軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第188話 白虎

グラとの試合の後、俺はセレアンス公爵の屋敷に連れられ、2人で話すこととなった。

「まずは、グラの件すまなかったな。そしてグラの気が済むまで戦ってくれてありがとう」

セレアンス公爵もしっかりとお礼が言えるのだな。

「いえ、僕の方もいい経験になりました。モーニングスターを初めて見られましたし」

「そうか、それでは早速本題に入ろう。俺に聞きたい事があるのだろう? 午後からはビャッコとの戦いも控えているからな」

今日ビャッコと戦うのは決定事項か……まぁ想定内だから別にいいけど……

「ではあまり時間が無さそうなのでエリーの事を中心に聞かせてもらいたいです。エリーは僕と会った時は呪われており、ライオンの姿をしておりました。ある人物がエリーの呪いを解呪したのですが、誰がエリーに呪いをかけたのですか?」

俺が質問するとセレアンス公爵が机を叩いて立ち上がった。

「なんだと!? エリーが呪われていただと!?」

この様子ではやはり全く知らなかったのか。

「はい。解呪したらエリーは今の姿となりました。では次にザルカム王国のミリオルド公爵の事を教えてください。もしかしたらエリーはミリオルド公爵と面識があるようなのですが」

セレアンス公爵はもっとエリーの呪いの事を聞きたそうだったが、俺はそれを無視してミリオルド公爵の事を聞いた。ミリオルド公爵の名前を出すとセレアンス公爵は

「エリーがミリオルドと!? 少なくともエリーがここに居た時まで接点はないはずだが……ミリオルドは昨日言った獣人を使った実験をしていると噂されている人物だ。

カエサルが獣人を攫ってミリオルドに渡しているのではないかと俺たちは睨んでいる。カエサルはどうやらミリオルドに多額の借金をしているようで、獣人を攫って借金を返済しているのではないかと思っている」

「なぜそんな借金をしているのですか? それも他国の上級貴族に借りるなんて考えられませんし……」

「簡単に言えば、カエサル公爵家の産業、ミスリル鉱山が閉山になった。あと何故か観光業も廃れてしまった。カエサル公爵領は収入のほとんどをミスリル鉱山と観光業から得ていたらしくてな。収入が無くなるとどこからか借りなければならない。そして同国の貴族に金を借りたりすると色々不利に働く。だから当時のカエサル公爵は他国の貴族にでも借りたのだろう。勝手な予測だから真偽はわからん」

王制であればこんなことにならなかったかもしれないな。もしかしたらカエサル公爵はこう考えているのかもしれない。自国の貴族に借りるのは返さないといけないが、他国の貴族からの借金は踏み倒せばいいと……

そしてそれをリスター連合国の公爵たちも分かっているのかもしれない。するとなぜミリオルド公爵はカエサル公爵に金を貸しているのかだが、ミリオルド公爵にとっては金よりも獣人の方が優先なのかもしれない。

「もう1つ聞かせてください。セレアンス公爵はこのまま獣人だけで……僕たち人間やエルフなど他種族と一緒に共生していこうと思わないのですか?」

「その答えはマルス、お前が俺の質問に答えてからだ。もともと俺はお前にこの質問をしたかった。お前は本当にエリーを愛しているのか? あのクラリスという女と同様に獣人のエリーを愛せるか? 後にフレスバルド公爵の娘の方が大事と言わないか?」

「僕はエリーを愛しています。クラリスと同じくらいエリーも好きです。フレスバルド公爵の娘だからと言ってカレンの方を大事にするとは言いません。ですが、僕にとってカレンも大事です。守れる限りは絶対にカレンの事も守ります」

「そんなにたくさん大事なものがあって、お前にその全てを守りきれる力があるか俺に示してみろ。昼過ぎに仲間たちを連れてまたここに来い。さすがにフレスバルドの娘が来ているのに会わない訳にもいかないからな。お前の質問に答えるのはビャッコとの試合が終わった後だ」

「わかりました。それでは昼過ぎにまた伺います」

セレアンス公爵はもしかしたら俺に期待しているのかもしれない。口調の割りには顔の表情は柔らかいからだ。俺は屋敷を出てすぐに宿に戻り、みんなで食事をとりながら話をした。

「昼からみんなでセレアンス公爵の屋敷に行くことになった。そこで俺はビャッコという獅子族の人と戦う事になる。戦いの結果次第でもしかしたらセレアンス公爵は他種族への対応を変化させてくれる可能性がある」

するとカレンが俺の言葉に食いついた。

「じゃあ絶対にマルスには頑張ってもらわないと。フレスバルド家としても、本当はセレアンス公爵家と元の関係に戻りたいはずだから。でもお互いが素直になれるかが問題だけど……」

貴族はプライドが高いから自分から頭を下げることはしなさそうだからな。だけど俺は少しいい案があった。

「なぁ、カレン。お互いに利点があれば協力することは可能か?」

「例えば?」

「スザク様はまたリムルガルドの迷宮に潜るんだろ? 朱雀騎士団も烈火騎士団も強い人はみんな後衛だろ? 前衛で力のある者があまりいないと思うんだ。そこに獣人の前衛が加わればかなりバランスの取れたパーティになると思うんだ」

「さすがにそんな腕利きを送り込んでくるとは思えないわ。だって人攫いの事もあるから腕利きを他に回す余裕なんてないだろうし」

「そこでだ。朱雀騎士団の何人かをセレアンス公爵領の領境の警備に当てることは出来ないだろうか? 人攫いがセレアンス公爵領で警備をしている朱雀騎士団を見たらどう思う?」

「うーん……人攫いがどういった者かによるんじゃない? もしも人攫いが身分の高い者の指示で動いているのであれば抑制にはなると思うけど、単独の愉快犯みたいな奴だったら特になにも考えないのでは? あとセレアンス公爵が素直に朱雀騎士団を受け入れるかも微妙よね」

う……確かに単独の愉快犯の場合は抑制にはならないかもしれない。あと他の公爵家の騎士団を受け入れるのは流石に無理か……

「うーん。協力するという面ではいいかなと思ったんだけど……」

「でも何もやらないよりはいいと思うわ。もしも人攫いが組織的な物だったらかなりの効果が見込めるだろうし。提案できそうな雰囲気だったらしたほうが良いわよ」

この会話を聞いていたクラリスが

「マルスはフレスバルド公爵家とセレアンス公爵家の橋渡し的な存在ね。考えてみればエリーとカレンをお嫁にもらうのであれば、2つの公爵家が衝突するたびにマルスを頼る事になるかもね」

「その度に私たちも色々巻き込まれそうだねぇ」

クラリスの言葉にミーシャも反応するとアリスまで

「私も……巻き込まれてみたいです!」

いつものように顔を染めながら言った。バロンとミネルバはニヤニヤしながら俺たちを見ている。食事を終えて、今度は8人全員でセレアンス公爵の屋敷に向かった。

朝と同じ部屋に通されると、セレアンス公爵の他に、ブラッドとビャッコ、そのほかに知らない獣人が5名ほどいた。

「遅くなり申し訳ございません。早速僕たちのメンバーから挨拶をさせて頂きたいのですが?」

「挨拶はいらぬ。全員もう知っている。カレン。フレスバルド公爵は息災か?」

セレアンス公爵は俺の言葉に答えると急にカレンに対して質問した。カレンもまさかの出来事に驚いており、

「お久しぶりです。セレアンス公爵。おかげさまで父は無事息災でございます」

「そいつは重畳だな。堅苦しい挨拶は終わりだ。マルス、戦いの準備は出来ているか?」

「はい。少しは休憩が出来ましたので……」

「では先ほどの場所に移るぞ」

セレアンス公爵がそう言うと朝にグラと戦った場所まで移動した。

ビャッコと対峙したがかなり強い圧力を感じる。これはかなり強いな……俺が黙って鑑定しようとするとビャッコが

「まさかマルスは鑑定できるのか?」

ビャッコも鑑定されているのが分かる方の人か。

「はい。鑑定だけしかできませんが……してよろしいでしょうか?」

「まぁ構わん。その結果次第で背中の剣を抜くか抜かないか決めろ」

ビャッコに言われるがまま鑑定すると

【名前】ビャッコ・ユンカース

【称号】格闘王

【身分】獣人族(獅子族)・ユンカース子爵家当主

【状態】良好

【年齢】30歳

【レベル】55

【HP】262/262

【MP】10/10

【筋力】122

【敏捷】110

【魔力】2

【器用】2

【耐久】103

【運】1

【特殊能力】体術(Lv9/B)

【装備】アダマンクロー

【装備】ビーストメイル

【称号】格闘王ってかなりかっこよくないか? 今は細かく鑑定している暇はないが、ステータスは完全にバーンズの下位互換だ。下位互換といっても筋力、敏捷、耐久が俺よりも高い。

それにあのアダマンクローというかぎ爪のようなものはどこかで見たような事がある気がする。仮面の貴公子が装備していた気がするのだが……確か俺の辞書によると何回かガードすると爪が落ちるんだよな。

「どうだ?その背中の剣を抜く気になったか?」

ビャッコは余裕の笑みを浮かべて俺に問いかけてきた。

「そうですね。本気でやらないと大けがしそうなので」

俺が雷鳴剣と 火精霊の剣(サラマンダーソード) を抜くとビャッコが驚いた顔をして

「確かに俺の事を鑑定したんだよな?」

「はい。させて頂きました」

「鑑定した結果、その背中の2本の剣を抜いた。つまりいい勝負ができると思っているのか?」

そう言う事か……ビャッコのステータスを見れば戦意を無くすと思ったのか。

「いい勝負ができるか分かりませんが、粘るだけなら可能かもしれません」

「今後の為にも、その鼻をへし折ってやらんとな」

ビャッコがそう言いながら笑みを浮かべると、セレアンス公爵が戦闘開始の声を上げた。