軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

177.街歩きと商業ギルド 2

歳のころは私と同じか少し下だろうか?カティア将軍とステラさんに挟まれて、ものすごく怯えている。いや、多分瞬き一つすれば涙が溢れてしまうのだろう。それぐらい我慢している顔だ。

「ねえ、どうして盗ったの?」

「お、お前がぼんやり歩いてるから悪いんだろ!!」

「いや、盗むのが悪いんでしょうよ」

「そうね。人の物を盗むのは悪いことだわ」

将軍とステラさんにそう言われ、男の子はグッと言葉に詰まる。だが直ぐに「金持ちから盗んで何が悪いんだ!」と言い出したのだ。

お金があるから盗る、と言うがそれはその分働いているから得ているだけ。中には悪いことをして得ている人もいるだろうけど……みんながみんなそうではない。

ただこの男の子に正論を言ったところで理解はしないだろう。したとしても、悪いことをしてる人なら盗んでいい、となってもそれはそれで困る。

悪いことをしている人なら、盗みがバレればもっと酷いことになるからだ。

「捕まえたのが、お姉様で良かったと思うべきよ?もしも悪いことをして稼いでいる人だったら、貴方はとっても酷い目にあっていたわ」

「そうね。憲兵に突き出すなんて甘いことしないわよ」

「我が国で人身売買は禁止されてますけど、他国では違いますしね」

「お、俺のこと売る気なのかよ!」

まるで小さな犬がキャンキャンと吠えているように見える。周りのお店の人も、憲兵を呼ぶかい?と声をかけてきたりして、私達は注目を集め始めた。これはちょっと不味くなかろうか?将軍の立場的に。いや、でもスリを捕まえたのだからいいのかな?

「お嬢さんたち、憲兵を連れてこようかい?そいつはこの辺でスリを働く子供達の一人だ」

「……有名なの?」

「そうだよ。子供だからと鞭打ちくらいで済んでたけど、次は牢屋に入れられるだろうね」

お店の人の言葉に男の子はビクリと体を震わせる。盗みはいけないこと。それは当然だ。でも子供達ということは他にもいるはず。この子一人が捕まっても、きっと変わらない。そして誰も、手を差し伸べないのだろう。

どの国にも貧民街というのはあり、困窮している層は一定数いる。ファティシアの貧民街は、王都から徐々に良くなってきているけれどそれでも国全体に広まるにはまだまだだ。

きっと、お金を渡してもこの子は繰り返すだろう。お金は一時的な解決になっても、長期的な解決にならない。それに盗みは盗み。悪いことをしたのだから、それに見合う罰を受けなければいけない。

でも……このまま憲兵に差し出すのは、何か違う気がするのだ。もちろんラステアの法に照らし合わせれば、正しい行為なのだろうけど。

「お姉様、この子を憲兵に突き出すのはやめて欲しいの」

「ルーちゃん、盗みは盗みよ?」

「でも未遂だわ。お姉様が気が付いてくれたもの。でも無罪放免にはしない」

「な、なんだよ。何しようってんだよ!」

男の子は尚も私達を睨みつけてくる。私は男の子に仕事をあげるから、他の子達も紹介するように言った。これから商業ギルドで聞くことは、人手が多い方がいい。しかし男の子は「お前らの言うことなんか信じられるか!」と唾を吐いてきた。

幸い、将軍がぐりっと男の子の頭の方向を変えたので、誰にもかかることはなかったけどね。男の子は「俺の首をへし折る気か!!」と騒いだけど、こればかりは仕方がない。自業自得というものだ。

将軍もステラさんも「これ以上はどうなるかわかるわね?」と言いながら笑顔で圧を加えていく。見てるだけでちょっと怖い。

「まあ、とりあえず……往来で立ち止まっていては迷惑ですし、どこかに入りましょう?」

「そうね。でも本当にいいの?直ぐそこに憲兵の詰め所あるわよ?」

「いいです。それに無罪放免にするわけじゃありませんし」

「だーいじょうぶよ!姉上。私がいるもの」

「それはそれで不安が残るわねぇ」

ステラさんの言葉に私は苦笑いを浮かべる。でも将軍なら大丈夫だろう。なんせ将軍だし。もしもの時はネイトさんもいるしね!!

ひとまずその辺のお店にでも入ろう、と言うことになり将軍が男の子を小脇に抱えると歩き出した。もちろん男の子は暴れたけど将軍の体幹は全くブレない。

まるで何も運んでいないかのようにスタスタと歩いている。

「ねえ、あまり暴れると危ないわよ?お姉様は将軍の一人なの。だからとても強いし、貴方一人ぐらい逃げても簡単に見つけられるわ」

「しょ、将軍!?」

「そうよ。リオン・カティア将軍。名前ぐらい知っているでしょう?」

私がそういえば男の子の動きがぴたりと止まった。そして顔色がどんどん悪くなる。私が具合でも悪くなったのかと聞くと、男の子は思いっきり頭を振った。そして「俺のこと食べるつもりなのか……?」と、とうとう泣いてしまったのだ。

「……お姉様、男の子を食べるの?」

「いやだ、ルーちゃんそんな語弊のある言い方しないで……」

「でも食べないでって」

「いくらリオンが食べるの好きでも、人は食べないわよ」

「まあ、それはそうでしょうけど」

「う、うそだ!!戦場で肉を掲げながら、お前らもこうしてやろうかって……その姿はまるで悪鬼のようだったって聞いたぞ!!」

「……おねえさま?」

ジッと見上げると、将軍はイイ笑顔を浮かべる。一体戦場で何をしたのだろう?すごく気になるんだけど!!

「きっとお腹が空いて気が立っていたのねぇ」

「そうです。そんな感じです姉上」

「お腹が空いて気が立っているとお肉を持って戦場で戦うの?」

「そんな時もあるのよ〜だって人がご飯食べている時に仕掛けてきたんだもん!」

もん!と可愛く言っても、話している内容は可愛くはない。どうしてそうなったのか詳しく聞きたいけど、未だ将軍の腕の中でブルブル震えている男の子の方が重症だろう。これから食べられる(物理)になるかもしれないのだ。実際はそんなことにはならないけど、本人を知らなければこうなるだろう。

「それにしてもどこも空いてないわね」

「そうねぇ。これならギルドに直接行ったほうが早いかしら?」

「え、ギルド!?」

「そうよ。これからギルドに行くの」

ステラさんの言葉に男の子が反応する。私が首を傾げると、男の子は「何でもするからそれだけはやめてくれ!」と言い出した。ギルドに何かあるのだろうか?私達は顔を見合わせる。

「どうしてギルドはダメなの?」

「ギルドには、アイツがいるんだ」

「あいつ?」

「ギルド、マスター」

「そりゃあ、いるでしょう?ギルドだもの」

私がそういうと、そう言う意味じゃねえ!と怒られてしまう。兎も角、ギルドだけは嫌だと言うので私達は商業通りからもう一つ通りの離れた場所に移動することになった。

お店に入ると、個室を用意してもらう。将軍が男の子を小脇に抱えていたけれど、将軍が身分を告げて簡単に説明をすると店主は心得たように頷いた。

将軍職という身分は信頼の証でもあるのだな。将軍すごい、と密かに思いつつ部屋の中に入ると、男の子を一番奥の席にそして将軍とステラさんがその左右に座る。

どう足掻いても逃げることは不可能だろう。私が男の子の前に座ると、男の子はジトリと睨んできた。そんな目をしても私は怖くない。だって両脇に座っている人の方が怖いもの。

「で、ギルドに何があるの?」

「……なんでそんな話をしなきゃいけねぇんだよ」

「ルーちゃんにーそんな口聞く子はーたーべちゃーうよーん」

ボソリと将軍が呟く。言葉だけならちょっと楽しそうなのに、目が座っているので聴いているこっちまで怖くなってしまう。

「お姉様、脅かさないであげてください。私はどうしてギルドが嫌なのか?と聞いているだけよ。その理由を教えてくれないなら、貴方も一緒にギルドに連れていくわ」

「話したら、連れて行かない?」

「ええ。正当な理由があるなら連れて行かない。もしも貴方や貴方の友達が盗みを働いて、訴えられるから行かないと言うのであれば連れて行かなければいけないけどね。私とは別口だもの」

「そうじゃ、ない。あそこは、アイツは……最低な野郎なんだ。俺達だって最初は盗みなんて働いてなかった。商業ギルドで仕事を回してもらって、働いていたけど、でもどんなに働いても金はもらえなかった」

「どう言うこと?」

「なんだかんだ理由をつけて金を払わないんだ。仲間の中には、逆に金を払えって言われた奴もいる」

つまり搾取するだけして、お金を払わない、と言いたいのだろう。お金を払わない理由は、仲介料だったり、住み込みだったらそれにかかるお金を取られたり、一番は他に紹介するよりもかなり安くで働かせていると言うこと。

それではいつまで経っても生活は楽にならない。だから商業通りで商人から財布を盗ろう、となったことも話してくれた。