軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91.オーク捕獲依頼③

・・・・!!!

気を抜いていたつもりは無いが、近くに何かの気配をいきなり感じたので慌てて武器の方に飛び、こん棒を拾って警戒する。視界に入るゲレロは盾を構えてゆっくりと愛用の槍の方に移動している。

「この辺だと思うけどなあ・・・」

そんな警戒している俺達の前に、呑気に呟きながら姿を見せたのはザリアだった。魔物かと思って焦って損したぜ。

そんなザリアだったが俺達に気付くと、一瞬安心したような顔を見せた直後に動きが止まった。

「何だ、ザリアじゃねえか」

ゲレロは盾を構えたままだが、少し警戒を緩めてザリアに話しかける。

「ヒぃ」

だというのに、ザリアは軽く悲鳴をあげて一歩後ろに下がる。その顔はどんどん青ざめていく。

「おいおい、どうした?顔色悪いぞ?」

そう言いながらゲレロが一歩足を前に踏み出した瞬間、

「ヒィイイイイイいい!!!へ、変態だああああああああああ!!」

おかしな事を叫びながらザリアの姿が消えた。あいつマジで速いな。

「何だ?あいつ、失礼な奴だな」

失礼な事を言われたゲレロが呆れているが、俺は何でザリアがあんな事言ったかすぐに分かっちまった。自慢じゃねえが、あいつにトラウマ何度も植え付けた経験があるからな。

そんでその理由なんだけど、見ただけで一目瞭然。下半身丸出しのベテラン組合員二人と何故か鎖で縛り付けられてるオーク。更にそのオークのオーク君は全力だしてるんだもん。どっかの県北の土手にも劣っていない光景を見ればザリアのあの反応は当然だろう。

「ザリア、どうしたんだぜ?・・・・ええぇ」

「ザリア、大丈夫・・・・きゃああああああああ!!」

「・・・・おいおい、何だこのヤバい光景、戦場でも見た事ねえぞ」

「ザリア。どうし・・・こ、これは?」

「ザリア、大丈夫ですか?・・・・うーん?」

まあ、ザリアが大声あげて逃げればこいつらも慌てて寄ってくるよな。そんでこの光景を見た反応がこれだ。・・・あれ?カルガーいねえな。・・・げ!『ジジイ貴族』がいる、アーリット達まだ一緒に行動してんのかよ。

「前にも言ったが、ベイルさん、こういうのはもっと人に見られない場所でやろうぜ!おーい!エル!待ってくれ」

クイト君は相変わらずだ。それだけ言うと、真っ先に逃げ出したエルメトラ神を追いかけていった。

「戦場じゃあ溜まった奴らが色んな工夫してたんだが、オーク・・・っていうか魔物は初めて見たな。マジで噂通りコーバスの組合員ってのはぶっ飛んでんな」

『ジジイ貴族』は何か感心した様子で、その場を後にした。色々勘違いを正したい所だけど、貴族に絡みたくねえから言われるままでいいや。

「うーん。これは難しい。どうすればこうなるのか上手く理解出来ない。みんなに相談しようかな」

しようとすんな。信じて貰えないだろうけど、これオーク捕獲しようとしただけだからな。

「うーん。アーリットの言う通り、これは難解ですね。先生、このおかしな光景はどういう卑怯技なんでしょう?」

違えよ。逆にこの光景で卑怯技だと決めつけるエフィルは頭おかしいんじゃねえか?

「お前らには信じて貰えないかもしれないが、今、オークの捕獲依頼受けててな」

「ハハハ、ベイルさん、面白い冗談です。答えを教えてくれるつもりはなさそうですね」

「ほう、そうやって答えをはぐらかす作戦ですか?卑怯ですね」

いや、すぐに信じてくれるとは思ってねえよ。思ってねえけどこいつら話聞く気全くねえだろ。

「いいですよ、この難問必ず理解してみせます。エフィル、行こう。みんなとはぐれてしまう」

「宿題にしておいて下さい。必ず先生の意図を見抜いてみせます」

そう言って二人仲良く森の中に走って消えていった。

もうやだ、あいつら。

「やっぱりベイルさんに頼んで正解です。今後ともよろしくお願いします。あ!大冒険の話はいらないですよ」

あの後、ゲレロと何とも言えない空気の中、北村に戻ってきたんだが、報告を聞いたゴドリックは嬉しそうだ。ただ、殴られた痕が増えてるのが気にはなるけど、多分聞いても答えてくれないだろう。

「捕まえてきた後で何だけど、オークの管理なんて出来るのか?あれでも3級組合員の獲物だぞ?」

ゴドリック含め弟子たちも見た感じ、全く戦えそうには見えない。

「そこはゴブ一にお願いするつもりです」

ああ、そっか、ゴブ一がいたな。あいつならオーク一匹ぐらいどうとでも出来るか。

「それなら大丈夫そうだな。それじゃあ、オークを解放しに行ってくる。みんなは危ないから上で見ててくれよ」

本当は色々聞きたい事あるんだけど・・・・

「・・・・何か?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

今はリーゴがいるからね。怖くて何も聞けないよね!

「もういいのか?」

庭に行くと見張っていたゲレロから声をかけられた。念の為2階を見ると、ゴドリック達は準備が出来ているようだ。

「ああ、大丈夫だ」

って事で二人で鎖や手枷足枷を外していく。このオークも疲れてんのか暴れたりしなかった。そして解放した所で、俺達は距離をとり、後はゴブ一に任せる。タロウ達には手を出さないで大人しくしておくように言ってあるから大丈夫だ。

「ギャギャ。ギャア!」

「ブホ!ブオオオ!ゴオオオ!!」

意思疎通がちゃんと出来ているのかゴブ一とオークがなにやら喚き合っていたが、突然オークが立ち上がり、ゴブ一に殴り掛かった。

ただ、俺達の思った通りゴブ一は強かった。殴ってきた拳を片手で軽く受け止めたゴブ一は、お返しとばかりにボディに一発。

それだけでオークは地面に倒れこんだ。

「強えええええ」

「力だけで言ったらゴブリンキングよりオークの方が強いだろ。なのに何でワンパンでオークが沈められてんだ。ゴブ一の強さおかしくねえ?」

ゲレロもゴブ一のおかしさに気付いたか。見た目ゴブリンキングだけど、あいつ魔法使えるんだよ。多分誰も見た事ないゴブリンキングの上位種に進化したと俺は思っている。

その原因は多分『クロの血入りポーション』。カルガーに聞いたらジロウ達は魔法使えないって証言もらったからな。それが『クロの血入りポーション』飲んだ後、土魔法使ってたんだ。だからゴブ一も魔法使えるようになったんだろう。

そんでこいつらが魔法使えるって知っているのは多分俺だけ。まだ魔法使う場面が俺と戦った時以外無いんだろう。タロウについては知られているけど、普通のレッドウルフも魔法使うからな。

そんでジロウ達はタロウと別方向に進化していると思っている。多分こいつらも新種だ。

話を戻す。

しばらく倒れこんでいたオークだったが、あの一撃でしっかりと上下関係を理解したのか、立ちあがるとゴブ一に何かを喚いて頭を下げた。

それを聞いたゴブ一は満足げに頷いたので、躾は終わったらしい。そこからはタロウ達の所へオークを連れていき、紹介を始める。ただ、タロウ達は全く興味がないのか一度だけオークの匂いを嗅いだら、それで終わりだった。

そんで次は俺の方にオークを連れてきたゴブ一は、いつものように俺の前で膝をつく。

「ギャギャ!!」

多分オークにも同じようにしろって言ってんだろう。不機嫌そうな声で喚くと、戸惑いながらもオークが俺の前で膝をついた。

親の仇ぐらいに思っている憎い相手を目の前にしても、ボスの命令が優先なんだな。オークも群れで生活しているから当然と言えば当然か。

そんな事を考えていたら、能天気な犬馬鹿の声が聞こえてきた。

「みんなー。私が来たっすよ!外に散歩行くっす」

そんなカルガーの声が聞こえた瞬間、何故かオークが大興奮してカルガーに向かって駆け出した。

「ふぇ?」

当然カルガーはオークがいるなんて思ってねえから、理解できてなくて呆けている。そこに赤と茶色の影が現れた。タロウ達だ。一瞬で囲みカルガーの姿が見えなくなる。多分オークからカルガーを守るつもりだったんだろう。あのデカさの癖に動きが滅茶苦速え。

そっちに気をとられたが、オークに視線を戻すと、既にオークはゴブ一によって頭を地面に叩きつけられていた。

「ギャアギャ!!!!」

「ブホオオオオオ!!!」

うーん、何言っているか分からねえが、ゴブ一が怒っているのは確かだ。オークの頭を何度も地面に叩きつけているからな。教育的指導にしてはかなり激しい。

「おい、ベイル。カルガー連れて一度部屋に戻るぞ。このままじゃオークが殺される」

「お、おう?どう言う事?」

「ティッチに聞いたがオークはパーティに女がいると興奮するんだとよ。それで女ばっかり攻撃しかけるらしいぜ」

「ああ、そう言う事か。だからカルガーが来たら興奮したのか」

聞いた事のあるオークの習性考えたら、不思議じゃねえか。

「多分そうだろう。あんな体でもオークにとっちゃカルガーは女として見て貰えるみたいだ。良かったなカルガー」

「お?なんすか、ゲレロさん。自分来て早々喧嘩売ってるっすか?」

聞こえていたのかカルガーが盾を振りかぶってゲレロに近付いてくる。

「ほら、詳しい説明は部屋でしてやるよ」

カルガーに盾でどつかれてんのに、ゲレロは気にした様子もなく、俺達を部屋に促す。痛くないのか?

「・・・って訳だ」

「うへえ。オークは自分もちょっと・・・出来れば隔離しておいて欲しいっす」

話を聞いたカルガーは心底嫌そうだった。オークだから仕方ないね。

「すみません。カルガーさん、出来ればそうしておくつもりですが、万が一があるので、庭に行く時は一度2階から確認して下さい」

「ゴドリックさんがそう言うなら仕方ないっすね」

そうそうここはゴドリックの家だ。そんでタロウ達もゴドリックのもんだ。俺達がああだこうだ言える立場じゃねえんだな。

「それでは私達は今からオークの検証がありますので、ここで失礼しますよ。カルガーさん、護衛でタロウ達が必要なので、今日の散歩はすみませんが・・・折角きてくれたのに申し訳ない。それとベイルさん達はくれぐれも今回の特別アイテムの件は誰にも言わないで下さい。学会発表前に真似されたら困りますからね」

いや、多分誰も真似しねえよ。そもそも提供者が見つからねえんじゃないか?

「・・・特別アイテム?」

「チッ!!!」

おっと、カルガーそれに触れちゃいけねえよ。リーゴがキレちまう・・・いや、もうずっとキレてんな。

「・・・ど、どうしたっすか、リーゴ?」

「何がですか?」

「・・・え?舌打ち・・・・」

「何がですか?」

「ええぇ・・・」

困ったカルガーが周りを見るが、俺達全員黙って首を振るだけだ。リーゴが怖いから迂闊な事は言えねえ。

「カルガーそれは依頼に関わる事だから話せねえんだ。だから聞くな」

「そ、そうっすね。ゲレロさんの言う通り聞かない事にするっす」

お!カルガーも空気読んだか。

「さて、そんじゃあ、ベイル。俺達も行くか」

話が終わると、ゲレロが気合を入れながら立ち上がる。

「だな、俺達にとっちゃこっからが本番だ」

俺も負けじと気合を入れる。多分アーリットが素朴な感じで馬鹿共に今日の出来事を話しているだろう。あいつら面白いネタがあると喜んで揶揄ってくるから、オークより性質悪いんだよ。

「何でそんな気合いれてるっすか?後は組合行くだけっすよね?」

「詳しい事は言えねえ。ただ、これから組合で醜い争いが起きる。だからカルガー、聞きたくなければ組合には寄らず真っ直ぐ家に帰れ」

「実家王都なんすけど・・・。っていうかまた何かしたんっすか?」

呆れた目で俺達を見るカルガー。

「だから詳しい事は言えねえ。聞いたら後悔するぞ」

「そう言われたら、余計気になるじゃないっすか。タロウ達の散歩無くなったんで自分もついて行くっすよ」

俺とゲレロの忠告も聞かずカルガーはついてくるらしい。

ここで素直に忠告を聞いておけば、カルガーは回避出来たんだ。

後に『コーバスの歴史上、最低な三日間』や『一番きったねえ出来事』等と呼ばれる悪夢をな。