軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第214話 光芒一閃

「どうする!? このまま管を斬って人造魔石を取りだすか!?」

ライナーが俺に大声で聞いてくる。少しだけ逡巡し

「はい! 試しに1本だけ切ってみましょう!」

恐らくこの人造魔石から負の力がヨーゼフに流れている事は確かだ。その力の供給源が無くなればと思ったのだが

「あああぁぁぁ!!!」

ライナーが1本管を切るとヨーゼフの声とは思えない声がヨーゼフの口から発声された。

そして事もあろうか左目の白目の部分が一瞬黒くなった。もしかしたら痛みを伴うと防衛本能からかデーモンに近づくのかもしれない。

あくまでも推測だが痛みにはデーモンの方が強そうだからな。

「ライナー先生! やめましょう! 斬るのは無しです!」

俺がライナーを制止すると

「マルス! どんどんヨーゼフの力が強くなっている! もう俺とヒュージ様で何分も押さえつけるのは不可能だ!」

アイクが俺に向かって叫ぶ。もう人造魔石を破壊するしかないか……これ以上は本当に危険だ。

「マルス、もう破壊しかないわよ」

カレンが俺に進言した。やはりそうか。仕方ない……俺がやろう……

「ライナー先生! 俺が破壊します!」

恐らく人造魔石を破壊するとヨーゼフは死んでしまうだろう。

いや痛みに耐えきれず瞬間的にデーモンになり、デーモンになってから死ぬ。俺の言葉にライナーが反論した。

「生徒に級友を殺させられない。俺がやる」

やはりライナーも人造魔石を破壊するとヨーゼフが死ぬと思っているようだ。だがここで人に殺人を押し付けるわけにはいかない。ライナーとブラムはもうこれ以上哀しい思いを……うん……? ブラム……? もしかして……

「ライナー先生! 少し待ってください!」

俺が必死にライナーを止めるとライナーは人造魔石を剣で破壊するギリギリのところで止まった。

「なんだ!? マルスにはやらせないぞ!?」

「はい。最後にもう1つ足掻きたいです! ブラム先生! 魔石を空間魔法で収納することは出来ますか!?」

俺の言葉にみんなが俺の意図に気づいた。

「ああ。物であれば収納が出来る!」

ブラムが人造魔石と人造魔石から出ている管を束ねて持った。

「ブラム先生! お願いします!」

ブラムが空間魔法を発現させると……人造魔石は空間にしまわれなかった。なぜ?

「何かレジストされている気がする!」

ブラムが叫ぶ。くそ! しぶとい!

「みんな少しビリっとするかもしれないが我慢してくれ! クラリスはブラム先生にヒールをかけ続けてくれ! クラリスのヒールは状態異常も治せるからな!」

大体の者たちは俺が何をするのかすぐに気づいたようだ。そして俺が雷鳴剣に手を当てるとヒュージも分かったようだ。

俺は雷鳴剣を抜いてヨーゼフの首元に当てる。纏雷を使うか迷ったがさすがに纏雷を仲間に当てるとシャレにならないから威力は弱いが雷鳴剣に雷魔法をエンチャントすることを選んだ。

「ブラム先生! 何があっても空間魔法を使っていてください!」

俺の言葉にブラムが頷くと俺は雷鳴剣に雷魔法をエンチャントした。

「バチっ!」

雷鳴剣から雷魔法が伝達して一瞬だがヨーゼフの状態が感電(極小)となった。しかしそれで十分だった。

ヨーゼフからのレジストが途切れた瞬間に人造魔石と管が一瞬にして消え去った。

ヨーゼフが苦しんでいる様子はない! 大成功だ!

安心したのも束の間、今度はどんどんヨーゼフのHPが減っていく。ヨーゼフは気絶しているようだ。HPと同時にステータス値もどんどん下がっていった。

必死にヒールでヨーゼフのHPを回復させる。1秒で1ずつくらいHPが減っていく。そして最大HPもどんどん下がっている。

「マルス! 魔物が……集まってくる!」

エリーが珍しく声を張り上げた。ヨーゼフが弱ったことによって今までデーモンたちに抑圧されていた魔物達が一気に襲い掛かってこようとしているのかもしれない。

「いますぐにヨーゼフを連れて砦に戻りましょう! ブラム先生! 大変かもしれませんがヨーゼフをおんぶして走ってください! ヒュージ様とクラリス、ミーシャ、ライナー先生は先頭を走って目の前の敵を倒してください! カレンとサーシャ先生はブラム先生の近くで警備を!

アリスはヨーゼフが苦しそうになったらヒールをかけてくれ! ヒールをかけるタイミング分からなかったらカレンに聞いてくれ!

俺とアイク兄、そしてエリーが殿を務める! ブラム先生! ヨーゼフをおんぶするのがきつくなったらライナー先生と変わってもらってください!」

いつのまにか完全に俺が指揮を執るようになっていたが、みんな何も言わずに従ってくれた。

ブラムがヨーゼフをおぶって走り出すとヒュージ、クラリス、ミーシャが前に出て前方にいる敵を探し出し排除する。

恐らくここから北には強いのが 地獄の蛇(ヘルスネーク) くらいしかいないはずだ。だから水魔法使い3人を前衛に配置したのだ。

そして南からはキマイラやトロルコングといった魔物が襲ってくるに違いない。

10分くらい北に走るとアリスが遅れ始めた。【黎明】の2年生は走り込みをしているがアリスは走り込みをしていない。またMPが枯渇しそうというのもある。

「クラリス! アリスと変わってくれ! 魔法の弓矢(マジックアロー) で前衛をカバーしながらヨーゼフにヒールを頼む! アリス! 嫌かもしれないが俺がアリスをおんぶする!いいな!?」

クラリスは頷き、アリスは少し悔しそうな顔をした。この魔の森で自分が役にたっていないとでも思っているのかもしれない。アリスをおんぶして北に走り出すとアリスに声をかけた。

「アリス、アリスはまだ1年生だ。 恐らくミーシャやカレンが1年生の時は今のアリスよりも弱かったと思う。だから気にするな。誰にだってこういう時はある」

「ありがとうございます。先輩。もっと強くなって絶対に恩返ししますから」

アリスがそう言って後ろから思いっきり抱きついてきた。神聖魔法使いで発育のいいアリスが抱き着いてくると……早く賢者様に会わねば……

ヒュージとミーシャはブラムの道の前に立ちふさがる敵だけを確実に倒す。脇に居る敵は完全無視だ。

そして俺達殿も敵を倒すというよりかは敵に追い付かれないようにしている。トロルコングをウィンドで木から落としたり、キマイラたちをウィンドインパルスで遠くに吹っ飛ばしたりだ。

30分くらい走り続けるとようやく森の切れ間が見えてきた。

「みんなもう少しだ!」

ヒュージがみんなに檄を飛ばす。

森の切れ間をみんなが確認すると、疲れていた顔が一斉に元気になった。一気に森を抜けると魔物達も俺たちを追いかけて森から出てきた。

「クラリス! 砦でヨーゼフの容態を見ていてくれ! アリスもこのまま砦で休むように! あとの者は砦の前で迎え撃つぞ! 俺はある魔法を撃ってからテリトリーの外に出る!」

もしかしたらここで迎え撃つ方がいいのかもしれないが、万が一まだ俺たちに気づいていない魔物まで襲ってくるとなるとまずい。

まずはテリトリーの外側で戦う必要があると思ったのだ。その前に1つ試しておきたい魔法があった。

こんな時にと思うかもしれないが俺にはまだMPの余裕がある。

ヨーゼフが抵抗してくれていたせいもあって今回はたいした全力戦闘を行っていないからね。

皆がテリトリーの外に出たことを確認するとずっと練習していた魔法を魔物に向かって放った。

今まで成功した事はないが原因は分かっている。それは雷魔法を手加減して放っていたからだ。雷魔法も全力で風魔法も全力で放てば発現できるかもしれない。

「サンダーストーム!」

この魔法はトルネードとライトニングを合わせた魔法でトルネードの中にライトニングを走らせるだけの魔法のはずなんだが……

今俺の前に発現したトルネードの色は何故か金色となっている……あれ……? これじゃあ雷が渦巻いて竜巻を発生させている気が……

金色の竜巻が激しい轟音を立てながら魔物達を襲う。地中に潜んでいたモグエースは全員びっくりして地上に出てきてしまっている。そして出てきたところに雷の竜巻が……わずか10秒ほどしか発現されなかったが、100匹以上の脅威度Bクラスの魔物を倒しただろう。

そしてまだまだ魔物はいたのだが、金色の竜巻に恐れをなしたのかそれともあの轟音に恐れをなしたのか魔の森から魔物は出てこなくなった。完全に予想外の結果だがいい方に予想外だからまぁいいだろう……

俺もテリトリーの外に出るとクラリスとアリスを除くみんなが警戒して待機をしていた。

「ど、どうやら魔物は来ないらしい……テリトリーの外には出たくないのかな……?」

俺自身先ほどの魔法の威力に戸惑っていたので皆に説明するのは色々整理してからにしよう……

俺の言葉にみんなが首をかしげるが、現に魔物はテリトリーの中から現れない。結局警戒はしつつも砦でヨーゼフの容態を見守る事にした。