軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68.コーバスへの帰還②

「オエー、ハァハァ、これは凄いです。オエー。これで軽くって移動の常識を覆しますよおおええええ。これは!」

分かったから吐きながら話すんじゃねえ。

タロウの散歩から戻って来たバードラーは、そりゃあ盛大に吐き散らした。聞けばこいつ乗り物酔いが酷くて、何とか出来ないかと試行錯誤してたら、乗り物制作のスペシャリストになっていたそうだ。

そしてカルガーとタロウは今は水浴びに行っている。聞けばバードラーの奴、タロウの背中でも盛大にやらかしたらしい。それでも一応一般人だし、俺の所まではカルガーは我慢して連れてきたが、今後二度とタロウには乗せないと『出禁』ならぬ『乗禁』にされた。

ちょっと前に俺が怒らせた以上にキレたカルガーはマジで怖かった。俺がビビって口挟めなかったぐらいだもん。

まあ、そんな騒ぎがあったが、無事に次の街に着いた俺達は、各自宿でゆっくり休む事にした。魔物のタロウは街に入れないんじゃないかと少し心配したが、カルガーが門番と何か話したら通してもらえた。

「どんな魔法使ったんだ?」

「ああ、これっす」

って言ってタロウの首を指差す。そこには未だ二つの貴族紋が書かれた布が巻かれていた。

「そう言えば、貴族がいないのにこれ着けてていいのか?あん時は護衛だから特別に着けるの許可されたんだろ?」

「許可は貰っているっす。というより着けていろって命令されているっす」

・・・どういう事だ?

「多分タロウを守る為と両家の威厳っすね。この紋を見れば平民はどう思うっすか?」

「・・・良く分かんねえけど貴族のモンだから手を出すとマズいと思うだろう。いくらタロウが見た事も無い魔物でもな」

実際、これが無い時は、ゴドリックの家に忍び込んでタロウ達を盗もうとしている奴もいたしな。・・・全員タロウ達のおもちゃにされた後、奴隷落ちしたけど。

「そうっす。これがあれば普通は奪おうとしないっす。それでも奪おうとするのが貴族っす」

まあ、そう言う貴族はいるよな。組合長は貴族を良い風に言ってたけど、この間の小デブ貴族見て、この国も俺の故郷と似たような貴族がいるって確信したからな。

「ただこれは二つとも伯爵家の紋っす。それを身に着けたタロウに手を出したら、二つの伯爵家が確実に敵に回るっす」

「まあ、そうなるな。多分、まともな貴族ならタロウが欲しくても、我慢するんじゃねえか?」

「そうっす。貴族と言えどタロウが欲しくても流石に伯爵家二つは敵に回せないっす。絶対我慢するっす。そんなタロウをマーキングしている両伯爵家。凄いと思わないっすか?」

「・・・・まあ、どこで見つけてきたんだ?とか先見の明があるなとか思われるだろうな」

「そうっす、それが威厳っす。貴族が大事にしている物の一つっす」

ようするに貴族のプライドって奴か?くだらねえ。

「でもそのおかげでタロウが守れるっす。流石に平民落ちした私じゃ、貴族相手にタロウを守れないっす。そうなると最後、タロウは絶対嫌がって暴れるっす。そして魔物として倒されるっす」

・・・そう言われるとそうだな。この首の紋が無きゃ、タロウは無理やり貴族に取り上げられる。そんで気位の高いタロウが言う事聞く訳ねえ、絶対そいつらを食い殺すだろう。そうなったらタロウはもう魔物として処理しなくちゃいけなくなる。

「そう考えると、この紋着けていた方がいいな」

「そうっす。あとジロウ達の分も貰ったッス」

「何でだよ!・・・・ってそうか。よく考えればジロウ達も着けとかねえと奪われるな」

「そうっす。これでジロウ達も堂々と遠くまで散歩出来るっす」

それって今まで隠れて遠くまで散歩してたって事か?・・・カルガーならしてそうだな。

そんな事を話していると今日の宿に到着した。中庭を建物が囲っている、ありふれた行商人向けの宿だ。馬車や馬なんかは中庭に預ければいいので、タロウも同じだ。

「タロウと旅するには、こういう宿に泊まらないと駄目だな」

「そうっすね。けど別に野宿でもいいっすよ。タロウ達にくるまれて寝るのは凄い気持ちいいっす」

やっぱりカルガーの奴タロウ達と遠出してるだろ!

翌朝、

「あん?ここで待ってろ?」

「そうです。今朝早くに伝言を残していかれました。」

あれから俺とバードラーだけは別の宿に泊り、起きて朝飯食っていると、宿の女将がアーリット達から待つように伝言を受けたと教えてくれた。何で別の宿かと言うと、ザリアが俺を嫌がっているかららしい。・・・・いや、直接言われた訳じゃねえよ。ただ、それとなくだ、それとなーく別の宿を勧められたんだ。

・・・・・・・・・

コーバス一愛されキャラのベイル様のイメージが壊れるから、今度ザリアとっ捕まえて、よーく話合わねえと駄目だな。

しかしザリアとカルガーは俺の痴態を同じように見てるのに、平民のザリアはトラウマになって、元貴族のカルガーは平気っておかしくねえか?普通逆だろ。

いや、そんな事よりもだ!あいつら俺を置き去りにしたのか?・・・待ってろって事だから違うか。あいつら何考えているんだ?

無視して帰るかとも思ったけど、流石に無一文で行動するのはな。金は依頼主のバードラーが出してくれるけど、もしバードラーが何かの拍子で逃げたらマジで詰む。

魔物倒して金稼げばいい?

街道で襲われた程度なら何も言われないが、余所の縄張りで獲物狩って金稼ぐと、『縄張りがー』とか『余所モンがー』とか色々うるせえんだよ。

って事でアーリット達を待つと、昼前にようやく戻ってきやがった。

「ええ!!お前ら人助けしてたのか?」

次の街への道中に話を聞くと、そう言う事らしい。

「はい、みんなで朝の稽古していると、怪しい一団が遠くに見えたのでみんなで追いかけたら、人攫いの集団でした。丁度、とある商家の娘を攫ってきた所だったので、ついでに助けて送り届けてきたんですよ」

・・・・おいおいおい、ちょっと待て。ちょっと待て。情報量多い、多すぎる。

「ちょっと待て!まずは最初だ。最初からだ!朝の稽古って何だよ?」

「あれ?僕達、街に滞在している時は朝から稽古しているんですよ。それで軽くひと汗掻いてから依頼受けているって知りませんでした?」

知らねえよ!こいつら朝から稽古とか力士かよ!そんなんやっている奴聞いた事ねえぞ。こいつらどこ目指しているんだ。

・・・あれ?途中加入のカルガーもやってんのか?

「自分は加入前からの日課でタロウの散歩っす。鐘二つは走らないと駄目ッス」

おいおい、この犬馬鹿も大概だぞ。朝から二時間走るとか頭おかしいだろ。

俺?俺はいつも昼前に組合に着けばいいか、ぐらいの時間に起きるんだよ。娼館通いのモレリアとゲレロに比べたら俺はまだマシだよ。あいつらオフの日は昼過ぎまで寝てるからな。トレオン?あいつは第1レースから元気に出勤してる。

「取り敢えず、朝早起きして稽古してんのはいいや。勝手にやってろ。次だ!次!『怪しい集団見かけたから追いかけた』ってお前ら兵士じゃねえだろ」

面倒に関わらないように、そう言う場合はスルーが安定だ。そんで何かあれば、どこで見てたのか情報屋が話聞きに来るから情報料貰って終わり、ってのが普通の組合員だぞ。

「え?普通追いかけますよね?」

「追いかけねえよ!」

こいつ頭のネジ何本か抜けてんじゃねえの?何で面倒事に自分から飛び込んでいくんだ?イベント寄せ付けるだけじゃなくて、自ら飛び込んでいくとは、アーリットの頭やべえぞ。

「僕は追いかけるんですよ。それで話を聞こうと声をかけたら、いきなり襲ってきたんで倒して兵士に引き渡したんです」

そんで、その時攫われてたのが、どっかの商人の娘で、送り届けたら謝礼もらったって事か。ああ、もうどうでもいいや。話聞くのも馬鹿らしくなってきた。

でも、アーリットがこういう考えだから、こいつらってこんなイベントかなりの頻度で起こってそうだな。

「お前らってこういうイベントしょっちゅう起こってんのか?」

「そんな訳ないじゃないですか。たまたまですよ」

ですよねー。こいつらも、もう3級だしエフィル助けた世間知らずの頃とは違う。あれから騙された事も何度もあっただろう。ある程度は嘘だと見抜く目も持ったかな。

こいつらも少しは成長したかな、なんて考えていると、街道脇の森の中からかすかな悲鳴が聞こえてきた。

ああ、襲われてんなあ。自分の実力相当の所で戦わないと駄目だぜ。・・・なんて考えながら無視すんのが組合員だ。

・・・・だと言うのに。

「みんな行くよ!」

「よーし。魔物退治だぜ!」

「最近、多いわねえ」

「仕方ないですね」

「先に行ってるよ」

「またっすか?」

おいー!!!早速イベントに飛び込んでじゃねえか!しかも仲間も迷う事無くアーリットについて行きやがる。・・・カルガーだけは呆れた感じだ。アーリットはああ言ったけど、カルガーのあの様子だと、こういう事が頻繁に起こっている?起こしている?感じだ。

で、待っているのも面倒くせえからバードラーと先に向かっていたら、カルガーがプリプリ怒りながら追いかけてきた。

「もう!何で勝手に先行くっすか!待っててくれてもいいじゃないっすか」

「別に今日の目的地は決まってんだ。一緒に行動しなくてもいいだろ」

仲良しこよし行動する仲でもねえしな。それよりもだ。

「タロウに何乗せてんだ?」

見ると、タロウに何かが乗っている。・・・・いや、聞かなくても見ればわかるが、一応念の為だ。

「さっき襲われてケガした人っす。歩ける人はアーリット達と一緒っす」

「・・・いや、何やってんの?普通は見捨てるもんだぞ。それがここまで面倒見るっておかしいぞ?・・・・分かった!さては報酬がめっちゃ良かったんだな?しまったなあ。それなら俺が先に助けにいけばよかったぜ」

「報酬の事は何も話してないっす」

「何でだよ!!」

え?マジでこいつら何してんの?報酬を先に決めとかないと後で絶対に揉めるぞ。

「多分アーリット達は報酬要求しないっす。いつもの事っす」

「はああああ?お前ら報酬無しでこいつら助けたのか?頭大丈夫か?」

こいつらお人よし過ぎんぞ。物語の主人公かよ。・・・でもまあ、それがいつまで続けられるかだな。俺も故郷じゃ同じ様な事して騙されまくったからな。こいつらも騙されまくって、いずれ、俺と同じでどっかで心折れるんだろう。

そこから街に着いて、カルガーは怪我人を組合に運んで、色々やっているうちにアーリット達も到着。事務処理を終わらせてから俺達と合流した。ついでに見慣れねえ奴が一人ついてきたが、こいつがさっき助けたパーティのリーダーらしい。

「すまない。本当に助かった。でも本当に飯をおごるだけでいいのか?何度も言っているが、金ならいくらか支払えるぞ」

乾杯し飯を食べ始めた所で、助けた奴が驚く事を口にした。

え?あれだけしておいてお礼が飯おごるだけ?なんか今の言い方から金貰うのアーリット達が拒否しているみたいだ。

「本当はご飯も奢ってくれなくていいんだけど、それじゃあそっちの気が済まないみたいだしね。それに今回のお礼はさっきの約束守ってくれたらいいさ」

「お前達が将来クラン立ち上げて、有名になったら加入しろって約束だろ?・・・本当にそれでいいのか?クランなんて5級が王都で立ち上げるもんだ。それは組合員からすれば報酬いらないって言っているのと同じだぞ?」

「ハハハ、もし出来なければ僕達はその程度だったって事さ。その時は約束守る必要もないよ」

「・・・いや、お前達なら出来ると俺は信じているぞ。俺達にちゃんと約束を守らせてくれよ」

「期待に応えられるように頑張るよ」

そう言って助けられたリーダーはアーリット達と拳を合わせていく。・・・・え?俺も?・・・なんか流れで俺も拳合わせちまった。そこからは和やかに話が進む。

・・・え?報酬の話終わり?こういうの双方もっとごねるもんだろ。俺なら全財産出させた後、ジャンプまでさせて金が残ってないか確認するぞ。