軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

144.お祖父様と秘密の話 1

今現在、私はーーーーまだファティシア国内にいた。それは何故か?私が聞きたいくらいだ。どうしてこうなってしまったんだろう?

私はぼんやりと眼前に広がる土地を見下ろしていた。

本当は直ぐにでもラステア国に戻るつもりだったのだ。

戻るつもりだったんだけど……ロイ兄様の離宮から去る間際に、ロビンが私の手に小さな紙を渡してきた。

その紙には、お祖父様から『良い拾いものをした』と書かれた手紙が来たこと、その拾いものに心当たりはあるか?と質問が記されていたのだ。

良い拾いもの、といわれても私には心当たりはない。それにこの内容なら別にあの場で聞いてくれても良かったのでは?と首を傾げる。

ファーマン侯爵のタウンハウスに戻り、そのメモをジッと眺めるも答えは出てこない。うんうん唸って、最終的にどうにもならなくて……カティア将軍に相談することにした。

「ルーちゃんには全く心当たりないの?」

「全然ないんです」

「そっかあ……まるで謎かけみたいだねえ。良い拾いものだなんて」

「ううーん……私、お祖父様には会ったことがないのでなんとも」

「会ったことないの?」

将軍が驚いたように私を見る。しかし会ったことがないものは仕方がない。理由はわからないが、お祖父様は領地から王都に出てこないのだ。

社交シーズンには領主代理の人が出てきて、色々と動いているらしいがその人にも会ったことがない。よくよく考えると確かに不思議かも。

「どうして会ったことないんだろ?」

「そこからかあ」

「そこからです」

ううーんと腕を組み唸りながら答える。そんな私を見ながら、将軍はポンと手を叩いた。

「仲が悪いとか?」

「それはないです。私達が住む離宮の使用人はみんなカタージュ……お祖父様が治める領地の人間ですし」

「そうなの?もしかしてリーナちゃんも?」

「はい。リーナもユリアナもそうです」

そういえば二人とも運動神経良いわよね〜と将軍は口にする。確かに二人とも運動神経は良い。鍛えられている、といっていた。カタージュではそれが普通だとも。

「カタージュは特殊な場所なの?」

「カタージュは、レイラン王国と国境を隣接してる場所にあるんです。レイランとの間には森があって、そこに魔物が良く出るんです。スタンピードも他の領地に比べると多いかも……?」

「うちと似てるのね」

「そうかもしれません。老いも若いも男も女もみんな戦うって……確かロビンがいってました」

ラステア国も国民皆戦士、と謳われるぐらいの国だから確かにカタージュと似ているのかもしれない。

「……もしかしたらお祖父様の言葉は、ルーちゃんなら会いに来るって思ってのことなのかも?」

「私がファティシアに戻って来なかったら、ロビンから話を聞くのずーっと後になっちゃいますよ?」

「それでも良いんじゃない?急いでないからこんな謎々みたいに書いてるのかもよ?」

「なる、ほど?」

「行ってみちゃう?」

「え?」

「だって気になるじゃない」

「そりゃあ気になりますけど……」

私達はコンラッド様と一緒に来ているのだ。勝手な行動はできない。それは将軍が一番わかっていると思う。それに、ファスタさんだって領地に戻らなければいけないのだ。カタージュに寄り道している場合ではない。

そんな私の考えがわかったのか、私達だけで行けば大丈夫よ!と将軍は軽くいう。いやいやいや!それこそダメだと思うのだけど!!

流石の私もそれが物凄っくダメなことくらいわかる。でも将軍は大丈夫、大丈夫とかる〜く手を振るのだ。

この時点で私は、相談する相手を間違えたことに気がついた。ネイトさんに相談すべきだったのだ……もしくは、ネイトさんと一緒に聞いてもらえば将軍を止めてくれたかもしれない。

「お、お姉様……」

「なあに?ルーちゃん!」

「勝手に行ったら流石に怒られます……」

「平気よぅ」

「私は、お姉様がネイトさんに怒られて、執務室に閉じ込められるのは嫌です!」

「はっ!」

ネイトさんの怒りは、コンラッド様に怒られるよりも上だったようだ。私はちょっとホッとしつつ、ネイトさんに黙って行ったら絶対にダメです。と将軍を諭す。これではどっちが年上かわかったものではない。

「そっかールシアンか……ルシアンは、確かになあ」

「そうです。絶対にネイトさんは書類の山を幾つも築くはずです」

「いっそのことルシアンを……」

「それ一番ダメなやつですお姉様……」

将軍の趣味を理解しつつ、上手い具合に手綱を握って制御できるのはネイトさんしかいないのだ。例えネイトさん本人が異議申し立てをしようとも、それがラステア国軍の共通認識となっているといって良いだろう。

趣味に関してはネイトさんしか知らないけど。

「仕方ない。明日ルシアンに相談するか」

「そうしましょう。というか、明日はファスタさんを連れてクリフィード領に戻る日ですからね?」

「そうなんだよねえ。でも気になるなあ」

確かに気になるけど、ファスタさんをクリフィード領に届けなければいけないし、それにコンラッド様だって長期国を空けるのは問題があるはず。

いや、そりゃあ私の勉強を見てもらうのに長期空けたことはあったけどね。でも今回はその時と違うし!私だってこれ以上ワガママをいうつもりはない。

ひとまず、この話はラステアに戻ってからにしましょうと将軍にいうと、私は自分に割り当てられた部屋に戻った。

***

次の日、コンラッド様達と合流し、私達はクリフィード領へ、そしてラステア国へ戻る準備を始めていた。そこに将軍がフラリと現れるとコンラッド様の元へ。

その様子を眺めていたネイトさんが、そっと私の側に近寄ってくる。

「……何か、嫌な予感がします」

「え?」

「長年の勘が、何か……何か起こるといってます!!」

「い、イヤ流石に……ここはファティシアですし」

「そんなことは関係ないんですよ」

ちょっと遠い目をしてネイトさんは深い、それは深ーいため息を吐いた。私が昨日相談したことがそれ程までに将軍の好奇心を刺激したのだろうか?もしそうなら、私はやっぱり相談する相手を間違えたことになる。

「……ネイトさん、私のせいかもしれません」

「ーーーー詳しく聞きましょうか?」

ポツリと呟くと、ネイトさんにガシッと肩を掴まれた。私は正直に昨日の夜、将軍に相談した内容を伝える。そのことにネイトさんはううーんと唸り、気になっているのは手紙の内容だけではないかも、と呟いた。

「手紙の内容だけじゃない?」

「ええ。そのカタージュの森には魔物が出るんですよね?」

「はい。スタンピードもよくあるみたいですし」

「しかもお母上はその森で魔物狩りをしていたと」

「そうですね?」

「それが原因じゃないでしょうか?」

それが原因、といわれて私は首を傾げる。どこら辺に将軍の気になるポイントがあったのだろう?全くもって謎だ。

ヒソヒソとネイトさんと話していると、後ろから軽やかな足取りが聞こえてきた。振り向けば将軍がとても良い笑顔で私達に近づいて来る。

その笑顔にネイトさんの顔が引き攣った。

「ルーシアーン!ちょっと話があるんだけど!」

「……私は何も聞きたくありませんし、このままラステアに戻りたいです!」

「いやあねえ。まだラステアに戻らないなんていってないじゃない」

「それはもういってるようなものじゃないですか!!」

「大丈夫よーちゃーんと殿下の許可はとったし」

将軍はグッと親指を立ててみせる。私とネイトさんは二人揃ってコンラッド様に視線を向けた。コンラッド様は肩をすくめて、頭を左右に振る。

「殿下っっ……!!そこで諦めないで欲しかった!!」

小さな声でネイトさんが呟く。私も同意するように何度も頷けば、コンラッド様は苦笑いを浮かべながらこちらに近づいてきた。

ネイトさんは恨みがましげな視線をコンラッド様に向け、どこに行けば良いのでしょう?と尋ねる。

「あーうん……ちょっとカティア将軍が気になるっていうから、ね?」

「ね?ではなく!このまま真っ直ぐクリフィード領へ向かい、そしてラステアに戻るべきかと!!」

「将軍の勘は結構当たるから」

「当たらなくて良い時に当たるんですよっっ!!」

コンラッド様はネイトさんの嘆きに、ポンポンと肩を叩いて労う。労うぐらいなら、許可を出さなければ良いのではなかろうか?それともコンラッド様もお祖父様の言葉が気になっているのかな?

「コンラッド様……その、お祖父様の言葉が気になっているのですか?」

「そうだね。でも一番は、一度も会ったことがないなら会ってみたらどうかなあって思ってね」

「で、でも!それは今でなくても……」

「でもきっと、今を逃したらまた暫く先になるんじゃないかな?」

「それは、そうですけど」

お祖父様の領地に行くことは、きっと何か特別な用がない限り無理だろう。そのぐらいならお祖父様を王都へ呼びなさい、といわれるはず。

でも……お祖父様は王都へは来ない。理由はわからないけど。そうなるとやっぱり私が行く以外に会う方法はないのだ。

「一日、二日ぐらい遅れて帰ってきても大丈夫」

「でも……」

「大丈夫よ、ルーちゃん!私がついてるから!!」

「それが一番不安なんですよ?おわかりです??」

「それもあってネイトにも一緒に行ってもらうんだけどね」

ネイトさんが将軍に食ってかかるのと同時に、コンラッド様は笑いながらネイトさんに告げる。ネイトさんは「娘が……娘が……」とそれはもう悲しそうな顔をした。

それからあれよあれよという間に王都を出発し、途中で弔問部隊と別れ、眼前にレイドール伯爵領を見下ろしていたのだ。