作品タイトル不明
第219話 1年Sクラス序列戦
2031年9月1日
昨日まではゴンたちと一緒に2年Bクラスで過ごしたが、今日からはしっかりとSクラスで授業を受ける。
エリー以外の【黎明】のメンバーとアイクで朝練をすると早速学校に向かった。
今までは1人で学校に向かっていたが、先月からはゴンたちと登校している。クラスは違えど友情に変化はなかった。
「よう、マルス久しぶりだな」
ゴンたちと登校しているとバロンが俺を見かけて声をかけてきた。
「ああ、久しぶり。だいぶ逞しくなったな」
急にゴンたちに緊張感が走る。どうしたんだろうか?
「マルスの友達か? 俺はバロン。よろしくな」
バロンがゴンたちに気さくに声をかけると
「ゴンと申します。バロン様、よろしくお願い申し上げます……」
え……?なぜ敬語?
「同級生だから言葉遣いは普通でいい。というか普通に接してくれると助かる。もしも昔の俺を知っているのであれば忘れてくれ」
バロンが照れ臭そうにゴンたちに言った。
後にゴンに聞いたのだがリスター帝国学校に入る前までは、プライドの塊のような人間という噂だったらしい。
そういえば最初にバロンと手合わせした時の印象はあまり良くなかったのを思い出した。
それに伯爵家嫡男だからという事もあるとの事だ。あれ? 伯爵家次男には最初から何も気を使っていなかった気がするが? バロンの言葉にゴンたちが驚いていたが嬉しそうに頷いていた。
「なんか俺らが思っていたのと大分Sクラスの印象は違うんだな……もっとギスギスしていると思っていたんだが……」
ゴンの言葉にバロンが
「いや、マルスがいなければしっかりギスギスしていたと思うぞ。序列1位がSクラスの空気を決めているようなものだからな。もしもマルスたちがいなければ俺が序列1位だっただろうから、完全に縦割りのクラスを作ってしまっていたな。今頃は俺とドミニクがバチバチでやりあっていた可能性もある。マルスが同学年で本当に良かったよ。ただマルスが序列1位のせいで俺もドミニクも少し……いやなんでもない……」
バロンが嬉しい事を言ってくれる。最近の俺はアイク以外に褒められることがないから嬉しい。
だが最後の言葉が気になる……なんだ? 何が言いたいのだ? 疑問が解消されないまま俺たちは登校した。
ホームルームまで時間があるしまだ女性陣もきていない。俺はバロンとお互いの成長の成果を見せ合った。
「いつ見てもマルスの筋肉は凄いな」
「そういうバロンこそ……凄いな……」
俺とバロンは上半身裸になって適当にポージングをしているのだがバロンの生傷が気になる……鎖の跡の他に火傷の跡もある……俺の視線にバロンが気づくと
「ああ、この火傷跡か? 痛みに慣れておかないとと思い訓練しているんだ。ミネルバもノリノリでな。マルスもどうだ? きっと何かの役に立つぞ?」
痛みに慣れる訓練って言う奴は完全に染まっている証拠だ! 誰だ! バロンをこんな道に歩ませたやつは!
俺とバロンが楽しく話していると女性陣がホームルームギリギリでやってきた。そして何か月かぶり会う担任のローレンツも教室に入ってきた。
「みんな久しぶりだな。ドミニクの事はリーガン公爵から聞いた。ホームルームを行うから席に着いてくれ」
全員が席に着くと
「今日から武神祭の予選が始まる。2年Sクラスは全員シードだからお前たちの初戦はまだまだ先なんだが……今年の武神祭は例年とは違う。去年、4年生では異例の優勝をしたアイクはトーナメントに出場しない。トーナメントで決勝戦を制した者がアイクとの優勝決定戦を行うとの事だ」
アイクは1試合しかやらないのか。まぁ前年度優勝者だからな。
「そして今回の第1シードはなんとマルスだ。そして第2シードがカレン、第3シードがミーシャ、第4シードがバロンとなっている……これはリーガン公爵や他の先生方で決めた事なのだが……5年生の【紅蓮】よりもお前たちの方が上位シードとは……あとクラリスとエリーの名前がトーナメント表にはない。基本は全員参加なのだが……2人は何か聞いているか?」
え? 俺が第1シードなのか? もしかしたらライナーやサーシャがリーガン公爵に言ったのかもしれない。
クラリスとエリーの名前が無いという事はエキシビジョンマッチを万全な状態で戦えという事か……ローレンツの言葉にクラリスが
「はい。私とエリーは武神祭後のエキシビジョンマッチでリーガン公爵が選んだ方と対戦するのだと思います」
「そうか……何か事情があるという事だな。それではこれからSクラスの序列戦を行う。去年と同様下位の者から挑戦をすることにするが誰か挑戦したいものはいるか?」
去年は1人ずつに聞いていたのに今年はやけにあっさりしているな……するとバロンが手を挙げて
「はい。是非ミーシャと戦いたいです」
ミーシャを見ながら言うと、ミーシャも当然分かっていたらしく
「うん。バロンやろう!」
張り切って返事をした。早速Sクラス全員で闘技場に向かうと先客がいた。1年Sクラスだ。彼らもついさっき来たらしく先生同士で話し合っていた。
「よう、マルス。元気だったか?」
ブラッドが俺の背中を強く叩いて挨拶をしてくる。なんでいつもこいつは加減を知らないんだ。俺が変な方に目覚めたらお前のせいだぞ……
「あ、ああ……久しぶりだな……今から1年Sクラスも序列戦なのか?」
「ああ。俺とクロムとアリスで総当たり戦をするんだ。お前らもやるのか? やるのであれば興味があるな」
「俺たちはミーシャとバロンがやる」
「バロンか……あいつは死の森でだいぶ強くなったからな。やはり死の森だと範囲魔法で小さい虫けらを纏めて倒す方が効率よくレベルが上がるから俺も差をつけられちまった。バロンはカレンには勝てないにしろミーシャには勝てるかもな」
そういえば成長したバロンを鑑定していなかったな。バロンを鑑定すると
【名前】バロン・ラインハルト
【称号】-
【身分】人族・ラインハルト伯爵家嫡男
【状態】良好
【年齢】11歳
【レベル】32
【HP】72/72
【MP】340/340
【筋力】47
【敏捷】43
【魔力】47
【器用】49
【耐久】46
【運】1
【特殊能力】剣術(Lv7/B)
【特殊能力】鎖術(Lv2/G)
【特殊能力】火魔法(Lv4/D)
【特殊能力】水魔法(Lv4/D)
【特殊能力】土魔法(Lv7/C)
【特殊能力】風魔法(Lv3/D)
【装備】 土精霊の剣(ノームソード)
【装備】シルバーチェーン
【装備】 土精霊の鎧(ノームアーマー)
特殊能力も色々上がっていて強くなったな……一番は耐久値が5も上がったことだ。痛みに慣れる練習をしたからだろう……やはり俺も積極的に取り入れないといけないのかもしれない。
ん? さっきと言っている事が違うって? 先人がこうやって成果を出しているのだ。ここは毎日カレンに鞭と火魔法で……
「ちょっと、なにロクでもない事を考えているのよ!? ゴンたちに本当に変な方向に調整させられてないでしょうね?」
クラリスが俺の頬を軽くつねってきた。
「べ、別にそんな変なことを考えていないよ? 明日からの訓練どうしようかなぁって……」
「その訓練でカレンにシバいてもらおうなんて考えないでよね!?」
なぜクラリスはいつも俺の思考を読めるのだ?
「姐さんお久しぶりです。綺麗さに磨きがかかりましたね。どうです? 今日の夜は俺と……」
ブラッドがクラリスに挨拶をしながら肩を抱き寄せ触れようとすると、しっかりブラッドの頬にはクラリスの手形が残った。
痛みに慣れる訓練としてはもってこいかもしれない。俺の場合はもう少し強くしてもらわないと……
「ブラ、久しぶりね。元気そうで安心したわ」
ブラッドは赤く腫れあがった頬を抑えつつも嬉しそうにクラリスの言葉に頷いた。
ああ……こうやってバロンやドミニクのような人間が生まれていくのか……俺達の会話に【暁】のメンバーがみんな加わり授業中にも関わらず騒がしくなった。
「1年生の序列戦からやることになったからお前たちはこのまま見学していていいぞ」
1年生の先生と話し終わったローレンツが俺達に向かってこういった。
1年生の序列戦では面白い事が起こった。3人が1勝1敗になったのだ。
試合の詳細は省くが初戦がクロム対ブラッド。クロムが睡眠魔法を使わずにブラッドと戦ったが接近戦で勝てるわけが無く、結局睡眠魔法を使ってクロムが勝利。
そしてクロム対アリスで番狂わせが起こったのだ。ブラッド戦でMPを消費していたクロムは疲れも残っていた。MPを消費しアリスを近づかせないように弾幕を張ったが、全てを凌がれて剣対細剣の試合になった。
接近戦はほぼ互角なのだが2人の差が明白な点があった。スタミナの差だ。アリスは最近ずっと俺と朝練をしているためスタミナはそこらの生徒達よりもある。
クロムもスタミナが無いという事はないが、ブラッド戦での消耗もあり、剣の精度は落ちていた。結局10分弱の戦いの末、クロムが根負けしてアリスの勝ちとなった。
次戦はアリス対ブラッド。やはりアリスはブラッドに接近戦では勝てない為、あっさりブラッドに軍配があがる。
これで先ほど言った全員1勝1敗となった。
「この場合どうなるんだ?」
俺がみんなに聞くとバロンが
「これは2巡目だな。もう一度総当たり戦をやると思うがこうなるとクロムの勝ち目はないな……」
結局すべてがバロンの言ったとおりになった。2巡目をすることになり、MPが無くなったクロムは2人に負けた。そして2勝したのがブラッドだった。
「よっしゃぁぁぁあああ!!!」
ブラッドがアリスに勝った瞬間雄たけびを上げた。アリスは悔しそうだが満足しているようでもあった。一番悔しそうなのはクロムだった。
ブラッドとアリスが俺たちの所に走ってやってくる。まだ2人の体力は有り余っているようだ。俺は負けたクロムの所に行き
「殿下、1巡目はいい勝負でした」
そう言ってクロムの手を取ると
「マルス先輩……【暁】ではどんな訓練をしているのですか? ブラッドはともかくアリスにまで負けるとは思いませんでした」
俺が朝練の事を言うとクロムは驚いていた。
「朝からそんなハードな訓練をして学校に来ていたのですか……」
クロムを励ましているとミーシャとバロンが闘技場の中心に向かって歩いて行った。