軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72.ラステア国

ラステア国とは龍が守護すると言われている魔力がとても多い土地。

スタンピードもよく起こる。国の人々は陽気で優しいが、有事の際は全員が戦闘員になれるほど魔力量も多くとても強いと言われている。

昔、トラット帝国と何度も戦争を起こしているがその度に撃退してきた。

ファティシア王国ができる前からあり、近いけど、ちょっと近寄り難い隣国でもある。

私が知っているラステア国とはそんな感じの国だ。

だからこそ、相手の出方は未知数であり、歓迎されているのかそれとも違うのかがちょっとわからない。

「まあ、歓迎してないってことはないと思うのよねえ」

「そうでしょうか?飛龍を並べて来ているのであれば、多少は警戒をした方が……」

リーナの言葉にそうなんだけど、みんな武装してないのよとカーバニル先生は言う。

非武装の状態で何かをするとは考えにくいらしい。

「ですが……ラステア国は有事の際には皆戦闘員。そういう国ですよ?」

「そうね。でもかなり陽気な国民性でもあるのよ」

リーナは従者として私の身を守るための言葉を選び、先生はラステア国に行ったことのある者としての言葉を選ぶ。

どちらも正しくて、間違っていない。

ただし今の状況はどちらなのかわからないのだ。

「ひとまず、アタシが出てみるわ」

「大丈夫ですか?」

「平気よぉ〜それに、使者に何かしたら国際問題になるわよ?」

「それは……そうですが……」

流石にそんなことはしないでしょ、と言って先生は馬車から下りてしまった。

私はもう一度窓から頭を出す。

すると、真ん中にいた若い男の人が先生に近寄ってきた。

衣装の豪華さからして、向こうの中で一番上の人と私が見当をつけた人だ。

「初めまして、俺はコンラッド・カステード・ラステアと言います。失礼ですが、ファティシア王国のルティア姫殿下の御一行でしょうか?」

「ええ、その通りです。申し訳ございません。迎えにきて頂けると伺っておりませんでしたので……」

「ああ、それは申し訳ない!実はその……姉がそろそろこちらに来ると言ったものですから。それで迎えに」

お姉さんが「そろそろ来る」と言ったから迎えにきた、と言うのはなんだろう?

まるでどこかから覗いてでもいたような言い方だ。

私は席に戻るとまるで覗いていたみたいね、と言う。

「遠見の魔術、かもしれません」

側で話を聞いていたリーナが少し眉を顰めた。

「遠見の魔術ってなあに?」

「遠くの場所から、見たい相手を見ることのできる魔術です。大変高度な術で、使える者はそう多くありません」

「そんな魔術があるの?」

驚いて聞き返すと、リーナは精度の高さは魔力量で決まる、とも教えてくれた。つまり、私たちがここに来るのがわかった、と言うことはかなり魔力量が多いと言うことだろう。

なぜなら、ラステア国に向かう道は幾つかあるからだ。

カウダートを経由せずに、直接ラステア国に向かう道とカウダートを経由する道、そして足場は悪くなるが、ラステア国に行くのに一番早くつける道もある。

そちらは山の中を移動するので、馬車での移動は向いていないけど。

「ラステア国の人たちは魔力量が多いと言うものね。そんな魔術も使えてしまうんだわ」

「あまり気分の良いものではありませんが……」

リーナはなにやら気分を害したようだ。

私はすごいなーとしか思わないけど、従者的になにかダメなのだろう。

しばらくすると、先生が馬車の中に戻ってくる。

「先生、どうだったの?」

「うーん……そうねえ。ねえ、アナタたち……空って飛んでみたい?」

予想外の言葉に私たちはみんな目を丸くした。

「飛ぶって、空を?」

「そうよ〜一度くらい体験するのも良いんじゃないかしら?」

そう言う先生の目はどこか泳いでいる。もしかして前に空を飛んだことがあるのだろうか?

「もちろん、無理にとは言わないわ」

「私乗りたい!」

はい!と手を挙げると、ま、アンタはそうよねと苦笑いされた。

シャンテは遠慮をし、リーナは私が飛びたいと言ったことで一緒に飛ぶことになった。

馬車から下りると、先程の男の人が私の前に膝をつく。

「初めまして、小さなお姫様。俺はコンラッド・カステード・ラステアと言います」

「初めまして、ルティア・レイル・ファティシアと申します」

そう言ってリュージュ妃からなんとか合格をもらったカーテシーをして見せた。

彼はにこりと笑い、失礼、と言ったかと思うと私の体を抱き上げる。

「まるで羽のように軽いですね」

「え、あ、あの……!?」

「飛龍に乗るのに貴女の体では小さすぎますから」

「そ、そうですか……」

だからと言って急に抱き抱えないで欲しい。誰だって心の準備というものがあるのだ。

声にならない悲鳴を心の中で上げながら、私は鞍をつけられた飛龍に乗せてもらう。普通の馬とは違い、鞍には掴まる場所があった。

「しっかりと掴まってください」

「え、あ、はい!」

返事をすると、その人は私の後ろに乗る。リーナは別の人の飛龍に乗せてもらっていたが、心配そうに私を見ていた。

周りを見ると、一緒に来た騎士のうち数名が同じように飛龍に乗せてもらっている。

先生とシャンテ、そして残りの侍女と騎士達はラステア国の騎士と一緒に馬車で王城まで向かうことになったようだ。

「出立っ!!」

号令がかかると、一斉に飛龍が飛び立つ。

それは—————まるで、夢のような光景だった。

***

ふわりと体が浮かび、それから風がそよりと頬を撫でる。

「すごい!高い!!」

私が歓声をあげると、後ろから怖くないですか?と尋ねられた。

「いいえ、大丈夫です。思ったよりも、風が強くないし……それに空を飛ぶってこんなに素敵なことなんですね!」

眼下には幾つもの家が見える。その家々を飛び越し、少し先に見える王城へ飛龍は真っ直ぐに飛んでいく。

「こんなに早く着くなんて……先生たちは追いつけるかしら?」

「飛龍だとあっという間だけど、馬車だともう少しかかるな」

「……それじゃあ、悪いことをしてしまったわ」

「どうして?」

「だって、私はただ馬車に揺られていれば良いけれど、他の人たちはずっと気を張っていなければいけないでしょう?だから早く休みたいと思うの」

そう告げると、謁見は明日だから夜はゆっくり休めると言われた。

どうやらこの人は私のスケジュールを把握しているらしい。

そしてあっという間に王城の開けた場所に着地をする。

私は乗った時と同じように抱き抱えられて地面に下ろされた。

「いかがでしたかお姫様」

「とても、とっても素敵でした。ありがとうございます」

そう伝えると、彼は嬉しそうに笑い飛龍の首をポンポンと叩く。

「良かったな、カッツェ」

「それが飛龍の名前なんですか?」

「ああ、飛龍、では皆同じだからね」

私はカッツェと呼ばれた飛龍を見上げ、ありがとうとお礼を言った。

カッツェはクルルと喉を鳴らす。

「どういたしまして、と言ってるみたいだね」

「言葉がわかるの?」

「子供の頃からの相棒だからね」

なるほど。ラステア国では飛龍はとても身近な存在なのだろう。

同じ「りゅう」と名は付くけど、ファティシア王国に現れる魔物の竜とはだいぶ見た目も違っている。こんな相棒なら私も欲しいぐらいだ。

「姫様」

「リーナ!貴女はどうだった?」

「ええ、大変得難い体験をいたしました……ではなく、大丈夫ですか?」

「全然問題ないわ。とても素敵な体験だった」

そう言うと、流石カロティナ様のご息女ですねとリーナが呟く。

「さあ、お二人共。城の中を案内しますよ」

私はその言葉にハッと固まる。

そうか。私が一人で先に来ると言うことは、誰も間違った時に正してくれる人がいないと言うことだ。

でもここで先生たちを待ちますとも言えない。

なぜなら私は一国の王女で、ここは他国の領域だからだ。

リーナに視線をやると、小さく頷かれる。

これは覚悟を決めなければいけない。私は私を乗せてくれた人を見上げると、よろしくお願いします、と案内を頼んだ。

彼は小さく笑うと、私に腕を差し出す。

これは……エスコートしてくれると言うことだろうか?

「さ、どうぞ。お姫様」

悩んでしまった私に、彼が促す。私は慣れないエスコートを受けながら、王城の客間に案内された。

客間ではラステア国の侍女たちが私を待っていて、お疲れでしょう?とかいがいしく世話を焼いてくれる。

その間に彼はどこかへいなくなり、私とリーナはお風呂に入れられラステア国の衣装に着替えさせられてしまった。

ようやく一息つく頃には、慣れない緊張の連続でぐったりしてしまう。

しかしそれを表に出すわけにはいかない。私の態度一つで国の印象が決まってしまうのだから。

「ああ、よう似合っておるのう」

お茶を頂いていると、歳の頃はリュージュ妃と同じくらいだろうか?黒い艶やかな髪を背中にゆったりと流し、紅の生地に金の糸でとても細かな刺繍の施してある上等な衣装に身を包んだ美女が現れた。

すぐさま周りにいた侍女たちが頭を下げる。

美女がスッと手を上げると、ささっと侍女たちは美女のお茶を用意していなくなってしまった。

残された私とリーナはどうしようか戸惑ってしまう。

この美女がただ者ではないことは雰囲気でわかるが、誰も周りにいなくなってしまうとどうしていいかもわからない。

ひとまず失礼の無いように挨拶を……と思っていたら先に相手が名乗ってくれた。

「初めまして、小さな姫君。 妾(わらわ) はラステア国女王 ランカナ・カステード・ラステアと言う」

「お、お初にお目にかかります。私はファティシア国第一王女 ルティア・レイル・ファティシアと申します」

まさか!まさか!!女王様ご本人が明日の謁見を前に突如として現れるなんて誰が想像するだろう!!

咄嗟にカーテシーをして見せたが、慌てすぎて噛んでしまった。

「顔をあげられよ。小さな姫君。先ほどは我が弟がすまなんだ」

「え?」

「コンラッドは妾の歳の離れた弟でな。其方がもうすぐ領内に入ると言うたら迎えに行ってくる、と飛び出してしまったのじゃ」

弟……弟!?

そう言えば、ラステアと名前についていた。

私のバカー!!なんでそんな初歩的なことに気がつかなかったのだろう……

てっきりただの使いの人だと思っていた。今更ながらに失礼なことをしてなかっただろうかと冷や汗が背中を伝う。

下手すれば国際問題だ。

私はなんとか言葉を選びながら、失礼にならないようにお礼を伝える。

「そ、その……初めて飛龍に乗らせていただいて……とても素敵でした」

「ほう?」

「空を飛ぶ経験は一度もなかったので……」

「なるほど。観光客を飛龍に乗せる生業をしている者もいるが、意外と二度三度と乗るものは少ないと聞く。其方は平気そうだの?」

「もし、また乗れるのであれば」

乗ってみたいです、と正直に告げると女王様はカラリと笑った。