軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第9話:奇天烈王女は急には止まれない

ユフィの魔剣の作成が終わってから、ユフィのお願いでゆっくり休みを取る事になった。うむむ、どうにも真っ直ぐお願いされると弱いという事に気付いてしまった。イリアは相棒だけど基本的に主人と従者だし。

ユフィとはもっと対等な関係だ。身分がというのもあるけれど。だから真っ直ぐにお願いされると断りづらい。研究はしたいけれど、私1人でやる事でもないと言われてしまった。

なので私がゆっくり休んでいる間は魔剣の調整をユフィとイリアに任せる事にした。ゆっくりと休みを取って、目が覚めれば頭がスッキリしている。睡眠も大事だな、とは思うけれども時間が惜しい気もして悩ましい。

「そういえばユフィの魔剣、名前をつけてあげた方が良いかな」

あれはマナ・ブレイドの技術を応用した武器ではあるけれど、マナ・ブレイドという訳じゃない。魔剣と魔杖の機能を複合させた新しい概念だ。但し、ユフィの為のオーダーメイドな一品だけど。

んむむ、名前、名前かぁ。今後の開発名称にも使う? でも量産品って訳じゃないからなぁ。ユフィとイリアと相談してみようか。

1人でも身支度は出来るけれど、仕事を取るな、と怒られるのでベルを鳴らしてみる。イリアが動ければすぐにやってくるけれど、来ない場合は少し待ってから1人で身支度をするのが私達の決まりだ。

「おはようございます、姫様」

「おはよう、イリア」

待つ事数秒、優雅にイリアが一礼と共に入って来る。イリアが来れない時は割と少ない。走るような音も聞こえないのだけど、ずっと待機してるのか、それとも音を消して移動しているのか。ちょっとイリアのこの点は謎だったりする。

そのままイリアに身支度を整えて貰う。鏡の前で髪を梳いて貰いながら、私はユフィはどうしているのか聞いてみる事にした。

「ユフィはどう? 剣の調子は大丈夫だった?」

「えぇ。本人も気に入ったとの事です」

「それは何より。そういえばユフィの剣、名前あった方が良いかな? 量産するつもりはないけど、名前とかあった方が良いのかなぁ、って思ったんだけど」

「そうですね……本人も交えて相談するのが良いかと思います。主に使うのはユフィリア様でしょうから」

それもそうか。そう思っている内に身支度が終わって、イリアにユフィの所に案内して貰う事にした。

ユフィは剣を貰ってからというもの、様々なデータを取るべく魔剣をずっと振ったり、魔法を使ってたりするらしい。私に休め、と言ったからにはユフィも無理な事はしてないと思うけど。

広場に出てみれば、ユフィの姿はすぐに見つけられた。お嬢様として恥ずかしくない程度に飾られた、けれど運動性を重視した格好だ。

ユフィは私とイリアが近づいて来るのに気付いたのか、振り返って一礼をしてくれた。私も一礼をしながらユフィに声をかける。

「どう? 調子は」

「えぇ、とても良いです。今、お目覚めに?」

「うん。ゆっくり休んで頭も冴えたよ」

「それは何よりです。後で魔剣のレポート、ご用意しておりますので目を通してくださいませ」

「ありがとう、助かるよ!」

使ってる人の意見って大事だからね! ユフィは丁寧だし、細かい所まで報告してくれてそうで、ちょっとレポートを読むのが楽しみだったりする。

「あ、そうだ。ユフィ。その剣に名前をつけようか?」

「名前、ですか?」

「うん。試作品で、実質ユフィ専用だけど私が作った作品だし、今は予定はないけど将来は量産の可能性がない訳じゃないし」

「私は拘りませんが、あるならあるに越した事はないのではないでしょうか」

うーん、それなら名前をつけておこうか。なんて名前が良いかな。

色んな属性に対応している魔剣だしなぁ……属性がたくさん、色がたくさん……虹、虹って言えば……。

「レインボウ……いや、アルカン、シェル、だっけ?」

「アルカンシェル? 良い名前ですね」

「え? あ、う、うん? それで良い?」

「はい。アルカンシェルと、名前を頂きますね」

気に入って貰えたらなら、まぁいいかな。これでユフィの魔剣の名前はアルカンシェルという事で!

「どう? 何か調整して欲しい所とかあるかな?」

「そうですね、機能に関しては特には。ただ刀身の手入れについては注意点がないかどうかは確認しておきたいですね。刀身も特殊ですから」

「後で注意点は纏めて書き出しておくね。何か不具合があったらすぐに言ってね」

試作品としてはまずまずの出来かな。ともあれ、ユフィが気に入ってくれて何より、というのが一番ホッとした所。

次は何をしようかなぁ。

そんな風に考えた所だった。ふと、空に何かの影が過った。釣られるようにして視線を向けると白い鳩が飛んでくるのが見えた。あ、と思わず声を漏らしてしまう。そのまま鳩は私の方へと飛んで来て、私の手に止まる。

「伝書鳩ですか?」

「あぁー、このタイミングかぁ。行かないとダメよねぇ」

「アニス様?」

「ユフィ、ちょっと私出かけないといけなくなっちゃった。引き籠もるつもりだったけど」

「え? どちらに?」

「冒険者ギルド」

冒険者ギルド。それはパレッティア王国だけではなく、世界各地にある冒険者達の組合だ。この世界における冒険者は何でも屋に近い。日常で起きる細々とした困り事の解決から、旅の護衛や現地の事前調査、国が懸賞金をかけた魔物の討伐まで何でも手につけてる。

最近では国が冒険者ギルドの支援もしていて、国が動けなかったり、動くのに時間がかかる場合の足止めや解決などに冒険者が職として手につけている、というのが国と冒険者達の関係である。

「何故、冒険者ギルドから手紙が?」

「私、冒険者登録してて高ランク冒険者だから討伐要請だと思う」

「王族がなんで冒険者登録なんてしてるんですか!? それも高ランク!?」

「街道の整備とかしてた頃に、取っておいた方が良いって思って……」

ほら、素材を売るとか冒険者ギルドに回した方が早いし、自分のお小遣い稼ぎにバイト感覚で……。

言い訳を考えてると、ユフィから冷たい目線が、イリアからは溜息を吐かれた。

「ま、まぁほら。事前に動いて危機を未然に防ぐのも王族としての使命だからね?」

「素材を独り占めするには自分が狩って、ギルドに卸した方が素材もお金も貰えますからね」

「アニス様……」

あー、あー、聞こえない聞こえない。

それよりもなんだろう。わざわざ高ランクの冒険者に要請がくるって事は、結構面倒の案件な気がするけど。どれどれ……?

「……スタンピード、ね」

魔物の大量発生。そして、それが群れを為して溢れ出して来る現象がスタンピード。確かにこれは高位冒険者を呼び出す程だと思う。

スタンピードの原因はだいたい魔石持ちの魔物が急激に成長した結果だったりする。スタンピードある所に名付きクラスの魔物あり。スタンピードそのものも問題だけど、問題はその先と言っても良い。

となれば高ランクの冒険者にはどうしても声がかかる。スタンピードそのものの解決と、発生させた原因の討伐。これが主なスタンピード発生時の対処方法。

勿論、国の騎士団もスタンピードだと言えば動くけれども、初動がどうしても遅れてしまう。となれば、冒険者が先に足止めに出るのがいつもの流れ。

「スタンピードが起きたのですか?」

「みたいだね。だからちょっと行ってくる」

「行ってくるって……自らですか!?」

ユフィが目を見開かせて驚きを露わにする。わかる、言いたい事はわかるよ。王族なのに現場に飛び込んで行こうなんて馬鹿馬鹿しいとか、王女らしい行動とは言えないとか! そんなのはわかってるよ、でもね!

「スタンピードは素材が狩り放題なの! 掴み取りよ!」

溢れる程に出て来るのだから、私にとっては素材獲得のフィーバータイムなのよ!

思わず拳を強く握りしめて力説する。スタンピードの時は溢れ出てきた魔物の素材だけじゃなくて、発端となった強力な個体の魔石を回収出来るかもしれないチャンスなの! 冒険者にとっては一攫千金の機会よ!

私は基本的に自分の研究の費用は自分で賄ってる。冒険者ギルドに登録しているのも金策の一環だったりする。あとは下町の情報を父上に渡してお小遣いを貰ったり、私が提供した魔学の成果物から一定額の予算を支給して貰ったりとか。

なので、この機会を逃す訳にはいかない!

「イリア! 留守はよろしくね!」

「いつも通りですね。かしこまりました」

イリアが溜息を吐きながら額を押さえてる。頭が痛い主でごめんね、でも素材は集められる時にね! それにスタンピードそのものだって放っておけないのは事実だ。私だけが解決出来ると自惚れてる訳じゃないけれど、私が行けば楽になるのも事実だから。

「……私も参ります」

「え? ユフィも?」

「魔学の研究に必要なのでしょう? ならば、助手の私にも同行の権利はございますよね?」

「……うーん、まぁ、ここで止めちゃうと私が言うなって話になるからなぁ。自分の身は自分で守れるよね?」

「騎士団の同伴はありましたが、魔物討伐の経験はあります」

アルカンシェルに手を伸ばしながらユフィが私を真っ直ぐに見つめて言う。……まぁ、止めても気を揉ませちゃうし、問答している時間が惜しい。このままでは素材獲得競争に置いていかれちゃう!

「わかった! 一緒に行こう、ユフィ!」

「はい!」

「じゃあ、ちょっと待ってね! とっておきのものを持ってくるから!」

「はい! ……はい? アニス様、何をお持ちになると?」

ふふふ、誰もが一度は言ってみたいセリフだよね、これ!

「こんな事もあろうかと! 用意していたのよ!」

広場の一角、工房から直通で繋がる倉庫の一つ。その扉を開いて中に置いていた“ソレ”に日の光を浴びせる。

「……これは、なんですか? 船……?」

私の後ろを追ってきたユフィが首を傾げる。同時に、その見た目に引いているのか、どこか顔色が良くない。まぁ、それもわかる。

前世の知識で言えば、これは“モーターボート”に近しい。けれど、異様なのはその“船体”は“竜の顎”で作られているという事だ。

竜の顎を後ろ向きにして、そこに船体となるようにパーツを組み上げている。ここにコントロールの為の“舵”をつけたものが、そこにはあった。

「これこそ! ドラゴンの素材を用いて作り上げた私の飛行用魔道具の試作品6号! その名もエアドラちゃん!」

「飛行用魔道具……これ、飛ぶのですか!?」

「動力は風の精霊石! 船体にはドラゴンの顎や骨、鱗などを使って、疑似的に再現した“竜の吐息”を推進力にして進む空を進む船だよ!」

本当は長距離移動用にバイクでも作ろうかと思ったんだけど、タイヤを作れなくて断念したんだよね。車輪とか街道の問題もあったし。そして、そこで思い付いたのがファンタジーならではのエアバイク!

エアドラちゃんを作る前から構想はあったんだけど、“運良く”手に入れる事が出来たドラゴンの素材を用いて魔改造を繰り返して出来たのが、このエアドラちゃん!

風の精霊石で浮力を得て、竜の魔石を船体に刻んで疑似的に吐息を再現して推進力として利用する優れもの!

「さぁ、乗って乗って! ユフィ!」

「え、本当にこれで行くんですか!?」

「時間は一刻を争うんだよ、私の素材が危ない!」

「そこはもうちょっと別の心配をして欲しかったですね……!」

エアドラちゃんを台車を使って外へと運び出す。そのままユフィを後ろに乗せるようにして舵を握る。舵を通して、船体に必要な魔力を流し始める。

船体に魔力を伝達する為の“紋様”に光が灯っていくのを確認して、思わず口元に笑みを浮かべてしまう。

「ユフィ、しっかり掴まっててよ」

「は、はい……」

「それじゃあイリア、行ってきます!」

「姫様、ユフィリア様、お気を付けて」

イリアが深々とお礼をし、そして一目散に距離を取る。そのあまりの早業に思わず惚れ惚れとしてしまう。私の後ろでは、私にしがみつきながらユフィが何やら驚いているようだった。

「え、何故イリア、逃げて、あれ?」

「精霊石、魔力充填完了。浮遊開始……離陸を確認! 船首角度調整、角度よーし! “ 竜の吐息(エアブレス) ”、発射までカウントダウン! 5、4、3……」

「ちょ、ちょっとアニス様!? 何か嫌な予感がするのですが……!?」

「エアドラちゃん、ブレスバースト! 発射ぁーーーーっ!!」

ぽちっとな! 私がスイッチを入れるように魔力を叩き込み、魔道具を起動させる。

風の精霊石で地上から離れ、空に角度をつけて向けた船首、その船体を後ろから押すように竜の嘶きにも似た咆哮と共に船体の後方からブレスが発射された。

抵抗がない船体は、その吐息の勢いを得て推進力を得る。そのまま空へ、空へ! まるで大砲の弾のように私達を乗せたエアドラちゃんは宙に舞い上がった。

「い、いやぁあああああああーーーーーーーーーーーーーーー!? またぁあぁああーーーーーーーーーーー!?」

後ろからユフィの絶叫が聞こえて来るけれど、私の脳にはユフィの悲鳴は入って来なかった。エアドラちゃんによって突き進む空の景色に見惚れていたからだった。

「あははは! あはははは! やっぱり空は良いぃぃーーーーー!」

魔力を船体に流し入れて、舵を取る。船体の表面に貼り付けた“竜の鱗”や、風の精霊石による方向転換。これによって目指すはスタンピードが起きた目的地!

「ユフィ! 舌を噛まないでよ! 飛ばすわ!!」

「もう飛んでますーーーーっ!!」

* * *

パレッティア王国に存在する深い大森林、名称“黒の森”。

鬱蒼と生い茂る木々によって奥地へと行けば日の光も差さぬ程に暗く、それ故についた名前が黒の森だと伝えられている。

精霊の群生地の一つであり、精霊石の産地としても知られる。同時に魔物の生息も多く、冒険者達の日々の糧、騎士団の定期的な調査隊が送られる事で有名である。

そんな黒の森には、まるで唸り声を上げるような音が響き渡っていた。

黒の森でスタンピードが起きて、魔物が溢れ出す事は珍しくはない。普段はその対策として魔物狩りを冒険者や騎士団が行っているが、それでも完全に防ぐ事は叶わない。

そして、今回もスタンピードの前触れを察知した冒険者達によって冒険者ギルドへとスタンピードの発生を伝え、近隣の村を守るべく冒険者と逗留していた騎士団達が慌ただしく討伐の準備に奔走していた。

「急げ! 村人の避難を急がせろ! 陣を布け! スタンピードの到来の前までにな!」

「今回の規模は!?」

「薬の準備を怠るなよ!」

「おい、邪魔だ! 気をつけろ!」

怒声が響き渡り、誰もがこれから迫る戦いに備える為に駆けずり回る。そんな狂騒の中で行き場が無さそうに肩身を狭くするのは、黒の森で経験を積もうとやってきていた新米の冒険者達だった。

「ど、どうするんだよ……?」

「どうするって……スタンピードだぞ?」

「逃げた所で後ろから追いつかれたら終わりだ、ここに残って一緒に戦う方が生存率は高い」

「まさか、出だしからこんな事になるなんて……運が悪すぎる!」

口から出る悪態は現状を憂えばこそ。ここから先は死と隣り合わせだ。本来の予定では、比較的に浅い所で魔物退治と精霊石の採掘で日々の糧を得ようとしていたのだ。それがいきなり大規模の魔物討伐に巻き込まれるなど、不運でしかない。

遠くから咆哮と思わしき声や、地鳴りのような音が近づいて来る。それがまた、冒険者達の恐怖心を煽る。足が震え、胃が窄んで小さくなったように感じ、今にも逃げ出したくなるほどに心が乱される。

――不安で心が塗り潰されそうになった、まさにその時だった。

「……なんか? 音が聞こえないか?」

「音だぁ? さっきから聞こえてるだろうよ! 魔物共がこっちに来ている音がよぉ!」

「そうじゃなくて! なんだこれ、凄い馬鹿でかい唸り声というか……」

耳を澄ませるように足を止めた仲間に訝しげになりつつも、苛立ちをぶつける冒険者。しかし、耳を澄ませていた冒険者もまた怪訝そうな顔をして、そして視線の方角を変える。

そこは黒の森とは正反対。村の後方からやってきているようだった。思わず目を細めて、目を凝らす。何か、小さな黒点のようなものが迫ってきてはいないかと。

「おい、あっちから何か来てないか?」

「来てるって、何がだよ!?」

「わかんねぇよ、ほら、音がでかくなってきたぞ!?」

「マジかよ!?」

そして、空に浮かんでいた黒点は凄まじい勢いで迫ってきて、その姿を露わにする。

奇妙な形をした“船”と思わしき影、それが空を舞い、こちらに迫ってきている。近づけば先程の唸り声のような音がはっきりと聞こえて来る。あまりにも不可思議で、そして禍々しい。

あれはなんだ、と。誰もが口にする。その黒点はそのまま風が唸るような音を立てて勢い良く風を撒き散らしていく。そのまま減速していき……。

「着地の事を忘れてましたぁあーーーーーーーっ!! どいてどいてぇぇーーーーっ!!」

思いっきり船が大地に叩き付けるように着地し、何度か跳ねながらも停止する。

誰もが目を点にして奇怪な船へと視線を向ける。その船から下りてきたのは2人の少女。どちらも地面に両手両足をつけて呻いている。

「うっ……ぷ……!」

「ユフィ! しっかり! ここで吐いたら乙女の尊厳の危機が!」

真っ青な顔で蹲る少女をまだ比較的に元気な方の少女が励ますように背中に手を添える。そのまま唖然と状況の推移を見守っていた誰かがぽつりと呟いた。

「……ま、まさか……! この空を飛ぶ奇っ怪な船と思しき何か、常識を逸したとしか思えぬ奇行、見目だけは可憐な……!」

「“ 狩猟の略奪姫(マローダー・プリンセス) ”か!?」

「誰が“ 狩猟の略奪姫(マローダー・プリンセス) ”よ!! せめてマッドと呼びなさい、マッドと!!」

納得がいかないのか異名を呼ばれた少女、否、この国の王女その人であるアニスフィア・ウィン・パレッティアは憤慨の声を上げた。

瞬間、冒険者達の中から歓声が上がった。誰もが諸手を挙げてアニスフィアの登場を喜んでいる。逆に苦虫を噛み潰した表情をしているのは騎士団だ。

「マローダーが来たぞ! スタンピードがなんだ、恐るるに足らず!」

「おい、前に出すぎるなよ! 姫の取り分を取ったら俺達が狩られるぞ!」

「魔物達がまた憐れな目に遭うのね……! 胸が熱くなってきたわ……!」

「王女様来た! これで勝てる!!」

「私の評価酷いわね!?」

「……自業自得では?」

アニスフィアの横で顔色を悪くさせながらも、ぽつりとユフィリアは呟く。

沸き立つ冒険者達を諫めようと騎士団達が怒声を上げている。アニスフィアはその様子を気にした様子もなく、黒の森へと視線を向ける。

「さぁて、ユフィ! 貴方は騎士団達と一緒に後方から魔法で支援してね!」

「……アニス様?」

もう何度目かわからない嫌な予感にユフィリアは口元を引き攣らせてアニスフィアを見る。一方で、アニスフィアが浮かべた表情は満面の笑みだ。

「じゃあ、私行ってくるから! 騎士団には包囲陣形を指示しておいて!」

「あの、まさかですけども、アニス様!?」

「フィーバーターーーーーイムッ!! 素材の狩り時だぁーーーーーっ!!」

片手を上げたかと思えば、アニスフィアは一直線に1人で森の方へと向かって走り出してしまった。一瞬、呆然とその背中を見送ってしまったユフィリアだったが、すぐに堪えきれないというように体を震わせて叫んだ。

「スタンピードに1人で突っ込む王女様がありますかぁ!?」