軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88.昇格と降格

翌日、俺は一張羅を買った店に出向き、ビラビラをつけてくれるように依頼した後、組合でダラダラ過ごしていた。まあ、いつもの事だ。いつもと違うのは受付嬢や女組合員が良い匂いさせているってぐらいだ。平和的に仲良く分け合うって事で決着がついたらしい。

「ハハハ、あいつら3日は野宿か、ざまあねえな」

昨日俺とやり合った連中は腐れ花の臭いで宿から宿泊拒否されたらしい。これで3日は街の外で野宿が確定した。

「でも、お前腐れ花はやり過ぎだろ」

昼過ぎに姿を見せたゲレロが呆れたように、注意してくる。

「あいつら、俺に肥溜めの匂いがお似合いだって言ったんだぞ。お前らなら許せるのか?」

「・・・・・悪い。流石にそれはあいつらが言い過ぎだな」

「俺も怒ると思うけど、流石に3日野宿は可哀そうだろ。普通に喧嘩で終わらせればよかったじゃねえか」

今日は2レースで見切りをつけたトレオンにも注意される。二人からそう言われると、流石に俺でも悪いか?ぐらいは思っちまうな。今日あたり野宿している所に酒でも差し入れしてやるか。それで許してくれるだろ。

「本当に君たちは喧嘩ばっかりだねえ。飽きないの?」

良い匂いをさせるモレリアが、エール飲みながら呆れたように聞いてくる。

「したくてしてんじゃねえよ。あいつらが殴り掛かってくるから仕方なくだ・・・・お?何か発表あるみたいだぞ?」

いつもの面子でダラダラ話していたら組合長が姿を見せて、なにやら発表のポジションに立つ。それだけで慣れている連中は何か発表があると理解し、押し黙る。

「よーし!お前ら!今から嬉しい発表がある。この街に新たな4級組合員が誕生した!拍手!!!」

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

いや!お前ら拍手しろよ!

「ったくお前らひねくれてんなあ!折角俺の晴れ舞台だってのに!って言っても組合長、俺は4級に上がらねえって言ってただろ!悪いが辞退させてもらうぜ」

「・・・・・・いや、お前じゃねえよ」

はあ?俺じゃねえの?4級にあがれるの俺ぐらいしかいねえだろ。後はだらだら日々過ごしている駄目組合員ばっかりじゃねえか!

「何でお前だと思ってんだよ!ベイル!」

「お前が4級なら俺等も4級だよ!」

「筆頭のあの自信おかしくねえ?」

「やっぱりあの人ヤベえよ」

アレー?こいつらも俺が昇格すると思ってねえの?

「ったく変なチャチャが入ったが、4級になるのはアーリット達『全てに打ち勝つ』の連中だ。かなり早い・・・っていうより恐らく俺の知る限り最速で4級になったが、お前らもあいつらの日頃の行い見ているから文句はねえだろ」

「・・・・・ああ、まあ、あいつらならな」

「マジで頭おかしいぐらい働いていたもんな」

「しかも俺等の借金返済無償で手伝ってくれたからな。俺は異論ねえ」

組合長の言葉に全員納得した顔をする。いや、確かに頭おかしいぐらい働いていたし、無償奉仕とか訳分かんねえ事してたから、こいつらが納得するのも分かるぜ。ただ、俺はそんな点数稼ぎで4級にあげるのは反対だ。

「いや、俺は納得出来ねえ!」

「よーし!誰も反対する奴はいねえな」

・・・おーい。組合長ってクロの血入りポーションで目治ったよな?目の前で手を挙げている俺が見えねえの?・・・・・無視しないでくれえ。

「そんじゃあ、これで解散だ。・・・・・そうだベイル。お前は2級に降格な。しばらく反省しろ」

最後の最後に組合長の奴とんでもねえ爆弾落としてきやがった。俺が降格?意味分かんねえんだけど?腐れ花の採取依頼達成しただろ!

「ふざけんなよ!何で俺が降格なんだよ!依頼ちゃんと達成したじゃねえか!」

「達成したがその後が問題だ。喧嘩程度ならまだギリギリ許せたが、流石に腐れ花のエキスを組合内でまき散らしたのはアウトだ!喧嘩に手持ちの道具使うの禁止だって知らねえ訳ないだろ」

・・・・・・・・・・あ。

ああああああああ!

「その様子じゃ気付いてなかったみてえだな。確かに俺もあいつらから抗議受けなきゃ気付かなかったからな。・・・・・取り敢えず半年ぐらい2級で真面目に働け」

「あちゃあー。しまったなあ。あれも使っちゃダメなんだ。言われてみれば確かに駄目だよなあ。・・・まあ、しょうがねえか」

言われて怒ったけど理由を聞けば納得だ。そりゃあ、確かに俺が悪いな。こういう時はごねても時間の無駄って分かっているから、俺は素直にその処分を受け入れるぜ。

「あーあ。ベイル。お前まーた落ちたのか」

「ハハハハハハ!落ちちまった。まあ、しょうがねえ」

「これで『4落ち』か。前代未聞じゃねえのか?」

「『4落ち』と『3落ち』じゃ別に何も変わらねえと思うけどな。・・・いや、これって結構レアなんじゃね?なあ、トレオン、俺の員証見るのにいくらなら払うと思う?」

「商人なら話のタネで100ジェリーぐらいなら払ってくれるんじゃねえ?」

100ジェリーか。エール一杯分だけど、まあ見せるだけだからアリっちゃアリか。

「2級じゃ食べていけないだろう。僕のパーティに入るかい?」

「ぜってー嫌だ。お前らのパーティ女しかいれねえはずだろ!それにシリトラとミーカが絶対反対する」

当然、こいつらも他人事だから特に大きなリアクション見せずに、適当に話題に乗って話をしてくるだけだ。それを俺が適当に返す。

「ベイルの馬鹿はまた落ちたのか。まあ、組合内で道具使えば仕方ねえか」

「いやー。俺も腐れ花のエキスがアウトだと思ってなかったぜ。よく考えれば『香辛料爆弾』がアウトだから臭いだけって言っても駄目なもんは駄目って事か」

「2級か。・・・・別に級が変わろうがあの馬鹿は何も変わんねえだろ」

ベテラン組はこんな反応だ。俺もそっち側だったら多分そんな反応だな。けど、どうも新人や移籍組は何か気に入らないらしい。

「ちょっと!何でそんなにのんびりしているんですか!降格ですよ!降格!」

「筆頭はもうちょっと、悲観したり、反省したりしないんですか」

「こういう時、先輩達なら落ちた事を揶揄いに行くはずなのに、何でそんな反応なんですか?」

ええー。何、こいつら?何でそんな騒ぐの?別に珍しい事じゃねえだろ。

「お前ら何言ってんの?『4落ち』ってのは珍しいけど降格なんて珍しくねえだろ」

「「「「「珍しいですよ!!!」」」」」

アウグの言葉に新人や移籍組が声を合わせて反論する。息ピッタリじゃねえか。

「あれ?そうだったか?『1落ち』ぐらいその辺転がっているだろ。おーい。お前らの中で降格した事ある奴手を挙げろー」

・・・・・・・・?

あれ?俺以外誰も手を挙げないな。何人か降格した奴いなかったか?

「組合から『注意』処分を受けた人は多いですけど、実際『降格』処分を受けたのはベイルだけです」

話を聞いていたシリトラが口を挟んできた。『次は降格って言われたぜ。ワハハ』ってのは良く聞くが、実際に降格したってのはいなかったか?

「あれー?そうだったか?それじゃあ『注意』受けた事ある奴手を挙げろ」

アウグの言葉にベテラン組の大半が手を挙げる。注意って事はサボっていたって事だろ。お前ら真面目に働けよ!

って突っ込んだけど、まあこんなもんだろ。大金が入れば無くなるまで遊び回る奴、余所の街にすげえテクの娼婦がいるって聞けば、わざわざ確認に行くような奴ばっかりだからな。一月仕事しねえなんてのは珍しくねえ。だから俺は注意は注意だと思ってた。それが規約の『注意』だなんて俺は思ってなかった。だいたい降格なんて依頼失敗でなるものだと思ってたし。ただ新人や移籍組にとっては規約をよく知っているみたいで、驚いている。

「嘘だろ。ベテランほとんどじゃねえか。どうなってるんだこの街・・・」

「俺が前いた街でケガしてしばらく依頼受けれなくて『注意』された人いたけど、滅茶苦茶落ち込んでたぞ。周りもメッチャ気を使ってたんだけど・・・」

「ふ、普通そういう反応だよな!俺達おかしくねえよな?」

なんか認識に差があるな。余所の街じゃ珍しいの?

「お前らが前に所属していた街がおかしいんじゃねえの?『注意』や『降格』で死ぬわけねえんだから気にしすぎなんだよ」

「そうそう。俺は3級だから後3回は降格出来るぞ。流石に無級から降格は『除名』になるから焦るけどな」

「無級から降格すると『除名』なのか?知らなかったぜ」

「カナに教えてもらった。そうしねえと、無級で逃げ出した奴がずっと組合員として所属している事になるだろ?」

その話当然俺は知らねえ。周りを見れば今のアウグとペコーの会話を聞いて「へえー」って顔している連中がたくさんいる。みんな知らねえんだな。

「この人達考え方が他の街と全然違う・・・ついこの間まで先輩達真面目に仕事していたから、おかしさに気付かなかった」

「こ、これがこの街の普通なのか。これぐらいの考えしてねえとコーバスでやっていけないのか?」

そうそう、こんなんで驚いていたらコーバスじゃやっていけねえぞ。ここの連中はマジで信じられない事するからな。

そんな驚く新人たちに、心の中でアドバイスを送りながらリリーの所に向かう。

「リリー。また落ちちまった。手続きしてくれ」

良い匂いのするリリーに員証を差し出す。今までも手続きはリリーにお願いしていたから、慣れたもんだ。

「またですか?この手続きに慣れたくはないですけど、もう慣れました」

「多分、リリー以上にこの手続きに慣れた受付嬢はいねえな」

「全然嬉しくありません。次は昇格の手続きでお願いします」

そう言いながら手慣れた様子で処理した員証を渡してくる。今日は機嫌がよさそうだ。香水効果か?

「香水、旦那に効果あったか?」

「・・・・べ、別に」

おっと、冷静を装っているが、口元がヒクついてるぞ。こりゃあ、昨日はお楽しみでしたね。

「・・・・・・・・何か?」

「いや別に」

ここでそれを直接言うほど、俺は馬鹿じゃねえ。(2敗)

「腐れ花の採取依頼はどうなっている?」

昨日の今日で進展があるとは思ってねえけど話題を変える為に聞いてみる。

「それなら調香師の方、ほとんどから良い返事が返って来ています」

腐れ花の採取依頼。今までは臭いのデメリットが大きく不人気依頼だったが、香水で臭いを打ち消せる事が分かった。これだけでデメリットがかなり抑えられるので、採取後に失敗作の香水を少し分けて貰えないか調香師達にお願いするって話になったみたいだ。そうなりゃ依頼受ける奴も増えるから調香師も文句はねえだろう。

・・・だから、今日あたり組合長に話通して返事は明日以降になると思ってたのに。

動きはえええ。・・・これ絶対リリー主導で動いただろ。けど、俺みたいに気前よく香水渡す奴なんて・・・・・いるわ。たっくさんいる。ここの男組合員馬鹿ばっかりだから、受付嬢に言い寄られたら速攻プレゼントする奴らばっかりだな。依頼後に臭いを打ち消せれば余った香水はいらねえし、売れねえし、使わねえし、男組合員にとってはゴミにしかならねえ。そこを狙っているんだろう。

女組合員は欲しけりゃ依頼受ければいいだけだしな。ただ、あの腐れ花の臭いが我慢できねえって奴も多いし、森が元に戻って狩りができるようになれば、あんまり使えねえしで、そこまで需要はねえだろう。

で、この腐れ花の臭いが香水で打ち消せるって話なんだけど、これ申請すれば俺に金が入るってリリー達受付嬢から教えてもらったんだ。ただ、そん時は俺も酒を飲んで気が大きくなっていた。

「ハハハ、そんなチンケな金なんていらねえよ」

「ええー。じゃあ、コーバスの組合として申請してもいいですか?」

「おう、その代わり、カナが手続きしろよ。俺は関係ねえからな」

「わっかりましたー!ラルダ!ベイルさんにエールのお代わり!」

「はい!ど、どうぞ」

「ハハハ、悪いなあ。ラルダ」

「本当にいいんですか?後で文句言わないで下さいよ」

「あったり前だろ!リリー。俺はそんなちっさい男じゃねえっての!そんなに心配ならエール奢ってくれよ。それで文句は言わねえ」

「まあ、それぐらいならしてあげますけど・・・」

顔馴染の美人受付嬢にキャバクラみたいに両脇からチヤホヤされていたのも原因だったんだろうな。俺は適当な受け答えしちまった。

後で分かったけどこれって全然チンケな金じゃなかった。俺一人は余裕で遊んで暮らせるだけの金が毎月組合に振り込まれているって聞いた時はリリー・・・・・は怖くて文句言えなかったから、組合長に文句言いに行った。酒の席とは言え、俺が自分で言った事だ、当然組合長は聞く耳もたず殴り飛ばされて終わりだったぜ。ちくしょう。