軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97.転がった剣

「ちょっと!冗談キツイですよ!」

「アブブ、ちょっと考え無しな所あるけど、結構頼りになるんですよ」

「あれも仲間の為を思っての事なんです。許して下さい」

俺の大八車に寝っ転がっているアブブを豚と一緒に解体してくれってオヤジに頼んだら、めっちゃ怒られたんだけど。冗談通じねえのかな?

「筆頭が僕達に何をしたか忘れたんですか?それもあって冗談には思えません。」

・・・・・え?あれ?もしかして最低な三日間は俺のせいにされてる?お前らも喜んで脱いでたから同罪だぞ。俺等を怒れる男は唯一組合長だけだ。仲間の女は・・・まあ、十分その権利あるね。ごめんなさい。

「取り敢えずアブブを下ろそう」

そう言って仲間が大八車からアブブを下ろしたので、ようやく大八車が軽くなったぜ。

「オヤジ、いつも通り肉は一欠け残して全部売りで頼む」

「はいよ。そんじゃあ、大八車洗っている間に用意しておくからな」

そんな訳でいつものルーティンで大八車を水場に持って行って洗うんだけど・・・こいつら何でついてきてんだ?

「お前ら何でついてきてんだ?大八車の洗い方でも学びてえのか?」

「そんな訳ないじゃないですか。苦情は組合で聞くって言ったから待ってるんですよ」

「・・・・そんな事言ったか?」

言ったかな?そもそも苦情言われる事した?どっちかと言えば助けてやったと思っているんだけど?

・・・・うーん。見れば全員頷いているから言ったみたいだ。

「ったく、分かったよ!なら組合で待ってろ!見られてちゃ気になって仕方ねえ」

「分かりました。それでは組合で待ってます」

そう言うと未だに気を失っているアブブを背負って連中は組合に向かっていった。・・・・あれ?そう言えばあいつら荷車持ってねえじゃん。2級なら獲物積んで帰るのに必須だってのに、持ってねえって事は変な依頼でも受けてたのかな。

不思議に思いながらもじゃぶじゃぶ大八車を洗ってたら、大分ガタが来ている事に気付いた。

あちゃあー。これは新しいのに買い換えないと駄目だな。そうすると、馴染みの大工の所で発注かけて、出来上がるまで狩りはいけねえや。前は出来上がりに1週間ぐらいだったから今回もそんなもんだろう。・・・・大八車の代金考えると手持ちじゃ、1週間ダラダラ過ごすのは厳しいか。適当な護衛依頼でも・・・って俺2級だから護衛依頼受けれねえじゃねえか!そうすると採取依頼か・・・『腐れ花』依頼でも受けるか。あれは結構割がいいからな。

今後の事を考えながら大八車を洗い終えると、処理場の受付で札を貰い、まずは馴染みの大工の所に向かう。

「親方いるか?」

大工の家の前で何か彫っている見習いに尋ねる。

「親方は今、仕事中。お客さん、名前は?」

「ベイルって言うんだ。親方にベイルが来たって言えば分かってもらえるはずだ」

そう言うと、見習いは家の中に入っていった。どの職人の家の前にも大抵見習いが店番しながら作業しているから、こうやって見習いに頼むのが一般的だ。仕事場は家を抜けた奥にあるんだけど、勝手に入ると怒られるからな。

そうして見習いが親方を呼びに行っている間に、今さっきまで見習いが彫っていたものが地面に置いてあったので、何となくそれに視線をやると・・・

ハンコじゃねえか!ユルビルが組合長に彫ったハンコが広まったのか・・・どれどれ?・・・文字が何も彫ってねえぞ。・・・ああ、見習いは外の形だけ彫る練習って所か。

ハンコをマジマジと眺めていると見るからに暑苦しそうな親方が家から出てきた。

「おお!ベイル、久しぶりだな。お前が来たって事はまたか?」

「親方久しぶり。ご想像の通り、大分ガタが来てな。また新しいの頼む」

「ふむふむ・・・ああ、車軸にヒビ入ってんじゃねえか。よく折れなかったな。ああ、この辺ももう限界だな。こりゃあ、修理よりも作り直した方がいいな」

挨拶もそこそこに親方は俺の大八車の状態を観察する。聞こえてきた言葉から、俺の予想通り、かなりガタが来ていたみたいだ。

「やっぱりベイルの言う通り、新しく作った方がよさそうだ。値段はいつも通り20万。今回も弟子にやらせていいか?」

「親方が最終チェックしてくれるなら構わねえよ。そんじゃあこれが前金だ。足りない分は完成してからだ」

そう言ってさっき解体場から貰った札を渡す。

「相変わらずだな。札で支払う奴なんてお前ぐらいだぞ?」

「組合で換金なんて弟子のいい経験になるんだろ?」

「まあな。大八車もだけど、一人前かどうか見定める良い試験になるぜ」

俺の依頼する大八車制作はサイズ的に弟子の腕が一人前かどうか見るのに丁度良いらしい。これで合格すれば、親方の本来の仕事である荷車制作を一人で任されるてんで、毎回気合を入れて作ってくれる。腕はそれで確認出来る。

後はメンタル的な所だが、それも俺が渡した札の換金で試せるらしい。何といっても換金するのに組合に行かなきゃならねえからな。組合員なら何とも思わねえが、一般人からすれば組合はスラム並に立ち寄りたくない場所だそうだ。

・・・・酷くねえ?

まあ、そんな場所に行って、換金して大金持って帰って来いって言われたら誰だって嫌だろう。どう考えても組合員に絡まれて金を巻き上げられる未来しか見えねえからな。そんで帰ってから親方にぶん殴られるって所までは誰でも想像できるだろう。

ただ、俺等の評判があまりにも悪くて知られてないけど、組合員は滅多な事じゃ一般人に絡まない。特にここコーバスはティッチ先生とその愉快な仲間達がいるからな。そんな話があれば組合員時代からとっ捕まえて兵士に突き出していたような連中が今は兵士だ。みんな昔以上に気を付けている。

喧嘩ぐらいならまあ、一晩牢屋にぶち込まれるぐらいですむが、金を奪うと最悪奴隷落ちだから、コーバスではここ数年組合員が一般人から金を奪ったなんて話は聞いた事が無い。ただ、組合員でもないチンピラやスラムの連中と一緒くたにされているから、そいつらが起こした強盗や殺人も何故か組合員がやったみたいな噂が流れるんだよ。

で、そんな組合で大金を換金して無事持ち帰れれば、そこそこ度胸もついてメンタル的にも大分強くなるって訳だ。

「そんな事よりも見習いが彫っているのはハンコだろ?どうしたんだ?」

「ああ、これかギルドからの依頼でな。大工職人全員に発注されたんだ。けど俺は車大工だぜ。こんな細々したもん作ってられるかってんで、見習いに作らせてる。まあ、見習いにはちょうどいい仕事だ」

「文字はどうすんだ?文字彫らなきゃハンコにならねえぞ?」

「俺等は形だけ作れって依頼だからな。彫るのはギルドからまたどこかに依頼があるんじゃねえ?」

その都度ハンコ作って名前彫るんじゃなくて、形だけは先に作っておくのか。そっちの方が効率はいいな・・・・・ってあれ?それって結構売れる見込みがあるって事?発案者の俺は何も聞いて無いけど。これは後で組合長に詳しく話を聞きに行かねえとな。

「出来上がりはいつも通り7日後だ。遅れそうなら組合に伝言残しておく」

「分かった。そんでこの古い方の大八車はそっちで引き取ってくれ」

「ああ、弟子達の見本に使わせてもらうからその分代金から引いとくぜ」

まあ、この辺もいつもの流れだな。親方とも最初こそ色々あったが、今じゃ慣れたもんだ。親方にまた来ると言ってから俺は宿に向かった。

「ずっと待ってたんですよ!」

翌日組合に行くと、何故か昨日の連中に怒られた。その姿を見てベテラン連中は指差して笑ってやがる。くそー、なんて性格の悪い奴らばっかりなんだ。

「えー。俺昨日組合行くって言った?」

「言いました。俺等に組合で待ってろって言いました!」

「ほら見ろ!待ってろとは言ったが、俺がいつ行くとは言ってねえぞ!時間の指定はしていなかった、だから俺が怒られる理由にはならねえ」

何かで読んだ言い訳を口にする。自分で言っておいてアレだけど、こんな言い訳したら友達無くすよな?

「屁理屈過ぎません?どんだけ自分の非を認めたくないんですか?」

「ハハハ、そのバカは自分の非を絶対認めねえからな。鳥の糞落とされたもんだと思って諦めろ」

横からアウグが笑いながら会話に割って入ってきやがった。こいつにだけは言われたくねえ。

「アウグにだけは言われたくねえよ!お前この間の牢屋でやらかした時、謝らなかっただろうが!」

「謝っただろ!耳掃除ちゃんとしとけ!」

「「「謝ってねえよ!」」」

アウグの言葉にキレ気味の連中が突っ込みを入れる。あれで謝ったと思っているアウグはやっぱり頭おかしい。

「あれだけの事してあれで謝った事になる訳ねえだろ!」

「俺はあん時、匂い直撃ポジションだったんだぞ!あれで謝ったなんて認めねえからな!クソギレ野郎!」

「ああ?おい、トーチ!今何て言った?俺を変な渾名で呼ばなかったか?」

「クソのキレがいいって自慢しているお前に相応しい渾名だろ?それともキレクソ野郎の方が良かったか?」

「てめええ!!!」

あーあ。喧嘩始めちまったよ。朝から元気だなあ。

「ほら、お前らが煽るから喧嘩始めたじゃねえか」

「煽ってませんよ!!何で今の流れで俺らがやったみたいな感じになるんですか!!」

こいつらも自分の非を認めねえ奴らだなあ。

「まあいいや、それで何の用だ?」

「いいんですか?」

リーダーの何とかって奴が俺の後ろに視線を送る。俺の後ろではアウグとトーチがドッタンバッタンうるせえけど、組合の運動会はいつもの事だ。

「ああ、気にすんな。いつもの事だ」

「・・・・・・」

みんな黙っちまった。昨日アレだけグチグチ言っていたアブブ君が、今日は静かなのは何でだろう?黙っているならもういいか?

「ん?用はねえのか?だったら俺依頼見てくるから」

「あ、あります!用はあります!ちょっと待って下さい」

「何だよ、あるならさっさと言えよ。こっちは暇じゃねえんだぞ」

「・・・・ねえ、文句言おうとしていたのに、こっちが悪い風になってない?」

「そ、そうだな。何でこうなる?」

「しかも全然関係ない人達が喧嘩まで始めてる。訳が分からないよ」

「言っておくが昨日の件で苦情は聞かねえぞ。どっちかと言うと逆に感謝して欲しいぐらいだ」

「な!?」

「はあー?」

「ふざけんなよ!てめえ!!」

俺の言葉にようやくアブブ君が怒ってくれた。うん、そっちの方がアブブらしいぞ。・・・・まあ絡んだのは昨日が初めてなんだけどね。

「10人・・・・戻ってきてねえんだろ?」

朝、宿で誰かが話していたが、昨日笛を聞いても撤退しなかった10人がまだ戻ってきてないそうだ。

「っ!!」

「くっ!!!!」

俺が何を言いたいか分かってくれたようだ。

「あれで助けたって言えるのかよ!!」

「お前、アブブって言ったな?ならお前はあの時撤退しなくても、大丈夫だったって言いてえ訳だ?」

「・・・・・・」

「黙ったって事は分かっているみたいだな。別に『大丈夫じゃなかっただろう』って考えるのはおかしくねえ、逆にそう考えられて偉いって褒めてやるよ。でも本当なら笛の音聞いた時点で『撤退する』って考え無いと駄目だけどな」

「あの時点だと判断に迷うのは仕方ないのでは?」

「迷うな、迷うな。今度から笛3回は何が何でも撤退って思っておけ」

「でも笛3回は撤退しなくてもいいんでしょう?」

「規約じゃそうなっている。ただお前らはまだ2級だ。そうやって迷うのはその街で最高の級になってからにしろ」

俺の言葉にリーダー他数人が何か分かった顔に変わる。

「そ、そうか。あそこにいたのは僕達だけじゃなかった。2級もいれば3級も、もしかしたら4級もいたかもしれないんだ。その事を全く考えてなかった」

「そうそう、だから3級は全員迷う事無く撤退したんだ。あの場に4級がいたかどうかは分からねえ、いても撤退を判断したかも知れねえ。下手したら最初の撤退合図は4級が出したのかもしれねえ。そうなるともう撤退しか選べねえよ。一攫千金狙って進む選択して死にましたじゃ、シャレにならねえだろ」

「でも、それなら笛3回は撤退で良くないですか?」

「それはそれでゴチャゴチャうるせえ事言う奴がいるんだよ」

そう言ってアブブに視線を向けると、思い当たるのか顔を赤くして視線を逸らす。

「だから各自の判断になって、どこにも誰にも文句は言えねえ。揉めるのはパーティーメンバーでだけだ。勝手にやってろって感じだけどな」

俺の言葉に森の中で揉めてたのを思い出して全員顔が赤くなる。

「『迷えば撤退』組合員の基本だぜ」

・・・・・・・・・

あれ?何で不思議そうな顔してんだ?

「あ、あの筆頭・・・たまに聞いた事無い事をさも当然のように言ってますけど、それ何ですか?」

「そうそう、笛3回も初めて聞いたし!」

・・・・あれ?どう言う事?そう言えばこいつら注意書きのメモに、そんな書いてないとか言ってたな。

不思議に思いながらリリーの所に行き、注意書きのメモを貰って連中に見せる。

「ほら!見てみろ笛の事とかちゃんと書いてあるだろ!」

「・・・・本当だ。・・・これ私達が読んだの似ているけど微妙に違くない?」

「ハルドンで読んだのと違うな。笛の事なんか初めて読んだぞ」

「『迷えば撤退』・・・ちゃんと書いてある」

うん?こういうのってどこの組合でも共通したものじゃないの?

「なあ、リリー。あの注意メモって街によって微妙に違うのか?」

「それは当然違いますよ。各街独自ルールがありますからね。分かりやすいのだと、海や湖の近くの街だと、ここからここまでは漁師の縄張りだから狩りや漁禁止とか、王都だと騎士団演習場周辺立ち入り禁止とかですね」

おお!言われてみれば海の無いコーバスで海の注意事項なんて書かれていても意味ねえもんな。

「それなら笛の決まりが他の街に無いのは何でだ?あれは共通でも問題ないだろ?」

「あれは組合長が現役時代に決めたクラン内のルールをコーバスに持ち込んだんですよ。本部にも共通のルールとするように打診していますけど良い返事は返ってきません。悪用されるかもだそうです」

・・・・ああ、そうか。やりようによっては、笛聞いて撤退したパーティーが狙っていた獲物の横取りとか出来そうだな。コーバスならそんな真似すれば速攻で特定されるけど、人が多いと特定が難しそうだ。

「って訳だ。リリーの話聞いてたか?」

「はい、よくわかりました。色々教えて頂きありがとうございます」

お!このリーダー礼儀正しいな。どこかのベテランパーティのリーダーに見習わせてやりたいぜ。主にアウグとかペコーとかハイーシャとかだな。

「そう言えばまだ名乗ってませんでした。僕は『転がった剣』のリーダーのフェイローと言います。よろしくお願いします」

そう言って頭を下げるフェイロー。うん、取り敢えずお前らのパーティ名それでいいんか?相変わらずこの世界のパーティー名変な名前が多いな。そのフェイロー君。特徴は肩で切りそろえている金髪が特徴かな。後は全部普通だな。

「アブブだ。昨日は悪かった」

青髪のツンツン頭のアブブ君。昨日の勢いはどこ行った?特徴的なのは背中のデカい大剣。2級依頼じゃそれ邪魔じゃねえ?もうちょい取り回しいい武器に変えたら?

「ティモです。ウチのメンバーの頭悪くしないで下さいね」

君は色は緑で違うけど髪型はサクラちゃんだな。サクラちゃんは剣士タイプだけど、ティモは深緑のローブ着ているから魔法使いタイプだな。あと頭悪くするって何だ?俺そんな魔法使えねえぞ!

「ティモ失礼ですよ。筆頭は多分そこまで考えてませんよ。おっと、イシュカと言います。よろしくお願いいたします」

おう、君見た目参謀タイプだから魔法使いか?ちょっと見ただけじゃ良く分かんねえ。ただ、言い方は丁寧だけどすげえ失礼な奴だってのは分かったぞ。長い赤髪が特徴だ。

「ダイサです。よろしくです」

素朴な顔で少しガタイの良いダイサはデカい盾持っているから見ただけで盾使いって分かるな。ただ、ゲレロ達と違って盾以外の防具はまだ少しみすぼらしい。獲物は・・・おお!俺と同じこん棒じゃねえか!こん棒はいいゾ!

「ラン。よろしく」

こいつは弓使いの斥候系だな。眠そうな目に猫耳が特徴の女だ。獣人系って女は斥候が多いのは鼻や耳が良いかららしい。

しかしこうやって見ると一人役割分かんねえのがいるけど、中々バランスの取れたメンバーだ。敢えて言えば後衛が3人いるから、盾がもう一人欲しい所か。

「うん?これで全員か、そんじゃあ、俺の番だな。俺は・・・」

「「「「「「あ!いらないです。よく知っています」」」」」」

・・・・・・・

自己紹介ぐらいさせてくれよー。