軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

134.王都へ! 2

ファスタさんや、ファーマン侯爵と王都へ戻ることが決まってから三日経った。

その間に弔問隊の一部が一度ラステアに戻り、ファスタさん達を乗せるカゴを持ってきたのだ。普通のカゴよりも魔法石を使って加工している分、丈夫にできていて揺れも少ないらしい。

中を見せてもらったら、テーブルと椅子を置けばちょっとしたお茶会ができそうにも見える。そんなカゴの中を見て侯爵は、「これなら平気だろうか……」と呟いていた。

「ファーマン侯爵様は高いところがダメですか?」

「ルー嬢、高いところというのは、我々の国ではそう行くところではないのですよ」

「龍はラステア国でしか見ませんものね」

「そうですね。そういえばルー嬢はもう一人で飛龍に乗れるのですか?」

「はい!まだお姉様達のように命綱を付けずに乗ることはできませんが……でも一人ではもう乗れます!!」

ラステアの侍女として振る舞っているのもあるが、飛龍にはちゃんと乗れるようになったので元気よく答える。するとジトっとした目で侯爵に見られてしまった。

だって、どうせなら命綱なしで乗ってみたいじゃない。それだけ飛龍達と信頼関係を結べた証だもの。

「……空を飛ぶというのは、それほどまでに魅力的ですかな?」

「もちろんです。移動も早いですけど、やはり空高く飛べるのは楽しいです」

「なるほど。もしや私の娘も、その……飛龍に乗る練習を?」

「アリシア様は高いところが苦手とのことで、シャンテ様とルティア様付きの従者の方と侍女の方が練習されてますよ」

「そ、そうですか……!!」

「アリシア様が飛龍に乗る時は、侯爵様と同じくカゴになるかもしれませんね」

そう付け加えると、侯爵はちょっとだけホッとした表情になる。きっと自分だけが高いところが苦手じゃないと思ったのかもしれない。

アリシアは飛龍は好きなのだけど、高いところがダメで、いつも「ごめん、ごめんなさい」と飛龍に擦り寄って謝っている。こればかりは無理強いできるものでもないので仕方がない。

何せどうしても飛龍に乗らなきゃいけない時、アリシアは大体途中で気を失っているのだ。命綱をつけて背中に龍騎士の人がいてもそれなのだから、一人で乗るのはまず無理だろう。いくら龍が利口でも手綱を持たねば危ないのだ。

「今夜遅くに旅立つとして……夜間の飛行は龍達は大丈夫なのですか?」

「はい。龍は夜目もきくので問題ありません。できれば朝について、夕方には謁見できると良いとファスタ様からお願いされてますので」

「ああ。確かに。早ければ次の日には戻れますしね」

侯爵の言葉に頷く。ファスタさんは強行軍になるだろうけど、飛龍の移動距離としてはそこまで長距離というわけではない。それに私達も、ファスタさんを運び終えれば後は休めるし……一応、動き出すのは夜になってから、となっている。

ラステア国が新しいクリフィード侯爵の為に飛龍を貸すというのは、実は異例のことだ。今まで両国の架け橋として故クリフィード侯爵が助力してきたから、と理由をつけてはいるけれども。

なのでコンラッド様の王城への訪問は非公式となる。

非公式故に、こっそりと夜訪れます。とファスタさんに伝言をお願いするつもりだ。あまり大っぴらに訪れて、フィルタード派の貴族達を刺激するのも嫌だし。

私達だって騒ぎを起こしたいわけではないのだから。

「あ、そういえば……ファーマン侯爵様の馬車はどうされるんですか?」

「ああ、我が家の馬車でしたら、今朝方王都からの使者と一緒に、従者に頼んで先に戻らせました」

「そうなんですね」

「彼らは行きは馬で早駆けしてきたとのことだったので、私は龍で戻りますし、空の馬車を走らせるのもなんですからね」

「それじゃあ帰りは快適に帰れますね」

「そうだといいですな!我が家の馬車は娘の提案で、クッションをちょっと特殊な物にしてるんですよ」

「特殊、ですか?」

そういえば前にアリシアがいっていたような?馬車の座席は長時間座ってるとお尻が痛くなる。だからすらいむの魔術式を応用した座席にしたとか……?適度な弾力が必要で、開発に時間がかかったとも。

「座るとふか、っとして腰に負担がかからないのです」

「それは凄いですね」

「是非とも娘に聞いてみてください。カゴの中に設置するといいかもしれませんよ?」

「確かに……!コンラッド様にお願いしてみます」

長時間、馬車に揺られているとお尻は痛い。それにカゴの中は今回椅子とテーブルを置きはするけどクッションが快適だと尚過ごしやすいと思う。

どんな場所でも快適に過ごせるのって大事だものね。

でもそんなに快適ならもうちょっと工夫すれば、ベッドとかソファーにも使えそうだ。ラステアは夏になるととても暑いし……冷やして使えれば夏場とかにも良さそう。

「ルーちゃん、そろそろ移動の準備を始めるよー!」

屋敷の入り口からカティア将軍が私を呼ぶ。私は侯爵に頭を下げると、将軍の元へ急いだ。

***

夜になり、出立の準備が整うと私はラスールの背に乗る。鞍に命綱をつけて安全チェックをしていると、将軍が私の命綱の最終チェックをしてくれた。

「さ、ルーちゃん。夜の移動は初めてだし、遅れないように気をつけて飛んでね」

「はい。お姉様」

私の返事に、将軍は頭を撫でてくれる。そして今度は自分の飛龍にひらりと跨った。あの乗り方、すごく格好いい。みんなひらりと乗るし、ひらりと降りられるし……私もラステアにいる間に、あのくらいできるようになりたいな。

せめて命綱なしに……!!ひらりと飛び跨るのは、私の今の身長じゃ難しいから。あと10cmぐらい大きくなればできるだろうか?成長期だし、きっとまだ伸びるよね?

「……ラスール、私、もっと上手く乗れるようになるからね?」

そういうとラスールはクルルと喉を鳴らした。よろしくね、といわれた気がしてちょっと嬉しくなる。

そして待機をしながら周りを見ていると、他の人達も次々と飛龍に乗っていく。コンラッド様が最後に乗り、ファスタさんと、侯爵がカゴの中に入るのを確認。

ちょっと大きめの飛龍二頭の間に頑丈な紐が通され、それがカゴに付けられる。魔力を使って編み込まれた紐らしく、燃やしても燃えず、剣で切るのも難しいらしい。

もっとも、将軍にいわせると「私ぐらいになると、気合いで切れるけどね!」と……試し切りでもしようか?というので、それは大丈夫なのかとネイトさんを見れば、ネイトさんが真っ青な顔で「やめてください!」と将軍を止めていた。

よかった。見てみたいです、とかうっかり口に出さなくて……作るのが相当難しいそうで、作れる職人も少ないらしい。そんな貴重な物を切ってしまったら大変だ。安全にファスタさんと侯爵を王都に運べなくなってしまう。

そして辺りを見回し、ふーっと一息つく。

「ーーーー出立っ!!」

ライラさんや、リューネさん、他にもクリフィード邸の使用人達に見送られ私達は空へと飛び立つ。

夜飛ぶのは初めてだけど、今夜は月がとても明るい。これなら飛ぶのも平気だろう。向かうは王都、クリフィード侯爵家のタウンハウス!

「隊列は崩すな!王都まで速度を上げていくぞ!!」

今回の飛龍隊を率いている、アスト・ノーマン隊長がそう叫ぶ。私はラスールの首を撫でて、みんなに着いていってねとお願いした。ラスールは応えるようにクルルルル、と鳴く。すると周りにいた龍達もクルルルルと鳴きだしたのだ。

突然のことに驚いていると、周りにいた人達がワッと嬉しそうに声を上げた。

「飛龍達が珍しく歌ってるぞ!」

「歌う?」

龍が歌っている、といわれ私は首を傾げる。すると隣を飛んでいた将軍が龍は歌う生き物なのだと教えてくれた。

ただ頻繁に歌うわけではないし、一斉に歌うことも稀なのだとか。

「じゃあ私達はすごく運が良いんですね!」

「そうね!きっと新しいクリフィード侯爵を祝っているのかも!」

「そうだといいな……!」

こんなに素敵な歌が聞けたのだから、ファスタさんは無事に爵位の継承ができるだろう。それにお父様からも何かしらの情報が得られる気がする。

飛龍達はグングンとスピードを上げて、王都へ真っ直ぐ進んで行く。王都の途中にある街や村の明かりが眼下に見える。しかしそのスピードが早すぎて、一瞬で通り過ぎてしまう。まるで流れ星のようだ。

星の煌めきと、月明かり、そしてーーーー王都にそびえ立つ王城の灯り。

「帰って、きた……」

小さな声でポツリと呟く。たった二ヶ月前に出てきたばかりの場所。それなのにこんなにも懐かしく、安堵するのは、私が子供だからだろうか?

王都へ入る城門の外に一旦降りる。流石にクリフィード侯爵のタウンハウスに飛龍全頭を置くことはできないからだ。城門の検閲所で確認を取ってもらい、飛龍達を預けなければいけない。

でもこんなに飛龍がきたことがないから預ける場所あるかな?ちょっと心配になる。なければ王城にも預ける場所はあるし……それにファーマン侯爵家のタウンハウスでも預かってくれることになった。

侯爵にいわせると快適な空の旅で、下さえ見なければ平気らしい。空の旅が気に入ってもらえたようで何よりだ。

「さて、一部は城門の龍舎に、一部はクリフィード侯爵邸、ファーマン侯爵邸のタウンハウス、あと残りは……王城に龍舎があるからそこへ頼もう」

コンラッド様がそういうと、みんなが手早く動いていく。私も何かしようと動くと、将軍とネイトさんに手招きされた。

「私達はファーマン侯爵のタウンハウスに行きますよ」

「侯爵様のタウンハウスでいいのですか?」

王城にもあるのに、と暗にいうと私達はコッソリ行くので少し離れた場所の方が良いといわれる。なるほど、そういうものか。確かにコンラッド様は堂々と王城に入れるけど、私は今、ラステア国の侍女。王城に堂々と入れる身分ではない。

「ひとまず休みましょ?もう朝になるし、疲れたでしょう?」

「はい、お姉様」

王都の上空を飛龍に乗る許可をもらい、私達はファーマン侯爵邸のタウンハウスに向かう。大きい飛龍は城門での預かりとなった為、侯爵自身は馬で向かうそうだ。

さあ次は!王城へ乗り込むぞ!!