軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第203話 一触即発

2031年5月9日

0時に起きると早速俺は街の西側から外に出た。

街の外には魔物の気配がなく冒険者たちが少しだが見張りをして警戒をしていた。

声をかけてこの街の事を聞こうと思ったが、それよりもまずこの街の街壁と街門を少しでも補修することにした。

もう雷の紋章を刻印するのが癖になっていた。外で見張っていた冒険者が街に戻った時に驚いていたのは言うまでもない。

補修作業をし部屋に戻るとアイクはすでに起きていた。まだ朝の5時だ。いつもであれば寝ている時間だと思うのだが。

「おはようございます。早いですね」

俺が言うとアイクが

「おはよう。俺よりも早く起きて行動しているマルスに言われるとはな。誰かさんの引き締まった体を見て、リスター帝国学校に戻ってからは朝の走り込みと筋トレがすっかり日課になってしまった。昨日は少し遅くまで起きてしまったがいつもは21時に寝て3時に起きる生活をしていたんだ。ランニングするには朝がいいからな」

流石アイクだ。勉強の虫ならぬ努力の虫だな。俺が感心していると

「どうだった? 外の様子は? マルスは街の外に行ってきたんだろ?」

「ええ。魔物は居ませんでした。昨日、西リムルガルドに居たのですが、西リムルガルドの周辺も魔物は出現しなかったです。少しリムルガルド周辺は安全になったのでしょうか?」

アイクの質問に俺が答えると

「そうだな、きっと不浄王による被害がかなり大きかったのかもしれない。油断はできないだろうがこの街の冒険者も警戒はしているだろう」

アイクが俺の質問に筋トレしながら答えた。俺も一緒になって兄弟2人で筋トレをした。

その後風呂に入り、みんなで朝ごはんを食べたのだがミーシャは二日酔いのようだ。あとでキュアをかけてやろう。

東リムルガルドを出発して東に進む。俺はガルに引っ張られて【紅蓮】の馬車に乗った。どうやら俺が【黎明】の……というよりかは俺がアリスと一緒にいるのが気に食わないらしい。

「なんで女性たちはマルスの事を好きになるんじゃろうか?」

ガルが俺を見ながら聞いてくる。いや、俺に聞かれても……すると眼鏡っ子先輩が

「やっぱり、外見と性格じゃない? この外見だったらオラオラ系なのかなと思うけど、実はいじられ好きな男の子って分かればみんないじらずにはいられないわよ。それにいざという時には頼りになるしね」

嬉しそうに俺を見ながら言った。

どう考えてもその嬉しそうな表情は新しい揶揄い方を発見した表情だ。それに俺はMではないぞ。マルスのMは真っ当のMだ。

「くそ、儂も新しいパーティを作った際にはマルスと同じことをしてやるわい!」

ガルが言うと眼鏡っ子先輩が

「顔はマルスの似顔絵でも貼っておくのかしら?」

笑いながらガルを揶揄う。眼鏡っ子先輩とガルのやり取りに【紅蓮】のメンバーも自然と笑顔になる。やはりこの2人はいいムードメーカーだな。

「ガル先輩、さっき新しいパーティを作るって言っていましたけど【紅蓮】を抜けるんですか?」

さっきのガルの言葉が気になったのでガルに聞くと

「ああ、そうじゃ。儂とイット、ユーリは今年いっぱいじゃ。何せ進路が違うからの。儂は冒険者を続けて新しくパーティを作り上を目指す。イットとユーリは騎士団に入るのが目標じゃからのう」

冒険者を続けるのであればガルは抜けなくてもいいのに……と思ったが、そういえば前にみんなが言っていたな。

強くなると独立してパーティリーダーになると。なんか薄情な気がして俺にはあまり理解が出来ないがそういうものなのだろう。

「まぁパーティを抜けてもたまに会えるしな。年に1回くらいは集まろうという話はしているんだ」

アイクが言うと、みんなが頷いていた。

しばらく東に進み、ガルを振りきりなんとか【黎明】の馬車に戻ると、早速エリーにマルス成分を吸収と言われて、左の首筋をひたすら吸われ続けた。

1時間くらい東に進んだところでチラホラと魔物が出現し始めた。

魔物が現れると【紅蓮】は全員で魔物と戦うのに対し、俺達【黎明】はアリスが戦うだけで、俺はアリスの側にはいるが手を出さず、クラリスは水魔法の練習をしながら俺とアリスの方を注視し、エリーは別の方向の警戒をし、カレンも火魔法の練習をしている。

ミーシャとサーシャは別の馬車だが、エリーのように別の方向を警戒している。

この光景を見たガルが魔物を倒した後に俺たちが乗る馬車にやってきて

「アリスだけを戦闘に参加させるとは何事じゃ! アリスが怪我をしたらどうするのじゃ!」

と怒鳴りこんできた。多分ガルの言っている事はこの世界では正しいのかもしれない。全員で魔物を囲んで少しのダメージを受けることなく倒す。

こうすれば継続的な戦闘が行える可能性が高くなる。神聖魔法使いが居ない、居たとしてもMPが少ないと【紅蓮】の戦い方がオーソドックスなのだろう。

俺がどう答えるか逡巡しているとサーシャも俺たちの馬車にやってきて

「マルス、しっかりあなた達【黎明】の戦い方を教えたほうがいいわ。少しの間だけかもしれないけど、危険な魔の森に一緒に行くのよ。それがお互いの為だわ。それにマルスが今年A級冒険者になれば、あなた 達(・) の秘密を隠す必要が無くなるわ。自信があるのであれば【紅蓮】のメンバーには言いなさい」

と俺を諭した。サーシャはクラリスとアリスの事も話せと言っているのか。クラリスはいいとしてもまだアリスは早い気がするが……ガルはサーシャが何を言っているのか分かっていない様子だった。

「分かりました。それではガル先輩、そちらの馬車で説明しますのでお邪魔してもよろしいですか?」

俺が【紅蓮】の馬車に乗り込むとアイクが

「悪いな、マルス。止めたのだがガルが聞かなくてな」

「本当よ、だからガルはモテないのよ」

眼鏡っ子先輩がガルを責める。

「いえ、僕たちの事を知らなければガル先輩の反応は当然です。だからしっかりと説明しに来ました」

俺の言葉にアイクが、いいのか? という表情をしている。俺はアイクの方を見て頷くと

「まず僕たちは脅威度D以下の魔物はほとんどアリスだけに任せています」

俺の言葉にガルだけではなく、イーストとユーリも少し表情を強張らせた。やはり信じられないという事だろう。ガルが何かを言いたそうだったが眼鏡っ子先輩に制された。

「理由は3つあります。まず1つはアリスのレベルが一番低いという事。

2つ目はパワーレベリングをしたくないという事。これは例えば僕が戦闘に参加してしまったら、アリスは全く魔物を倒す必要が無くなってしまいます。

そして僕が魔物を瀕死の状態にしてアリスに止めを刺させるという事を繰り返すとレベルは上がりますが、このようなパワーレベリングでは強くなれないという事を皆さんもご存じのはずです」

俺がここまで言うとエーデに制されていたガルが

「そんなことは分かっているわい! だがパワーレベリングでも少しだがステータスは上がるぞ! アリスの戦いを見たが脅威度Dの敵を複数体相手にするのはどう考えても無理じゃ! さっきもアリスがダメージを受けていただろ! 何日も、下手すれば何週間も戦闘に参加できなくなる! そしてアリスは女の子じゃぞ!? 傷でも出来たらどうするんじゃ!?」

思いっきり声を張り上げて怒鳴る。今にも俺に飛び掛かってきそうな勢いだ。俺はガルの言葉に頷いて

「そしてこれが3つ目の理由です。ヒール」

ガルの目の前で神聖魔法を使うとガルが驚きのあまり目をパチクリさせた。当然イーストとユーリもガルと同じように驚いている。

「さらに神聖魔法が使えるのは僕だけではありません。クラリスも使えます」

取り敢えずアリスの事は黙っておいた。何かトラブルに巻き込まれた場合アリスでは対処ができないだろうと思ったからだ。

「ガル? マルスとクラリスの神聖魔法だと傷が残らないわ。だって私自身がそれを証明しているもの……みんな、私の右腕に傷跡なんてないでしょ?」

ガルは驚きのあまり、過呼吸になっていた。すぐさま神聖魔法で回復させると少し落ち着きを取り戻したのか

「ま、まさか……エーデの右腕を……そうか……あの時お前たちが部屋に行った後にエーデの腕が治ったんじゃったな……」

「ええ。でもあの時はしっかり右腕を保管してくれていたから治すことが出来ました。腕が無ければ治すことは不可能だったと思います。でもこれでお分かり頂けたでしょうか? 僕たちはアリスをしっかりと育てたいのです」

俺の言葉にガルが頷いて

「すまんかったのう……儂はてっきり新人メンバーを虐めているだけのように見えてしまってのう……そうじゃよな……もしも虐められているとしたらあんなに楽しそうな顔はせんよな……」

「いえ、僕たちの方こそ知らせなくてすみませんでした。A級冒険者になってからと思ったのですが……」

「いや、神聖魔法だけは仕方のない事じゃ……教えてくれてありがとう。絶対に秘密にするわい」

分かってくれたようだ。ガルはただただ心配をしてくれていただけのようだ。猪突猛進な所もあるが根はいい奴だな。

「マルス、もしかして今年A級冒険者の試験を受けるのか?」

アイクが俺の言葉を聞き質問してきた。

「はい。リーガン公爵には許可を貰いました。武神祭のエキシビションマッチ? みたいなものをやってからと言われましたが……」

自分ではこうは言ったもののエキシビジョンマッチは行われないのではないかと思っている。リーガン公爵がエキシビションマッチで勝ってからと俺に言った後にヒュージと戦って勝っているからだ。

「そうか。いよいよA級冒険者か。成人の15歳前にA級冒険者になったものなど過去にもいないだろう。俺もマルスの兄として恥ずかしくないようにこれまで以上に頑張らないとな!」

アイクが拳を握り意気込む。これ以上アイクが頑張ると過労死しそうだからやめて欲しいと心から願った。