軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.卑怯技の達人

そして俺が戻ってきたら、組合は殺気だっていた。

「おいおい、何だ?何かあったのか?」

近くの組合員に話を聞くと、どうやらアーリット達『全てに打ち勝つ』がコムコムの連中とトラブったらしい。最近良く聞く獲物の横取りだって話だ。当り前だけどアーリット達はコーバスの縄張りでやってたし、倒した後で絡んできたから言い掛かりでしかないんだけど、何故か向こうが武器を抜いたんでアーリットとクイトがケガしたらしい。

街の外で組合員同士のトラブルはよくあるし、殺し合いになる事も珍しくはない。ただ、それは個人やパーティ間で収まる話だから、関係ねえ奴らは誰も首を突っ込まない。だけど、今回は組合同士の争いになってるから、関係ねえとか言ってられねえ。みんなコムコムの連中に怒り心頭だ。そりゃあ次は自分の番かもしれねえからな。

「どうするよ?」

「まずは組合長に相談じゃねえか?」

「だな。そんでコーバス組合としてどう動くか考えようぜ」

「そうすっと、あんまり街の外に出ねえほうがいいのか」

「コムコム側への依頼は受けねえほうがいいだろうな」

「『ちょっと賢い』と『守り抜く』はいるけど、『全力』と『快適』は護衛依頼でいねえぞ」

「どっちも護衛依頼だから、流石にコムコムの馬鹿共でも襲ったら賞金首になるって分かっているだろ」

「それじゃあ、組合長とシリトラとクワロに話してもらって、これからどうするか決めてもらうか」

「一応、コムコムのキング倒した奴がいるが・・・」

うん?何でみんな俺を見てんだ?

「なあ、ベイル。お前なら、コムコムが絡んできてるこの面倒くせえ状況、どうすりゃいいと思う?」

「ああ?そんなんぶん殴って終わりだ!」

実際絡まれたらそうしたしな。

「だよなあ。お前ならそう言うよなあ。・・・よし、お前は話し合いに参加しない方がいいな」

「だな。余計に忙しくなりそうだ」

「でも、こいつ、こんなんでも、それが出来ちまう実力があるんだよなあ」

「いや、でもこいつの場合、頭がな」

「そう考えるとこいつとゲレロを抑えられる力があって、更に頭も滅茶苦茶いい組合長ってバケモンだよな」

なんだ褒められてんのか?馬鹿にされてんのか?

なんかコムコムの対応どうするのかとグダグダ話している連中を肴にエールでも頼もうとした所ではアーリット達から話しかけられた。

「すみません。ベイルさん。僕たちに少し稽古つけてもらえないですか?」

「あん?何でだ?」

「今日、僕たちがコムコムの人達に負けたって聞いてます?」

「ああ、聞いたぜ。ケガしたって聞いたけど?」

「それはポーションで治しました。それはいいんですけど、僕たちが戦った相手・・・・同じ2級でしたけど、実力的には十分勝てる強さでした。それなのに負けてしまった」

そう言って悔しそうな顔をするアーリット達。その顔で何があったか何となく察したぜ。

「何だ?卑怯な手でも使われたか?」

俺の言葉に驚いてアーリットが顔をあげる。

「・・・その通りです。『香辛料爆弾』使われて・・・・完全に油断していました」

「聞いたら、そういうの得意なのベイルさんって聞いたぜ。だから俺達に色々教えて欲しいぜ」

「そう言われてもなあ。帰ってきたばっかりで面倒くせえんだけど?」

「今日のエールは奢りますよ」

「よっしゃああ!やってやるよ!お前らをどこに出しても恥ずかしくない卑怯技の達人にしてやんよ!」

エフィルの言葉に俄然やる気が出てきたぜ。

「い、いえ達人になりたい訳じゃなくて、どういう手を使ってくるか教えてくれるだけでいいんですけど?」

「エールって!報酬安すぎるぜ!」

「卑怯技の達人ってどこ行っても恥ずかしくならない?」

アーリット達の言葉は無視だ。俺はやると決めたら徹底的に教えるからな。

「おーい!ゲレロ!モレリア!ちょっと手伝ってくれ!今日のエールはアーリット達が奢ってくれるぞ」

「お!マジか?よーし何でもやってやるぜ」

「本当かい?いいよいいよ」

酒で簡単に釣れた。こいつらも暇なんだな。

「うーん。ちょっとまだこっちが強いな。カルガー!ゲレロの相手してくれねえか?」

「うん?別にいいっすけど、いつもの稽古って事っすか?」

「そうだ。カルガーはゲレロにいつも通り稽古つけえもらえ。そこにザリアも加わる・・・ってあれ?ザリアがいねえぞ?」

「ああ、ザリアには私から伝えておくから」

あれ?俺ってザリアから嫌われてんのか?

・・・・・・

いや、いくつかトラウマ植え付けた記憶はあるが・・・まあ、いいか、エルメトラ神に伝言は任せよう。と思ったけど、ゲレロが説明しだした。

「カルガーと俺が稽古している所に、ザリアが俺に攻撃仕掛けるって訓練だ。卑怯な手だろうが、不意打ちだろうが、何でもいいから俺に一発でも攻撃当てたらザリアの勝ちだ。俺は防御はするが、反撃はしねえから積極的に攻めろ」

「エルは僕といつもの稽古かな。いつもと違って僕がたまに隙を見せるから、その隙にエルはベイルかゲレロに魔法をうってみて」

モレリアもゲレロも付き合い長いから俺が指示しなくても今から何するか理解してくれている。

「で、残ったお前ら3人は俺が相手だ」

説明を終えると全員で訓練場に行き、早速戦う事にする。

「よーし、そんじゃあ、そっちが先に攻めていいぞ。そんじゃあ、よーいスタート」

俺の言葉にアーリットは仲間達アイコンタクトを送るが、目を離した隙に、俺のこん棒はアーリットの首元に添えられていた。

「な、何で?こっちからって言ったはず・・・」

「よーいスタートって言っただろ?『先にどうぞ』なんて敵の言葉を真に受けんな。それに、お前ら魔物と出会ったら、戦闘開始の合図とかあげてんのか?」

「いえ、そんな事は・・・」

「取り敢えず外で組合員を見つけた時点で勝負は始まってるって覚えておけ!どんだけフレンドリーに接触してもパーティメンバーでさえ完全に信用すんな!」

気を取りなおして再度、始めようとした所でいつの間にか俺の死角に回り込んでいたエフィルが訓練用の木の棒を手に殴り掛かってきた。怪しい動きしてんのは気付いていたので、俺はそれを難なく受け止める。

「さっきのがアリなら、これもアリって事ですよね?」

微塵も悪いと思ってない顔でエフィルが聞いてくる。

「エフィル!それは卑怯だ!」

「まだ始まってないんだぜ!」

仲間から非難されるが、それを全く気にした様子はない。エフィルが一番組合員らしいな。そういや、こいつ何でもありのスラム育ちだった。

「ああ、全然アリだ、むしろお前が一人なら優秀だって褒めてやる所だ。だけど仲間が驚いて止まってるぞ」

攻撃を止められたエフィルは俺の言葉に不思議そうに首を傾げる。その答えを言う前に仲間からの声が響いた。

「痛っ!」

「クッ!何だ?」

他と訓練しているモレリアとゲレロから多分石ころみたいなものを投げられ、それが当たったんだろう。

「はい、今のがナイフなら死んだよ」

「仲間にも意表を突いてどうすんだよ?」

「そうそう、エフィルならこう動いても不思議じゃねえって、仲間にも思っておいてもらわねえとな。そんでそれを見たらあいつらも、即座に行動できるようにならねえと駄目だ」

気を取り直して仕切り直す。今度は始まったと同時に3人にボロボロの小袋を投げつける。当然コムコムの奴らに『香辛料爆弾』投げられて、負けた苦い経験のある3人は小袋から距離をとる。

だけど、甘いな。期待の新人とか言われてるけどまだまだ経験不足。

俺の投げた小袋の中にある閃光玉が光輝き、空いた穴から眩しい光が漏れ出し一帯を輝かせる。閃光玉ってバレたら目を瞑って対処されるからな。ボロボロで穴の開きまくった袋が閃光玉を隠すのに使えるんだ。これは対人が得意なティッチの仲間に教えてもらった方法だ。

「うっ!」、「くっ!」、「眩しっ!」、「目がああ!」、「おおーい!」、「な、何?」、「ちっ!」

あれ?思ってた以上に声が聞こえるぞ?見れば近くで稽古していたモレリアとエルメトラ神、ゲレロ、ザリアも巻き込まれたみたいだ。カルガーだけは運よく盾で防いだみたいだ。

「くそ!ベイル!光らせるなら声かけろ!」

「全く!これだからソロは!」

巻き込まれたゲレロとモレリアがめっちゃ怒っている。そう言えば仲間に声かけなきゃ駄目だったな。いつもソロの時しか使わねえからそんなお約束忘れてたわ。悪い、悪い。

「っていう訳で今のは悪い例だ。ただ、相手が一人ならいつでも使ってくるって思っておけ」

「・・・・大丈夫ですか?」

「・・・・滅茶苦茶痛そうだぜ」

心の狭い二人からどつかれた俺を心配してくれるアーリットとクイト。君たちはこれから大きく成長するだろう。だから今回と似たような目に遭っても間違っても怒っちゃいけないよ。

そしてもう一人エフィルは、俺を心配せずにゲレロとモレリアに話を聞いている。こいつは相変わらずのマイペースだ。

「・・・・へえー。逆に声で相手の目を塞ぐってパターンもあるんですね」

「ただ、それはパーティメンバーとの連携が凄く重要だよ。これはゲレロの所が得意だよね?」

「ああ、俺らは盾持ち多いからな。仲間からの『閃光玉』って単語はブラフだ。『全員盾』ってのがあると、目をガードする」

話を聞いたエフィルが少し考えこむ。

「つまり『閃光玉!目を塞げ』とかの注意ではゲレロさんのパーティでは目を閉じないって事ですか?」

「ああ、そうだ。逆にその声に反応して目を閉じた敵にシールドバッシュを叩きこむんだ。それで『全員盾で防げ』とか『全員盾あげろ』とか言われるとみんな目を閉じるか盾で顔をガードする」

「うーん。それはかなり訓練が必要になりそうですね」

「まあな、ただ仲間が閃光玉を使う時の合図だけは決めておいた方がいいぜ。それだけでも大分闘いが有利になるからな」

「おーい」

俺の時よりも熱心に話を聞いているエフィルに声をかけながら頭を軽く小突こうとしたら、手に持つ訓練用の棒で見もせずに受け止められた。

「・・・お?おお?」

「ふふふ、どうですか?ベイルさんの真似してみました」

さっき、不意打ちを止められたのが悔しかったんだろう。やり返してやったと、どや顔のエフィル。

それからも色々な卑怯な手でアーリット達の相手していると、訓練場に見慣れない連中が入ってきた。そいつらは訓練場に目を巡らし、俺とアーリット達に気付くと意味深に笑う。

「あいつら知り合いか?」

俺の知り合いじゃなければアーリット達だろうと思い、横に立つアーリットとクイトを見ると二人とも・・・じゃなくて『全てに打ち勝つ』メンバーは連中を睨みつけていた。