軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第224話 BEST4

「ナイスファイト」

グータッチをしながらバロンを迎え入れる。

「ありがとう。クロムも強いな。1年生ではあるが俺らと年は一緒だからな。見くびっていた訳ではないが驚いた」

バロンとクロムの試合は一見すると拮抗していた。筋力、敏捷、耐久がほぼ互角、魔力と器用はバロンの方が上というステータスだ。

スキルはバロンが上、装備はクロムといった感じだ。

試合序盤クロムがバロンに魔法戦を挑んだが、バロンが有利という事が分かるとクロムは接近戦に討って出た。

そして剣での戦いになるのだが装備の差をバロンが剣術スキルの差でカバーする。

2人の剣戟は何合にもわたったが、ほぼ互角だった。クロムが攻めてバロンが守るという試合展開だったが、ある程度膠着し始めるとバロンが奥の手を出した。

左手に巻き付けていた鎖を解き放つと、鎖は蛇のように地面をするする這っていく。この前よりも鎖の動きが間違いなく速いし力強かった。

バロンは鎖の方を見ることなくクロムと剣戟を重ねていたのでクロムは全く鎖に気づくことは無かった。

そしてクロムが鎖に気づいた時にはすべてが手遅れだった。クロムの右足にはしっかりと鎖が巻き付いておりもうまともに立つことが出来なくなっていた。

初見で躱すことは難しいかもしれないが、そうでなくてもクロムには勝ち目がなかったように思える。

離れて戦うという事は魔法戦となり完全にバロンの方が上だ。いくら王者の鎧が凄い性能とはいえ防ぎきるのは無理だろう。

そして近距離戦では鎖を考慮しながら戦わないといけない。ステータスがほぼ互角であれば結局は鎖を使えるバロンが優勢なのだ。

「鎖の扱い方が上手くなったな。あれじゃあ初見では鎖に気づかないよ。それに鎖から冷気みたいなものが発せられていた気がするのだがあれは水魔法なのか?」

「マルスは何でもお見通しだな。そうだ、鎖の巻き付いている部分を急激に冷やしたんだ。あれをされると集中力が散漫になるからな。剣戟だけに集中することはほぼ不可能だろう」

俺とバロンが話をしているとミーシャが

「次は私の番だからね。しっかりと応援してよね」

「うーん……ミーシャの相手はアリスだからな……お互い頑張ってくれとしか言えない。だけど怪我がないようにしてくれ。もちろんアリスにもして欲しくない。いくら神聖魔法で治せるとはいえ女子には怪我はして欲しくない」

「やっぱりダメだったか……まぁアリスと楽しんでくるよ」

ミーシャはそう言い残すとリングアナウンサーの紹介と共に闘技場の熱気の中心に颯爽と走っていった。

ミーシャとアリスの試合はミーシャの完勝だった。耐久値以外はミーシャが圧倒しているから仕方ない。アリスも自身の力の全てを出し切る事が出来たから満足だろう。

「お疲れ様。お互い無事で何よりだ」

恒例のグータッチをしながらねぎらうと

「うん。楽しかった。クラリスに鍛えられているだけあってアリスは本当に強くなっているね。次はカレンだよ。カレンも頑張ってね」

カレンは次戦が眼鏡っ子先輩だ。かなり手加減してくれないと大変なことになる。

「カレン、魔法は控えるようにな。相手は俺達の義姉さんだからな」

「分かっているわよ。でもマルスに俺たちの義姉さんって言われると嬉しいわね。あまりの嬉しさにフレアボムを発現させないようにしなきゃ……」

カレンと眼鏡っ子先輩の試合はお互い全くダメージを受けることなく終わった。

もちろん勝ったのはカレンだ。眼鏡っ子先輩が攻撃しようとするたびに眼鏡っ子先輩の地面付近をカレンのレッドビュートが『パシン!』と音を立てる。攻撃してくるなら痛い目に合わせるぞという警告のようだ。

結局眼鏡っ子先輩はカレンの鞭での脅迫に屈してあっさりと負けを認めた。カレンの周囲を飛んでいるファイアボールも脅しの要素にはなっているのだろう。

「流石だね。おめでとう」

カレンが戻ってくると全員でグータッチをした。これでベスト4が出そろった。波乱なんてものはなく、第1シードから第4シードまでしっかりとベスト4に残った。

現在11時で今から1時まで昼休憩だ。そのあとにベスト4の試合が始まる。反対側に行った眼鏡っ子先輩たちもこちらに戻ってきており、俺達はみんなで食堂の3階でご飯を食べることにした。

「カレンの鞭は本当に怖いわね。あんなのまともに食らったら一生ものの傷になりそうだわ。一生ものの傷になったら、しっかりマルスに責任を取ってもらうつもりだったから敢えて攻撃を受けるのもありだったのだけれども、さすがに恐怖で体が委縮してしまったわ」

ご飯を食べながら眼鏡っ子先輩が先ほどの対戦の感想を喋っている。そして眼鏡っ子先輩は相変わらずだった。

恐怖で体が委縮してしまうほどかぁ……決勝でカレンと戦うのが楽しみだな……

「義姉様にそんなことしないわよ。絶対に当てないように気を使っていたもの」

カレンが答えるとバロンが

「一度でもいいからカレンの鞭を受けてみたいな。どれだけ痛いのか、どれだけ跡が残るのか……」

恍惚の表情を浮かべながら素直な感想を述べた。バロンはもう自分の事を隠さなくなったな。

「それにしてもベスト4は全員2年生か……まぁ武神祭が始まる前から予想はしていたから私たちは驚くことはないけど見に来ている貴族たちはどう思っているのかしら?」

眼鏡っ子先輩がため息交じりに呟いた。

「【紅蓮】の皆様の力量はすでに他の貴族たちも知っているでしょうから評価が落ちることは無いと思いますが、他の貴族たちは絶対に先輩たちの事を取り合うでしょうね。特に僕の父はマルス先輩を絶対にバルクス王国へ戻そうと思っていますよ……」

クロムが眼鏡っ子先輩の疑問に答えるとバロンが

「確かにそうだな。マルスは今リスター帝国学校の生徒という立場でリーガン公爵の下に居るが、ずっとリーガン公爵の下に居るわけではないからな。そしてもう1つ重要なのがマルスを支える5人の女性だな。もしもマルスが別の貴族に就くと言えばその5人も一緒になって他の貴族に就くだろうからな。マルスがリスター連合国の他の貴族の下に就くと言うのであればまだいいが、他国に行ってしまうとなるとリーガン公爵も黙ってはいないかもしれないな」

顎を触りながら話した。確かにそうだよな……

バルクス王国は今でこそクロムがリスター帝国学校に来ているからあまりリスター連合国にちょっかいを出さなくなったが、去年まではサンマリーナやメサリウスにちょっかいを出してきていたからな。

俺がバルクス王国に戻ってクロムが卒業したらきっとバルクス王国は何かしらの行動を起こすだろうな……

でも俺の夢はリムルガルドを治めてバルクス王国とザルカム王国の常時戦争状態というのを回避したいんだよな……今はリムルガルド城が迷宮化しているからその心配はないが……もしかしたらリムルガルド城は迷宮化したままの方がいいのかもしれない。

「そんな事にはならないわよ。だって私とエリーがいるのよ? フレスバルド家とセレアンス家を敵にするような馬鹿な真似をマルスがするはずがないわ」

カレンは完全に俺を信用してくれているようだ。そして一方で俺の左隣にいるエリーは

「……マルス……行く場所……私の場所……」

これも信用と言う言葉で片付けていいのだろうか……この会話を聞いていた暴走エルフがとんでもない事を言う。

「ねぇ? マルスが国を作ってしまえばいいんじゃない? 私たち5人の事もそうだけど義兄さんも凄いじゃない? そしてマルスの父のジークさんはバルクス王国で一番の影響力を持っている貴族の1人って聞いたよ? なんとかすればマルスが王様になってリムルガルド王国とか作れそうじゃない?」

そんなことしたら両国から攻め込まれる可能性もあるだろ……それにしてもジークってそんな影響力を持っていたのか? 確かに2つの迷宮から得られる収入はバルクス王国で一番というのはチラッと聞いたことがあるが……

まぁどう考えても俺達だけで国を興すというのは無理だ。そもそも俺にはそんな気は一切ない。

ミーシャの言葉にクロムが苦笑いをしていた。確かにクロムの立場からすればミーシャの発言はとんでもない事だよな。

この後バロンとクロムがしばらく先ほどの対戦の事で話し合い、もう13時になろうとしていた。

そしてふと外を見るとリーガン公爵が慌ただしく職員や騎士団員たちに指示を出しているのが見えた。