軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第181話 プレゼント

2031年4月7日

ヒスの葬儀は盛大に行われた。

場所はヒスがウピオルに討たれたエルハガンの外。

喪主は教皇、そして参列者は冒険者、神殿騎士のほかにも、エルハガンの住民たちが多数参列した。よほど愛されていたのだろう。

葬儀は湿っぽいものではなかった。街の外だというのに参列者にお酒がふるまわれ、料理も出された。みんなでヒスの思い出話をしながらワイワイ飲んでいる。

日本でもお酒を出して、料理も出す所もあるが雰囲気が違った。

参列者の服装も普段通りで、傍から見ると昼間から外で酒を飲みながら、ただどんちゃん騒ぎをしているだけだと思われても仕方ないくらい賑やかだった。

その席で俺たちは多くの冒険者、神殿騎士、住民たちにお礼を言われた。特にウピオルを討ち取ったドミニクは英雄扱いされていた。

「すまないな……マルス。マルスの手柄を横取りしたみたいで……」

ドミニクが苦笑いしながら俺に言った。

「俺がそんな事を気にするわけないだろう? それにドミニクが倒して良かったよ。この街の住民、冒険者、神殿騎士もドミニクが師匠さんとヒスの仇を討った事で溜飲が下りただろう」

実際、この街の人間のドミニクを見る目は違う。やはりドミニクの師匠は元A級冒険者でその弟子というのはかなり期待されているのだろう。

ウピオルを討った事でドミニクは間違いなくA級冒険者になるとそこら中で話題になっている。

「俺がA級冒険者か……もちろん目指してはいるがこの街の住民たちは現実と言うのが分かっていない……こんな俺でも剣聖と呼んでいたくらいだからな……」

ドミニクが自嘲気味に話すとそれ以降、ドミニクは押し黙ってしまった。

夜まで続いた葬儀が終わり、俺たちも宿に戻ろうとした時だった。朝から大忙しだった教皇が俺たちの所に来て

「みんな来てくれてありがとう。ヒスもきっと喜んでいるだろう。マルス、明日例の物を一緒に作ろう。明日の朝、大聖堂に来てくれ」

忙しい身でありながら、いきなり葬儀が終わった翌日の朝に俺の用事を済まそうとしてくれる。

「教皇様、さすがに少しは休まれた方がいいかと……右腕の状態もありますし、まだ戦いの疲れが残っているのでは?」

俺が言うと

「……じっとしていると色々考えてしまうから、何かをずっとやり続けていたいんだ……」

疲れた表情をしながら教皇が言った。多分教皇は睡眠がとれていないのだろう。目の下にはクマが出来ておりだるそうだ。

「寝られませんか?」

「目を瞑るとどうしても考えてしまうからな……だがこれも時間が解決してくれるだろう」

無理矢理笑顔を作って教皇が答えた。そして、教皇がドミニクに

「ドミニク、明日マルスの用事が済むのが昼くらいだと思う。だから昼くらいに大聖堂に来てくれ。ドミニクに渡したいものがある。ついでに一緒に飯でも食おう」

「渡したい物……? 分かりました。それではお昼頃伺います」

ドミニクの返事を聞いた教皇は、今度は別の参列者の所に行き、挨拶をしていた。本当に忙しいんだな……教皇の忙しい様子を後にし、俺たちは宿に戻った。

俺がクラリスたちの部屋に泊まってからずっと同じ部屋割りで寝ている。今は【黎明】のメンバー6人で、寝る前に少し話をしている。

「教皇様大丈夫かな? なんか日に日に顔色が悪くなってない?」

ミーシャが言うと、クラリスが

「そうね……さっきヒールをかけた方がいいのかなって思ったのだけれども、元気になったら元気になったで余計に動き回るだろうから……」

クラリスも俺と同じ考えだった。みんな教皇を心配していた。付き合いの浅い俺たちがこれだけ心配しているのだから付き合いの深い者はもっと心配だろう……

「ちょっと見ていられないわよ……誰かがサポートしてあげないと……前にも言ったけど教皇としての仕事をしながら冒険者たちの事を教皇様がみるのはどう考えてもオーバーワークよね」

カレンも言う。みんな思う事は同じだ。

「とりあえず俺たちのできる事をやろう。皆は明日いつものように街の外でアンデッド退治を頼む。ゴブリン達はこの街の冒険者が周囲に居なければ倒していいが、出来るだけこの街の冒険者たちに倒してもらうように。大丈夫そうだと思ったら引き上げてもらって構わない。あとクラリスとエリーは明日ちょっと早く戻ってきてくれないか?」

俺の言葉にクラリスとエリーは顔を合わせ、疑問に思いながらも頷いてくれた。そしてみんなそれぞれのベッドに入る。今日は俺の両隣はクラリスとエリーだ。

ちなみに昨日はカレンとミーシャ。我ながらなんて贅沢なんだと思う……2人のいい匂いと、柔らかい感触に包まれながら意識を手放す。

2031年4月8日

教皇とのオリハルコンの加工作業は意外と滞りなく終わった。なぜ教皇しかオリハルコンが加工できないのかという疑問も解消した。

オリハルコンを打つにはオリハルコン。しかしそのオリハルコンのハンマーは教皇しか扱えないという事だ。

ここで重要なのがハンマーは装備ではなく道具らしいのでオリハルコンの

『オリハルコンで作られた装備は最初の装備者のみ装備できる』の適用は受けないらしい。だが誰でも扱えるものではなく、教皇だけが扱えるとの事だった。満足のいくものができ、教皇も俺の表情を見て安心していた。

時計を見るとちょうどお昼になるころで、大聖堂の前に出るとドミニクが前で待っており、高級そうなレストランで昼ご飯を食べることにした。

3人でお昼ごはんを食べ、お酒を少し飲みながら話をした。

「マルスたちへのクエストは今日で完了だ。本当に助かった。この街を、国を代表してお礼を言う。ありがとう」

教皇が深々と頭を下げた。

「いえいえ……頭を上げてください。当然のことをしたまでですから……」

俺が慌てて言うと教皇が

「そんなに謙遜しなくていい。本当に助かったのは事実だ。昨日言ったようにドミニクに渡したいものがある。これを受け取って欲しい。師匠が死んだ時、ヒスに譲ったのだが受取拒否されてな。俺の右手はこうなってしまった……もちろん左手で剣を振れるようにはするつもりだが、俺には過ぎたる物でな。もともとヒスと2人でこの剣はいずれドミニクに渡すと決めていたものだ」

そう言って教皇は腰に下げていたクラレントをドミニクに渡した。

「こ、これは……いえ! これは受け取れません!」

ドミニクが教皇に返そうとする。

「頼む……ドミニクならこの剣が重荷にならないくらい強くなれると俺は……いやこの街のみんなが信じている」

教皇は懇願しながら頭を下げてもう一度ドミニクの手にクラレントを渡すとドミニクも

「分かりました……ありがたく使わせて頂きます」

と言いクラレントを受け取った。

その後また少し教皇と話をしたのだが、教皇はまだ用事があるらしく先に帰ってしまった。用事があるのにお酒を飲むのは、この世界ならではだな。

ドミニクと一緒に宿に戻ると宿の前にはクラリスとエリー、そしてソフィアもいた。

なぜソフィアがいるか疑問に思ったが、ソフィアはドミニクが戻ってくると2人で腕を組んで街の繁華街の方に歩いて行った。

最近あの2人は相当いい感じだ。それを見たクラリスが

「ドミニクも良かったわね。ソフィアが居てくれて。外で警備している時にどうしたらドミニクを元気づけられるか聞かれたから、一緒に居てあげることが一番だと思うよって言ったら、私たちと一緒に戻るって言って……あとソフィアに聞いたのだけれどもドミニクは相当思いつめているらしいわよ。その……分かるでしょ? マルス……」

俺は黙って頷いた。それを見たクラリスはもうそれ以上の事は言わなかった。

「それよりどうしたの? 私たち2人だけを呼び出して」

クラリスが言うとエリーも同じように俺の方を見ながら俺の言葉を待つ。

「うん。まだちょっと早いかな……この辺をぶらぶらしながら時間を潰そう。俺たちも久しぶりのデートでもしよう」

俺がそう言うとエリーが嬉しそうに左腕に絡みついてくる。クラリスも負けじと俺の右腕に柔らかいものを押し付けながら絡みついてきた。街をぶらぶらしながらクラリスとエリーに

「街の外の様子はどうだった? 魔物はまだいたか?」

「もうゴブリンは居なかったわよ。コボルトとオークが少しいたくらいね。エルハガンの冒険者に聞いたのだけど、もともとエルハガン周辺にはコボルトとオークが出現していたらしいから元に戻った証拠だと喜んでいたわ。あと北東の方にゴブリンゾンビが10体くらいいた程度ね」

「もう大丈夫……変な感じはない……」

この2人が大丈夫と言うのであれば問題ないだろう。3人でデートを楽しむとやはり街の住人からは羨望の眼差しで見られた。どこに行っても同じような目で見られるので慣れてきた。どんどん楽しい時間が過ぎ夜になるとクラリスが

「ねぇ……本当にどうしたの? ただデートしたかっただけ? 私たちとしては嬉しいんだけど……」

少し不安そうな表情で聞いて来る。

「今、目的地に向かっているよ……もうすぐ……ほらここだ……」

俺たちは大聖堂の目の前に辿り着いた。

「目的地は大聖堂……?」

クラリスの問いに俺は答えることなく大聖堂の中に入る。教皇にはあらかじめ了解を得ている。大聖堂の中に入ると受付の人に小さな部屋に案内された。

部屋の中に入るとクラリスとエリーが部屋の内装を見てうっとりしていた。キャンドルライトが部屋を優しく包み込み、幻想的な雰囲気になっている。

「素敵……」

「初めて見た」

クラリスとエリーも喜んでくれた。2人の表情を見て満足しながら俺は

「2人にプレゼントがある」

そう言って小さな箱を2つ取り出した。クラリスはその箱を見た瞬間に中に何が入っているのか分かったらしい。驚きと喜びと嬉しさのあまり目には涙が溜まっている。

一方のエリーは箱の中身が何か分かっていないらしい。だがクラリスのリアクションを見て、普通のプレゼントではないという事は分かったようだ。

まずはクラリスの方の箱を開けて中身を取り出し、クラリスの左手の薬指に金色に輝く指輪をはめた。

すると少し大き目に作った指輪が小さくなりクラリスの指にぴったりとフィットした。クラリスの目からは大粒の涙がこぼれている。そして自分の薬指にはめられた金色の指輪を色々な角度から見ている。

次に事情の分かっていないエリーにも指輪をはめるとこちらの指輪もエリーの指にぴったりとフィットした。

「エリー、これはね。俺とクラリスの故郷で結婚するときに左手の薬指にはめる物なんだ。

この指輪はアルメリアのボス部屋で取ったオリハルコンで作られている。もともとこんな色では無かったのだが、作っている最中にオリハルコンに魔力を込める作業があってね、俺が魔力を込めると金色に光り出したんだ。

大きさが変わる以外に特別な効果はないため、装備品扱いではなく、道具品扱いになるそうだが、それぞれ専用の指輪だ。試しに俺の指輪をエリーにはめてみよう」

俺の指輪をエリーにはめるが、エリーの指にフィットするように小さくはならなかった。

「本当は結婚するときにプレゼントするのがいいのかもしれないが、今回のヒスさんの事で、いつ何が起きるか分からないから渡せるときに渡そうと思ったんだ……」

俺がそう言うとクラリスは頷いて

「ありがとう……今までで……31年間で一番うれしいプレゼントだわ」

俺の胸に飛び込んでくるとエリーも

「私もお揃い……ありがとう……絶対に大事にする」

俺の胸に飛び込んできた。俺は2人とキスをしてからみんなで大聖堂を出ると俺たち3人を祝福してくれるかのように大聖堂の鐘がなった。