレンはマルスのパーティメンバーだからな。本来であれば今日俺達がリムルガルド城に行く予定だったんだが……」

スザクがここまで言いかけると

「ブライアント伯爵家とフレスバルド公爵家で婚約したのか!? そんな事俺は聞いてないぞ!?」

ジオルグが興奮してスザクの言葉を遮る。やはりフレスバルド公爵家との婚約というのはよほどの事なのだろう。

「まぁそれは後でな。マルスも言ったように最近マルスの父も許可したようだし。先ほどの話の続きなんだが、先日ジオルグにも言ったように今日出発予定だったんだ。それをずらしておいて今度はマルスに何の用があるのだ?」

少し詰問するような感じでスザクがジオルグに尋ねると

「分かった。だがここではまずい、俺とスザク、アイクにマルスとカレンの5人だけで話がしたい」

あれ? クロムは? と思っているとジオルグはクロムに

「クロムはもう屋敷に戻れ。5人で話す」

クロムは何かを言いかけたが、ジオルグに睨まれると、肩を落として俺達から離れていく。

「ここではちょっとあれだから、どこかの屋敷に入ろう」

ジオルグに促されて俺達もジオルグの後に付いて行くと、どこからか嫌な感覚……ねちっこい視線を感じた。