軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

131.終わりよければ……?

ドエクス伯爵達は大慌てで屋敷の中へと戻っていく。その途中、足を絡ませて転ぶ者まで出るほどの慌てぶりだ。

私達がその姿を見送っていると、プッ、と誰かが噴き出した。そして徐々にその笑いの輪が広がっていく。

誰しもが、彼らの所業を苦々しく思い、そしてカティア将軍の行動を肯定したようにも思えた。とはいっても、絶対的に良いことをしたわけでもない。

どうするのだろうか?とファスタさんを見ていると、彼はコンラッド様に手を差し出し礼を述べたのだ。

「コンラッド殿下、大変素晴らしい鎮魂の舞をありがとうございます。きっと父も、そして共に亡くなった騎士達も喜ぶことでしょう」

「いいえ、こちらこそご迷惑を」

「いいんですよ。いい薬です」

ファスタさんと同様にファーマン侯爵も頷きながら同意する。この場の一番の上位貴族二人が良い、と判断したのだ。これ以上、他の貴族達が何かをいうことはできないだろう。例え腹の中で別のことを考えていたとしても。

将軍は二人に挨拶をし、そして剣をコンラッド様に返す。

「いやあ、久々に良い舞が舞えましたね!妹が応援してくれてると思うと、尚更力が入るものです!!」

その言葉にファスタさんと、ファーマン侯爵の二人がネイトさんと一緒にいる私を見た。ドキッとしたけれど、ファスタさんとは屋敷の中で何度か会っているし……きっと私だとはバレないだろう。なんせ普段とは全く髪の色も瞳の色も違うし。

そんな時、ファーマン侯爵と目があった。私はドキリとしてウロウロと目を泳がせてしまう。

「可愛らしい妹さんですね」

「城勤めを始めたばかりなので、今回の弔問隊に同行させたのです。失礼かとは思いますが、他国の葬儀に出る機会はないですし」

「いいえ。こんなに可愛らしいお嬢さんなら……お嬢さん、なら……」

「何か?」

将軍がニコリと笑う。いい澱んだファーマン侯爵は、私の顔をジッと見つめた。何だろう。もしかしてバレた?認識阻害が入っているから、バレるはずはないと思うのだけど……背中に冷や汗をかきながら私はニコリ、とちょっと引き攣った笑いを浮かべる。

「い、いえ。ちょっと知り合いのお嬢さんに似ている気がしたのですが……気のせいですな。うん」

「はははは。それはそれは……とても可愛らしいお嬢さんなのでしょうね!私の妹が一番可愛いですけど!!」

「はははは……」

将軍とファーマン侯爵はお互いに笑い合う。私は何ともいえない気持ちで二人の会話を見つめていた。本当にバレてない?私だってバレてない??

だって下手にバレて、ファーマン侯爵の身に何かあったらアリシアに顔向けできない。ドキドキしながら見ていると、コンラッド様がアリシアからの伝言をファーマン侯爵に伝えている。

これできっと私から話がそれるし!ファーマン侯爵ならアリシアの話を聞いたら、きっと私のことも忘れるだろう。だってアリシアのこと大好きだものね!!

そんなことを考えていると、将軍が私のところへ戻ってきた。

「ルーちゃん!どうだった?どうだった??」

「お姉様!すごく格好良かったです!!まるで剣が手の一部のようでした。鋭いのに、優雅でとっても素敵でした!!」

「本当に!?嬉しい〜!!」

将軍はそういうと私に抱きついてくる。グエッと内心で悲鳴をあげつつ、その力強い抱擁を我慢していると、ネイトさんがそっと救い出してくれた。

「カティア将軍、ルー嬢は将軍ほど頑丈じゃないんですから!目一杯抱きついて怪我したらどうするんです!!」

「え!?本当に?大丈夫??」

「だ、大丈夫です……お姉様……でも、本当に素敵でした」

それにスカッとした、と心の中で付け加える。流石にそれを言葉に出すのは場所柄憚られるし。

でもあんなに凄い舞は初めて見た。ファティシアでいう舞、は貴族が踊るダンスや一般の人達がお祭りの時に輪になって踊るダンスで、個人で踊るようなものはない。いや、私が知らないだけでもしかしたらファティシアにもあるのかもしれないけれど……

「それにしても……ちょっとヒヤヒヤしましたよ」

「そうか?みんな眉を顰めてたし、平気でしょ」

「そうですよ。それにこの場で一番の上位貴族が良しとしたんですもん。他の人達には何もいえませんよ」

「この場はそうでしょうけどねえ」

「もしも喧嘩ふっかけてきたら、向こうが悪いわけだし?その時はその時よ」

ニシシと将軍は悪い顔をする。禍根を残さないのが一番だけれど、この場合は仕方ない。仕方ないのだ。だって将軍やラステア国を馬鹿にしたのも腹が立つし、それに何より!死者を悼む場での暴挙!!ファスタさんを売国奴だなんていい方したことにも腹が立つ。

ファスタさんを売国奴だなんていうなら、自分達は何なのだろう!トラット帝国に擦り寄って、国に混乱をきたそうとしてるじゃないか!!

ぷくーとまた頬が膨れ、その頬を将軍が両手で挟んで空気を抜く。

「ルーちゃんのそれは癖ね」

「どうしても腹が立つとなります……」

「可愛いけど、あんまりしちゃダメよ?」

「はあい。お姉様……」

不承不承返事をすると、ネイトさんに「案外癖って見られているものですよ〜」といわれてしまった。つまりは、ルティアを知っている人には分かりやすくバレるということ。

その言葉にハッとする。

もしや将軍もそれをわかってて、私の頬を突っついたりしていたのだろうか?思わず将軍を見上げると、ふふふと笑われた。

「ルーちゃんのほっぺはもちもちね〜」

「お姉さま……」

「だってもちもち可愛い〜!」

将軍にほっぺをもちもちと揉まれながら、やっぱり違うのか?どっちだろう?とネイトさんに視線を移す。すると生暖かい目で見守られていることに気がついた。

「ネイトさん……」

「姉妹の仲が良いことはいいことです」

それもそれでなんか違うような?でも、今はこれでいいのかもしれない。ひとまず、ドエクス伯爵達は部屋に戻ったわけだし!

明日になったらまた何かいってくるかもしれないけど、その時はその時だ。

***

翌日ーーーー

朝も早くから、ドエクス伯爵達は王都へと戻っていった。

将軍がわざわざ見送りに出ると、ドエクス伯爵はヒッと悲鳴をあげて馬車に乗り込んだとか。朝食の席でそのことを教えてもらってちょっと笑ってしまった。

私達の話に聞き耳を立てていた他のラステアの人達は、流石に私みたいに笑ったりはしなかったけど。でも横を向いて肩を震わせているところを見ると、やっぱりおかしかったのだろう。

「まるで幽霊でも見たかのような驚きようでしたねえ」

「そんなに?」

「散々馬鹿にしていた相手に追い詰められたわけだしねぇ。自分達が特別だと思ってる人間ほど、突発的な事態に弱いわけよ」

はははは〜と将軍とネイトさんは二人して笑っているけれど、確かに前日、散々な目に遭わされた相手が笑顔で見送りに来たら怖いだろう。

また何かやられるんじゃ、と慄くのもわかる。

「そういえば、もう片方の王都からの使者はまだいるようですね」

「ギリギリで来た方ね……」

「お姉様?」

「アレは、結構腕が立つと思う」

「ほう?」

将軍の言葉にネイトさんの目がキラリと光った。将軍からして腕が立つ、ということは相当強い、ということだろうか?そんな強い人が使者としてカウダートまで……それは何か意味があるのかな?と首を傾げる。

「腕の立つ者でなければいけない理由があるんですよね?」

「ルーちゃん、目の付け所が違うわね!」

「でもその理由がわかりません……」

「んー多分だけど、奪われないため、じゃない?」

「奪われないため?」

「そっ。だから彼らは早々にカウダートを出ていった。ルーちゃん昨日、いってたでしょう?」

私はその一言で、昨日いった言葉を思い出す。そうだ。ドエクス伯爵達はフィルタード侯爵の指示で、ここに来たのでは?と将軍に話した。

その指示の内容はわからないが、早々に王都に戻ったということは……その任務が遂行出来なかったからか?

そのことに気がついた私は、将軍とネイトさんに顔を近づけてひそりと話す。

「……彼らの本当の目的は、ファスタ様に出されるであろう爵位を保証する手紙だったのでしょうか?」

「多分ね」

「ああ、だからこそ傍若無人に振る舞い続けたわけですね。王都からの使者が、自分達よりも力が弱ければ奪い取れますし」

「奪い取って、ファスタ様が爵位を貰えないように邪魔をするのでしょうか?でも王都に行ったらバレますよね?」

「手紙を偽造したものを持っていたとか……あとは、その手紙の真偽を確認しに王都へ向かっている間に乗っ取るとかね」

そんなことできるだろうか?と思ったが、偽造ぐらいは平気でやるかもしれない。そして確認のために、ファスタさんが王都へ向かったら、彼らは更に好き勝手にやっただろう。代理の当主だといって。

更にはファスタさんも同じように事故に見せかけて……そんな考えに思い至って私はゾッとしてしまう。

「もしかして……わざとギリギリに使者を派遣し、尚且つ文官である彼らには手の出せない者を送り込んだのでしょうか?」

「そうだといいわねえ」

ネイトさんの推察に将軍も頷く。私はそうでないと困る!と唇を尖らせた。

「ひとまず、書簡の人選は間違えなかったようですし。良しとするべきでしょう」

「それは、そうですけど……でもみんな困りました」

「なかなか難しいものなんですよ。人を選ぶって」

つまり短い時間でクリフィード領にとっていい者を選ぶのは難しいけれど、フィルタード侯爵が勝手に送り込んだことで、それに連なるフィルタード派を見分けることができたのかも?ってことなのかな?

ともあれ、ファスタさんが爵位を継ぐことで、カウダートはまた元の街に戻るだろう。それは良いことだ。

「さ、食事が終わったら龍舎に行きましょう!」

「はい。お姉様!」

急いで朝食をお腹の中に入れ、将軍と共に龍舎に向かった。門番さんに挨拶をして中に入る。すると、龍達がざわついていることに気がついた。

将軍は腰に佩いている剣に手を伸ばし、私を後ろに庇う。

「誰だっ……!」

その言葉に、ひょこりと顔を出したのはーーーー!!