軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6.レッサーウルフ捕獲依頼③

「いやあ、完璧に依頼を達成してくれるとは思ってもみなかったですよ」

俺が連れてきたレッサーウルフを見てゴドリックは満面の笑みだ。そのレッサーウルフはゴドリックの家の庭を走り回っている。庭と言っても周りは石組みの塀で囲われただけの殺風景な庭だ。将来的にここで数種類の魔物の研究をする予定だそうだ。

「はい、こちらが報酬になります。満額の10万ジェリー入ってます。それにしても凄くお疲れですね?この依頼結構大変でした?」

俺が心底疲れた顔しているんでゴドリックが心配そうに聞いてくる。

「色々と大変だったよ。涙あり、涙ありの大冒険。詳しく聞きたいか?」

「‥‥いえ、泣いてばかりの話はちょっと‥‥それに今からレッサーウルフの研究をしないといけませんから!いやあ、それにしてもべイルさんのおかげで私達にも懐いてくれました。これで研究が捗ります」

お礼を言われても俺何もしてねえんだよな。ただ二人がレッサーウルフに肉あげるのを横で見ていただけ。まあレッサーウルフはそれで二人に懐いたから良しとしよう。っていうか、あの犬は肉さえ貰えれば誰にでも尻尾振るのかよ。とんだ尻軽だぜ。・・・オスだけど。

そんな事よりも俺にはやらなければならない大事な用事がある。ゴドリックと別れた後、俺は覚悟を決めて組合に足を踏み入れる。

そして踏み入れた瞬間周りを警戒する。

ボチボチ依頼を終えた連中が戻ってくるような時間だ。組合の中には一足先に戻ってきた連中と一日中ダラダラしていた奴らがいる。まあこの時間ならこのぐらいだろうって人数が騒いでいるのが見えるが、誰も俺に興味を示さない。って事はまだか?間に合ったのか?

もう一度組合の中を見回すと、騒いでいる連中から一番離れた隅っこの机に座る4人組が!見つけたぜええ。今度は逃がさねえからよお。

「よお、ちょっと邪魔するぜ」

「ヒッ!!」

「あ、あなた!」

「あっ、さっきの!」

「あっ、さっきはどうも」ペコリ

「あっ、どもども」ペコリ

今度は爽やかイケメンが頭下げたので俺も釣られて頭を下げる。取り敢えず今の反応から男よりも女の方に集中して誤解を解いた方がいいな。っていうかザリアって女が逃げる隙を伺っているな。

「逃げたら追いかけるからな?って言っても逃がさねえけどな」

「ヒいいいいいい」

逃げようとしているザリアに警告したら、怯えて頭抱えて震えだしたんだけど・・・こいつ俺の事ビビりすぎじゃね?まあ、いいや、それよりも赤髪の方だ。

「あなた!何の用よ!レッサーウルフに‥‥」

「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

あ、危ねえ。こいつ今、何言おうとしやがった。ザリアを抑えた今、やっぱりこの女が一番危険だ。ヤバい汗が出てきやがる。これだけ緊張感のある闘いはクロ以来だ。

「な、何よ。いきなり叫ばないで、びっくりするでしょ」

「ま、まあ、お、おち、落ち着けって、そ、そん、そんなんじゃ話も出来、出来ねえ」

「あなたが落ち着きなさいよ」

「と、取り敢えず腹減ってないか?えっと、エルだったか?」

「気安く呼ばないで」

「あっ、はい」

エルって愛称かよ、本当の名前知らねえ。

「エルメトラよ」

おお、名前教えてくれた。愛称じゃなくて本名で呼べって強制する事はもう特別な友達って事だ。故郷の貴族がそう教えてくれた。ズッ友だ。こっちじゃ特別な友達は様つけて敬うものだってのも故郷の貴族が教えてくれたぞ。

「エルメトラ様」

「何でえ??」

「いや、僕達みんな平民だから様つけなくていいよ」

爽やかイケメンナイス突っ込みだ。後はお前の名前だけが分からねえ。っていうか敬うって嘘なのかよ。あのくそ貴族今度会ったらレッサーウルフの刑に処してやる。

「ははは、冗談、冗談。それよりも腹減っているだろ」

内心の動揺を悟られないように給仕の姉ちゃんに定食とエールを人数分頼む。本当は無級の奴らにこういう事をするのはルール違反だけど、背に腹は代えられねえ。勧誘さえしなけりゃ多分、どうとでも言い訳できる。

「おいおい、ベイルううう。そりゃあルール違反ってもんだろ?お前も組合なげえんだし、当然知ってるよなあ?」

で、早速面倒な酔っ払いが絡んできやがった。お前今日依頼行かなかったのかよ、トレオン。

「当然知っているぜ。ただ、そりゃあパーティ勧誘しない為のルールだろ。ソロの俺が勧誘なんてしねえよ。ただ、今日こいつらとちょっとあってな。まあ、悲しいすれ違いって奴だ。そこで生まれた誤解を解いておきたいんだ。まだ、今ならしっかり話し合えば俺達はやり直せるはずだ。俺も出来ちまった溝をさっさと埋めておきたいしな」

「何で別れた恋人みたいな感じの言い方なの?あなたにはレッサー・・・」

「うあああああああああああああ!!!!!!!!!」

「ヒいいいいいい」

「うるせええええええ!ベイル!いきなりでかい声出すな!っていうかこの子は何でこんな怯えているんだ?」

トレオンが不思議がるのも仕方ない。が、俺にもよく分かんねえ。

「‥‥じゃないにゃあ。私は犬じゃないにゃあ。私は犬じゃないにゃあ」

頭の獣耳を手で隠すように抑えてザリアは何かブツブツ言っている。まあ、放置でいいだろう。取り敢えず邪魔なトレオンを追い払おう。

「頼むぜ、トレオン。俺を信じてくれ。こいつらとは絶対にパーティを組まない。約束する」

「私も組みたくないわよ」

「うーん。ベイルなら信じていいか。けど絶対パーティ組むなよ」

よし。これでようやく本題に入れる。改めてエルメトラ達に向き直る。

「まず最初に言っておくがお前らは絶対に変な勘違いしている。その誤解を今から解いていくから飯食いながら話を聞いてくれ」

「うーん?あれはじゃれていたんじゃないの?」

ようやく名前が分かったアーリットと言う名前の爽やかイケメン君がとぼけた事を言っているが、仲間の二人が呆れているのでこれは本気で言っているようだ。

アーリット。君はそのまま純真無垢に育っていってください。取り敢えずこいつは放置でいいだろう。

「俺は人の趣味にとやかく言うつもりはねえぜ。ただ、明るい所や人に見られる所ではやめておこうな」

親指を立ててどや顔のクイト君。君もあんまり賢くなさそうだし、口止めしておくだけで十分かな。問題はこの女。赤髪のエルメトラ嬢。こいつは難敵だ!

俺はそう思い込んでいた。

だが、

「そう、私達の誤解だったみたいね」

ちゃんと説明したら分かってくれた!しかも後で落ち着いたらザリアにもちゃんと話をして誤解を解いてくれるって!まさか!この方は神?

「エルメトラ様」

「それはやめて!」

‥‥‥‥

「エルメトラ」

神の嫌がる事はしない。

まあ、取り敢えず誤解も解けたし、依頼も無事達成して懐も温かいし、これにて一件落着。

神とその愉快な仲間達の机から離れエール片手に誰に絡みに行こうか思案する。まあ、ここはトレオンに出来る限りの説明しとくか。そう言って足を踏み出した瞬間、組合の扉が開き、ゲレロ達『守り抜く』の連中が入ってくるのが見えた。

「よお、お前ら今戻ってきたのか?あれ?お前ら今日から依頼なのにもう戻ってきたのか?」

エール片手に近付いていくと、どうも『守り抜く』の奴らの様子がおかしい。みんな下を向いて黙り、何人か肩を震わせている奴もいる。連中の異様な雰囲気に組合で騒いでいた連中もすぐに察したようだ。

‥‥仲間がやられた。

まあ、こういう事は組合員やっていれば珍しい事じゃない。だから依頼を急遽やめて戻ってきたんだろう。

‥‥ってあれ?全員いる?よな?見た所大怪我している奴もいねえけど?

周りの連中も『守り抜く』の数が揃っている事に気付きだして何やら戸惑っている。そこにリーダーのクワロから押されてゲレロが俺の前に進みでる。

「な、なあ、ベイル。ブフッ。フフフ。お前・・・」

「何だ?何かあったのか?」

何だ?今までにないゲレロの態度。悪い話か?

「お前、レッサーウルフに掘られてたってマジなのか?ブフ!!グフ!!アハハ!ハハハハハ!しかも自分を鎖で縛るっていう高等テクニック付き!やべええ、腹が痛えええ。ガハハハハハ」

「「「「「あはははははは!!!」」」

・・・・・・

「あばばあばばあばあああああ!!!!!!!!!!」

組合内に響くゲレロ以下『守り抜く』連中の笑い声と俺の悲しい叫び。結局組合の奴らに変な噂が流れないように立ち回ったのは全て無駄だった。