軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74.会談

翌日—————

ラステア国とファティシア王国の会談の場が設けられた。

私がこの場にいても意味があるのかはわからないけど、ひとまずカーバニル先生にはいることに意味があると言われたのできっと大丈夫なはず。

先生がラステアの人たちに今までの経緯を話し、初級から上級のポーションと薬草を献上する。

「つまり、魔力溜まりを人工的に作り出せる……と?」

「はい。元々我が国では花師たちが花を早く咲かせるために人為的に魔力過多の土地を作っていたのです。偶然ではありますが、ポーションの材料として作られている薬草を作り出すことに成功しました」

「まあ、確かに人為的に作ろうが魔力溜まりを加工して作ろうが土地に魔力が溢れ、それを薬草が得て成長することに変わりはないな」

ランカナ女王陛下はファティシアで作られた薬草を手に取り、しげしげと眺めている。そして、周りに控えていた人に鍋と水を用意するように言った。

もしかして自分で作るとか?いやいやまさか……と思いながら見ていると、女王様は用意された鍋に薬草をちぎって入れ、水を入れると煮始める。

そして魔力を込めると、あっという間に初級ポーションの完成だ。

「て、手ずから作ってる……」

ポソリと隣で先生が呟く。私も自分でポーション作ってますよ、と内心でツッコミを入れてしまったが、女王様と王女では格が違うし驚き加減も違うのだろう。

「ふむ、良いポーションじゃな……どれ、次は中級を作るか」

そう言うと、中級ポーションを作り出す。更には上級も……ポンポンと簡単に作る様子はさすが、魔力豊富な国の女王様だ。

そうしてファティシアから持ってきた薬草でポーションを作り終わると、それを同席していた女の人に手渡した。

「この者はダシャ・オルヘスタル 我が国の魔術師長じゃ。鑑定眼持ちでな」

「ダシャ・オルヘスタルと申します、どうぞよしなに」

黒い艶やかな髪を後ろでまとめ、ゆったりとした衣装に身を包んだ人はふわりと微笑む。優しそうに見えるけれど、ロックウェル魔術師団長のこともあるし油断はできない。

見た目と中身が違うと言うのはよくあること、らしいのだ。

もしかしたら魔術師団長のように研究が好きすぎる人かもしれないし、心の準備だけはしておこう。うん。

オルヘスタル魔術師長が女王様の作られたポーションとファティシアから持ってきたポーションを見比べている。そして更に、懐から三つ小瓶を取り出した。

色からしてポーションのようだが……?

魔術師長はポーションを見比べた後、今度は女王様が使われた薬草を手に取りジッと見つめる。

「オルヘスタル、どうじゃ?」

女王様に声をかけられ、魔術師長は小さなため息を吐いた。

え、あれ?もしかして何かおかしいのだろうか?やっぱり、ラステア国の薬草の方が質がいいとか?

ドキドキしながら見ていると、魔術師長は片手を頬に当て困りましたわと呟く。

「うん?」

「我が国のポーションよりも質が良いですね」

「なるほど?」

「薬草に含まれる魔力が均一なのです。我が国ではこうはいきません」

「多少のバラつきは魔力溜まりの魔力量によるからな」

「それがないのです。これは大変素晴らしい。品質が安定すると言うことは、更に上のポーションを作れる可能性が出てきたと言うことです」

「更に上のポーション!?そんなものがあるのですか!」

思わず口に出してしまい慌てて両手で口を押える。……隣は怖くて見られない。

そんな私の不敬を怒るでもなく、女王様はコロコロと笑いだした。

「良い良い。このポーションを作るきっかけはルティア姫なのだろう?なれば気になるのも道理よな」

「た、大変失礼いたしました。その、はい。上級までしかないと伺っていましたので……」

私は小さくなって謝る。穴があったら入りたいとはまさに今を言うのだろう。

「そうさな。昔は作れたようなのだが、今はレシピがあるのみ。作ろうにもそこまで質の良い薬草が取れんのよ」

「そうだったのですね……」

「ですが、魔力過多の土地を人工的に作り出せるのであれば、今後可能になるやもしれません」

とは言え、作る過程での魔力量は上級よりも更に必要になるのでたくさん作れるものではないと言われてしまう。

確かに上級を作るだけでも大変なのに、更に上のポーションに使える魔力となると途方もない量になりそうだ。

「それが作れれば、あるいは……」

「え?」

ポツリとこぼされた言葉に首を傾げる。

「ああ、いや。こちらの話よ。しかし、ファティシア王国はすごい発明をしたものよのう」

「偶然の産物ではありましたが……」

「魔力過多の畑を人工的に作れるのであれば、畑を作るために荒れた山道を行くこともなくなる。ポーションを作るために怪我をしては本末転倒だからの」

それからは先生と女王様、それにラステア国の重要な人たちとで話し合いが進んでいく。たまーに私にも意見を求められたが、魔力過多の土地を作ることに関してなのでそこまで役に立つことはない。

だが、私たちが始めたことで国同士の間に新たな結びつきを作ったのは確かだ。

五年後……流行病が広がったとしても、ポーションが足りない時は融通してもらえるはず。

アリシアの話す未来とは変わりつつあるのだ。

***

会談が無事に終わり、今度は女王様が内輪のお茶会を開くと言うので参加することになった。

今度は先生はいない。

先生とシャンテは魔術師長の元へ行ってしまったのだ。

滞在期間が限られているのだから、これはもう仕方がない。本当は私もそっちに行きたかったけど……

お茶会の場所にリーナと一緒に向かうと、すでに女王様ともう一人、濃い赤髪の若い女性が席に座っていた。

どうやら三人だけのお茶会のようだ。ホッと胸を撫でおろす。だってたくさんいたら何を話していいかわからないもの……

「ああ、ルティア姫。よく来たの」

「お茶会にお呼びいただき、ありがとうございます」

私はリュージュ妃に叩き込まれたカーテシーをして見せ、それからリーナに持たせていたお土産を侍女に渡す。

手土産はインパクト勝負だ!

「こちらは魔力過多の畑で作ったジャムになります」

「そう言えば薬草以外も育てていると言っておったな」

「はい。魔力過多の畑は植物の成長を早めるので、加工食品にして流通させられないかと思いまして」

「そのままではなく?」

「そのままですと、市場に混乱をきたしてしまうので……普通に作られている農家の人たちによくないかと」

先生からの受け売りを告げると、ああ、と納得したように女王様は頷いた。

「そうか。畑全てを魔力過多にするわけにはいかぬものな」

「はい。我が国ではそこまで魔力量の多い者は多くありませんので」

「そうだな。本来それで生計を立てている者は困るな……ああ、すまぬな!ささ、はよう座りやれ」

「失礼いたします」

一言断ってから席に座ると、女王様はもう一人の女性を私に紹介する。

「彼女はサリュー・レイティア侯爵令嬢、我が息子の婚約者じゃ」

「はじめまして、姫君。サリュー・レイティアと申します」

「はじめまして、ルティア・レイル・ファティシアです」

私なりにお母様のように笑ってみせたつもりだが、なぜかレイティア侯爵令嬢に睨まれてしまった。

不思議に思っていると、女王様がレイティア侯爵令嬢のことを教えてくれる。

とても優秀で、魔力量も高く、令嬢たちの見本のような子であると。

そんな素敵な子が将来の娘となると思うと、我が国も安泰だ、と話す姿はとても嬉しそうだ。

それなのになぜか、レイティア侯爵令嬢は少し俯いている。

褒められているのに……なぜだろう?

しばらくの間、取り止めのない話をしているとお茶会の場に見知らぬ男の人が入ってきた。

「遅いぞ」

「申し訳ありません」

あまり申し訳なさそうに聞こえないが、女王様のお小言を聞き流しつつ私に視線を向けてくる。

女王様と同じ、黒髪に緑色の瞳。髪は長くて首の後ろで結んでいる。なんとなく似た印象を受けたので、彼がきっと女王様の御子息なのだろう。

ただ、一つ気になるところが……彼は隻眼なのだ。

黒い眼帯で左目が覆われている。

「すまぬな、姫君。これが妾の息子、ウィズじゃ」

「はじめまして、小さな姫君。ウィズ・カステード・ラステアです」

「はじめまして、ルティア・レイル・ファティシアです」

挨拶もそこそこにウィズ殿下は私の隣の席、ちょうどレイティア侯爵令嬢の正面の席に座る。すると、婚約者同士だと言うのに、彼女はサッと視線を避けてしまった。

婚約者同士と言っても、家同士が決めたこと。実はそんなに好きじゃないのかな?と思ったのだけど、よくよく見ると、彼女はチラチラと殿下を見ている。

しかし殿下が視線を向けると、慌ててそらすのだ。

もちろんそのことに殿下も気が付いている。

しかし何も言わない。そこまで彼女に興味がないのかな?とチラリと隣に視線を向けると、視線が逸らされると眉間にすこーしだけ皺がよる。

気になってるけど、お互いに何も言えないのか言う気がないのか……

ちょうどわかる位置にいる分、気になるじゃないか!

でも流石にどうかしたんですか?とも聞けないし、と見ていると女王様に眼帯が珍しいか?と聞かれてしまった。

「え、あ、す、すみません!」

「ああ、よいよい。そのぐらいの歳であれば何にでも興味はあるよのう」

そうだ。私が二人を見れる位置ということは、女王様からも私が見えるということだ。不躾な視線は失礼にあたる。

もう一度、謝ると殿下も気にしなくていいと言ってくれた。

「その、怪我をされたのですか?」

「いや、これは怪我ではない」

「怪我ではない?」

「呪い、のようなものかの」

「呪い……?」

「魔術を良きように使えば、姫君のように皆の役に立つだろう。だが悪しき使い方をすると呪いとなるのじゃ」

どうやら殿下の身に何かあったらしい。

「その呪い、というのは解けないのですか?」

「これがのう、かけたものが死んでしまったのじゃ」

「母上……」

あまり内に入り込んだことに殿下が女王様を止めに入る。私もあまり詳しい話を知りたいわけではないので……いや、本音を言えば気にはなるが、それでも他国の内情を知るのはよろしくない。

なのであまり語ってもらっては困るところだ。

「まあ、良いではないか。実はな、姫君に相談したいことがあるのよ」

「相談、ですか?」

「我が国の者は魔力量は多いが、属性という概念があまりない」

「属性が、ない?」

「そもそも魔力量が多いとあまり気にならぬのよ。姫君の国のように魔術式を使って効率良く使う、と言う必要もないのでな」

「なるほど……」

「それで相談というのがな……そちらの国には聖属性というものがあると聞く。病や怪我を治すと」

「はい。聖属性を持つものは大体が神殿に属して、人々の病や怪我を治しております」

そう言うと、女王様は聖属性を持つ者をラステア国に貸してもらえないかと言い出した。

「神官を……ですか?それはなぜ?」

「息子の呪いを解けるかもしれぬと思ってな。呪いというのは繊細な技じゃ。それが眼球に入り込み、徐々に体を侵食していく。今我が国にその呪いを解ける者はおらぬのよ」

呪いが体を侵食して、行き着く先は『死』であろう。

しかし呪いを治すにも聖属性で治せるかはわからない。わからないが、一度国に帰ってお父様にお願いして、ラステア国に神官を連れて来るのは時間がかかる。

その間に、呪いが止まってくれるわけがない。

「今はまだ、上級ポーションをかけて壊死した部分をなんとか再生させることはできている。上級のさらに上のポーションを作るには時間もかかるであろう。それまでの間に、呪いが進んでしまわぬとも限らん」

「だから、聖属性の力を試してみようと……?」

「ああ。このまま待つばかりでは意味がない。なんならウィズをそちらに向かわせても良いのだが……」

その言葉にレイティア侯爵令嬢が傷ついた顔をした。

私は内心で首を傾げつつ、どうしようかと考える。

一度、使ってしまったのだし、二度使ってもきっと一緒だとは思うのだ。

私は自分の両手をじっと見つめた。