軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.モブ王女、従者になる!? 1

リーナの提案。

それは、私が リ(・) ー(・) ナ(・) の(・) フ(・) リ(・) をしてファティシアに戻る。と、いうものだった。そもそも私とリーナの関係は、ただの王女と従者ではない。

リーナは背格好が私によく似ていて、髪の色や眼の色こそ違うが私の身代わりとなれる存在なのだ。髪と瞳の色を似せる魔法石を使い、メイクなんかで誤魔化せばもう一人の私の出来上がり、というわけだ。

今までリーナを自分の身代わりとしたことはない。ないけれど、彼女が私の行動をコピーできるように学んでいたことは知っている。

「リーナのフリをしてファティシアに戻るって……危険はないのか?」

シャンテのもっともな意見にリーナは「多少はあるでしょう」と答えた。でもその危険度は私自身が戻るよりも遥かに少ない。とも。

「大事なのは、ラステア国に姫様がいらっしゃることです。もしもこの件が、姫様を拐かし、トラットヘ連れて行くための手段であるのなら……姫様がラステアから動かないことが最大の守りとなります」

「その話からするなら、アタシはラステアから動いて欲しくないんだけど?」

「ですが、姫様の性格からして恩のある方が亡くなってそのまま何もしない、というのは考えづらいのです」

リーナの言葉にカーバニル先生はため息を吐く。

「……逆に何もアクションを起こさなかったら、秘密裏にファティシアに戻って来るかもしれないと、向こうに思われるかもしれないってわけね?」

「で、でも……戻らない可能性だってありますよね?」

アリシアが先生にそういうと、「性格を読まれてるのよ」と、先生はチラリと私を見ながらいった。

大事な人が亡くなって、何もしないでぼんやりとラステアにいることなんて、確かに私には無理だ。だからこそこうして話し合いをしているわけだし。

それも織り込み済みで向こうはクリフィード侯爵を……でもそこまでして私をトラットにやってどうするのだろう?

「ねえ、私が狙われる理由って、私をトラットにやりたいだけなのかしら?」

「……現状、そうでしょうねえ」

「それって魔力量が多いから?」

「ポーションを作るには魔力過多の土地と薬草、あとポーションを作るときに魔力がいるからでしょうし……魔力の多い子なら喉から手が出るほど欲しいでしょうね」

先生の言葉を聞いて私は軽く首を傾げる。

魔力量の多さなら、多分、私は多いだろう。それは理解できる。でも、魔力量だけでいうのなら……私でなくとも良くないだろうか?アリシアだってリーンだって魔力量は多い。いや、ファティシアの大体の貴族子弟はそこそこの魔力量を持っている。

そも、攫ってまで連れて行こうとするなら尚更、私じゃなくても良いはずだ。

「ポーションを作るなら、魔力があれば良いのよ。なら、下級貴族の子供とか、それこそ一般の人たちだって何人も集まれば魔力過多の土地が作れるでしょう?私という リスクの高い人間(王族の一人) を連れていかなきゃいけない理由がそれだけなのかしら?」

表向きの継承順位はライルが一位のままだし。正妃であるリュージュ様が失脚することもまずない。確かに私は三番目で、フィルタード派からすればどうでも良い存在の王族かも知れないけど……

私にクリフィード侯爵の後ろ盾が付いたとして、そこまで王城内の勢力図が変わるだろうか?警戒するならわかる。クリフィード侯爵を亡き者にして、自分達に都合のいい者に首をすげ替えたい気持ちも。

「ーーーー確かに、変、ですね。ラステアへの道中、命を狙われたので今度も絶対に姫様が戻れば狙われる、とは思うんですけど……そもそもそこまでして姫様を警戒する理由ってなんでしょう?」

「魔力量だけなら、言い方は悪いけど……フィルタード派の領内とか下位の貴族でお金がない人達をトラットに売る、こともできるのよね?だってその方が恩を売れるもの」

「下位の貴族の中には魔力はあれ共、商家の方がいい暮らしをしている場合もありますからね。口減らしで子供をトラットヘやる可能性もあるでしょうし、魔力量があればあるだけ高く売れるんじゃないですかね?」

シャンテと一緒にそんな話をすると、側で聞いていたアリシアは真っ青な顔色になった。もちろんファティシアで人身売買なんて許されていない。

許されていないが、トラットでは合法である。トラット帝国はたくさんの国を占領し、併合してきた国。そのせいか奴隷制も普通に残っているのだ。

フィルタード派の貴族の考えは、その子供達を見れば一目瞭然。王族に敬意を払うこともなく、一般からカレッジに学びに来ている子達を蔑ろにしている。

そんな人達が自分達の保身の為に、人身売買をしないとは言い切れない。結局の所、バレなければいいと思っているのだ。

どこそこの誰々が急に消えた、と言われても余程高位の貴族でもない限り探さないだろう。きっと適当に借金があった。とか、恋人にフラれた。とかそんな噂をばら撒いて、探さなくて済む理由をでっちあげる。それだけでいい。

でも高位貴族以上になるとそう簡単な問題じゃない。

探さないと後でお家騒動に発展しても困るわけだ。つまりどんな理由があろうとも、探さない理由にはならない。そう。確実に、探すわけだ。

つまり私が誘拐されたら、普通は探さないか?

「ねえ……私が、誘拐されてトラットに連れて行かれたら、普通探すわよね?」

「そりゃあ、探すわね」

「もちろんですよ。だって姫様なんですよ」

「探さない、という選択肢はまずないでしょうね。例え、崖崩れに遭ったとしても遺体は絶対に探し出すはずです」

みんながみんな、私を探すという。理由は簡単。私が王族の一人だから。もしも私が駆け落ちとかして、どこかでひっそりと暮らしたとしよう。

そして時は流れ、いつか私の子孫が生活に困って王都を訪ねた場合。その子供は確実に王族の一員として迎え入れられる。

王の一族のみが有する『蒼い瞳』

この瞳はどんな魔術式を使っても再現できない。似せることはできるし、蒼い瞳を隠すことはできても、そっくり再現することだけはできないのだ。もちろん蒼い瞳が本物か見分ける魔術式も存在する。

だけど、どうして再現できないのか?それだけは理由がわからない。

でも急に現れた王に連なる者を、そう簡単に受け入れられるかというと別問題だろう。その時に王女しかいなくて、現れた子が男の子だったら?

二人を結婚させる、という手もあるかもしれないけど一筋縄では行かない問題が発生するのは簡単に想像できる。

女王を戴くよりも、王を戴きたい、と思う者は多い。

「リスク、すごく高いわよね……」

「そうね。魔力量を諦めるなら、殺しちゃった方が楽ね」

「でも殺すっていっても、クリフィード侯爵が私に付いただけで?確かに後ろ盾になってくれたら心強いけど、派閥としてはフィルタード派の方が多いじゃない?」

「まあ、フィルタード派にはもう一つ侯爵家が肩入れしてるものねえ。それこそが最大派閥になり得た理由だもの」

「うちの国って実は結構、変わってるわよね……」

フィルタード派が派閥を作るまでは、派閥らしい派閥が存在しなかった。

理由は簡単。始まりの一族である侯爵家がそういったことに関心を示さなかったからだ。

爵位が下の者が上位の者を押し退けてまで派閥を作る、なんてした日には不興をかうのが目に見えている。だからこそ、議会での発言がある程度、自由にできるというのもあるのだが……

そんなことを考えていると、アリシアの表情がずっと青ざめたままなことに気がついた。アリシアは私と違って、どちらかといえば繊細で大人しい子だからこんな物騒な話に気分が悪くなってしまったのかもしれない。

「アリシア、大丈夫?顔色が悪いわ……」

「る、ルティア様……わた、私……フィルタード派の貴族が、ルティア様を排除しようとしている理由に心当たりがあるのですけど」

「え?」

「でも、その、あ、アレな……アレな……話なんです……」

アリシアはアレで、アレなんです!とアレを繰り返す。

その場にいたアリシアと私以外の人達はアリシアのアレ発言に首を傾げているが、私はアリシアが何を言いたいのか理解できてしまった。

そうか。そっちの理由があったのか!

すっかり失念していたけれど、確かに可能性としてはあり得る。アリシアと相談して進めている話だけど、表立って動いているのは私。

つまり向こうにとってみれば『私』がそうかもしれないと思われているのか!!

「ちょっと、アンタ達……バタバタと二人だけでジェスチャーで会話しないでちょうだい!狙われる理由があるなら、それを共有しないと話にならないでしょ?」

先生のいうことももっともなのだけど……これは告げていいものか?ロイ兄様がいない今、判断をするのは私、になる。

でも、うん。きっと、大丈夫な気がする。

先生も、シャンテも、ユリアナもリーナも大事な仲間なのだ。

だから、大丈夫。