軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24.試験官の依頼③

「ど、どうしてもやらないとダメみたいだね・・・」

「上を目指すなら当然だな。2級に留まるっていうなら、やらなくていいけどな」

「・・・・いえ・・・やります」

「よーし、なら俺から一つアドバイスだ。気付いているか知らねえけど、俺たち3級以上は野盗を魔物としか見てねえから『人』じゃなくて『匹』で数えるんだ。お前らもこいつらを魔物だと考えるように出来たら一人前だ。それにこいつら街に連れて帰った所で結局処刑されるだけだからな」

この国ではどんな事情があるにせよ、野盗は一律処刑って決まっている。それが分かっていて野盗になるってのは、それだけの覚悟はしているはずだ。

・・・・って思いたいんだけど、野盗になる奴なんてそこまで覚悟してねえんだよな。

アーリットが剣を抜いて近づくと、野盗どもは泣いて命乞いを始める。中にはアーリットに向かって「人でなし」とかいう奴までいる。鏡を見せてやりてえ。

ただ、まあ、流石リーダーのアーリット君。少し躊躇ったけど野盗の首を斬って試験は合格だ。その後も次々と試験に合格していく。特にエフィルは躊躇いなくこん棒で殴り殺していたのは少し驚いた。聞けば孤児院に拾われる前、スラムで暮らしていたそうだ。あそこはマジの無法地帯で人の命が軽すぎるからな。俺もパン一つで殺し合いになった経験があるからわかる。

そして、やっぱりエルメトラ神は決心がつかないようだ。まーた、モレリアにお願いしている。俺にはお願いしてくれないのかな?

「師匠は今までどれぐらい、こういった経験があるんですか?」

「うーん。数えてないから覚えてないなあ」

「ッ!!!」

モレリアの返事に息をのむエルメトラ。モレリアの返事の意味は数えるのも馬鹿らしいぐらい経験があるって事だ。4級ともなると、野盗の巣の殲滅の強制依頼があったりするからな。

「じゃあ、特別に手本を見せてあげるよ」

何が『じゃあ』なのか分かんねえけど、モレリアは短剣を手に一匹の野盗に近づく。片腕がないからモレリアがやった奴だな。そして俺が全員膝をたたき割っているから逃げられる心配もない。

「てめえ!このクソ女!俺の腕返せ!」

「最後に言いたい事はあるかい?」

モレリアは野盗の罵声なんか気にせず相変わらずのマイペースで事を進める。

「てめえのそのでかい胸、必ず削ぎ落してやる!泣こうが、喚こうが絶対に許さねえからな!」

「そうかい、それが最後の言葉でいいんだね?」

「待っ!!!!!・・・・・・・・・」

野盗の最後の言葉を聞くと、モレリアは躊躇う事無く短剣を首に突き止めを刺す。その顔はいつもと変わらない、表情が曇る気配すらない。

「僕はいつもこんな感じだよ。参考になったかい?」

・・・・・

結局時間はかかったが、エルメトラも無事に手を汚す事が出来た。まあ、今はショックで泣きじゃくっているけど、仲間が慰めているから平気だろう。

それよりもさっきからティッチを抑えているトレオンを助けてやらねえとな。

「トレオン!こっちはもういいぜ!」

「はあー。ようやくかよ。マジでティッチを抑える方が大変だったぜ」

そう言ってトレオンがティッチを解放すると、すぐに駆け寄ってきて生き残りに尋問を始めた。

「お前らのアジトはどこだ?アジトに捕まっている人はいるか?お前らはあと何匹残っている?」

「おいおい、また凄い美人に・・・あぎゃあああああああ」

ティッチに股がられ問い詰められた野盗が軽口を叩いた瞬間、辺りに絶叫が響いた。

「ティッチ相手に軽口叩くなんて馬鹿だねえ。本当の事を喋ってさっさと楽になった方がいいって分かんねえのかな?」

「僕たちはティッチをよく知っているからそう言えるんだよ。あいつらティッチの事知らないでしょ」

こうやってモレリアと話している間にも辺りに絶叫が響いている。素直に話をしない野盗たちをティッチが投げナイフで腹を突き刺していっているからだ。その光景にさっきまで泣きじゃくっていたエルメトラや他の受験生も目を丸くして見ている。

「あー、お前らに一ついい事を教えておく。『柔軟に行こう』の前で野盗の話をするな。今のティッチを見れば分かると思うが、あいつら過去に野盗と色々あった奴が多いから野盗と聞けば目の色変えてしつこく問い詰めてくるぞ」

ドン引きしているアーリット達にトレオンがアドバイスしている。俺もそうやって誰か教えてくれる人が欲しかったぜ(一敗)。

「なら!お前らのアジトに囚われている人はいないんだな!」

「そ、そうです。まだこっちに来たばっかりでアジトもまだ正式に決まってないんです」

「そうか。協力感謝する」

「な、なら!助け・・・ゴポッ」

素直に話した野盗の喉にナイフが突き立てられてそいつは絶命した。残った4匹もティッチに何度も腹を刺されているから長くはないだろう。ただ、ティッチはそいつらの止めを刺すことはない。苦しみながら死ぬ事になるだろう。

「よし、お前ら野盗を殺したら・・・っていうか死体を見つけたら身ぐるみ剥ぐってのは教わったな?今から野盗の装備を剥いでここに集めてこい。ついでに何か身元が分かるのがあれば教えてくれ」

トレオンの指示で各自が動き出すが、ティッチだけが指示に従わず、野盗の顔を確認している。これは賞金首がいないかの確認だ。俺たちの中じゃティッチが一番手配書に詳しいからな。

「あーあ。これ結構いい装備なのに真っ二つだよ。もったいねえな」

「流石にこれだけバラバラにされたらアンデッド化しないよね?ティッチはここまで考えていたのかな?」

「な訳ねえだろ。ただの八つ当たりしかねえだろ」

アーリット達には自分が止めを刺した野盗の装備を回収させて、俺達はティッチとトレオンが相手した方の装備を回収していっている。だけど、こっちはどの死体も五体満足な奴はない。ティッチが過去に野盗と何があったかなんて興味もねえから聞く気もないが、相当な恨みを持っているのは確かだ。それを野盗にぶつける事に文句はねえが、金になる装備を駄目にするのはいただけない。

「ああ、それは悪いな。野盗を前にすると頭に血が昇ってな。お詫びと言っては何だが今回の野盗討伐の方の報酬は辞退させてもらうおう。それで許してくれ」

ティッチがそれでいいってんなら、いいけど・・・結構な額になるけどいいのか?まあ、本人が良いって言ってんならいいか。へへへ、思わぬ形で儲けたぜ。

「いいかい。ティッチの対応は少しやり過ぎ、普通なら街に帰った後に酒を奢るぐらいでいいんだよ。そしてそれにつけ込むベイルの真似は絶対にしたら駄目だよ。ベイルみたいに嫌われたくないだろう?」

今の対応で注意すべき点をモレリアがアーリット達に教えているが、少し無視できない事を言いやがった。

「・・・え!?俺嫌われてんの?ちょっと待ってモレリア、そこん所詳しく!」

「自覚がないのがベイルの長所だよ。君はそのまま変わらないでくれよ」

「い、いや、何で少しいい話風にまとめようとしてんだ。俺は全然納得してねえぞ。ちゃんと答えろ!モレリアああああ!」

「ベイル、騒がしいぞ!装備回収が終わったら出発だ。『全てに打ち勝つ』には悪いが2級の狩場の目印は後日にしてくれ。このまま街へ直行する」

「おい、待てよ、ティッチ。俺ってみんなから嫌われているのか?」

俺の質問にティッチは戸惑った表情を浮かべる。

「自覚していなかったのか?」

「おいいいいいい!ふざけんな!俺のどこに嫌われる要素があるってんだ!むしろ逆だろ!誰からも愛されて人気者のベイル様じゃねえか!」

「そういう所じゃねえのか?」

トレオンまで混ざってふざけた事言いやがる。

「ふざけんなよ!街に帰ったら違うって所を見せてやる!そん時はお前らちゃんと『ごめんなさい』しろよ!」

「なあ、リリー。俺の事好き?」

俺が聞くとリリーは眉間に皺を寄せた後、持っていたペンを軽く机に叩きつけて、大きなため息を吐いた。

「はあああああ、今度はどうしたんですか?」

「いや、どうもしねえよ。そう言えばリリーが俺の事どう思っているか、聞いたことなかったなあって思ってな」

「あの・・・私、結婚しているって知ってますよね?」

「ああ、違う、違う。かあー、困った、そう意味で受け取っちまったかあ」

「そういう風にしか聞こえませんでしたけど?」

冷たい目で俺を見てくるリリー。

「ラブじゃなくてライクの意味で聞いたんだ。で?俺の事どう思ってんだ?」

「・・・・組合員には特別な感情を抱かず、平等に対応するのが受付嬢としての基本です」

「おいおい、そんな形式ばった返事を求めてねえんだよ。俺とリリーの仲じゃねえか」

「・・・こうやって業務に関係ない話をしてくる組合員の事、受付嬢は基本嫌ってますね」

マジで?俺もしかして嫌われてた?依頼処理の待ち時間とか、仕事と関係ない話してたけど?・・・いや、それは他の組合員もやっている事だ。ってことは全員受付嬢から嫌われているのか?今も隣で組合員と話している新人ちゃんの楽しそうな笑顔も偽物だってのか・・・そんな訳ねえ!こりゃあ、多分リリーの奴の照れ隠しだな。付き合いの長い俺なら分かる。

「何ですか?その『分かっている』って感じの顔は?イラッっとするのでやめてもらっていいですか?」

ほらね。言い方はきついけど態度はいつも通りだ。これがマジで嫌ってたら、もっと怒った時と同じ雰囲気になってるはずだもん。

「・・・はああああ。処理完了しました。試験官の報酬はこちらになります。野盗討伐と2級試験の報酬は後日お渡し致します。お疲れ様でした」

なんか最後、大きなため息吐かれて報酬渡されたんだけど・・・リリー疲れてんだな。

「よう、シリトラ、イーパ調子はどうだ?」

次に俺が声をかけたのはモレリアの所のシリトラとゲレロの所のイーパだ。このイーパは4級で身長がクワロ並みに高くてごつい女だ。『守り抜く』の面々と同じく盾で守るスタイルが得意な癖に、何故かビキニアーマーを好んで装備しているよく分かんねえ女だ。よくシリトラと飲んでいるので二人の仲はいいんだろう。

「何ですか、ベイル?今は二人で楽しく飲んでいるので邪魔しないでください」

「・・・・」

おっと、間が悪かったか?イーパも無言でこっちを睨んでいる。ただ、まあ、聞くこと聞いたらすぐに離れるから我慢してくれ。

「なあ、二人とも俺の事好きか?」

・・・バキッ!!!

おっとお、二人が持っているジョッキの持ち手が粉々になったぞ。腐ってたのかな?

「今度は何を企んでいるんですか?」

よく分かんねえけど、すげえ、警戒した様子でシリトラが聞いてくる。

「何も企んでねえって。嫌だなあ、シリトラってば、俺はただ純粋に聞きたいだけなんだって」

「かなり怪しい」

「おいおい、イーパまでそんな事言うなよ。長い付き合いじゃねえか、俺って裏があるような人間に見えるか?」

「確かに計算高い人間ではないですね。ただ、ベイルは『何でそうなる?』、『何でそう考える?』って場合が多いので警戒は必要です」

あれえ?意外な答えが返ってきたな。ただ、好き嫌い聞いただけなんだけど?警戒しているって褒め言葉か?

「ちなみに仮にさっきの質問に『好き』って答えていたらどうする?」

「そりゃあ、シリトラとイーパって俺の事好きなんだぜって組合に広めるぜ!」

「う、う、う、嘘を広めないで下さい!!!」

ええ?嘘?だって好きって答えたんだろ?嘘じゃねえじゃん。

「では逆に『嫌い』と答えた場合は?」

「そん時は、『二人とも照れ隠しで『嫌い』って答えるんだよ。全く素直になればいいのに』って話すかな?」

「ど、ど、ど、どっちを答えても答えは変わらないじゃないですか!!!」

「逃げ場なし」

あれー?そうか?全然違うと思うけどな。

「ツンデレ属性がつくか、つかないかになるから結構違うと思うけどな?」

「な、な、な、何ですかその変な名前の属性は!私達に変な属性つけないで下さい!!!」

シリトラの奴、我儘だなあ。

「無言、これしかない」

「そ、そうね。イーパ!いい考えだわ!『答えない』!これが私たちの答えよ!!」

「・・・そうか。分かった」

その答えを聞いて俺はトレオン達の所に向かった。

ベイルが去っていった後・・・

「全くベイルは何なんですか?でもまあ、イーパのおかげで助かりました」

「ベイルは悪い奴じゃない。ただ、考えが読めない」

「本当ですよ。さっきの質問、どっち答えてもベイルの事好きってなるじゃないですか。でもまあイーパのファインプレーであらぬ噂が広がらずに済んで助かりました」

そう言って二人はベイルに目をやると、モレリアとトレオン、ティッチの所に戻って行くのが見える。今日はあの4人で試験官の依頼を受けたと聞いているから、その流れで飲んでいるんだろう。

「おおーい!お前ら!取り合えずシリトラとイーパに聞いてきたぞ!あいつら恥ずかしがって答えてくれなかった!これやっぱり俺の事好きって言ってるのと同じだろ!」

・・・・

「「ちょっと待てえええええええええ!!!」」

思わず大声で叫ぶ二人であった。