作品タイトル不明
第117話 再びイザークへ
「な、この魔法は……信じられないが1人でファイアストームを発現させているのか」
俺はレッカに力を示せと言われたので、一番わかりやすいファイアストームを発現させた。
「風魔法が圧倒的に強いが決して火魔法の威力が低い訳ではない?……これだけの魔法が使える水魔法使いだったとは……」
あ、まだ水魔法使いだと思っているのか……
「レッカ様、僕は風魔法使いです。ただ他の三属性も少し使えますが」
正直に言うとレッカは
「まさか! あの水の量は……どういう事だ?」
レッカは悩みながらカレンの方を見るとカレンが
「今の話は本当よ。もうマルスは隠す気がないらしいから言うけど、この年でなんと【風王】の称号をもっているわ。同じ【風王】のリーガン公爵もそう認めているから間違いないわ」
「これで一緒に連れて行ってもらえますか?」
「分かった。いいだろう。早く城塞都市イザークに襲い掛かる魔物を蹴散らしてからきてくれ。戦力として歓迎する。明日には補給の馬車もくる。なるべく早く戻ってきてくれよ」
思わずカレンと目を合わせてガッツポーズをしてしまった。
その後俺たちは陣に戻りカレンが烈火騎士団の団員たちの前に現れると団員たちは大いに盛り上がった。
こんな前線にフレスバルド家の息女が現れるなんて思ってもみなかったのであろう。そしてカレンの隣には大きな酒樽が置いてある。
イザーク騎士団といい、烈火騎士団といい、酒好きがよくもまぁこんなに集まったものだ。まぁ息抜きがないから仕方ないのか……
無事に烈火騎士団全員に酒がいきわたるとカレンが激励をして、みんなでコップ1杯のお酒を一気に飲み干すと騎士団員たちの士気が爆上がりした。その勢いで烈火騎士団の面々は1人1人がカレンに挨拶をして出陣していくのを見送ると、明日に備えるためにカレンとブラムには先に寝てもらう事にした。
烈火騎士団が出発してから30分後くらいにイザーク騎士団が戻ってきた。イザーク辺境伯に明日補給の水が届くというと大いに喜んでいた。あと残っていたワイン20本を渡し、明日の朝恐らくイザーク騎士団が寝ている時に一旦城塞都市イザークに帰ると伝えた。
イザーク辺境伯としてはこちらよりも城塞都市イザークの方が心配らしく、「ありがとう」と言ってくれた。ちなみにもう20本はレッカに既に渡してある。
最後のMPを振り絞って装備洗浄用の水槽に水を灌ぐ。烈火騎士団よりもイザーク騎士団の方が圧倒的に水の消費量が激しい。やはり烈火騎士団は魔法主体で戦うから装備が汚れないのだろうか?
そんなことを考えながらMPを枯渇させて朝に備えた。
2030年9月11日
俺が目を覚ますともう既にカレンとブラムの2人は起きており、朝食を食べていた。俺もすぐに歯を磨いてから朝食を食べる。
今日はもう帰る日だからあまりMPの事を考えなくてもいい。カレンがお風呂に入りたいというのでこの前作ったパーテーションで区切られた浴槽にお湯を張り、俺とブラムの分もそれぞれ作って、全員お風呂に入ってから陣を後にした。
帰りの馬車はすでにイザーク辺境伯に借りると伝えてあったので、一番小さいワゴンの馬車を借りていった。今回御者はつけなかった。全速力で帰るためにずっと馬にヒールをかけて昼過ぎにはイザークに到着する予定だ。
無事にイザークに辿り着くとすぐにイリーナの所に行きクエスト完了報告をした。
「イリーナ様、クエストが無事に完了いたしましたので報告させて頂きます。また僕がイザーク辺境伯に少し無理なお願いをし、こちらの文を書いて頂きました。どうかご覧になってください」
俺はイザークが書いた文をイリーナに渡すとイリーナが
「分かりました。すぐに持ってきますので待っていてください」
イリーナが別の部屋に行き、すぐに戻ってきた。イリーナの手には2本の長くて太い鎖があった。
「どうぞ、こちらになります」
イリーナは俺に2本の鎖を手渡してくれた。そう。俺はイザークに余っている鎖があれば下さいと頼んだのだ。
これでミネルバと一緒に鎖術の練習が出来る。俺はこの鎖には無限の可能性を感じている。ネビュラチェーンとかジャッジメントチェーンって叫んでみたいだろ? 昔は誰もがやったことがある縄跳びでやるやつだ。
すぐに城塞都市イザークの東門に向かうと【暁】のメンバーが魔物たちを惨殺していた。
フォーメーションが先頭のど真ん中にライナーを置き襲ってくる魔物たちを切り刻む。取りこぼしたところをバロン、ドミニク、ミネルバで倒している。【創成】のメンバーはすでにもうヘロヘロっぽい……
ミーシャとエリーは単独で周辺の敵を倒しているようだ。そして殿にはクラリスが控えており、みんなの様子を見ている。みんなと言っても主に【創成】のほうばかりを気にしているようだが。
「ただいま」
俺がクラリスの隣に行って話しかけると
「おかえりなさい」
クラリスがホッとした表情で俺の帰りを喜んでくれる。結婚したら毎日こういう会話ができると思うと、早く15歳になりたいと思う。
みんなが俺たちに気づくと一斉に俺の周りに集まった。エリーはすでに俺の胸に顔をすりすりしている。俺はエリーの頭を撫でながらみんなと話をした。
「何か変わったことは?」
俺が聞くとライナーが
「魔物が少し強くなってきたくらいか……脅威度Dくらいだが結構危ない場面が出てきた。今はクラリスが未然に防いでくれているが……マルスが来てくれてよかった」
と言うと、クラリスも
「もうここに残っている騎士団の人と訓練生たちだけでは魔物を止めきれなくなって、夜も私たちが手伝うことになってしまったのよ……ライナー先生と、エリー、ミーシャはずっと戦いっぱなしだから休ませてあげて」
うん? この3人は何時間ぶっ続けで戦っているんだ? するとミーシャが
「私たち3人は仮眠を少しずつとっているから、ずっと戦っているわけではないよ。それに夜は魔物があまり来ないからみんなで散開してイザーク周辺の魔物を倒しに行ったりしてるんだよ」
賢明な判断だな。MPを枯渇させないで寝るというのも1つ手だからな。それにしても夜はあまり魔物が出ないのか……その魔物をここに残っている騎士団と訓練生が処理できないって……まぁ今回は緊急事態だから仕方ないか……そんなことを考えているとエリーが
「……ここで……休む……おやすみ……」
俺の胸に寄りかかって立ったまま寝ようとした。さすがにこの体勢では疲れが取れないので
「今から班分けをする。エリー、ミーシャ、ライナーは今から宿に戻って21時まで寝てくれ。俺も17時に戻って21時に起きてこの3人と行動を共にする。ほかのみんなは21時まで頑張ってくれ! そして明日の朝から戦線をどんどん東に上げる! みんな体調を万全にしておいてくれ!」
俺がそう言うと1人を除いて「おぉー!」と言って応えてくれる。エリーはもう既に寝ていた……結局エリーをお姫様抱っこして俺も一緒に宿に戻ることにした。
「いいなぁエリリンは、私もおんぶ!」
ミーシャがそう言って俺の背中に飛び乗ってきた。いつもは学校の朝早い時間だから良かったが今は領都の昼過ぎの時間だ。イザークの住人達の目線が痛いほど刺さったが気にしないことにした。宿に戻ってエリーをミーシャに託して俺は1人でまた東門へ戻った。
東門に戻るとクラリスが先ほどまでライナーが務めていた先頭になっており、クラリスが討ち漏らした魔物を他のメンバーが倒していくという隊形だった。
「クラリス、なんかこの魔物達の事で気づいたことあるか?」
クラリスの横に立ちクラリスを援護しながら聞くと
「まず 魔物達の行進(スタンピード) ではなさそうね。 魔物達の行進(スタンピード) だと一斉に魔物が襲ってくる感じだと思うけどなんかこの魔物達は統制されている……という訳ではないんだけど……お行儀がいいというか……普通ではない気がするの」
俺も同じ印象だった。
「魅了されているというか、洗脳されているような感じだよな……だけど状態にはステータス異常がないんだよね……結局どこからきているのか突き止めなきゃだめか……」
クラリスは俺の言葉に頷いた。クラリスと会話をしたのちにみんなにヒールをかけて俺は浮いている魔物を倒しながら南門に行った。
南門からまっすぐ南に延びている道を舗装しようと思ったのだ。どうせMPを枯渇させるのであれば有効にね。
道路を舗装する際に少し遊び心を入れてみた。等間隔に雷の模様というか紋章をいれたのだ。「かみなり」で変換すると出てくるマークだ。
ある程度MPを使い切ると最後にクラリスの所に戻り宿に戻る事を伝えた。そして近くにいたミネルバにイリーナからもらった鎖を手渡した。
「ミネルバ、これを徐々に使えるようにしてくれ。イザーク辺境伯が鎖使いだったからここが落ち着いたらイザーク辺境伯に使い方を一緒に教わろう」
と俺が言うとミネルバが神妙な顔つきで
「……マルス君……本気なのね……分かったよ。一生懸命鎖使いとして頑張る!」
ミネルバが分かってくれた。だがこの時の俺はまだ知る由もなかった。ミネルバに鎖を渡したことによって起きる悲劇を……